ジャスティス課長

夏目心 KOKORONATSUME

2 ジャスティス課長の教育(脚本)

ジャスティス課長

夏目心 KOKORONATSUME

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〇オフィスのフロア
  新入りの滝本リクが俺等の職場に来てから一週間が経過した。何だかんだで自称ジャスティス課長の指導の元、少しずつ
  仕事を覚えて行ったリク君。そんなある日の事だった。
滝本リク「課長。少し良いですか?」
有吉正義「うむ、リク君、どうしたんだい?」
滝本リク「この資料の此処の数字、何か違和感を感じて、間違ってるかどうか確認したいのですが、宜しいですか?」
有吉正義「成る程ね!任せたまえ!どれどれ・・・(うむ、さっぱり分からん。どうにでも成るか。)」
有吉正義「リク君、このまま提出して大丈夫だ」
滝本リク「本当ですか!有難う御座います!」
  課長はリク君に対して適当に答えた。その数字が間違ってると気付かず、部長に提出した後にリク君は怒られてしまった。
部長「リク君、この資料、此処の数字が間違ってるよ!」
滝本リク「え!?さっき課長に確認したら大丈夫だって」
部長「慣れて来てくれたのは有難いが、慣れた時が一番ミスをし易い時だ。どうしても分からなかったら、事前に確認するんだよ」
滝本リク「は、はい。申し訳有りません」
有吉正義「リク君、どうしたんだい?」
滝本リク「あ、課長、さっき見て貰った資料ですが、やっぱり間違ってたってさっき部長に」
有吉正義「何だと?リク、間違ってると気付いて何故私に確認を取らなかった?」
滝本リク「え!?さっき僕課長に確認取りましたよね!?課長が大丈夫って言ったから」
有吉正義「何だお前、お前は私の所に来なかっただろ?だから部長にあんな風に怒られるんだ。自分のミスを他人の所為にするとは、」
有吉正義「その態度を部長に報告せざるを得ないな」
滝本リク「わ、分かりました!僕です!僕が確認しなかったのが悪い・・・」
有吉正義「そうだ!確り反省出来て偉いぞ!次から気を付けるんだぞ!」
滝本リク「変だな、確かに課長に確認して貰った筈何だけど」
桐山誠二「・・・・・・」

〇大ホールの廊下
  昼休み。
滝本リク「おかしいな、僕確かに確認取ったんだけどなぁ」
桐山誠二「あれ?新入り君じゃん」
滝本リク「あ、桐山先輩!お疲れ様です!」
桐山誠二「お疲れ。ねぇ、さっき大丈夫だった?」
滝本リク「え?さっきって?」
桐山誠二「あぁ、さっきのやり取り、実は見てたんだ。御免な、仕事優先して、助けに行こうともしないで」
滝本リク「い、いえ!僕が間違えなければあんな事に成らなかったのは本当ですし」
桐山誠二「君、そう言うの関心しないな」
滝本リク「え?」
桐山誠二「苛めの問題って学校だけじゃ無くて職場にも有るんだよ。自分をデカく魅せたり、楽しようとしたりする狡い奴等」
桐山誠二「社会に出ればもう学校の先生なんて頼りに出来ないし、相手の事は良く考えた方が良い。何より、一人で抱え込んだら」
桐山誠二「自分が駄目に成る」
桐山誠二「って、新入り君にはまだ早い話か」
滝本リク「い、いえ!何て言うか、有難う御座います。僕、もっと頑張りますので」
桐山誠二「うん。良い顔だ」
滝本リク「先輩、何か?」
桐山誠二「あ、いや、何でも無い。それはそうとさ、こんな所で話すのも難だし、良かったら屋上で一緒にコーヒー飲まない?」
桐山誠二「今日だけサービスして奢るよ」
滝本リク「え!?そんな!悪いですよ!」
桐山誠二「安心しろ、今日だけだから」
滝本リク「は、はい」
滝本リク「(桐山先輩、あんな風に笑うんだな。)」

