葉月の聖歌

ましまる

浴衣と縁日とクリスマス(脚本)

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〇白いアパート
  ── 8月のとある日曜日
舞衣「亮太ー、来たよー!」

〇散らかった部屋
舞衣「今日なんだけどさ、 青岡町で縁日が開かれているんだけど」
舞衣「一緒に行かない?」
亮太「えー、外暑いし、メンドクサイ・・・」
舞衣「先週の日曜も同じこと言っていたじゃない」
亮太「だって、休日くらいゆっくりさせて・・・」
舞衣「休日だから、一緒に出掛けたいんだって!」
舞衣「ていうか、浴衣も持ってきちゃったから 何としても一緒に行ってもらうからね」
亮太「俺、浴衣持ってないよ・・・」
舞衣「いいの、私が着たいだけだから」
舞衣「あの全身鏡、ちょっと借りるね」
舞衣「・・・あっ、ちょっと手伝って~」
亮太「・・・はいはい」
舞衣「うん、そこを持っていて」
舞衣「・・・えっ、ちょっと」
舞衣「どこ触っているの・・・」
舞衣「ちょ、ちょっと・・・」
舞衣「もう、いいかげんにして!」
舞衣「準備万端、さぁ出かけようか!」

〇神社の出店
舞衣「さあて、参拝も済ませたことだし・・・」
舞衣「いっちゃいますか~♪」
亮太「おい、ガッツキすぎだって・・・」
舞衣「何言ってるの!? この縁日は、美味しいお店ばかりで 有名なんだから!」
亮太「えっ、そうなの?」
亮太「でも確かに、普通の屋台だけでなく トルコ料理、メキシコ料理とかもあるな」
亮太「あのでっかい蒸籠は、中華のお店?」
舞衣「そうそう、定番のテキ屋さんだけでなく 近隣の飲食店も屋台を出しているから バリエーションが凄いんだって!」
舞衣「ちなみに、あのメキシコ料理屋さん テキーラショットできるから、後で行こ!」
亮太「・・・無理」
???「あっ、ネェネェ!」
舞衣「んっ?」
???「ネェネェ、今回も来てくれたー!」
舞衣「あっ、お久しぶりでーす!」
亮太「知り合いか? あと、ネェネェってどういう意味?」
舞衣「この近くの沖縄料理店の店員さん 縁日にも屋台を出店しているの」
舞衣「それと、ネェネェって沖縄弁で 「お姉さん」って意味だから」
店員さん「今回は、ネェネェが来ても大丈夫なように いっぱい用意してあるから~」
店員さん「さあさ、飲んで食べてって~」
舞衣「はーい!」
亮太「・・・舞衣が来ても大丈夫なように?」

〇奇妙な屋台
店員さん「さあて、ネェネェはコレからだよね~」
店員さん「泡盛のロックね~ 今日は一杯用意しているから大丈夫さ~」
亮太「・・・「大丈夫」って、 以前何かあったのですか?」
舞衣「ま、まぁ、ちょっとね」
店員さん「6月のことかな、 ネェネェがウチの店長や常連さんたちと 泡盛の飲み比べをしてね、」
店員さん「店長はじめ、そうそうたるウチナー共を ネェネェが潰しちゃったのさ~」
店員さん「その時、屋台に持ってきていた泡盛が 全部カラになっちゃって、 何度も屋台と店を往復することになってさ」
亮太「・・・ま、舞衣」
舞衣「あ、あはは・・・」
店員さん「ニィニィもお酒は好きなの?」
店員さん「てか、ニィニィはネェネェの彼氏さん?」
亮太「・・・あの、いや、ええと」
舞衣「何でハッキリと答えないの!?」
亮太「あ、俺、お酒あんま飲まないので、 ソーキそばを頂けますか?」
店員さん「はい~、ちょっと待ってて~」
店員さん「は~い、お待たせ~」
店員さん「あと、ラフテーもおまけね~」
舞衣「うわー、私も食べたーい! 半分こね!」
亮太「舞衣、絶対に半分以上食べるだろうから 好きなだけ取っちゃってよ・・・」
舞衣「うっ、バレてる・・・」
店員さん「ネェネェは、何かオツマミ食べるかい?」
舞衣「ええと、”豆腐よう”が食べたいです!」
店員さん「豆腐ようか~ お店になら置いてあるけど、食べに行く?」
舞衣「行ってもいいのですか? でも、営業時間外ですよね・・・」
店員さん「今なら、店長たちが三線の練習をしてるね すっごい下手クソだけど よかったら聞いてきてあげてよ」
舞衣「聞きたーい!」
舞衣「亮太、行こうよっ!」
亮太「・・・ちょっと、まだ食べてる最中だって 急いで食うからっ」

