2.カイルの目的(脚本)
〇小さい会議室
ここはアオイちゃん専用の小学校。
生徒がアオイしか居ないので自動的に専用になりました。
ここでは教員免許も持っている地質研究員のジョージ先生にお勉強を教えて貰っています。
ジョージはこの島で自分の研究をしながら、小学校の先生というお仕事をしています。
ジョージ「いいかい、アオイちゃん。 光というものは、何時いかなる時も速度が変わらないんだ」
アオイ「ふんふん」
ジョージ「でもね、光というものは観測者の場所によって進む時間が変わっているように見えるんだ」
ジョージ「例えば、乗り物に乗ったまま、乗り物の中を1m照らす時間が1秒だとする」
ジョージ「この時、乗り物は光と同じ、毎秒1m進んでいるとするよ」
ジョージ「同時に、乗り物の窓から光が1m先に進んでいる様子を見ている人がいるとする」
ジョージ「そうすると外から見てる人から見て光が 始まりの地点から1m先に到達するまで 0.5秒かかるんだ」
アオイ「うん?うん」
アオイちゃんの頭には『1mって何海里だろう』という疑問が浮かんでいました。
ジョージ「しかし、ここでさっき言った光の速度は何時いかなる時も変わらないという、 「光速度不変の原理」に従うと・・・」
アオイ「したがうと?」
ジョージ「外から見てる人から見て、本当は1秒経過していないといけないんだ」
アオイ「うん?」
ジョージ「でも、乗り物の中に居る人からすると、光はまだ1mの半分しか進んでないよね」
ジョージ「この時、乗り物の中にいる人の流れる時間と、外から見ている人の見ている時間の流れに違いが起きたんだ!」
アオイ「へぇ〜っ!」
ジョージ「この結果なら0.5秒というとても短い時間の差だけ、だけど・・・」
ジョージ「これを本物の光の速度に置き換えて、実際に光と同じ速度で移動する乗り物に乗って行うと・・・」
アオイ「おこなうと?」
ジョージ「時間の差はとても大きいものになって、乗り物に乗っていた人は一瞬で、他の人たちの長い時間を経過させることが出来るんだ」
アオイ「そーなんだ!」
ジョージ「光の速度で人が移動することが、擬似的に未来に行く方法──」
ジョージ「言わばタイムスリップになりうるかもしれない・・・」
アオイ「たいむすりっぷ!」
ジョージ「だが過去は違う。無理だ。 過ぎ去りし時間に戻るなんて・・・ そんなこと、出来るとは思えない」
ジョージ「分かったかい?アオイちゃん」
アオイ「でもそれって、あなたのかんそうですよね?」
ジョージ「う、うーん・・・ 確かに現時点で否定説が思いついてないから、感想と言えば感想かな・・・」
アオイちゃんは少し意地悪な指摘をしていました。
カイル(なんでこの人、 小学2年生に特殊相対性理論を話して いるんだろう・・・)
それは、登校してきたアオイちゃんが、カイルが未来から来たことを否定する
ジョージに対し──
『なんかそういうデータとかあるんですか?』と答えたからです
カイル(ナレーションに回答された・・・)
アオイ「カイルは未来から来たって言ってるよ? これって過去に戻ったってことだよね」
ジョージ「はは・・・ アオイちゃんは本当に面白い子だね その子犬が君にどうやってそれを伝えるんだい?」
アオイ「てれぱしー!」
ジョージ「なるほど・・・なるほど?」
アオイ「ジョージ先生には聞こえないの?」
ジョージ「いやぁー全然聞こえないな・・・ 今なんと言っているんだい?」
アオイ「何も言ってない!」
カイル「アオイちゃん・・・」
ジョージ「ああ、その・・・カイルくんはどうして未来から来たのか教えてくれないか?」
アオイ「そうだ!私も聞きたい! 教えてカイル!」
カイル「え、え〜っと・・・」
カイルは分かりやすく説明するか、そのまま話すか迷っていました。
カイル(・・・とりあえず、かいつまんで話すか)
カイル「えーとね・・・僕は未来から、ある現象を未然に防ぎに来たんだ」
アオイ「ある現象?」
カイル「海面の異常な上昇現象さ。 標高の低い土地の殆どが沈み、島国は住める土地がなくなり、残った土地で人々が争う・・・」
カイル「その原因となる理由が、この島にあると突き止めたんだ。それで、過去に戻った矢先、海の上に飛んでしまってね」
アオイ「海面上昇・・・?」
ジョージ「・・・! 今、海面上昇と言ったかね?」
アオイ「カイルがそう言ってる。 でもよく分かんない・・・ 止めに来たんだって」
ジョージ(なんと・・・ 私の研究テーマそのものじゃないか!)
ジョージは海面上昇のワードがアオイちゃんの口から出たことに驚きを隠せませんでした。
ジョージ「そ、それでカイルくんはどうやって止めると?何か言っているのかい?」
アオイ「だって、カイル。 どうやって止めるの?」
カイル「具体的には分からない・・・ でも、ある超常現象が、この島で起こるんだ」
カイル「それを未然に防ぐことが出来れば、抑えられるかもしれない・・・」
アオイ「ちょーじょー現象・・・?」
ジョージ「超常現象・・・か。 一つ、思い当たる節があるな」
アオイ「なーに?」
ジョージ「この島に昔からあるセイレーン伝説だよ」
アオイ「せいれーんでんせつ?」
ジョージ「そう。ここには昔セイレーンと呼ばれる絶世の美女が住んでいて、船乗りが彼女に惹かれてここに住み着いたという伝承があるんだ」
ジョージ「なんでも、海に愛されたセイレーンは美しい歌声を持ち、海を震わせる程素敵なものだったと」
ジョージ「しかもその歌声は人々の心を奪い、吸い寄せ、周りを見えなくしてしまうとか・・・」
カイル(──っ!)
カイルは何かに気づいたようで、少し焦った様子を見せていました。
カイル「それ、すごく怪しい・・・ なんでそんな伝説が・・・」
アオイ「んん?」
ジョージ「・・・しかし、アオイちゃん。 なぜ私が海面上昇現象について調べていると知っているんだい?」
アオイ「知らないよ?カイルが言ってるの!」
ジョージ「・・・」
ジョージ(当てずっぽうにしては的確すぎるな 本当にこの子はこの、カイルくんから話を聞いているのか・・・?)
ジョージはカイルが未来から来たこと、アオイちゃんがカイルの声を聴けることそれぞれ信じかけていました。
カイル(・・・引き寄せる力、か なにか関係があるかもしれない)
ジョージとカイルが互いに熟考している中、アオイちゃんが何かを思い出しました。
アオイ「・・・そういえば、私のお母さんがね お水の中で綺麗な歌を歌えるんだよ!」
ジョージ「水の・・・中で?」
アオイちゃんの言葉に、ジョージは学者としての好奇心を感じました。
ジョージ「それはとても興味深いな・・・ 今日の授業は終わったし、後で君のお母さんと話をしてもいいかな?」
アオイ「いーよ!」
こうしてジョージはアオイちゃんのお母さんから話を聞くことを約束しました。
〜次に続く〜
カイル(話の展開、急じゃない?)
うーむ、光の速さの話をしていたと思っていたら
(これも「?」ですが)
話も光の速さに急加速!
はてさて
どうなるの?