4 本当の正義(脚本)
〇大ホールの廊下
栗原美里「う〜、頭痛い・・・」
昨日私は色々と感情が暴走していて、桐山君に殴られた後に居酒屋に誘われて、どれだけ飲んだか分からないけど、
朝から酷い頭痛に悩まされていた。だけど仕事は出来るので私は迷わず通勤した。
滝本リク「く、栗原先輩!?どうしたんですか!?顔色悪いですよ!」
栗原美里「や、やぁリク君。いや〜、昨日飲み過ぎちゃった見たいで」
滝本リク「本当に大丈夫ですか?医務室連れて行きますよ!」
栗原美里「大丈夫!ほらこの通り!」
滝本リク「はぁ・・・でも無理しないで下さいね」
私はリク君に無理矢理元気を見せた後、リク君に質問をした。
栗原美里「ねぇ、桐山君から電話来たと思うけど、此処に来てるって事は」
滝本リク「はい。本当は行きたく無かったんですが、桐山先輩が明日はどうしても来て欲しいってしつこいから仕方無く」
栗原美里「まぁ、あいつ何考えてるかイマイチ分からないのよね。何処と無くミステリアスって言うか」
滝本リク「でも僕、桐山先輩のそう言う所好きなんですよね」
栗原美里「まぁ、確かにあいつの魅力かもね。さて、そろそろ行きましょう」
滝本リク「はい!所で桐山先輩は?一緒だと思ってたんですが」
栗原美里「何か良く分からないけど、朝方遅れる見たいな事さっきメールで来てたのよ。何処で油売ってるのやら」
〇オフィスのフロア
栗原美里「お早う御座います!」
滝本リク「お早う御座います」
私達は何時ものオフィスに入って挨拶を交わす。でも、その私達を待ち受けていたのは、思いも寄らない出来事だった。
部長「有吉君!君は何て事をしてくれたんだ!!」
栗原美里「あれ?何の騒ぎだろう」
滝本リク「今の、部長の声ですよね?何か有ったのでしょうか」
有吉正義「ち、違います!これは何かの間違いです!この私が不祥事を働く等!」
部長「だったら親会社で在る心グループからのこの報告は何だ!?君は私に何か隠してるんじゃ無いか!?」
有吉正義「ですから、私には何の心当たりも有りません!」
滝本リク「栗原先輩、心グループって確か」
栗原美里「えぇ、私達の居るこの職場の親会社よ。その親会社がどうして行き成りこっちに課長が不祥事を起こしてるって言って来たか」
栗原美里「分からないけど、私達も話を聞いた方が良さそうね」
栗原美里「部長!」
部長「あぁ、君達か」
栗原美里「一体何が有ったんですか?」
部長「私が出勤してる途中で私に突然電話が来てな。有吉君が職場で不祥事を働いてると聞いてね。栗原君に対するセクハラ、迷惑メール」
部長「リク君と桐山君の手柄を横取りしたと、他にも」
有吉正義「部長!それは間違いです!私は彼等を教育していただけです!これは誰かが我々を陥れようとしてるに違い有りません!」
部長「ならやって無いと言える証拠は有るのかね?どの道全てがハッキリしなければこのチームは崩壊する!」
有吉正義「そ、そんなぁ・・・」
滝本リク「あ、あの、一つ良いですか?」
部長「何だね?」
滝本リク「さっきから気に成ってたんですが、桐山先輩、まだ見てないんですが、知りませんか?」
有吉正義「桐山?まだ見てないが・・・は!?」
有吉正義「分かったぞ!犯人は桐山だ!まだ此処に居ないと言う事は、私を陥れて職場の信用を失くそうとしてるに違い無い!」
栗原美里「ま!待って下さい!まだ彼が犯人だと決まった訳じゃ!」
有吉正義「いや間違い無い!部長!今直ぐ奴を問い詰めましょう!桐山め、こんな事して只で済むと思うなよ!!」
課長が桐山君を犯人だと信じて疑わなかった。でも私は彼がそんな事をする様な人では無いと確信している。付き合いはそこまで
長くは無いけど犯人では無いと思いたい。そう思った時、廊下から誰かの足音が聞こえて来た。
桐山誠二「皆さん、お早う御座います」
部長「き、桐山君!?」
有吉正義「桐山、貴様ぁぁ!!」
桐山誠二「課長、何でそんなにブチ切れてるんです?」
有吉正義「部長から心グループから私が不祥事をしていると報告が入った!私はそんな事を一切していない!こんなデマを流したのは」
有吉正義「桐山!!お前しか居ない!!私が教育して来た恩を仇で返すとは、懲戒解雇だけで済むと思うなよ!!!」
桐山誠二「あ〜・・・俺が心グループのお偉いさんに頼んだプレゼント、そこまで喜んでくれてたんですね」
栗原美里「え!?それじゃあこの騒動の原因は桐山君!?そんな馬鹿な!!」
有吉正義「やっぱりな!私の思った通りだ!覚悟しろよ桐山!懲戒解雇だけでは済まさん!警察を呼んで豚箱へ連れてって貰おうか!!」
桐山誠二「そうですか。それじゃあ俺は今日でお別れって事ですか。部長」
部長「何だね。今の君は疑われてもおかしく無い状況なのだよ」
桐山誠二「警察なんて無意味ですよ。部長にはまだ、名刺見せて無かったので、今此処で見せます」
部長「何故今更そんな物を?」
桐山誠二「読めば分かります。読んで下さい」
桐山君は自分の名刺を部長に渡した。そこに書いてある字を読むに連れて、部長は表情を凍らせていった。
部長「そ、そんな馬鹿な・・・何故今まで気付かなかったのだ・・・!?」