〇立ち飲み屋
店長さん「はいよ、豆腐ようねー」
店長さん「ネェネェ、相変わらず酒呑みの口してんね」
舞衣「泡盛を飲んでいると、 無性にコレが食べたくなるんですよ」
店長さん「ハハハッ、流石だ!」
店長さん「今日も飲み比べといこうか?」
舞衣「いや、今日は・・・」
店長さん「あー、今日は彼氏連れだからかー」
店長さん「お兄さん、ネェネェと一緒だと 全然退屈しないだろ!?」
店長さん「ちなみに、ネェネェのどこに惚れたか 教えてもらえるかい?」
舞衣「エッ!?」
舞衣「ワクワクッ!」
亮太「・・・ええと」
亮太「・・・」
亮太「・・・・・・その」
舞衣「もう・・・」
舞衣「・・・て、店長さん」
舞衣「今、三線の練習していたんですよね」
舞衣「ちょっと聞かせてもらってもいいですか?」
店長さん「ああ、ぜひ聞いていってくれ! 技術はないけど気持ちだけは込めるからさ」
店長さん「よしっ!」
店長さん「じゃ、行くぞ!」
「はいよっ」
  ♪ ~ ♪ ~ ♪ ~
舞衣「うわー、楽しい!」
亮太「明るく元気になれます!」
店長さん「おう、お粗末様!」
店長さん「嬉しい感想までありがとなっ!」
舞衣「いえいえー」
店長さん「よし、これはお礼だ」
店長さん「心置きなく飲んでくれ」
店長さん「乾杯!」
「かんぱーい!」

〇お祭り会場
舞衣「あー、流石に酔っちゃった・・・」
亮太「そりゃ、あれだけ飲めば酔うって・・・」
亮太「同じペースで飲んでいた店長さんたち 完全にダウンしていたから・・・ これからお店開かなきゃいけないのに」
舞衣「んー、悪いことしちゃったかも・・・」
亮太「「かも」じゃない、完全に悪いことだって」
亮太「舞衣だって、足元がかなり怪しいし・・・」
亮太「ちゃんとまっすぐ歩けるか?」
舞衣「んー、ちょっと難しいかも・・・」
舞衣「ね、転ばないように手を繋いでくれる?」
亮太「・・・えっ、やめろよ 人前で恥ずかしいから」
舞衣「なんで・・・」
舞衣「なんでなの・・・・・・」
舞衣「家の中では変なトコまで触ってくるのに、 家の外では手すら触ってくれない・・・」
舞衣「私と触れ合っているところ、 そんなに人に見られたくないの?」
舞衣「私と一緒にいるの、そんなに恥ずかしい? 私って、恥ずかしくなるような女なんだ」
舞衣「付き合っている、って口にするのも嫌? ・・・嫌だよね、こんな我儘な暴力女は」
舞衣「・・・ごめん・・・ぐずっ・・・みっともないことを言って・・・・・・」
亮太「舞衣、ちょっと落ち着こう」
亮太「あっちのベンチで話そう」

〇公園のベンチ
舞衣「・・・ありがと」
亮太「・・・ゴメン」
舞衣「何で謝るの?」
亮太「俺が悪かったって」
舞衣「ううん、全部私が悪いから・・・」
舞衣「可愛くないし・・・嫌がる亮太を連れ回しすし・・・彼女として自慢できる要素も・・・ないし・・・すぐ泣いて・・・みっとも・・」
???「あのー・・・」
???「すみません・・・」
絢音「おねーさん、泣いているけど、 ケガでもしたのですか?」
舞衣「ううん・・・大丈夫」
絢音「ホント? すぐそばに教会があるから」

〇田舎の教会

〇公園のベンチ
絢音「ケガしてたら、手当てしてもらえますから」
舞衣「ありがと・・・ ・・・ええと、お名前は何ていうの?」
絢音「絢音ですっ」
舞衣「絢音ちゃんはとっても優しいね」
舞衣「そこの教会に絢音ちゃんは通っているの?」
絢音「はい、聖歌をれんしゅうしにいってます」
舞衣「聖歌ってどんな感じなの? 聞かせてもらってもいい?」
絢音「はい・・・」
絢音「今はぜんぜんうまく歌えません・・・」
絢音「でも、コンサートまでにはうまくなります」
舞衣「そうなんだ コンサートはいつ行われるの?」
絢音「はい、クリスマスにします 教会でやるので、ぜひ来てください!」
舞衣「クリスマス!? 今から練習なんて、頑張るんだね!」
絢音「はい、いちばんヘタだから、 いまからがんばってます!」
亮太「・・・こんな真夏なのに クリスマスコンサートの練習?」
舞衣「えっ、ちょっと、亮太・・・」
舞衣「何を言っているの?」
亮太「だってさ、このご時世 数ヶ月先の予定もご破算になったりする」
亮太「コンサートが開催されないかもしれない、 開催されたとしても、 体調不良で参加できないかもしれない」
亮太「そんな先の練習、どうしてできるの?」
舞衣「亮太、何てことを言ってるの!?」
亮太「でも、このご時世、 そう考えるのが普通じゃないかい?」
絢音「・・・はい、そうかもしれません」
絢音「でも、コンサートがあるって信じてます」
絢音「そこで、れんしゅうしないで ヘタなまま歌うのがいちばんイヤです」
絢音「中止になるより、もっとイヤです」
絢音「中止になるかもって、れんしゅうしないで ヘタクソでいるのは、一番コーカイする」
絢音「だから、がんばってれんしゅうします!」
舞衣「そうだよ、亮太 悲観することよりも、目の前のことに 全力を注ぐほうがイイでしょ!」
舞衣「最近、様子が変だけど、何かあったの?」
亮太「実は、将来のことを考えるのが不安で」
亮太「いろんな未来を思い描いても、 また災害や感染症でブチ壊しにされるかと 不安になってしまって・・・」
亮太「だから、考えること自体を 否定するようになったんだ・・・」
亮太「自身のキャリアプランも、 舞衣との未来も・・・」
舞衣「・・・亮太」
亮太「でも、起こるかわからない事に怯えるより 目の前の事に全力を注ぐほうがいいよな」
舞衣「そうだよ」
亮太「絢音ちゃん・・ヒドいこと言ってゴメンね」
亮太「絢音ちゃんの歌、 全力で応援させてもらってもいい?」
絢音「はいっ!!」
亮太「クリスマスコンサートも 聴きに行かせてもらえるかな?」
亮太「絢音ちゃんが上手に歌えたら 誰よりも大きな拍手を送りたいんだ」
絢音「はい、ぜひ来てください!」
絢音「大きな拍手、くださいね!」
亮太「うん、約束するから!」
舞衣「私も聴きに行くからねっ」
絢音「はいっ!!」

