王様の登場(脚本)
〇黒背景
「ある一言をきっかけに私の人生は狂い、宮殿の華やかな場所から薄暗い牢に居場所が変わった」
「自身に残された余命もあと僅かと迫っている」
〇ヨーロッパの街並み
2ヶ月前
ルグレー王「いやぁ〜皆ワシの時代を先行くファッションに釘づけじゃな!」
パウロ「素晴らしい服ですよ!王様!」
ルグレー王「そうじゃろう、そうじゃろう!」
ヨハン•アンデルセン「・・・・・・──」
ルグレー王「民たちへのお披露目もこの辺にして、宮殿に戻ろうぞ!」
パウロ「はい!」
子供 1「あ〜王様が裸だ!」
町人「や、やめなさい!」
子供 1「ねぇ!ママ何で王様は裸なの?」
町人「えっと、その、、、」
ルグレー王「そこの少年よ!ワシが何だって?」
町人「すいません、すいません」
子供 1「王様は裸だよ!」
パウロ「・・・(言っちゃった)」
ルグレー王「な、な、な、ば、馬鹿な!」
ルグレー王「どう言う事だ!パウロ!ヨハン!」
パウロ「ヨハンが言いたい事があるそうです」
ルグレー王「言ってみろ!」
ヨハン•アンデルセン「えっ?(俺に振りやがったな、パウロめ!)」
ルグレー王「ヨハン!さっさと言え!」
ヨハン•アンデルセン「(この場に適した言葉はこれしかない)」
ヨハン•アンデルセン「王様!私には、見えます!」
ルグレー王「・・・・・・──」
〇牢獄
「その後パウロや町人が口を揃えて服は見えていませんでしたと言い始め私一人が王様に嘘をついた為、反逆者として牢屋に入れられた」
ネクター「ヨハン様──王様がお呼びです」
ヨハン•アンデルセン「とうとう最後の日か、よし参ろう」
〇謁見の間
ネクター「王様お連れ致しました──」
ルグレー王「うむ!下がっておれ!」
ネクター「はっ!」
ルグレー王「ヨハンよ、こちらへ」
ヨハン•アンデルセン「・・・──」
ルグレー王「覚悟は出来ておるか?」
ヨハン•アンデルセン「はい・・・」
ルグレー王「本日そなたの──を執り行う」
ヨハン•アンデルセン「はい、私の処刑ならいつで──んっ?」
ヨハン•アンデルセン「王様、今なんと?」
ルグレー王「ちゃんと聞け!本日そなたの誕生日会を行う!」
ヨハン•アンデルセン「──は?」
パウロ「テッテレ〜!せ〜の!」
「ドッキリ!!大成功〜〜!」
ヨハン•アンデルセン「えっ?ドッキリ?」
パウロ「ビックリした?ヨハン?」
ルグレー王「2ヶ月をかけたドッキリどうだった?」
パウロ「処刑されると思った?」
ルグレー王「グフフッ、あの時のヨハンの真面目な顔といったら、思い返しただけで笑いが止まらん!」
パウロ「実は王様、一昨日買った透明のマントを着用してるらしんだけど俺には見えないんだ、ヨハンは見える?ププッ」
ルグレー王「どうじゃ?みえるか?高貴なマントじゃろ?欲しくてもやらんぞ!」
ルグレー王「ヨハン?」
ヨハン•アンデルセン「・・・──」
ルグレー王「あれ?どうした?ヨハン?」
ヨハン•アンデルセン「ふざけるな!」
ルグレー王「ヨハン?」
パウロ「しっかりしろ!ヨハン!」
〇白
頭の血管が切れた音を最後に私の意識は天井に吸い込まれた。ふと思う。王様は趣味で裸になっているのでは?と──
そして、透明のマントは見える訳がない。もし同じ場面がもう一度あるのなら私は言うだろう
──私には──と
〇東京全景
〇祈祷場
山部 純子「どうですか?何か見えました?」
「俺には見えるぜ!霊体がな!」
山部 純子「ほ、本当に見えるんですか?」
高津 和宏「ああ!バッチリ見えてるぜ!」
高津 和宏「除霊するかい?するなら金貰うぜ」
山部 純子「その、何と言うか──」
高津 宅浪「分かりますよ、その気持ち。 霊体なんて言われても嘘臭いですよね?」
高津 和宏「兄貴!勝手に話しに入ってくんなよ」
高津 宅浪「宜しければ見てみます?」
山部 純子「出来るんですか?」
高津 宅浪「もちろん!」
高津 和宏「マジかよ!霊体なんて見ない方がいいぜ」
