第三話 面接番号一番 勘違いポンコツ 小田浜ゆり その2(脚本)
〇教室
小田浜ゆり「むぎゅ──」
放課後、俺は忘れ物を取りに、再度、教室に戻ってきていた。
小田浜ゆり「むぎゅ──」
教室の隅っこの席で、青髪の少女がうなり声をあげ、頭を抱えていた
雪根サトシ「あれ、まだいたのか??」
小田浜ゆり「あぁ、雪根くん、どうかしたの??」
雪根サトシ「あぁ、ちょっと、忘れもん取りに来た」
雪根サトシ「何してんの?」
小田浜ゆり「いや、歴史の勉強してるんだけど」
小田浜ゆり「まったくわかんなくて」
雪根サトシ「ちょっと、見せてみろよ」
問1 ムアーウィヤが建国した王朝について答えよ
雪根サトシ「あぁ、これ『ウマイヤ朝』じゃん」
小田浜ゆり「そうなの??」
雪根サトシ「答え、見てみろよ」
小田浜ゆり「うん」
小田浜ゆり「ホントだ!!よくわかったね」
雪根サトシ「これでずっと悩んでたのか?」
小田浜ゆり「うん、20分考えてた」
?????????
雪根サトシ「え??」
雪根サトシ「この問題に20分・・・・・・」
雪根サトシ「なんで、そんなことを・・・・・・」
小田浜ゆり「いや、答え見たら負けかな?って、思って」
??????
雪根サトシ「答え見ないと分かんないだろ・・・・・・」
小田浜ゆり「いや、なんか、思いつくかなって」
マジかよ、この子。致命的なほどにバカじゃん
小田浜ゆり「雪根くんって、歴史好きなの?」
雪根サトシ「まぁ、多少はな」
雪根サトシ「もともと、織田が好きでな」
小田浜ゆり「えぇ!?」
小田浜ゆり「そんなこと、急に言われても・・・・・・」
雪根サトシ「まぁ、そっから日本史だけじゃなくて、世界史も手を付けたって感じだな」
雪根サトシ「て言っても、歴史博士でもないし、受験用の勉強もこないだ始めたばっかだからな・・・・・・」
小田浜ゆり「そう・・・・・・なんだ。えへへへ」
雪根サトシ「じゃ、俺、そろそろ帰るわ!」
小田浜ゆり「う、うん、じゃね」
雪根サトシ「おぉ」
〇オーディション会場(物無し)
彼女の話を聞いて思い出した
確かに、そんなこともあった気がする
小田浜ゆり「以上が、私が今回の面接に挑んだ理由です」
小田浜ゆり「うぅ、恥ずかしぃぃ」
小田浜さんは、赤面した顔を、両手で隠している
彼女の話は、聴いてるこっちが恥ずかしいものだった
宮坂皐「なるほど、それは素晴らしいですね!!」
小田浜ゆり「でしょ!でしょ!!」
雪根サトシ「いや、ちょっと待て・・・・・・」
宮坂皐「どうしましたか?雪根さん」
雪根サトシ「小田浜さん、なんか勘違いしてない??」
雪根サトシ「俺が好きだって言ったのって、織田信長のことだと思うんだけど・・・・・・小田浜さんの小田じゃなくて、信長の織田なんだけど」
小田浜ゆり「そっ、そんな照れなくてもいいじゃん」
宮坂皐「照れてますね」
雪根サトシ「照れてねーよ!」
雪根サトシ「いや、そうじゃなくて!!」
雪根サトシ「なんで、これで俺が口説いたことになってんの!!」
小田浜ゆり「だって、好きっていったじゃん」
雪根サトシ「だから!!それは君のことじゃ・・・・・・」
宮坂皐「雪根サトシ、それ以上喋ったら」
雪根サトシ「・・・・・・」
宮坂さんは、まるで警察が身分を証明するときみたいに、リモコンを見せつけてくる
爆ぜたくないよぉぉ
雪根サトシ「・・・・・・」
宮坂皐「よろしい」
宮坂皐「では、面接を再開しましょう」
宮坂皐「と、言いたいところなのですが・・・・・・」
宮坂皐「雪根サトシさん、あまり小田浜さんの体をジロジロ見るのはよしてください」
雪根サトシ「はぁ??」
宮坂皐「セクハラですよ」
宮坂皐「”面接でセクハラしてる”なんてバレたら社会的に終わりますからね」
雪根サトシ「はぁ??そんなこと言ったって、水着着てきたのは小田浜さんの方で」
小田浜ゆり「確かに、ジロジロ見られたら、恥ずかしいっていうか」
雪根サトシ「それを承知で水着着てきたんじゃないのか・・・・・・」
雪根サトシ「すっ、すみませんした・・・・・・」
俺は一体、彼女のどこをみればいいんだ・・・・・・
ここからは、安全のため、リノリウムの床を注視することにするか
ていうか、セクハラ以前に、俺は脅迫されてるというか・・・・・・
それがバレたら、宮坂さんの方が社会的に終わるよな。
まぁ、俺がそれを言おうとしたら、どうせあの”リモコン”が出てくるんだろうけど
宮坂皐「では、小田浜さん、あなたのアピールポイントを教えてください」
小田浜ゆり「アピールポイント?」
宮坂皐「はい」
宮坂皐「特に、雪根さんの♡をズキュン!!できるようなものを教えてください」
小田浜ゆり「な、なるほど」
小田浜ゆり「ぼ、ボディ・・・・・・とか??」
小田浜ゆり「自分で言うのもなんだけど、この水着とか似合ってると思うし」
小田浜ゆり「ほら、雪根くん、ちょっと、この水着観て欲しいんだけど」
雪根サトシ「え??」
あまり、見ないように注意していたのだが
見てと言われちゃ、しょうがない
小田浜ゆり「やっぱりダメ!!はっ、恥ずかしい!!」
宮坂皐「雪根さん、セクハラはやめてください!!!」
雪根サトシ「えぇ??」
宮坂皐「爆ぜさすぞ」
雪根サトシ「いっ、今のはしょうがな・・・・・・」
宮坂皐「は?」
雪根サトシ「・・・・・・」
あーもう、めちゃくちゃだよ!!