〇黒

〇田舎の教会
  ──12月 クリスマスコンサート当日

〇大聖堂
  ♪~~ ♪~~ ♪~~
舞衣「素敵だったね!」
亮太「うん、本当に良かった!」
絢音「おねーさん、おにーさん!」
絢音「来てくれてありがとうございます!」
亮太「絢音ちゃん、すっごい良かったよ!」
絢音「えへへ、うれしいです!」
舞衣「いっぱい練習した成果が出たね!」
絢音「はい、れんしゅう、たいへんだったけど 上手くいってよかったです!」
亮太「目標に向けて頑張ることの素晴らしさ 絢音ちゃんに教えてもらえたよ!」
亮太「俺も、大事な目標に向けて頑張るから!」
舞衣「・・・あっ」
舞衣(亮太から手を握ってきた・・・)
舞衣「絢音ちゃん、 次のコンサートも聴きに来るから!」
亮太「次に絢音ちゃんの歌声を聴けるのは いつだろうかね?」
絢音「次は・・・」
絢音「おねーさんとおにーさんのけっこんしきで 讃美歌を歌いますね!」
「えーーーっ!!」
絢音「ふたりのために、がんばって歌います!」
絢音「それまで、いっぱいれんしゅうします!」
絢音「けっこんしき、いつするのか おしえてくださいね」
舞衣「えっ、結婚式って・・・」
亮太「そうだね、その時は絢音ちゃんに 歌でお祝いしてほしいな」
絢音「はいっ!」
亮太「でも、今の俺だとまだ頼りないから、 ちゃんと結婚できるよう準備しないとな」
舞衣「・・・えっ、えっ」
絢音「おねーさんは、けっこんはイヤですか?」
舞衣「い、イヤじゃないケド・・・ 心の準備ってヤツがアレで・・・」
亮太「俺だってそうだよ!」
亮太「だから、絢音ちゃんみたいに 前もって準備しなきゃ!」
絢音「そうですよ!」
舞衣「・・・うん」

〇黒
  10分後・・・

〇大聖堂
亮太「舞衣って指輪のサイズ、何号だっけ?」
絢音「おねーさん、けっこんしきの前の 「うぇでぃんぐだいえっと」は?」
亮太「あと、マイホームについても考えようか」
絢音「にわつきいっこだてー!」
亮太「だったら、住宅ローンもかー」
絢音「おねーさんは、子供なんにん産むの?」
亮太「子供はたくさんほしいから、 学資保険に積立も考えておかないと」
絢音「「ろうご2000万円もんだい」は?」
亮太「そうだね、資産運用も検討しておこうか」
舞衣「そこまで考えてられるかー!!」

コメント

  • 先に何が起こるか分からなくて怖くなる気持ち、私も分かります…。絢音ちゃんとの出会いから、前向きに未来について考えられるようになって、素敵なお話でした…!
    途中で挿入されたBGM、聴いたことのない曲だと思いましたが、自作だったのですね…!ピッタリ合っていたので気が付きませんでした…!とても良かったです…!

  • 面白かった❤️
    ウチナーの美しいグルメ写真や三線演奏
    主役舞衣の行動や(テキーラショット❗️)引きずられる
    彼氏亮太のリアクション等、全てが
    楽しかったです❣️
    ところで質問です❤️
    あのボイス音源は
    ご自分でDTM等使って演奏されたのですね❤️
    私はボイスに音源を繋ぐやり方が分かりませーん💦
    ぜひ教えて下さい❤️

  • 舞衣の気持ちと亮太の気持ちが同じ高さになり今まで以上に心が繋がったラストに「良かったねぇ」と1人喜んでいます☺️それにしてもすごかったのは音楽!自作の曲なんですか😳忖度抜きにして素晴らしいクオリティでした!タップノベルクリエイターのイラストみたいに作曲提供の実装をして欲しいものですね!

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