エピソード40(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
戸川はお茶を飲んでおり、雅美と博史はまだ何か言い合っていた。
紅音が戻ってくると、雅美と博史は各々の意見を言い始めた。
真田雅美「紅音、お母さんはね、やっぱり受け取らない方がいいと思うの」
真田博史「父さんはな、素直に受け取った方が良いと思うんだ」
真田博史「疑わず人を信じる実直さが見られているんだ、きっと」
紅音は二人を無視して戸川の前に座る。
戸川仁「決まりましたか」
真田紅音「はい」
戸川仁「最終選考に進んでいただけますか」
紅音は深く、深呼吸をする。
真田紅音「落合さんをクビにしないでください」
戸川仁「え」
真田雅美「だれ?」
真田紅音「戸川さんの言うことは、すべて嘘の匂いがします」
真田紅音「この家に入ってきたときから」
真田紅音「いえ、エリートピアの選考が始まったときから感じていました」
戸川仁「すべてが嘘くさいとは、よく言われますよ」
真田紅音「いま、この話自体が選考だとして、どうすれば通るかは僕にはわかりません」
真田紅音「僕は平凡だから、普通の人ならわかるようなことも分からないんです」
戸川仁「それで、どうして落合のことを助けたいんですか?」
真田紅音「ただ、自分がやったことを嘘にしたくないんです」
真田紅音「ここで落合さんのことを考えずに、選考を進むことだけ考えたら──」
真田紅音「ババ抜きで僕がババを引いたことが嘘になってしまう」
真田紅音「落合さんを助けたいと思ったことが嘘になってしまう」
真田紅音「それが嫌なんです」
真田雅美「え、あんたあれ、わざと負けたの」
真田博史「なんでそんなことをするんだ」
真田紅音「父さんと母さんは少し黙ってて。 これは、僕が自分で決めることなんだ」
真田博史「・・・・・・」
戸川仁「落合がクビにならなければ」
戸川仁「あなたは自分が選考を進めなくても、それでも構わないんですか」
真田紅音「はい、五百万円も選考も、戸川さんの言うとおりにします」
真田紅音「だから、落合さんを救いたいんです」
真田紅音「それだけが、僕がいま一番望むことなんです」
戸川仁「ふむ」
真田紅音「でも、あなたは人事の人間じゃないでしょう」
真田紅音「そんなことができるのか、わかりませんけど」
戸川仁「え」
真田紅音「さっき兄があなたにまだ人事をやっていたのかときいて、はいと答えたとき」
真田紅音「はっきりと戸川さんが嘘をついたとわかりました」
真田紅音「あなた、エリートピアの人事じゃないんですね」
真田紅音「だから、全部から嘘の匂いがする」
戸川仁「・・・・・・」
戸川仁「フッ・・・ハハハハ」
「・・・・・・」
戸川仁「そうですか、人事じゃないことまでわかるんですね」
戸川仁「すごいなー、いや、まいりました」
真田紅音「あなたは何者なんですか」
戸川仁「ただの役者ですよ」
戸川仁「売れない役者やってて、どうにも生活に困ってたときに、先代に拾ってもらったんです」
戸川仁「選考会のMCをやってみないかって」
戸川仁「なるべく名が知れてなくて、実力のある人がよかったみたいで」
戸川仁「いやー、喜んでいいのか微妙な話ですよ」
真田紅音「だから瑚白とも」
戸川仁「ええ、まだ小さいころからよく遊び相手をさせられてました」
戸川仁「まさかエリートピアの選考を受けてたなんて、驚きましたよ」
真田雅美「あ、あの」
戸川仁「はい?」
真田雅美「結局、紅音は最終選考に進めるんでしょうか」
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