縁日大戦

わらやま

金魚も掬えへんで、オトンとオカンを救えるかい!(脚本)

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〇古民家の居間
郡山 吉野「・・」
郡山 大和「ばあちゃん」
郡山 吉野「大和、いよいよやね」
郡山 大和「ああ」
郡山 吉野「・・」
郡山 大和「大丈夫や」
郡山 大和「オトンとオカンは」
郡山 大和「俺が絶対見つけたる」
郡山 大和「だから安心して待っててや」
郡山 吉野「・・せやな」
郡山 吉野「頼んだで、大和」
郡山 大和「ああ!!」

〇大きな木のある校舎

〇教室
クラスメイト「なぁ、獅子(れお)!! 宿題写さしてよ」
石岡 獅子「い、嫌だよ」
クラスメイト「いいじゃねーか」
クラスメイト「お前の取り柄なんて宿題ちゃんとやるくらいなんだからよ」
クラスメイト「あはは、ひどーい」
石岡 獅子「そんなぁ」
林先生「はいはーい、みんな席着いてぇ」
林先生「朝礼始めるわよ」

〇教室
林先生「──じゃあ最後に今日からみんなのお友達になる転校生を紹介します」
林先生「入って」
郡山 大和「こんちわ 郡山 大和(こおりやま やまと)言います」
郡山 大和「奈良県から引越してきたんやけど」
郡山 大和「東京の事はなんもわからへんから、色々教えてや」
川越 茉莉(ふーん、遠い所からご苦労だわね)
佐原 大祭(・・)
林先生「じゃあ席は石岡君の隣ね」
石岡 獅子「あ、はい」
郡山 大和「よろしゅうな!」
石岡 獅子「うん、僕は石岡 獅子(いしおか れお) よろしくね大和くん」
郡山 大和「獅子・・かっこええ名前やなぁ」
石岡 獅子「いや・・そんな・・ははっ」

〇教室
クラスメイト「なぁ奈良って人口より鹿が多いってマジ?」
郡山 大和「せやで、ぎょうさんおるわ 500万頭はおるんちゃうか」
クラスメイト「うっそだー」
クラスメイト「奈良って金魚すくいの聖地だよな 一回行ってみてぇ」
郡山 大和「・・ああ」
郡山 大和「せやで、めっちゃええとこやから来てや」
クラスメイト「いいなぁ・・あっ!!」
クラスメイト「なら、出店戦闘力(でみせせんとうりょく)も高いんじゃない?」
クラスメイト「もしかしてBとか・・まさかA!?」
郡山 大和「・・いや」
郡山 大和「俺のデミセンは『D』やで」
「えっ・・!?」
クラスメイト「そっか、まぁ頑張れよ」
クラスメイト(なぁんだ、雑魚じゃん)
郡山 大和「・・」
石岡 獅子「大和君・・」
石岡 獅子「話聞こえたんだけど、デミセンDなんだね」
郡山 大和「おお、それ言うたら一気に冷たくなったわ」
石岡 獅子「6年生にもなると、みんな大体Cにはなるから、Dは馬鹿にされちゃうんだ」
石岡 獅子「・・ま、僕もDなんだけど」
郡山 大和「大体Cって事やけど、B以上もおんの?」
石岡 獅子「うん、でもあんまりいないよ」

〇教室
石岡 獅子「例えば、あの子 川越 茉莉(かわごえ まつり)ちゃん」
石岡 獅子「女の子では唯一のBランカーなんだ」
石岡 獅子「で、あの子は 佐原 大祭(さはら たいさい)くん」
石岡 獅子「佐原くんは本当凄くてAランクなんだ」
石岡 獅子「Aランクはうちの学校だと佐原くんだけだからね。Sランクにもなるかもって話だよ」

〇教室
郡山 大和「ありがとな」
郡山 大和「やっぱりSランクはおらんのやな」
石岡 獅子「そうだね」
石岡 獅子「ま、僕らはそんな事より早くCランクにあがらないと」
石岡 獅子「今日早速縁日行く? 僕もなんとかお小遣いためたんだ」
郡山 大和「・・ああ」
郡山 大和「もちろんや」

