〇原っぱ
ライム「お弁当、美味しかったね」
リン「ええ。たまにはこんなのも良いわね〜」
リン「誰かと食事するなんて、いつ以来かしら？」
ライム「リンはいつも独りなの？」
リン「公務とかトレーニングとか、結局独りでいる事が多いからね」
ライム「こーむ？」
リン「お姫様の仕事よ」
リン「こう見えて忙しいんだから」
ライム「寂しくならない？」
リン「う〜ん⋯⋯」
リン「どっちかって言うと独りの方が好きかな？」
ライム「そ、そっか⋯⋯」
リン「まあ、時々寂しい時もあるけどね」
ライム「じゃ、じゃあ、ぼくが⋯⋯」
「姫様ーーッ!!」
リン「どうしたの？」
衛兵「街が魔物の襲撃を受けています！」
衛兵「大至急お戻りください！」
リン「わかったわ！」
ライム「ええ⋯⋯　危ないよ⋯⋯」
リン「私が行かなかったら、もっと危ない事になる！」

〇ヨーロッパの街並み
「やっちまえっ！」
店主「くっそ！」
店主「城の魔術師共は何をやってんだ!?」
衛兵「危険です！　早く下がって！」
看板娘「こんな時に姫様がいてくれたら⋯⋯」
店主「今頃ライムのやつとデートだろ？」
店主「タイミングが良すぎる⋯⋯？」

〇上官の部屋
宮廷魔術師「本当にこれでよろしいのですか？」
リヴァル「ああ。魔物達をよく見てみろ」
リヴァル「悪魔型や人型⋯⋯」
リヴァル「比較的、知能の高い連中ばかりだろう？」
リヴァル「獣の類はいない」
リヴァル「皆、煽動されてきたんだ」
宮廷魔術師「先日の作戦の成果ですね」
リヴァル「そう。姫様の命令という体で、森を攻撃する」
リヴァル「怒った魔物達が復讐に来る」
宮廷魔術師「我々も出なくて宜しいのですか？」
リヴァル「大した数じゃない」
リヴァル「街の戦力だけで防衛出来るだろう」
宮廷魔術師「⋯⋯」
宮廷魔術師「そしてこの後は⋯⋯」
リヴァル「ああ。魔物達への恨みは最高潮に達する」
リヴァル「森を攻略する大義名分が出来上がる、という訳だ」
宮廷魔術師「魔物達を滅ぼしたら⋯⋯」
リヴァル「ああ。森でゆっくりと聖樹の花の捜索だ」
宮廷魔術師「しかし森に聖樹の花があるとは限らないのでは？」
リヴァル「候補が一つなくなるだけだ」
リヴァル「また探せば良い」

〇結婚式場前の広場
衛兵「くっ⋯⋯」
衛兵「ここまでか⋯⋯」
？？？「待ちなさいっ！」
リン「間に合った！」
衛兵「姫様！」
リン「魔物達を誘導して！」
リン「私が一気に仕留めるわ！」
衛兵「はい！」
衛兵「⋯⋯」
リン「どうしたの？」
衛兵「例のスライム君と一緒だったんじゃ⋯⋯」
リン「ライムの事？」
リン「ライムだったら⋯⋯」
リン「あれ？」

〇ヨーロッパの街並み
ライム「ひぎゃああああっ！」
リン「もう！　何してんの!?」
ライム「だ、だって⋯⋯」
魔物「お前⋯⋯」
ライム「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
リン「今のうちに逃げて！」
魔物「待て！　ライム！」
リン（こいつ⋯⋯　ライムの事を知ってる？）
魔物「裏切り者め⋯⋯」
魔物「人間なんかと共謀しやがって！」
ライム「きょ、きょーぼー？」
魔物「とぼけるな！」
魔物「お前が出て行ったから森が襲われた！」
魔物「人間と一緒になってオレ達を滅ぼすつもりだろう！」
ライム「そんな事しないよ！」
リン（よくわからないけど⋯⋯）
リン（狙いはライム？）
魔物「黙れ！」
リン「逃げて！　ライム！」
ライム「え？」
リン「ふんぬっ！」
ライム「あああああああああぁぁぁぁぁ⋯⋯」
魔物「逃さねぇぞ！」
リン（ごめんね〜ライム⋯⋯）
リン「でもこれで⋯⋯」