てか俺、どうしたら爆ぜなくてすむの??
宮坂皐「でも、やっぱり、ボディ、いいですね!!素晴らしいです」
宮坂皐「雪根さん、是非、小田浜さんの”ボディ”を見てあげてください」
雪根サトシ「えぇ??」
雪根サトシ「さっきセクハラって・・・・・・」
宮坂皐「見てあげないとかわいそうじゃないですか」
雪根サトシ「はぁ」
俺は、辟易しながらも、再度彼女の体に目を向けてみる
小田浜ゆり「うぅ、やっぱり、恥ずかしいよ!!」
宮坂皐「セクハラはやめてください!!」
雪根サトシ「だから、どっちなんだよ!!」
やべえ。こいつ、まじやべぇ。
宮坂さんて、支離滅裂を体現した女だよな
宮坂皐「では、この辺で面接の合否を出させていただきたいと思います」
小田浜ゆり「えぇ!?」
雪根サトシ「え????」
雪根サトシ「そんな、急に・・・・・・」
宮坂皐「雪根さん、小田浜さんのこと、どう思いますか?」
雪根サトシ「えぇ???」
雪根サトシ「まぁ、良い子だとは思うけどな・・・・・・」
宮坂皐「なるほど、では、小田浜さん」
宮坂皐「今回は”不合格”ということで」
小田浜ゆり「え・・・・・・」
雪根サトシ「えぇ??」
雪根サトシ「俺、まだ話の途中なんだけど」
雪根サトシ「しかも、なんで君が合否を決めちゃうの」
雪根サトシ「これ、いちよう、俺の彼女を決めるための面接だよな」
宮坂皐「ええ、その通りですよ」
雪根サトシ「だったら・・・・・・」
宮坂皐「いつから、あなたが合否を決められる立場にあると思っていたんですか??」
???????
宮坂皐「あなたの彼女は、私の独断と偏見で判断します」
雪根サトシ「え????」
こいつ、何言ってんの??
小田浜ゆり「そんな、雪根くん、ひどいよ」
小田浜ゆり「ひどいよ・・・・・・雪根くん」
雪根サトシ「俺、別に振ってないんだけど」
小田浜ゆり「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん」
小田浜さんは、涙をながしながら、天敵から逃げる小動物のように、教室から駆けだした
雪根サトシ「ちょ、ちょっと!!小田浜さん!!」
宮坂皐「女の子を泣かすなんて、最悪ですね」
雪根サトシ「泣かしたのは、俺じゃなくて、あんただろぉぉ」
宮坂皐「ちなみに、私があの女を落とした理由をお話しますと」
宮坂皐「私が気に食わなかったからです」
雪根サトシ「あんた、最低だな」
宮坂皐「そんなに褒めないでください」
雪根サトシ「”最低”を褒め言葉として受け止められる宮坂さんの才能はすごいと思うぞ」
宮坂皐「えぇぇ?うれしーー!ありがとうございます!!」
だから、褒めてないんだよなぁ
宮坂皐「また、面接は後日も開催しますから、楽しみにしていてくださいね」
雪根サトシ「勘弁してくれ」
雪根サトシ「ていうか、明日、どんな顔をして小田浜さんに会えばいいんだよ」
宮坂皐「それくらい、第一志望校判定『E』のその頭を使って、考えてください」
雪根サトシ「煽ってんのか??」
宮坂皐「あと、この面接の件、他言したら」
宮坂皐「わかってますよねぇぇ?」
宮坂皐「あなたの♡は、私が握っているってこと、忘れないでくださいね!!」
雪根サトシ「・・・・・・」
爆ぜたくないよぉ