〇大きな木のある校舎

〇お祭り会場
石岡 獅子「ここが常設縁日会場だよ」
郡山 大和「常設やのにえらい賑わってんなぁ」
石岡 獅子「みんな縁日大好きだから」
石岡 獅子「あっちに僕の行きつけの金魚すくい屋があるんだ」
石岡 獅子「Cランクに上がれない事を伝えたらサービスしてくれて──」
石岡 獅子「あ、おじさん!」
金魚すくい屋「んっ?」
金魚すくい屋「おお!!獅子少年じゃねぇか」
石岡 獅子「お小遣いためてきたよ」
金魚すくい屋「そっか、よく来てくれたなぁ」
金魚すくい屋「ん?そっちの少年は?」
石岡 獅子「大和くん 今日引越してきたんだ」
郡山 大和「よろしゅう」
金魚すくい屋「おお、そうかよろしくな大和少年」
金魚すくい屋「獅子少年良かったなぁ いつも1人で来てるもんなぁ」
石岡 獅子「まぁデミセンDなの僕だけだったから」
金魚すくい屋「今日はきっと行けるぜ」
金魚すくい屋「確認だが、Cランクへの条件は縁日累計使用金額10万円か」
金魚すくい屋「1プレイで10匹掬う事」
石岡 獅子「うん、わかってる」
金魚すくい屋「じゃあ一回500円な」
石岡 獅子「はい」
金魚すくい屋「おし、じゃあポイをどうぞ」
金魚すくい屋「前回に引き続き特別サービス」
金魚すくい屋「通常7号のところ、もっと破れにくい6号だ」
石岡 獅子「ありがとうオジサン」
郡山 大和「・・」
石岡 獅子「よーし」

〇水たまり
石岡 獅子「金魚の動きに合わせて・・」
石岡 獅子「慌てずじっくり・・」
郡山 大和(獅子・・悪くない手つきだ)
郡山 大和(この調子なら・・)
郡山 大和(ん?)
石岡 獅子「今だ!!」
石岡 獅子「あーーー」

〇お祭り会場
石岡 獅子「そんなぁ」
石岡 獅子「今日も駄目だった」
金魚すくい屋「獅子少年」
石岡 獅子(どうして僕にはこんなに才能が無いんだ)
金魚すくい屋「動きは悪くなかったぜ」
金魚すくい屋「どうだ?もう一回?」
石岡 獅子「で、でも1匹もすくえなかったし」
金魚すくい屋「そうか・・ならよ」
金魚すくい屋「さっきので累計使用金額も5万円に到達したから」
金魚すくい屋「累計での昇格狙いにシフトしようぜ クラスのみんなも大体そうだろ?」
石岡 獅子「僕にはそんなお金・・」
金魚すくい屋「大丈夫」
金魚すくい屋「親の財布から取っちまえばいいんよ」
石岡 獅子「そ、そんなの出来ないよ!!」
金魚すくい屋「バレねぇよ」
金魚すくい屋「ココだけの話みんなやってっよ」
金魚すくい屋「それに少年のデミセンが上がったら親も喜ぶってもんよ」
金魚すくい屋「だぁれも困らねぇ」
金魚すくい屋「な?」
石岡 獅子「・・」
石岡 獅子(それしか無いのかなぁ)

〇水たまり
郡山 大和「・・」
金魚すくい屋「どうした大和少年、水槽見つめちゃってよ」
金魚すくい屋「お前さんもやるかい?」
郡山 大和「なぁ、おっちゃん」
郡山 大和「さっき獅子が金魚を狙ってた時、やけにポイが脆くなるのが早なかった?」
金魚すくい屋「そ、そりゃあれだけじっくり水に入れて狙ってたらなぁ」
金魚すくい屋「お!? まさかポイの号数が違うと疑ってんのか?」
郡山 大和「いや、あれは間違いなく6号のポイや」
郡山 大和「俺には分かるんや・・」
金魚すくい屋「だったらよ」
郡山 大和(秘密は・・)
郡山 大和(こっちやろ!!)
金魚すくい屋「おいっ!!」

