勇者の姉とビン詰め魔王

久望 蜜

第2話 山賊の終わり(脚本)

勇者の姉とビン詰め魔王

久望 蜜

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〇草原の道
ルーク「じゃあ、行ってきます」
村人「ああ、気をつけてな」
村人「魔物のせいで、パーティーどころじゃなくなっちまって、悪いな」
ルーク「気にしないでください」
ルーク「それより、姉ちゃんの姿が見当たらないのですが・・・」
村人「何だ、聞いてないのか?」

〇大樹の下
ライラ「私、突然ケーキ屋さんになりたくなったので、修行の旅に出てきます!」
村人「え、大丈夫か?」
村人「せめて、ルークを見送ってからでも・・・」
ライラ「いいえ!」
ライラ「どうしても行きたくなったんです、今!!」
村人「そ、そうか」
村人「気をつけてな」
ライラ「はい!」

〇草原の道
村人「──といって、一足先に旅へ出たぞ」
ルーク「そんな・・・」
ルーク「俺の見送りもしないで・・・?」
村人「ま、まあ気にするな!」
ルーク(あの魔物、姉ちゃんと一緒に行ったのか?)
ルーク「くそー! あの魔物め、覚えてろよ!」

〇空
ルーク「次に会ったら、絶対殺す!」
村人「おい、ルークが錯乱したぞ」
村人「またか・・・」

〇山道
ウマ「ウーマー♪ ウーマー♪」
ライラ「ふふっ。そうね、お散歩楽しいわね」
ビンス(なぜか意思の疎通がはかれておる・・・)
ビンス(ライラに負けた気分で悔しいぞ、ウマちゃん・・・)
ビンス「今頃、お主の弟は怒っているだろうな・・・」
ライラ「どうして?」
ビンス「どうしてって──」
ライラ「そんなことより、急がないと!」
ライラ「あの子、小さい頃から体を鍛えているから、体力だけはあるのよ」
ライラ「すぐに追いつかれちゃう!」
ビンス「しかし、勇者の先まわりをするにしても、行き先はわかっておるのか?」
ライラ「それなら大丈夫! この前、訊いておいたから!」

〇レンガ造りの家
ライラ「ルーくんは旅に出たら、まずどこを目指すの?」
ルーク「うーん、とりあえず北の山にある魔女の里へ行くかな」
ルーク「魔法使いを仲間にしたいから」
ライラ「ルーくんは魔法のセンス、ゼロだもんねえ」
ルーク「ついでに、その先にある聖都を目指して、神官かできれば聖女を仲間にしたい」
ルーク「回復系の術師は重要だからな」
ライラ「うんうん」
ルーク「で、そのあとは魔王城」
ライラ「えっ!? もう行っちゃうの!?」
ライラ「まだ仲間2人だよ!?」
ルーク「行きずりで強そうな人がいれば、スカウトしていくつもりではあるけど・・・」
ルーク「早く姉ちゃんのところに帰りたいからね」
ライラ「もう! バカなんだから!」

〇山道
ライラ「──って、いってた!」
ビンス「そんなに少ないパーティーで、我に挑むつもりだったのか・・・」
ライラ「正直、パーティーメンバーを集めるだけでも、かなり不安に思っている・・・」
ライラ「だから、私たちでパーティーメンバーを厳選するの!」
ライラ「ルーくんが、ビンスくんに勝てるようにね」
ビンス「いっておくが、我は手加減などせぬぞ」
ビンス「戦いになれば、お主の弟の命は保障できぬ」
ライラ「大丈夫よ」
ライラ「ルーくんは、私が絶対に死なせないから!」
ビンス「一体、何をするつもり──」
ライラ「ガサガサ? 何か嫌な予感・・・」