高津 宅浪「さぁ、手を重ねて」
山部 純子「はい・・・」
高津 宅浪「徐々に見えてきますよ──」
山部 純子「・・・──」
山部 純子「きゃぁぁぁ!」
高津 宅浪「ね!見えたでしょ?」
山部 純子「はい!見えました! あの霊が私に取り憑いているのですね?」
高津 和宏「おう!だから早く除霊しようぜ!」
山部 純子「分かりました、よろしくお願いします!」
高津 和宏「よっしゃ!」
高津 和宏「テイッ!真の体を持たぬ霊体よ直ちに眠れ!」
高津 和宏「ロエキヨイタイレ!!ロエキヨイタイレ!!」
高津 和宏「トリャァァァ!」
高津 和宏「──除霊完了!」
高津 和宏「これで二度とアンタに悪さはしねぇよ!」
高津 宅浪「どうです?体が軽くなってません?」
山部 純子「はい!スッキリした気分です!」
高津 宅浪「それは良かった!」
高津 和宏「霊障に困った人がいれば連れて来な! 除霊してやるよ」
高津 和宏「・・・・・・うまくいったぜ」
高津 宅浪「だな、痩せ紫!いつも芝居に付き合ってくれてありがとう!」
痩せ紫「お互い様です!私はまだ除霊されたくないので」
そう、除霊はインチキである。兄の人に霊体を見せれる能力で相手を怖がらせ、除霊師である弟、和宏が除霊したフリをする仕組みだ
高津 和宏「なぁ!兄貴、報酬の金は?」
高津 宅浪「貰ったよ」
高津 和宏「ウヒョー!久しぶりの大金じゃねぇか!」
高津 和宏「なら、遠慮なく──」
高津 和宏「痛ッ!」
高津 宅浪「お前の取り分はこっちだ」
高津 和宏「はぁぁ?」
高津 和宏「ずりぃぞ!兄貴!」
高津 宅浪「お前に預けたら全てギャンブルに消える、残りは俺が管理する」
高津 和宏「でも、流石にこれは──」
高津 宅浪「そうか?なら、もう少し追加でやるよ!」
高津 宅浪「お前はまだ未熟だからな、それで十分だ」
高津 和宏「──」
〇古風な和室(小物無し)
高津 和宏「クソッ、ほとんど金もってかれたぜ」
高津 和宏「イラつくからお前を本当に除霊してやろうか!」
痩せ紫「勘弁して下さい!」
高津 和宏「ケッ!」
痩せ紫「あの、和宏様の取り分が少ないのは何故です?」
高津 和宏「・・・」
高津 和宏「霊体を見せる方が霊力の繊細さが 必要で難しいんだ」
高津 和宏「──それに俺はだな・・・」
高津 和宏「んっ?」
〇広い玄関
高津 和宏「新たな客か?」
高津 和宏「そんな、せかすなよ!」
高津 和宏「はいよ!今開けるぞ!」
〇屋敷の門
高津 和宏「いらっしゃいませ!」
高津 和宏「・・・・・・・」
高津 和宏「チッ、イタズラかよ!」
〇広い玄関
高津 和宏「ふざけやがって」
高津 和宏「ふんっ、どうせまたイタズラだろ」
高津 和宏「しつけぇな」
高津 和宏「あん?」
〇屋敷の門
高津 和宏「しつけぇんだよ!クソが!」
高津 和宏「誰もいねぇわ・・・」
「お〜い!」
高津 和宏「誰だ!」
高津 和宏「誰かいるのか?」
高津 和宏「空耳か?」
「おーい!」
高津 和宏「うるせぇな、一体なんだ──」
ルグレー王「久しぶり!!」
ルグレー王「数百年ぶりの──」
ルグレー王「痛ッ!」
高津 和宏「テメェ不審者だろ!」
ルグレー王「ちょっ、ま、まって──」
高津 和宏「うるせぇ!」
高津 和宏「思い知ったか!──さてと、被害者が出る前に警察呼ぶか」
〇屋敷の門
10分後
「・・・」
「ん?」
警察官 A「ぶざけるのもいい加減にしないと逮捕するぞ!」
高津 和宏「なんで見えねぇんだよ!そこに倒れてるだろ!」
警察官 A「誰も倒れてなんかいない!」
警察官 A「君まさか!薬を!」
高津 和宏「してねぇよ!」
高津 宅浪「どうかしました?お巡りさん」
警察官 A「彼が不審者を捕まえたと言うので来てみたら、誰もいないんです!」
高津 和宏「あんっ?居るだろそこ!」
高津 宅浪「へっ?」
高津 宅浪「お、おい、和宏──これは霊体だ・・」