〇お祭り会場
金魚すくい屋「ば、馬鹿野郎」
石岡 獅子「ど、どうしたの大和君!? 急に水槽の水を飲もうとして」
金魚すくい屋「す、水槽の水は金魚の糞があって汚ねぇんだぞ!!」
金魚すくい屋「全くとんでもねぇガキだ」
郡山 大和「おっちゃん、口調変わってるで」
郡山 大和「焦っとんのはそんなことちゃうやろ」
石岡 獅子「ど、どういうこと?」
郡山 大和「この水には、紙を溶かす薬品」
郡山 大和「苛性ソーダが混ぜられている」
石岡 獅子「えっ!?」
金魚すくい屋「おいおい、何言ってくれてんだ!!」
郡山 大和「さっき、水につけて静止していた状態でもポイの紙がほどけていっとったわ」
郡山 大和「6号のポイではあんな風にならん」
郡山 大和「こんな水やと普通にやったら10匹すくうのは無理やな」
金魚すくい屋「い、いや」
郡山 大和「違うってんならこの水」
郡山 大和「然るべき所に持っていったろか?」
金魚すくい屋「ぐ、ぐぅ」
石岡 獅子「お、おじさん・・!?」
金魚すくい屋「・・」
金魚すくい屋「ああ、ああ、そうだよ!! 面倒くせぇなぁ」
金魚すくい屋「アガリが悪いとこっちもどやされんだよ」
金魚すくい屋「馬鹿なガキ騙して手っ取り早く金集めようとしてんのに」
金魚すくい屋「貧乏で話にならないしよぉ」
金魚すくい屋「やってられねぇぜ」
石岡 獅子「そんなぁ」
石岡 獅子「大和くん?」
郡山 大和「苛性ソーダは危ない薬品や」
郡山 大和「それを金魚すくいの水に混ぜるなんて」
郡山 大和「絶対に・・」
郡山 大和「絶対に許されへん!!」
金魚すくい屋「ひいっ」
郡山 大和(金魚たち・・)
郡山 大和(俺が救ったる)
郡山 大和「おっちゃん!!」
郡山 大和「俺がプレイする。ほんで・・」
郡山 大和「金魚全部掬ったるわ!!」
金魚すくい屋「で、出来るわけねぇだろ!!」
郡山 大和「金魚も掬えへんで・・」
郡山 大和「オトンとオカンが救えるかい!!」

〇水たまり
郡山 大和「・・」
金魚すくい屋(何匹いると思ってんだ・・馬鹿が)
金魚すくい屋「・・はっ?」
石岡 獅子「う、動きが見えない」
郡山 大和「水につけられへんのやったら」
郡山 大和「掬う一瞬だけ最低限の着水にするだけや!!」
金魚すくい屋(そりゃあ理屈ではそうだがよ)
石岡 獅子(ポイになんのストレスもかかっていない)
石岡 獅子「大和くん、なんでデミセンDなんだろ」
金魚すくい屋「Dだと!?そんな馬鹿な!?」
金魚すくい屋(この動きはA・・いや)
  Sにも・・匹敵する!!
郡山 大和「ウォォォォォォ」

