白の世界

司(つかさ)

3話(脚本)

白の世界

司(つかさ)

今すぐ読む

白の世界
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇女の子の一人部屋
弟「おはよう」
私「・・・・・・」
弟「お・は・よ・う!!」
私「・・・・・・・・・・・・」
私「(そうか・・・ここがスタート地点)」
私「(私は戻って来た)」
弟「やっと起きた? 姉ちゃん」
私「ごめんね」
弟「え?」
私「今度こそ、終わらせるから」
私「姉ちゃん。絶対に諦めないからね」

〇白
私「(そうだ)」
私「(私は絶対に助けるんだ)」
私「(もう経験してるんだ。次は大丈夫)」
私「(・・・・・・でもダメだった)」
私「(いくらやり直しても弟を助ける事は出来なかった)」
私「(大人に弟を見守らせても、川の流れが速すぎて助けられなかった)」
私「(お祭りから離れようとしても、道中弟は車にひかれて死んだ)」
私「(耳障りな悲鳴が頭から離れない)」
私「(それならとずっと家に居ても、時間になると苦しそうな顔をして胸を押さえて死んだ)」
私「(何をしても、どこに居ても)」
私「(お祭りの日のあの時間になると弟は死んでしまう)」
私「もう・・・やめてよ」
私「(もう何回・・・何十回と繰り返して)」
私「(私はいつしか数えるのをやめていた)」
私「(・・・・・・もう何もしたくない)」
私「(・・・・・・もう何も感じたくない)」
私「(ここは、地獄だ)」

〇女の子の一人部屋
弟「○○○○○○○○」
弟「○○○○!」
私「・・・・・・・・・・・・」
私「(弟が何か話しかけてきてる。でももういい)」
私「(だって何も変わらないから・・・・・・変わらないならもういいんだ)」
私「(起き上がる気すらなくて、弟の声は全部無視して、一人ずっと横になっていた)」
弟「姉ちゃんが行かないなら僕もお祭り行かないから!」
私「(そうだ。それでいいんだ・・・・・・だから私の前にはもう来ないで欲しい)」
私「お祭りなんて大嫌い」
弟「姉ちゃんのバカっ! 姉ちゃんなんか死んじゃえばいいんだ!」
私「・・・・・・・・・・・・」
私「(ああそうだ。なんで私じゃなく弟ばかり辛い目に合わないといけないんだ)」
私「(私が死ねば良かったのに・・・・・・私が・・・死ねば・・・・・・?)」
私「あ・・・・・・」
私「(それは心の片隅にずっと思っていた事。でも弟を置いてなんて考えられなかったから)」
私「(私がその選択をする事はなかった)」
私「ごめんね・・・お姉ちゃん。もう限界だよ・・・・・・」
私「(早く楽になりたい)」
私「(これ以上弟の死ぬ姿なんて見たくない。もう限界だ)」
私「・・・・・・」
私「(さっきの言い合いの後、弟はどこかに飛び出して行ったみたいで家は静かだった)」
私「(何回目かのループで分かった)」
私「(親は祭りの手伝いで夜にならないと帰ってこない)」
私「(だからやるなら、今しかない)」
私「うっ・・・・・・はぁ・・・はぁ」
私「(考えただけで吐きそうになる)」
私「(死んだことなんてない。痛いのは嫌だ・・・・・・でも準備をしてる余裕はない)」
私「そうだ」
私「(今日はお祭り。みんな興奮して会場へ急いでる)」
私「(私の家の前も今日は車が多い。だからいつもは弟が車道に出ないように守ってた)」
私「急がないと・・・時間になったらまた戻される」

〇シックな玄関
私「はぁ・・・はぁ・・・・・・はぁ」
私「(やっと・・・玄関だ)」
私「(身体が重い・・・これからの事を考えるともっと強い吐き気がする)」
私「(私は扉にもたれかかるようにしてドアノブを回した)」

〇通学路
私「(花火まではもう時間がない・・・今ならもっとスピードを出してくれるはず)」
私「あっ」
私「(その時だった)」
私「(遠くからけたたましい音をだして、大きなトラックが近づいて来た)」
私「(私は運転手に気付かれないよう身を隠す)」
私「はぁ・・・はぁ・・・・・・」
私「(音が近づいてくるのに合わせて私の鼓動も速くなっていくのが分かった)」
私「(あと100メートル。あと50メートル・・・・・・)」
私「(あと、10メートル)」
私「(身体を道路に投げ出すような形で飛び出す。空中で驚いた顔の運転手と目が合った)」
私「ごめんなさい」
私「(そう、声にならないつぶやきをして目を瞑る)」
「姉ちゃんっ!!」
私「え?」
私「(声だけ聞こえた。これは・・・まさか)」
私「(身体が空中で何かに押された。一瞬だったけどその感覚だけはわかる)」
私「(私はその感覚があった方向に目を向けた)」
私「なんで・・・」
私「(弟が手を伸ばして、必死な顔で私を見てる)」
私「(その姿が・・・・・・一瞬で消えた)」
私「・・・・・・」
私「・・・・・・・・・いっ・・・っつ・・・」
私「はぁ、はぁ・・・っつはぁ」
私「(全身が焼けるように熱い。でもここで、意識を失うわけにはいかなかった)」
私「(意識を失ったらまたやり直しになるかもしれない。だから・・・)」
私「(私は、まだ・・・・・・)」
野次馬1「おい、君大丈夫か?」
野次馬1「早く救急車を! 誰かっ」
野次馬2「見てあれ・・・・・・あれじゃあ、もう」
私「(耳障りな音が響く・・・・・・気持ち悪い)」
野次馬1「なぁ君・・・・・・あれは君のお友達かい?」
野次馬1「それとも・・・ご家族かい?」
私「(家族・・・・・・カゾク・・・)」
私「(顔を上げた先、弟の身体が地面に叩き付けられていた。周りが真っ赤に染まって身体の向きがどこかおかしい)」
私「はぁ・・・・・・はぁ、はぁ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
私「なんで・・・よ」
私「なんで私じゃないのよっ!・・・・・・」
私「お願い・・・・・・だから・・・」
私「頼むから・・・・・・私から弟を奪わないでよっ!」
私「どうしてっ! どうしてよっ!!」
私「私がっ、何をしたのよ!!」
野次馬1「おい、君っ!!」
野次馬1「・・・・・・駄目だ錯乱してる。誰か押さえて!」
私「触るなっ!! ああああああああああああ」
私「(身体の自由がきかない)」
私「(意識が段々と保てなくなる)」
私「(嫌だ)」
私「(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ)」
私「(私は・・・もう死にたい)」
私「(ごめんね・・・・・・痛かったよね。苦しかったよね)」
私「(私も今度はそっちに行くからね)」
私「(必ず行くから)」
私「(私の意識はそこで途絶えた)」

