3 上辺だけの正義(脚本)
〇オフィスのフロア
リク君が入社してから一ヶ月程経った。今日も今日とて各々仕事に励んでいたが、
有吉正義「申し訳有りません部長」
部長「そうだ。此処の所業績が良く無い。最近内で担当している改良型ゲームエンジンの売り込みをしたいと思っていてね」
部長「開発部も文句無しの出来だと評している。何処か、契約を結んでくれる所を探して来てくれないか?」
有吉正義「畏まりました!このジャスティス、正義の名の元に活躍して見せます!」
部長「良い意気込みだ。頼んだよ」
有吉正義「とは言った物の、デカく買い取ってくれる所と言ったら、大手の夏目ゲームス位しか思い付かない。あそこは商品開発に」
有吉正義「一切の妥協を許さない事で有名だからな。ん?」
滝本リク「先輩、頼まれた資料、やって来ました」
桐山誠二「どれどれ?うん、良い感じじゃん。後は大丈夫だから、戻って良いよ」
滝本リク「あぁ、有難う御座います!」
有吉正義「そうだそれが良い!おい、リク君!」
滝本リク「はい、何でしょうか課長」
有吉正義「課長命令だ。今から内で開発した改良型ゲームエンジンを夏目ゲームスに売り込みに行って来い。飛び込み営業と言う奴だ」
滝本リク「え!?飛び込み営業って、待って下さい!僕まだ営業やった事無いんですよ!」
有吉正義「大丈夫だ。そこは自分を信じてやれば良い!製品の資料は私が用意するから、早く準備しなさい。さっきも言ったがこれは命令だ」
滝本リク「わ、分かりました!」
リク君は課長から突然飛び込み営業に行く様に命令された。課長の無茶振りは今に始まった事では無いが、何だか凄く嫌な予感が
した。リク君が飛び出してから3時間位経過した頃か、リク君が良い笑顔で戻って来た。
滝本リク「課長!夏目ゲームスとの契約、取れました!」
有吉正義「何だって!?それは朗報じゃ無いか!良し、一緒に部長に報告しよう!」
有吉正義「部長!朗報です!」
部長「何かね?有吉君」
有吉正義「お喜び下さい!私の営業で夏目ゲームスが我々のエンジンを使用するとの契約が出来ました!」
滝本リク「か、課長!?今何て・・・」
部長「おぉ!!夏目ゲームスと契約を結ぶとは、流石は有吉君!君に任せて正解だった!」
滝本リク「ま、待って下さい・・・それは僕が・・・」
有吉正義「お褒めに預かり、光栄です部長!」
有ろう事か、課長はリク君が出した手柄を自分の物として部長に報告した。しかも部長はリク君が動揺してる事も、課長が
嘘を突いてる事に全く気付いて無かった。
部長「これからも期待してるよ!有吉君!」
有吉正義「お任せ下さい!」
滝本リク「・・・・・・」
有吉正義「リク君、社会に出れば理不尽な事が付き物さ。だがその理不尽を乗り越えてこそ成長していくのが社会人だ。まだまだ君は始まった」
有吉正義「ばかりだ。これからの成長に期待してるよ!」
滝本リク「僕は・・・一体・・・何をしていたんだ・・・?」
〇大ホールの廊下
仕事終わりの夕方。
栗原美里「リク君!」
滝本リク「・・・・・・」
栗原美里「聞いたよ!営業行ったけど課長に手柄横取りされたって!」
滝本リク「・・・・・・」
栗原美里「ねぇ、リク君大丈夫?私から部長に、」
滝本リク「止めて下さい!!」
栗原美里「・・・・・・!?」
滝本リク「僕、課長に気に入られたかったんです。興味の無いゴルフの話や飲み会に無理矢理付き合って、課長の事理解しようとしました」
滝本リク「今日の飛び込み営業、最初こそ動揺しましたが、課長に認めて貰えるチャンスだと思ったんです。これさえ出来れば課長は」
滝本リク「僕の事認めてくれる。そう思いました」
滝本リク「でも全部無駄だった!!僕がやったのに課長がやった事見たいに成って、僕は一体何をしてたんだ。今まで僕は何をしていたんだと、」
滝本リク「僕は僕に失望しました」
栗原美里「リク君・・・」
滝本リク「もう無理です。有難う御座いました」
栗原美里「あ・・・有吉ぃぃぃ!!!」
桐山誠二「おいおい、こんな所で何大声出してるんだよ」
栗原美里「桐山君!丁度良いわ!今から有吉の所に殴り込みに行くわよ!」
桐山誠二「待て落ち着け。やるだけ無駄だぞ」
栗原美里「何が無駄な物ですか!!何が正義よ!何がジャスティスよ!あいつを叩き潰してやらないと気が済まないわ!!」
栗原美里「・・・・・・!?」
桐山誠二「聞こえなかった見たいだからもう一度言う。落ち着け。お前一人が課長に殴り込んだって何も成らない」
栗原美里「じゃ、じゃあ・・・どうしたら良いのよ。これじゃあリク君が浮かばれないよぉ!!」
桐山誠二「栗原、この後暇か?俺と居酒屋に付き合って欲しいんだが」
栗原美里「もう・・・何なのよ桐山君・・・もうどうにでもしてよ・・・!!」
桐山誠二「決まりだな。殴ったのは謝るから、もう泣くな。な?」
栗原美里「馬鹿、馬鹿ぁぁぁぁ!!!」
彼女を落ち着かせる為とは言え、殴った事には罪悪感を感じながら、俺は栗原を居酒屋へと連れてった。
〇大衆居酒屋(物無し)
栗原美里「畜生〜!!何時も偉そうにして自分の都合ばかりで、人様の手柄を横取りするたぁ、何様だぁぁぁぁ!!」
桐山誠二「おいおい、余り飲み過ぎたら明日遅刻しちまうぞ」
栗原美里「これが飲まずに居られるかってんだぁぁ!!偉い奴ってのは人の気持ちも考えられないってかぁぁぁぁ!!」
桐山誠二「あちゃぁ、完全に出来上がってる」
栗原美里「桐山君も飲みなさいよぉぉ!!こんなの飲んでなきゃやってられないっつうの!!」
桐山誠二「いや、俺まで飲んだら帰れなく成るから。ほら、水飲んで」
栗原美里「だぁ、折角舞い上がってたのに。桐山君。今日はどう言う風の吹き回しで私を誘ったの?」
桐山誠二「おう、もう本題に入っても良いか。なぁ、栗原はあの課長に何か嫌がらせされたか?」
栗原美里「えぇ!前にも話したわ!皆の見えない所でセクハラされたり、何度か迷惑メール貰った事有ったわ!嘘は言って無いからね!」
桐山誠二「OK!俺もそろそろ頃合いだと思ってたんだよね」
栗原美里「桐山君?」
桐山誠二「栗原、俺はお前に約束する。明日の酒は、今日より美味く成ってるって」
栗原美里「は?意味がまるで分からないんだけど」
桐山誠二「リク君には俺から言って置くからさ、明日は遅刻しない様にな」
桐山君に連れられてお酒を飲んで、行き成り私が課長にされた嫌がらせを聞いて来て、この時の私にはそれが理解出来なかったけど、
明日のお酒が今日より美味しく成る。私達は明日、その言葉の意味を知るのだった。