〇お祭り会場
「・・」
郡山 大和「”すくった”ぜ」
郡山 大和「248匹・・全員を」
石岡 獅子「本当に達成した・・」
郡山 大和「オイ」
金魚すくい屋「はいぃぃ!?」
郡山 大和「おっちゃんの違法運営をバラされとうなかったら」
郡山 大和「俺だけでなく獅子のランクもCにあげてや」
石岡 獅子「え!?」
金魚すくい屋「わ、わかったよ」
金魚すくい屋「ほ、ほらよ、登録完了したぞ お前らは今日からCランクだ」
郡山 大和「おっしゃ、ほんで獅子からとった金・・」
金魚すくい屋「うるせぇ、誰が返すか!!」
郡山 大和「チッ おい、待てや」
石岡 獅子「大和くん・・」
石岡 獅子「大丈夫だよ」
郡山 大和「大丈夫って・・獅子・・」
石岡 獅子「元はと言えば僕が迂闊だったからつけこまれたんだし」
石岡 獅子「大和君のおかげでCランクにあがれたし」
石岡 獅子「ありがと・・」
郡山 大和「・・そうか」
石岡 獅子「その大量の金魚達どうするの?」
郡山 大和「飼うで!! 俺一人暮らしやったしちょうどええわ」
石岡 獅子「ええっ!?一人暮らし!?」
石岡 獅子「大和くん」
石岡 獅子「あのとてつもない腕前」
石岡 獅子「それなのに今までデミセンDランクで」
石岡 獅子「あと両親を救うって──」
石岡 獅子「君は・・一体・・!?」
郡山 大和「・・俺は」
郡山 大和「アレは!!」
石岡 獅子「大和くん!?」

〇大きな公園のステージ
西大寺首相「みんなー、常設縁日、楽しんでるぅ?」
「すげぇ 西大寺首相(さいだいじしゅしょう)だ」
「本物よ! まさかこんな常設縁日にいらっしゃるなんて」
西大寺首相「わっはっは、縁日ある所に西大寺あり」
西大寺首相「みんなこれからも縁日を楽しんでくれ」
西大寺首相「ん?」
郡山 大和「西大寺!!」
郡山 大和「お前に聞きたいことが──」
SP「なんだ君は!?」
郡山 大和「は、離せや」
郡山 大和(くそっ)
西大寺首相(あれは・・)

〇お祭り会場
郡山 大和「イテテ」
郡山 大和「・・ちくしょう」
郡山 大和「ガードがかたいわ」
郡山 大和(やっぱ”アレ”しかないんか)
石岡 獅子「大和くん!!どうしたの急に走っていって」
郡山 大和「・・なんでもあらへん」
石岡 獅子「・・すごいこわい顔してるよ」
郡山 大和「すまんな」
郡山 大和「落ち着いたわ」
郡山 大和「獅子には話しとかなあかんな」
石岡 獅子「え!?」
郡山 大和「さっきの続きや、俺のこと」
郡山 大和「俺がSランクを目指す理由これや」
石岡 獅子「これって大縁祭のチラシ?」
郡山 大和「せや、ほんで俺の目的はコレ」
石岡 獅子「わんぱく・・交流会!?」
郡山 大和「このわんぱく交流会で、俺は」
郡山 大和「あの西大寺の奴を問い詰めるんや」
郡山 大和「俺の両親の」
郡山 大和「失踪の真実を!!」

次のエピソード:全ての学問は縁日に通ず やな

コメント

  • 冷静になると何から何まで分からないのですが、それでも読み進めてしまうほどの勢いの良さと主人公の熱さ!さながらホビーアニメを見ているようでした

    小学生がランクを基準に人の方を判断する社会になのが悍ましいですね😰親が普段から言ってるんだろうな…

    DからCへの昇格条件もなかなかシビアだったので、最終目標のSランクは一体どれ程のことが要求されるのか🤔次回も楽しみにしています!

  • 奈良に所縁がある手前、地名が名前なのは(個人的にも)親近感湧くのですが…西大寺首相、大和西大寺駅……と、首相……こ、この組み合わせはブラック強めでは……?
    さておき、以前の「輪投げ」のお話を思い出しました。リアル縁日でも配信者が「祭りくじに闇を暴く!」とかやってますが、より闇が深そうな香りがプンプンと。常設縁日展はあったら楽しそうだけど、果たして……?
    あと、型抜き回に期待してます☺︎

  • 金魚すくいが、こんなに熱いなんて!!
    設定が斬新で、イントロから惹き付けられますね!
    熱血な大和くん、応援したくなります✨
    これからさまざまな相手と対戦するんでしょうか。
    楽しみです♪

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