〇黒
私「(・・・・・・)」
私「・・・・・・・・・・・・ん?」
私「(ここは・・・・・・どこだろう)」
私「(あの白い世界じゃ・・・ない)」
私「(周りは真っ暗だし、身体も動かない)」
私「もしかして、私も死んだのかな?」
弟「そんなわけないでしょ。姉ちゃん」
私「あっ・・・・・・」
私「(涙があふれてくる)」
私「(どうしてだろう。何度も弟の死は経験したのに)」
私「(今、目の前で弟が生きていてくれてる)」
私「(それだけて嬉しくてたまらない)」
弟「姉ちゃん。僕よりも子供みたいだね」
弟「そんなに辛かったの?」
私「うん」
弟「そんなに僕が死ぬのが、怖い?」
私「・・・え?・・・・・・あんた。どう、して」
弟「姉ちゃん。さっき死んじゃおうとしてたでしょ」
弟「僕がいない間にさ」
私「どういう・・・事。なんであんたがそれを?」
弟「なんでかわからないけど。姉ちゃんと離れた後、頭の中で誰かに言われたんだ」
弟「姉ちゃんが危ないって。このままだと姉ちゃんが死んじゃうって」
弟「その声に姉ちゃんはどこにいるのかって聞いたら場所を教えてくれた。でもその時に言われたよ」
弟「『今日お前は死ぬ』『姉はお前の死をもう何度も見ていて、だから死にたがってる』って」
弟「僕はあの日死んじゃう運命なんだね」
弟「姉ちゃんも僕を必死に助けようとしてくれてたんでしょ」
私「・・・・・・・・・・・・」
弟「僕は姉ちゃんに死んで欲しくなかった。だから力いっぱい走った。そしたら姉ちゃんが車の前に飛び出して来て」
弟「夢中だったんだ・・・」
私「そんな・・・・・・」
弟「何とか間に合ったよね・・・・・・もうあんな事は止めてよ姉ちゃん」
私「何言ってるの? あんたは死んじゃうんだよ・・・・・・どうして私じゃなくてあんたが犠牲にならないといけないの?」
私「私は嫌なの。あんたがいない世界なんて・・・耐えられないよ」
私「それが運命だとしても、逃れられないとしても認めたくない」
弟「姉ちゃん・・・・・・」
私「あんただってホントは姉ちゃんに助けて欲しいんでしょ」
私「だから言ってよ『僕を助けて』って。そうしたら姉ちゃんまた頑張るから」
私「何度だって頑張れるからさ」
弟「・・・・・・・・・・・・」
弟「姉ちゃん苦しいよね。ずっと苦しそうだよ」
私「それは・・・・・・・・・」
弟「僕が、そうさせてるんでしょ?」
私「そんなことないよ」
私「そんなこと・・・ない」
弟「わかるよ。姉ちゃん嘘つくの下手だもん。僕嘘つくのなら姉ちゃんに勝てる気がするよ」
弟「だからさ。もういいよ大丈夫」
弟「もう僕を助けないで」
私「どうして・・・? ねぇどうしてよ?」
弟「僕は姉ちゃんとお祭りに行くのを楽しみにしてたんだ」
弟「姉ちゃんと一緒に花火を見るのを楽しみにしてた」
弟「だから・・・・・・最後は笑って姉ちゃんとお別れしたい」
弟「もう・・・姉ちゃんの辛い顔なんて見たくないから」
私「そんな・・・・・・うっ」
私「(また・・・・・・頭がぼーっとしてくる)」
私「(これは・・・予兆だ)」
私「(また繰り返す予兆だ・・・・・・)」
私「約束・・・なんて出来ない」
弟「分かってる・・・・・・姉ちゃんってば頑固だからね」
弟「前腕相撲やったときもさ。ずっと姉ちゃん負けを認めなかったじゃん」
私「そうだよ・・・負けてなんてやらないんだ」
弟「でも、今度は嘘でもいいから」
私「え?」
弟「下手くそな嘘でもいいからさ。次は僕に勝たせてよ」
私「──ちょっとまっ」
弟「よろしくね」
私「(私の意識はそこでまた途絶えた)」

次のエピソード:4話

コメント

  • 如何なる動きをしても変えられない結末とループし続けるその1日、主人公の苦悩と消耗たるや……
    突然現れた弟くん、そして彼の頭の中の声とは、とても興味をそそられる回でした!

成分キーワード

ページTOPへ