Xヒーロー

語り部

第10話 ルックバック(脚本)

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〇城の会議室
  2021年 青森県 三志和市 斎王家 客間
エンチャント魔導法士「ワシの過去を話す?それを聞いてなんになるんだ、若いの」
斎王幽羅「貴方は俺達を知り尽くしているけど俺達は貴方を『知らない』。エンチャントさん、俺はね···」
斎王幽羅「『貴方を仲間に引き入れたいんだ』」
  皆が一様に驚愕した。確かに自分達の過去を知り尽くしているこの老人は手元に置いておいた方がいい、そう考えてはいた
  しかしそれはあくまで『誰かに監視してもらう』という考えであって『仲間にする』という考えではなかった
  皆の顔が曇り始めていたその頃、エンチャントはなにか懐かしさを感じていたのか、穏やかな表情になっていた
エンチャント魔導法士「引き入れる?ワシをか?冗談にしては笑えないな、お笑いのセンスがないんじゃないか?」
斎王幽羅「エンチャントさん、俺は本気だ。本気で貴方を仲間に引き入れたいんだ」
キング「待て待て待て!こんなジジイ仲間にしてどうすんだ!!?」
斎王幽羅「キング、皆よく聞いて。エンチャントさんは『アメリカ行きの輸送船に積まれた赤ん坊の行先を知っている』」
鸞「むちゃくちゃ言うな斎王、確かに俺達の事は底の底まで知り尽くしているが流石にそこまでは分からないはずだ」
斎王幽羅「いや、知ってるよ。アメリカ行きの輸送船は紅色派が関わっている、そしてエンチャントさんはフェードの過去の経緯を知っている」
斎王幽羅「フェードは紅色派の重要人物だったんだ、紅色派の幹部と知り合いが居てもおかしくない。恐らく···知ってるはずだよ」
エンチャント魔導法士「知っているはず?はっ、知っていなかったらどうするんだ?」
斎王幽羅「知らなくても『目星』はついてるはず、そうでなきゃ俺達にわざわざ接触を図る必要がないですし」
斎王幽羅「貴方がその気になれば俺達全員行動不能にできるはずです、それなのにわざわざこんな所まで大人しく着いてきた」
斎王幽羅「神奈川の時に言ってましたよね?『斎王勇次郎と雪月頼の遺言と遺品』について。それがあなたの目的ではないんですか?」
  突然皆が静まる。グレーデイ以降世界中が血眼になって探した斎王勇次郎と雪月頼の遺言と遺品。
  ある者はこの世をひっくり返せる物だといい、ある者は莫大な財産だといい、ある者は力を解放する術を記した物だという
  今日今月に至るまで誰も見つけることのできていない遺品と遺書についての言及。思わず黙ってしまうのも無理はなかった。
  そしてその子孫である斎王の口から、遺品と遺書について言及され始める。
斎王幽羅「斎王勇次郎と雪月頼、俺の父さんと婆ちゃんの遺品と遺書は···『この家にある。』俺は遺書に目を通してるから内容は覚えてる」
キング「マジかよおい!ど、どんなもんなんだ···?教えてくれよ斎王!!」
  斎王は家に入る際案内をしてくれた初老の執事を呼び出し持ってくるよう伝える。
  数分後、初老の執事は2つの封筒と2つの箱を斎王の前に置き一礼した後、客間を出る
  斎王は片方の箱をあけ物品を目の前に置く
鸞「砂時計···?なにか強力な力が働いてたりはしないのか···?」
斎王幽羅「いや、普通の砂時計だよ。至って普通の砂時計。婆ちゃんのは同じで···これね」
鸞「スノードームか、中にある街みたいなのは···?」
斎王幽羅「それ昔のXヒーロー近辺、ミニチュアもあって結構精巧に作られてるっぽい」
キング「まぁ··· ··· ···世界中が騒ぐほどの遺品ではなかったわけだ。問題は遺書だな、これも内容は普通なのか?」
斎王幽羅「『普通じゃないよ』俺はそれをエンチャントさんに伝えたかった」
鸞「どう···普通じゃないんだ?」
斎王幽羅「遺書の内容は婆ちゃんのと父さんの合わせて『六つの事が記載されている』。そのうちの一つに」
斎王幽羅「『自身の力の覚醒方法』が書いてあった。エンチャントさんが求めているのはこれですよね?違いますか?」
  静まり返る空気の中、視線はエンチャントに向けられる。エンチャントは何も反論せず静かに頭を縦に振った
エンチャント魔導法士「他にも目的はあるが自身の力の覚醒方法は知っておかねばならない、だからこそ···ワシに教えてくれ」
斎王幽羅「ダメです、貴方にも···心の『泥』を見せ洗う事をしてもらわないといけない。俺が良くても皆が反対する、そうだよね?」
  エンチャントを除く全員がその場で頷き斎王の意見に同意の意思を示す。エンチャントは苦い表情を浮かべながら静かに話し始めた
エンチャント魔導法士「ワシの泥··· ··· ···それはローマ法皇の元、異端者と称し『教え子を殺してまわった事だ』」
エンチャント魔導法士「当時のワシは失った地位を取り戻すため躍起になっていた、そうしていたワシに法皇は『異端者を殺せば元の地位をやる』」
エンチャント魔導法士「そう言ってワシに近づいてきた。大量に死体を詰んだ後殺した教え子達が『カトリック系』と気づいた時はもう遅かった」
キング「は?どういうことだ?」
鸞「カトリックとプロテスタントと言うキリスト教の最大派閥があってだな···まぁ要はカトリック系を黙らせるために利用された」
鸞「ってことだな?哀れだな」
エンチャント魔導法士「反論もできん···ワシは法皇がプロテスタント系、しかもよりによって『ロシア聖教』の出だと後から知ったよ」
エンチャント魔導法士「ワシは自分の地位と名誉の為に教え子を大勢殺した、これがワシの泥だ。さぁ···早く雪月頼と斎王勇次郎の遺言を聞かせろ」
凪園無頼「図々しくね?骨の1つでも折りてーんだけど」
斎王幽羅「気持ちはわかるけど···今はやめておこう凪園。じゃあ今から···父さんと婆ちゃんの遺言書を読み上げるよ」
  To Be Continued··· ··· ···

次のエピソード:第11話 想起

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