〇山道
山賊「おい女、金目のものを置いていけ!」
ビンス「さ、山賊!?」
ライラ「どうしよう、ビンスくん!」
ライラ「封印する!?」
ビンス「何でもかんでも封印するでない!」
山賊「うわああ、ビンが喋った!」
山賊「こいつら、魔物だ!」
山賊「ということは、この女も・・・」
ライラ「え!? いや、私は正真正銘の人間ですけど!?」
山賊「俺たちを騙そうたって、そうはいかないぜ!」
山賊「俺たちには、頭がいるんだ! お願いします、頭!」
頭「おーおー、魔物がまたゾロゾロと」
頭「何の悪だくみだ、こりゃ?」
ビンス「こやつ・・・強いな」
ビンス「我もこの身体に慣れておらぬから、手加減はできぬ」
ビンス「山賊よ、逃げるなら今のうちだぞ」
頭「へっ、ずいぶんと臆病な魔物がいたもんだな」
ビンス「何っ!?」
頭「魔物は”悪しきもの”だ」
頭「人々に不幸をまき散らし、死に追いやる」
ライラ「ちょっと! ビンスくんは──」
ビンス「来るぞ! ライラ、下がっておれ!」
頭「魔物は、徹底的に潰す!」
頭「ちっ、なかなか頑丈なガラスだな」
頭「ふざけた見た目のわりに、やるじゃねえか」
ビンス「好きでこの姿になったわけではないわ!」
ビンス「喰らうがいい!」
頭「へっ、無詠唱の魔法でこの威力か。やるねえ」

〇山道
ライラ「ちょっと、二人とも落ちついて!」
ライラ「早くしないと、ルーくんに追いつかれちゃうのに!」
ライラ「それに──」

〇山道
頭「はっ!」
ビンス「そのくらいの攻撃、我には効かぬわ!」

〇山道
ライラ「もう! 落ちつけって、いってるでしょ!」
ライラ「『ビンスくん、封印強化!』」

〇山道
ビンス「へ?」
ビンス「んなっ、身体が縮んでいく!?」
頭「小ビンサイズになっちまったな」
ビンス「何をする、ライラ!」
ライラ「だから、戦うのはダメって、何度もいっているでしょ!」
ビンス「しかし、なぜ味方の我を小さくする必要が!?」
ライラ「だって、いうこと聞いてくれないんだもの」
頭「何だ、仲間割れか?」
頭「ちょうどいい。なら、今のうちに──」
頭「この炎なら、ガラスも溶かせるだろ」
ライラ「だから、戦うのはダメって、いっているじゃないですか!」
ライラ「『刀さん、封印!』」
頭「なっ! 俺の愛刀が、その辺の石に封印された!?」
頭「しかも、そんなめちゃくちゃな詠唱で!?」
ライラ「え? そりゃ、本気で封印するときは真面目な呪文にしますけど・・・」
ライラ「ようは呪文なんて、私がノレるかどうかじゃないですか」
ビンス(つまり、あの蛇は本気で封印するつもりだったのか・・・)
ビンス(そして、あれ以外ではまだ本気を出していないということか・・・)
ライラ「あと! 何か誤解されているようなので、きっちりいわせてもらいますが!」
ライラ「ビンスくんは”悪いもの”なんかじゃ、ありません!」
ライラ「今も、私のことを守ろうと戦ってくれました」
ライラ「ビンスくんは”いいもの”です!」
ビンス「ライラ・・・!」
ライラ「まあ態度がでかいくせに、ビンに封印されちゃって、どうなの? とは思うけど・・・」
ビンス「お主が封印したのではないか!」
頭「姉ちゃんが封印したのか? こいつを?」
ライラ「うん」
頭(どう考えても、この魔物は上級以上だぞ?)
頭(こりゃ、勝ち目はないな)
頭「ハア・・・やめだやめだ」
頭「この姉ちゃんに”いいもの”なんていわせる魔物なら、信じてやるよ」
頭「俺はイーサンだ」
頭「お前さんら、どうしてこんな森に来たんだ?」
ライラ「イーサン、イーサン・・・あ! じゃあ、イーさんって呼ばせてもらうね」
イーさん「なんかアクセントが違うような・・・ まあ、いいか」
ライラ「私たちは、ちょっと事情があって、勇者の先まわりをしているの」
イーさん「また新しい勇者が生まれたのか・・・」
イーさん「何でまた、先まわりなんて面倒なことを?」
ライラ「勇者が、立派に魔王を倒すために」
ライラ「そうだ! イーさんも、勇者パーティーに入らない?」
イーさん「は? 俺が?」
ライラ「もうすぐ、ここを勇者が通るわ」
ライラ「私の弟なんだけど」
イーさん「は? 弟!? 勇者の姉が、魔物を連れまわしているのか?」
ライラ「ちょっと事情があってね」
ライラ「だから、ついでに山賊さんたちで襲って、時間稼ぎもしてくれると助かるかな」
イーさん「は? 勇者を!? 勘弁してくれ」
ライラ「それで首領が仲間になるなんて、激アツな展開じゃない!?」
イーさん「ええ・・・」
ライラ「あ、もちろん、私たちのことは内緒よ?」
イーさん「それはいいが、勇者を倒しちまっても、知らねえぞ」
ライラ「大丈夫よ」
ライラ「うちの弟は、負けないから!」