〇広いベランダ
栗原美里「あ!桐山君、リク君こっちこっち!」
桐山誠二「よぉ、お待たせ」
滝本リク「お疲れ様です、栗原先輩」
栗原美里「コーヒー三人分全部ブラックにしちゃったけど、リク君苦いの平気?」
滝本リク「あ、大丈夫ですよ」
栗原美里「そっか、良かった」
  リク君を誘って、俺達はコーヒーブレイクを楽しむ。
栗原美里「仕事の方はどう?あの課長に嫌がらせされて無い?」
滝本リク「実は、今日、」
桐山誠二「あぁ、こいつ課長に嘘突かれて泣かされてた」
滝本リク「せ、先輩!?」
桐山誠二「言っただろ。相手の事は良く考えた方が良いって。何より、此処で嘘突いたら自分も同じに成っちまうぜ」
滝本リク「は、はぁ」
栗原美里「えぇ?リク君、課長に嫌がらせされたの!?」
桐山誠二「あぁ、俺はちゃんと見てた。課長に嘘まで突かれてな」
栗原美里「何それ信じられない!リク君、困った事が有れば私達に頼ってね!折角社会に出たんだから、あんな奴に負けちゃ駄目だよ!」
滝本リク「は、はい」
栗原美里「ねぇ、リク君って何か好きな事有る?例えば、ドラマを見るとか、何処かへ出掛けるとか」
滝本リク「僕ですか?そうですね、スマホでマスターカードバトルやってます。僕結構強いんですよ」
栗原美里「マスターカードバトル!有れ本当凄い人気よね!」
滝本リク「はい。とは言っても、カードの中身とか分からないですよね」
桐山誠二「いや、俺はやってるぞ?」
滝本リク「本当ですか!?あの良かったら僕と勝負してくれますか?まだ時間有りますよね!?」
桐山誠二「あぁ、だけど一回だけな。俺も強いぜ」
滝本リク「有難う御座います!じゃあ早速、」
  俺とリク君はスマホを弄ってカードバトルを展開した。その結果、
桐山誠二「あぁ!!後一歩で負けた!!」
滝本リク「えへへ、僕の勝ちです。先輩」
桐山誠二「そりゃ強い訳だよ。リク君のカード、今の環境で一番強い奴じゃん。君見る目有るよ」
滝本リク「桐山先輩、素直に嬉しいです」
栗原美里「私は、良く分からなかったなぁ」
  束の間のコーヒーブレイクを楽しむ俺達に、招かねざる客が足を踏み入れた。
有吉正義「何だ?若者が揃いも揃って」
栗原美里「げ、課長」
桐山誠二「課長、俺達に何か?」
有吉正義「何だお前等その態度は!?どうも君達は私の指導が必要な様だな」
桐山誠二「それはそれは、何時も俺達の事考えてくれて有難う御座います」
有吉正義「桐山君、君のその態度を余程部長に報告されたい様だね」
桐山誠二「課長、態々そんな事言いに来たんですか?」
有吉正義「違うわ!私は上司として部下の様子を見に来たのだ」
栗原美里「リク君の事ですか?それなら私達がやってるから大丈夫です」
有吉正義「馬鹿を言うな栗原君。君達は少し黙ってて貰おうか。リク君」
滝本リク「は、はい」
有吉正義「君は休憩中に何をしていたのだい?」
滝本リク「え、えっと、桐山先輩とカードゲームを」
有吉正義「カードゲームだぁ?全く最近の若者は、そんな物の何が楽しいんだ?私は週末部長と一緒にゴルフをしていたぞ」
有吉正義「ゴルフは良い物だ。フルスイングの感触に何処に向かって飛んで行くかのハラハラ感、決まった時の爽快感。何より大事なのは」
有吉正義「人との交流が出来る事だ。リク君も上に気に入られたいならゴルフを覚えた方が良い。次の週末、私と一緒にやって見ないか?」
栗原美里「課長!その自分語りは聞き飽きました!リク君がどんな風に過ごそうとリク君の勝手じゃ無いですか!」
栗原美里「それにカードゲームだって人と交流出来ます!」
有吉正義「何を言っているんだい栗原君。上に好かれる様に教えるのも立派な教育だ。私は彼に早く一人前に成って欲しいから言っているんだ」
有吉正義「そうだリク君!今日は私と一緒に飲みに行こう!社会人としての在り方を君に教えて上げようじゃ無いか!」
栗原美里「はぁ!?何馬鹿な事言ってるんですか!?リク君はまだ18ですよ!飲みに行かせられる訳無いじゃないですか!」
栗原美里「部長の話聞いて無いんですか!?」
有吉正義「栗原君、私が部長の話を聞いてない訳無いだろう。でもこれから彼は社会人として沢山の交流が有る。飲み会の空気を今の内に知って」
有吉正義「損は無い。リク君、これは課長命令だ。仕事が終わったら一階に集合だ。良いな」
  課長は言いたいだけ言って、リク君を飲み会に無理矢理誘った。
栗原美里「あぁもう!!自分の言いたい事だけ言ってリク君の事全否定して!!リク君!あいつの言う事聞く必要無いよ!」
滝本リク「いえ、僕、飲み会行きます」
栗原美里「はぁ!?何でよ!?」
滝本リク「僕、もっと頑張りたいんです。あの人に認めて貰えば、今とはもっと変わりそうなんです。だから、僕は行きます」
滝本リク「社会人としての在り方、聞いて見たいし」
栗原美里「駄目だよ、そんな事したら」
滝本リク「僕は本当に大丈夫です。コーヒーご馳走様でした」
栗原美里「あぁ、ちょっと!!」
桐山誠二「・・・・・・」
栗原美里「桐山君、どうしよう。このままじゃ」
桐山誠二「あぁ、このまま行けばあの坊やは破滅だな」
栗原美里「そ、そんなの絶対に駄目!折角入って来てくれたのに!」
桐山誠二「栗原、残念だけど、俺達がグダグダ言ってたらリク君が自分で考えられなく成る。だから今は無理だ」
栗原美里「そ、そんな・・・」
  コーヒーブレイクを済ませた俺は栗原を慰めながら仕事に戻った。その後、リク君は課長に連れられて飲み会に参加。
  課長の独り語りを長く聞かされてたのか、翌日見た時のリク君の顔に隈が出来て、栗原が御立腹に成ったのは言うまでも無い
  事だった。

次のエピソード:3 上辺だけの正義

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