目覚め(脚本)
〇木の上
経緯は全くわからないが、
俺は可愛い女の子の膝枕で眠っていたようだ。
見知らぬ美少女に見覚えの無い景色、
さらには人生で初めて手にしている武器。
南條 凛太郎「あのぅ、つかぬ事を伺いますが······」
ナタリー・オウンレット「アナタは何にも気にしなくていいのよ」
南條 凛太郎「へ?」
ナタリー・オウンレット「ここは夢の世界 現実のアナタは今眠っているの」
南條 凛太郎「へ、へぇ〜 随分リアルな夢だな······」
頬を撫でる風も、
美少女の膝の感触も甘い匂いも、
武器の無機質な冷たさも、
全てを感じるのに夢だと言う。
南條 凛太郎「ねぇ、これって何?」
手に持っていた武器を掲げ尋ねたが、
美少女は微笑んだままで応えてくれない。
南條 凛太郎「君の名前は?」
ナタリー・オウンレット「私はナタリー アナタが想い描く理想の女の子でしょ?」
言われてみれば······
確かに美少女外国人つったら俺の理想の嫁。
アホだから外国語はわからないが、
夢の中だからか都合良く言葉が通じるようだ。
よく見ると、影を落とすほどまつ毛が長いし、
小さくて可愛らしいピンクの唇はぷるんっぷるん。
雪の様に白い肌、膨よかなお胸とお尻、
アメジストみたいなキラキラした瞳に
透き通るような銀髪。
綺麗の一言で片付けてはいけないような綺麗な女の子。
お人形さんみたいな、ふわっとした妖精の様な女の子。
かれこれ何時間も膝枕を堪能している気がする。
夢って結構長いんだな。
何をするでもなく、
ただひたすらに癒される良い夢。
〇木の上
ナタリー・オウンレット「起きて 来るわ···· アレが来る」
南條 凛太郎「ん······ アレって?」
ナタリー・オウンレット「アレよ」
彼女のスラッとした指が差す先には、
巨大なヒルのような生物がいた。
おおよそ十メートルはあろうか、
その巨躯はのそのそと近づいてきている。
南條 凛太郎「アレって······ いつになったらここまで辿り着くんだ?」
ナタリー・オウンレット「そうね······ だいたい二時間弱かな」
南條 凛太郎「おっせぇな!!」
ナタリー・オウンレット「今のうちに 詠唱でもしておいてちょうだい」
詠唱····
と言われても、なんて言えばいいんだ?
南條 凛太郎「♪×✦‧✧̣̥̇‧✲゚✧✽*✼✼✽*●!!」
俺、今何て言った?
目をぱちくりさせている間に、
巨大ヒルが爆死した。
まさに、ぽかーん····だ。
〇木の上
ナタリー・オウンレット「素晴らしいわ、流石ね おめでとう」
せっかく絶世の美少女に褒められたが、
状況がわからない上になんだか疲れてきたし、
そろそろ目覚めたいのだが。
現実の俺、起きろ!
ナタリー・オウンレット「勇者様?」
南條 凛太郎「ん? 俺、勇者?」
ナタリー・オウンレット「うん、アナタは勇者様よ どうかしたの?」
南條 凛太郎「いやーまーそろそろね 起きないかなーって思ってたりして〜」
ナタリー・オウンレット「アナタは既に目覚めているわよ?」
南條 凛太郎「····どゆこと?」
ナタリー・オウンレット「アナタは既に覚醒しているわよ 見事に魔法が復活していたじゃないの」
どうやら、ここは夢の世界ではないらしい。
聞けば、俺はスランプ続きだった大勇者なんだとか。
全く記憶に無い。
俺っていつ転生したの?
そもそも死んだっけ?
いつどうやって死んだのよ。
あれ······違うな
これは転移か
どっちにしたって、
ここに来た経緯を何ひとつ覚えていない
ナタリー・オウンレット「さぁ勇者様、ギルドへ戻ろう 明日からはまた討伐の日々よ!」
俺は襟を引かれ、
まるで仔猫の様に力なく引っ張られていく。
これからお世話になるギルドへと。
私が主人公だとしたら,既に目覚めて違う意味で覚醒していたとて,めちゃくちゃ驚くだろうなぁと思いながら読ませていただきました。出てくる言葉1つ1つに深さがあり,読みごたえがある作品だと思いました。
夢の中?では勇者ですか。それも物凄く強い勇者ですか。とっても理想的な女性の膝枕とは羨ましい限りです。このまま夢が醒めなければ現実の世界でしょうね。
目が覚めたら可愛い女の子の膝枕、甘い匂い(笑)しかも覚醒していて勇者に!
夢のような夢の話、現実と非現実とが交差して楽しかったです。