高津 和宏「何っ?」
〇祈祷場
高津 宅浪「お前は、霊体と人間の区別もつかないのか!」
高津 和宏「すまねぇ兄貴、霊体ってバケモンみてぇなヤツしか見た事なくてよ──」
高津 宅浪「──まぁ、人間の形してる方が稀なんだが・・」
「あの〜」
高津 和宏「何だよ?」
ルグレー王「久しぶりじゃの!元気そうで、何より!」
「・・・・・・・・・」
ルグレー王「覚えておるか?ワシじゃよ!久しぶりに会えて嬉しいぞ、ヨハンとパウロ!」
高津 和宏「誰だ?」
高津 宅浪「失礼ですが記憶にないのですが」
ルグレー王「前世、お主達はワシの側近だったのじゃ」
高津 和宏「うーん、そんな事、突然言われてもな」
痩せ紫「あっ!王様!!」
ルグレー王「誰じゃ?お主!」
痩せ紫「ネクターでございます!王様!」
ルグレー王「何ぃぃ!」
痩せ紫「うっぐ、ひっく、宮殿を最後までお守り出来なくて申し訳ありませんでした」
ルグレー王「泣くなネクター。もう済んだ事じゃ」
痩せ紫「ありがとうございます──」
「・・・──」
高津 宅浪「なるほど──」
高津 宅浪「まとめると私はパウロで和宏はヨハンの生まれ変わり、貴方の部下だったが当時の記憶がない」
高津 宅浪「痩せ紫は自身と王様の事だけ記憶にある」
高津 和宏「そして、痩せ紫はかつて俺と兄貴の部下だったと──今とあまり変わらねぇな」
高津 宅浪「それで、王様。何か要件があって来たのでは?」
ルグレー王「・・・──実は」
高津 和宏「さっさと言えよ!」
高津 宅浪「和宏!」
ルグレー王「いいのじゃ、気にしとらんぞ」
高津 和宏「心が広いぜ!おっさん」
ルグレー王「要件は、亡くなった妻と娘を探して欲しい。宮殿が攻められてる最中に離れ離れになってのぅ」
高津 和宏「あっちの世界で会えなかったのか?」
ルグレー王(そう、いくら待っても妻と娘に会えていないのじゃ、だからお主達に探すのを手伝って欲しい)
高津 宅浪「・・・もしかしたら悪い霊体になっている可能性もあります」
ルグレー王「それでもいいのじゃ・・・」
高津 和宏「何て悲しい話しなんだ!おっさん、俺が絶対に奥さんと娘に合わせてやるからな!」
高津 宅浪「私は助言はするが、手は貸さないぞ」
高津 和宏「俺一人でやってやるよ!」
ルグレー王「そうか、そうか!えっと・・・」
高津 宅浪「現在の名前でお呼び下さい王様」
ルグレー王「分かった!では、和宏、宅浪よろしく頼む!」
ルグレー王「ところで、ワシのこの高貴な服をどう思う?」
(・・・・・・・・・・・(は?))
〇古風な和室(小物無し)
痩せ紫「王様が突然現れたのには驚きましたよ!」
高津 和宏「裸のおっさんな!」
痩せ紫「そういうえば今朝、和宏様が言いかけた事を聞き損ねていたのですが、教えて下さい」
高津 和宏「俺はな──」
痩せ紫「俺は?」
高津 和宏「女の霊体が見えねぇんだよ!」
痩せ紫「・・・」
痩せ紫「依頼、引き受けても良かったんですか?」
高津 和宏「知らねぇ!」
ルグレー王「のう!このマントどう思う!」
「うわ!」
高津 和宏((しつけぇな!))
高津 和宏「マントなんてな──」
ルグレー王「返答次第では全財産を隠した場所を教えるぞ!」
高津 和宏「何っ!」
高津 和宏「(思考中)」
〇白
おっさん!俺には見えるぜ!
謎すぎる王様のキャラが気になります。本当にちょっと(かなり)変なのか、それとも実は切れ者なのか… 兄弟で性格や能力が違うのも対称的で面白いですね。
こんばんは!
転生物はたくさん見ますが前世で出会っていたキャラクターと現世で会うというのは新鮮でした!
裸の王様はお茶目で良いキャラだし、除霊師がいかにもインチキ臭いところも笑いました👍
長編コン作品を色々読んでるんですが、主人公っぽく前向きで正統派な主人公が多い中でこちらのキャラは不良タイプなのが新鮮でした。
王様も憎めないキャラでいいですね~。