〇山道
ライラ「じゃあね〜! 弟をよろしくね〜!」
イーさん「お前らの余っている刀、一振り借りるぜ」
山賊「それはいいですけど・・・」
山賊「いいんですか、頭?」
山賊「あいつらの頼みを聞いて・・・」
イーさん「まあ、面白そうだしな」
イーさん「それに、過去にやり残したことがあってな」
イーさん「今やらなきゃならねえ気がするんだ」
山賊「まあ、頭がそういうなら、従うしかないですけど・・・」
イーさん「悪いな。危なくなったら、逃げろよ」
山賊「誰にものをいっているんですか!」
山賊「俺たちは、逃げ足だけがとりえの山賊ですよ?」
イーさん「そうだったな」
イーさん「今まで世話になった」
「頭・・・!」
イーさん「おっと、泣くのはあとだ。来なすったぞ」

〇山道

〇山道
ルーク「俺に何か用か?」
山賊「おい、金目のものを置いていけ!」
ルーク「嫌だといったら?」
山賊「力づくだ!」
ルーク「そんなんじゃ、効かねえよ」
「ぐあっ」
イーさん「なかなかやるじゃねえか」
ルーク「今度は、おっさんが相手してくれるの?」
イーさん「ああ。俺に勝ったら、お前のパーティーに入ってやるよ、勇者様!」
ルーク「へえ!」
イーさん「へっ、剣筋はまだまだだが、意外とやるじゃねえか」
ルーク「これで終わりだ!」
イーさん「ぐっ・・・」
イーさん「ははっ、面白い!」
イーさん「俺の負けだ。お前さんの仲間にしてくれ」
ルーク「ああ!」
  勇者は、山賊を仲間にした!

〇山道
ルーク「ところで、さっきここを、めちゃくちゃ可愛い女の子が通らなかった?」
イーさん「さあな」
ルーク「この辺りに、まだ姉ちゃんの気配が残っているんだよ」
イーさん「は?」
イーさん「どういう能力だ、それ・・・」
ルーク「だから、ここを通ったのは間違いない」
ルーク「まさか、山賊どもが姉ちゃんを襲ったりしてないよな?」
イーさん「お、俺らは今来たところだから、知らねえよ・・・」
ルーク「そうか。そういうことにしておこう」
イーさん(全く、この姉弟は揃いも揃って・・・)
ルーク「じゃあ、出発だ」
山賊「頭、お元気で!」
山賊「魔王討伐、頑張ってください!」
イーさん「ああ、お前らも達者でな」
「頭・・・!!」

〇林道
ライラ「そういえば・・・イーさんって、どっかで見たことある気がするんだよね」
ライラ「どこだったかなあ・・・」
ビンス「それより、我の大きさをもとに戻さぬか!」
ビンス「今のいままで、忘れてなかったか!?」
ライラ「あー・・・」
ライラ「果たして、ビンスくんはもとのサイズに戻れるのか!?」
ライラ「第3話をお楽しみに!」
ビンス「おい、誰に話しかけておる!?」

次のエピソード:第3話 旅の小休止

コメント

  • そうそう、愛するものの気配や匂いはわかるんですよね!🤣 どっちに行ったとかもわかっちゃいますよね!w

  • この姉弟、いい意味でイカれてる……( ´∀`)
    第三者から見たら楽しいですけど、関わったらとんでもないことに巻き込まれてしまいますねぇ( ´ ▽ ` )
    それにしてもビンスさん…とことん不憫ですね(´・ω・`)

  • 斬新な設定でストーリーに引き込まれ、2話続けて読ませていただきました!😆
    ブラコンシスコン姉弟に、魔王とウマちゃん、イーさんと個性的なキャラが多くて、楽しいですね✨
    ライラは、どこでイーさんを見たことがあるんでしょう?
    気になります!

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