黒い人

おけの

黒い人の真実(脚本)

黒い人

おけの

今すぐ読む

黒い人
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇田舎の病院の病室
  う・・・ん?
静子「いつの間に、ベッドで寝てたんだろう」
  ナースステーションから
  戻って来た記憶はない。
静子「もしかして、うたた寝しちゃって 看護師さんが運んでくれたのかな」
  辺りを見渡すと、黒い人が
  まだ苦しんで呻いている。
黒い人「ゔ・・・ゔ・・・」
黒い人「い・・・いぃ・・・」
静子「私のベッドの前まで来てる── ここから抜けなきゃ」
静子「あの女の子も、怖い人って言ってたから 余計に怖いな」

〇大きい病院の廊下
静子「女の子が言っていた外の椅子は たぶん、庭のベンチのことだよね。 とりあえずそこに行こう」
静子「それにしても、どうして黒い人は 私の部屋だけにいるんだろう」
  廊下には、以前患者だったであろう
  幽霊が点滴を持って歩いていたりするし、
  注射器を持った
  看護師さんの幽霊だっている。
静子「でも、みんな黒くない」
  だとすると、私の部屋は特別に
  何かあったのだろうか。
  変な噂でも立ったら、
  大変だし、絶対に喋ってくれないだろう。
静子「気になるけど、看護師さん達に聞いても 無駄なんだろうな」
看護師A「あの子のいる301号室行くの、怖いのよね」
  通りがかりに、聞こえて来た。
  私の前を歩いている、看護師さんだ。
静子(誰のことを言ってるんだろう)
  気になって、聞き耳を立てた。
看護師A「どうもあの子、見えるみたいなのよ」
看護師A「誰もいないのに、 隣に誰かいるかのように喋ってるんだから」
静子(もしかして、私のことなんだろうか── 幽霊見えてるし・・・)
看護師B「それくらいならまだマシよ。 私なんか、昔の火事のこと 聞かれたんだから。 ヒヤッとしたわ」
静子(え、火事? そんなの知らない・・・)
看護師A「え、火事?」
看護師B「あぁ、あなた・・・まだいなかったわね。 ここだけの話なんだけど」
  三拍程おいて、声が小さくなった。
看護師B「いかにも怖そうな男の人が入院してきてね、 煙草を吸ってたのよ」
看護師B「当時は怖くて、止めるように 強く言える人がいなかったの」
看護師B「私も怖くて言えなかったわよ。 ちょっとでも気に食わなかったら、 怒鳴り散らすんだから」
看護師B「それでその男がね、 寝煙草して──火事を起こしたのよ」
看護師B「それで一部屋焼けちゃったの。 それも、その男以外に入院してた患者さん 三人いてね・・・」
看護師A「まさか!!」
看護師B「しっ! 声が大きいわよ」
看護師B「そのまさかよ。 可哀想に」
看護師B「あんな男さえいなけりゃ こんなことにはならなかったんだから。 運が悪いわよね」
  はっとした。
  あの、黒い人・・・
  この話の人かもしれない。
  そんなおぞましい事件があったところに
  入れるなんて、酷いわ。
  これは後で看護婦さんに言って、
  絶対部屋を変えてもらわなきゃ。
  私は看護師さんたちの話を
  聞いていなかったような顔をして、
  外庭に出た。

次のエピソード:知らなければならないこと

ページTOPへ