1.ゲームの始まり(脚本)
〇森の中
ここは素敵なRPGゲームの世界
『マジックファンタジア』
自由度の高い操作性、仲間との熱い友情、魅力的なストーリー、感動的なエンディング・・・
その全てを支えているのはこの私・・・最高で理想のヒロイン、ミーナよ!
私はこのゲームで最も美しく、全てのプレイヤーに好かれる存在・・・。
そうあれと私はこの世界の創造主(ゲームクリエイター)に生み出されたの。
さあ、このゲームをプレイする新しいプレイヤーが来たみたいね!
私の類まれなる魅力でメロメロに──
・・・
えぇ〜・・・
お、落ち着くのよ私・・・
このプレイヤーはただ、キャラメイクをふざけただけに違いないわ
どんなプレイヤーでも私の魅力で落としてやるんだから!
ミーナ「ようこそ! ここは『マジックファンタジア』。 剣と魔法の素晴らしい世界よ」
ミーナ「あなたは私たちの神、イリア様のお導きにより、この世界を守護するナイトとして召喚されたのよ」
ミーナ「私はナイト様のガイドと護衛を神様から授かったミーナ・シュナイダーよ」
ミーナ「あ・・・貴方の旅にご同行させて頂くわこれからどうぞ、よろしくねっ!」
プレイヤー「・・・」
ミーナ「・・・」
ミーナ「・・・」
・・・この人、どうして会話中に攻撃してくるんだろう・・・
ゲームを始めたら普通、話を聞くわよね・・・?ましてやこんなにも魅力的な女の子との会話イベントなのに・・・
ミーナ「あ、ナイト様っ!まずは教会都市にある神殿へと向かいましょうっ!」
〇ファンタジー世界
プレイヤー「・・・」
や、やっと追いついた・・・
ミーナ「ナイト様、あそこに見えるのが教会都市国家、『バーチカ』よ」
ミーナ「バーチカの教皇様はイリア様のお告げを聞くことが出来て、危険を未然に防ぐことができるのよ」
ミーナ「ば、バーチカは現在、魔物の襲撃に備えてレイク魔道橋を消しているみたいね」
ミーナ「中に入る方法は、バーチカの兵士に聞いてみるのが良さそうね。城の正面に向かいましょう!」
・・・このゲームは泳げないですけど
お、怒ってる・・・?
ミーナ「ちょ、そっちは正面じゃないわよ!」
〇ファンタジー世界
け、結局凄い時間が経っちゃった・・・
次のイベントは昼のうちに起きる予定だったのに・・・
っていうかチュートリアル中にそんな探索したって何も出てこないわよ!
兵士「・・・!これはミーナ殿、貴方様がこちらへいらしたということは・・・」
ミーナ「ええ、新しいナイト様がいらっしゃったの。教皇様の予言通りにね」
ブンブン──
兵士「・・・それは心強い! 教皇様もきっと心待ちにして居られるはずです!」
兵士「ただいま転送門をお開き致します。 しばらくお待ちを──」
「──っ!」
兵士「て、敵襲です!ミーナ様、ナイト様、ご避難を!」
きたきたっ!この最初の戦闘イベント!
私の見せ場なのよね!
最初の戦闘で私の可憐な動きを見れば、あの変なプレイヤーも私も釘付けになるに違いない・・・!
ミーナ「いいえ、それじゃあなたもバーチカの市民も危険だわ。私とナイト様で食い止める!」
ミーナ「さあ行くわよ、ナイトさ──」
ミーナ「ま・・・?」
ミーナ「・・・」
ええ〜っ?まだ戦闘の操作説明してないのにもう倒しちゃったの・・・?
兵士「お見事な戦いでした・・・! 流石ナイト様とミーナ様ですね!」
ミーナ「・・・ええ、ナイト様の力と私の力があればあれくらいどうってことないわ!」
実際は私、何もしてないけど・・・
ここではこのセリフ、言わなきゃいけないのよね・・・
兵士「今回の襲撃・・・教皇様に報告に行かねばならないのですが、いつまた魔物が襲ってくるか分かりません」
兵士「私はここの警備を続けるので、お2人に教皇様へのご報告をお任せしてもよろしいでしょうか?」
ミーナ「ええ、もちろんよ。 さあナイト様。転送門を通って教皇様の元へ向かいましょう」
何はともあれ、教会都市に入るまでは進みそうね・・・
一時はどうなることかと・・・
だから泳げないんだって・・・
ミーナの苦労はまだまだ続く──
ナイトが何度も水に入るところが、「今度はいつくるか」とだんだんクセになる面白さですね。これからもどんどん変な動きをしてミーナと読者を困惑させて翻弄してほしいです。
私自身、ゲームのチュートリアルで結構な奇行をやってしまうタイプなので……ミーナさん本当にゴメンナサイという気持ちで読んでいましたww