有吉正義「部長、一体どうしたと言うのですか?」
部長「ま、まさか、貴方様は・・・!!??」
桐山誠二「はい。俺は一年位前は心グループで仕事してました。職務取締役の桐山誠二です」
有吉正義「な、何だと!!??こんな若造が、私や部長の上だと!!??」
滝本リク「え!?確かあの人、栗原先輩とほぼ同期だって」
栗原美里「そうよ!でも、彼は私の一個上なの。彼が半年位前に入ったのは本当だけど、親会社なんて初耳よ!!」
有吉正義「か、仮に職務取締役だとして、何故こんな子会社にお前の様な奴が!?」
桐山誠二「取り合えず皆さん落ち着いて。心グループのお偉いさん達が作ったルールの中に、子会社の中で体罰や虐待等の不祥事が無いか、」
桐山誠二「一定の期間俺を含めた取締役が正体を隠して調査する役目が有るんですよ。課長がこれまで侵した不祥事は俺が独自に調査させて」
桐山誠二「頂きました。この部屋、皆に見つからない様に監視カメラを仕込ませていたんです。お偉いさんに頼んだ奴ですが」
有吉正義「ちょっと待て!仮に監視カメラが有るとして、何故お前の様な若造が取締役等やっている!?何かズルでもしたんじゃ無いか!?」
桐山誠二「いや?俺は大学の頃はパソコンの操作やプログラミングを徹底的に、心理学を有る程度やってただけで、大学に来てたお偉いさんが」
桐山誠二「俺の腕を見込んでくれて、気付いたら取締役なんて役職に成ってました」
有吉正義「ば、馬鹿な!?お前、化け物か!?」
桐山誠二「いいえ人間です。それはそうとジャスティス課長。貴方のこれまでの蛮行は全て記録して昨日お偉いさん達に引き渡しました」
桐山誠二「その上で貴方に対してお偉いさん達からの言伝を預かってます。たった今を持って、有吉正義を懲戒解雇とする」
有吉正義「ま、待ってくれ!!私が君達にして来た事は立派な教育だ!!社会の厳しさ、人付き合いの大切さ、社会人としての在り方、」
有吉正義「どれもこれも君達の成長を願っての事だ!!私が居なく成る事がどう言う事か、お前本当に分かっているのか!?」
桐山誠二「課長、確かに俺達は貴方に教えて貰った。でも部下の事を考えていたと本当に断言出来ますか?セクハラしたり他人にズケズケと」
桐山誠二「迫ったり、教育と言う言葉を言い訳に手柄を横取りする」
桐山誠二「てめぇは最初から、自分の利益しか考えて無かったって話だよ!!」
有吉正義「違う!!私は常に会社の為、仲間の為を想って行動を!!」
桐山誠二「あのなおっさん。もう面倒臭いからハッキリ言うよ。人の為とか何だとか言ってる奴はな、最初からその為に動いて無いんだよ」
桐山誠二「おっさんは最初から、誰からも信用されて無かった。そんな事にも気付けないのかよ?」
有吉正義「そ、そんな馬鹿な!!私は間違って無い!!私は正しい!!私の思い通りに成れば、全ては!!!」
桐山誠二「兎に角、ジャスティス課長殿は今日中に荷物を纏めて此処を出てって貰う。後部長」
部長「は、はい!なんで御座いましょうか!?」
桐山誠二「あんたにも言伝が有る。あんたはリク君が辛い想いをしてたのに気付かなかったし気付こうともしなかった。あんたは指揮官として」
桐山誠二「力不足だって判断された。たった今からあんたを減給及び、一般社員への降格処分とする。だってよ」
部長「そ、そんな・・・駄目だ・・・返す言葉が見つからない・・・・・・」
とても信じられない事だった。桐山君は親会社出身で階級は部長より上の職務取締役。何時も何を考えてるか分からない人だったのに
大の大人二人を簡単に捻じ伏せてしまったのだった。
栗原美里「き、桐山君!何で今まで黙ってたの!?君がそんな凄い人だったなんて!!」
桐山誠二「別に凄く無いよ。やりたい事やってただけだし。上のルールだったからバレたら俺が怒られるし」
桐山誠二「何より、リク君があんな風にされたら、怒りたくも成るよ。あのおっさん俺から手柄横取りしても全く懲りて無いし、」
桐山誠二「まぁあぁ言うタイプは何言っても効果無いからな。懲戒解雇こそしたけど、それでもあの性格直らないな」
滝本リク「ぼ、僕信じられないです。桐山先輩がそんなに凄い人だなんて。前に一緒に喋った時何と言うか、人の確信を突くのが上手いって」
滝本リク「言うか。先輩心理学得意なんですね」
桐山誠二「いや、得意って訳でもプロでも無いから。さっきも言ったけど、やりたい事やってただけで、今の役職は気付いたら成ってた」
桐山誠二「だけだし」
栗原美里「恐ろしいわね・・・桐山君、貴方一体何者よ」
桐山誠二「俺は俺だよ。さ、もう仕事始めようぜ。部長を降格させちまったから、新しい指揮官をお偉いさん達に頼んで置くよ」
何だが嵐の様な瞬間だった。部長が降格されて今日の分の指揮は桐山君がやる事と成った。
有吉課長は言われるがままに職場を去った。風の噂で聞いた話、桐山君に論破された事、桐山君の正体を知ったショックからか、
未だに再就職が出来てないらしい。前科も有るので中々雇って貰えないと言う事実も有るけど。自称ジャスティス課長と私達は、
もう二度と会う事は無かった。