〇建物の裏手
ライム「も゛、も゛う゛ダメ゛ぇ゛ぇ゛⋯⋯」
魔物「追い詰めたぞ！」
ライム「ひいいいいぃぃぃぃっ!!」
リン（やっぱりそうだ）
リン（森で戦った時もそうだけど、）
リン（あいつら羽根があっても飛べないんだわ）
リン（わざわざ地上でライムを追い詰めるなんて⋯⋯）
リン（でもこれなら⋯⋯）
リン「ライム！　飛んで！」
「なっ!?　屋根の⋯⋯　上に!?」
リン「今だ！」
リン「はぁ〜⋯⋯」
リン「ふんっ!!」
リン「よっしゃああぁっ!!」
ライム「危ねぇええええっ!!」
ライム「何て事するんだあああああっ！」
リン「良いじゃな〜い」
リン「ライムが魔物を一箇所に集めてくれたお陰で、一掃出来たわぁ」
ライム「当たったらどうするんだよーーッ！」
リン「前にも避けてたから大丈夫かなぁ〜って」
リン「ご、ごめん⋯⋯」
ライム「リンはぼくの事⋯⋯」
リン「ごめん、ってば〜」

〇上官の部屋
リヴァル「魔物達が⋯⋯　もう!?」
宮廷魔術師「蹴散らされたというのか？」
宮廷魔術師「思った以上に王女殿下の戻りが早かったようで⋯⋯」
宮廷魔術師「加えて、街の者の話によればスライムが走り回っていたとか⋯⋯」
宮廷魔術師「魔物達の気が逸れて、被害も少なかったらしいです⋯⋯」
リヴァル（あのスライムか⋯⋯）
リヴァル（気に入らんな⋯⋯）
宮廷魔術師「これから、どうされますか？」
リヴァル「⋯⋯」
リヴァル「変わらないさ⋯⋯」
リヴァル「遠征の準備を整えろ」
リヴァル「森の攻略を行う⋯⋯」

〇黒

〇ヨーロッパの街並み
看板娘「魔物は何とかなったけど⋯⋯」
店主「これはちょっと、どうしようもないな⋯⋯」
衛兵「申し訳ありません⋯⋯」
衛兵「消火活動はしているのですが、火の回りが早くて⋯⋯」
リン「ごめんなさい」
リン「私がもっと早く戻っていれば⋯⋯」
店主「いやいや、姫様の責任じゃないっスよ」
店主「命が助かっただけで十分です」
看板娘「城の魔術師達はどうしているのでしょう？」
看板娘「魔法を使えば、こんな炎簡単に消せるのに⋯⋯」
リン（確かにおかしいわ⋯⋯）
リン（さっきの戦闘にも姿を現さなかった⋯⋯）
リン（リヴァル達は何をやって⋯⋯）
ライム「ねえ」
リン「どうしたの？」
ライム「火、消さなくていいの？」
店主「消したいけど、消火が追い付かないんだよ」
ライム「⋯⋯？」
ライム「火は水で消せるよ？」
店主「んな事ぁわかってるよ」
店主「それでも追い付かないんだ」
ライム「⋯⋯？」
ライム「リン、あのお水は使っていいの？」
リン「あの水？」
リン「噴水の事？」
リン「そりゃ構わないけど⋯⋯」
ライム「じゃあ、ちょっと待っててね！」

〇噴水広場
リン「噴水の水をどうするの？」
ライム「えへへ⋯⋯」
「でっかくなってるーーーーっ!!!」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」
「⋯⋯」
看板娘「⋯⋯夢でも見ているのかしら？」
店主「ああそうだ。明日の買い出し行かなきゃ」
リン「あ、今日まだスクワットしてなかったわ」
　　み゛ん゛な゛〜
　　い゛く゛よ゛〜
「⋯⋯」
「ちょっと待てーーーーっ!!」

〇ヨーロッパの街並み

〇西洋の市場

〇噴水広場
「⋯⋯」
ライム「えへへ⋯⋯」
ライム「火、消したよ」
「すげえええええええっ!!」
店主「何だよオイ！　凄いじゃないか！」
看板娘「ライムちゃんエラい！」
ライム「えへ⋯⋯　えへへへ⋯⋯」
リン「ホント！　見直したわ！」
ライム「えへ⋯⋯　えへえへえへえへ⋯⋯」
リン「なんだか⋯⋯」
リン「とっても⋯⋯」
店主「でもこの水、なんか⋯⋯」
店主「ねちょねちょしてないか？」
看板娘「ホントだ⋯⋯　なんか⋯⋯」
看板娘「ねちょねちょしてる⋯⋯」
リン「え？」
リン「あ⋯⋯　ねちょねちょしてる⋯⋯」
ライム「あ、だってソレ、ぼくの⋯⋯」