終電

おけの

エピソード1(脚本)

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〇駅のホーム
なつき(あー疲れた。 でも、飲み会は楽しかったな)
なつき(帰ったら、好きな怪談師の話でも聞こう)
  電車のホームの一番前を陣取った。
  電車が風と共にホームの前を通り
  停車する。
  ドアが開くと私は
  滑り込むようにそそくさと入った。
  会社の帰りに飲み会に行っていたので、いつもより遅くなった。
  ストレス発散にはなったが明日はきついだろう。

〇電車の中
  席は四人分しか空いていなかった。
  急いでお尻から座る。
  背もたれに寄りかかり、ため息をついた。
  それから目を閉じると、夢の中へ。
  ──ふと、目が覚めた。
  ぼんやりしながら重い頭を上げる。
  もう、ほとんどの席が空いていて、
  男性2人しかいない。
  私の座っている席の延長には、
  端っこに座って涎を流している
  おじさんが寝ている。
  向かい側の席は、
  三十歳くらいの男が一人、
  腕を組んで眠っていた。
  ふと、向かい側の腕組み男の上の方で、
  違和感を覚えた。
  見てみると、
  荷物置きのところで女が寝ている。
  こちらに背を向け、
  長い髪をなびかせていた。
  普通はそんなところに人はいないものだが、酔っているのだろう。
  そうでなければ荷物置き場に上らない。
  そう思ったとき──
  赤いものが滴り落ちた。
なつき「えっ?」
  思わず、声を漏らした。
  さっき落ちたのは・・・・・・血?
  怖くなった。
  起きているのは、私だけだということが
  最悪だ。
  こんな日常で、テレビみたいなことがあるわけがない。
  どこかのホラー映画じゃあるまいし。
  落ちてきた赤いものが、血なわけない。
  私は、言い聞かせるようにそう思った。
  赤いものが、また落ちた。
  寝ている腕組み男に降りかかる。
  ドロドロとしていた。
  男は動かない。
  気づいていないのだろうか?
  はっとした。
  あの赤いものも、女も、
  自分にしか見えてなかったとしたら?
  それだったら、男が気づかないのもわかる。
  ただ、そうなると──
  女が幽霊だということになる。
  確か、心霊系You Tuberが言っていた。
  何かのきっかけで、
  幽霊が見えるようになると。
  私はそれにあたったのかもしれない。
なつき(──ここから逃げよう)

〇電車の中
  立ち上がろうとするが
なつき「──体が動かない」
  どんなに足に力をいれても立ち上がれない!!
  手も、頭も動かなかった。
  金縛りだ。
なつき(やばい、どうすることもできないなんて)
  女が動いた。
  ゆっくり寝返りをうつ。
  女は気持ちよさそうに眠っていた。
  ──それも、
  フタの開いたケチャップを抱いて。
なつき「・・・・・・・・・」
なつき(なんなのだ!!! この女、ケチャップなんて持って!!)
  さっきの恐怖感を返せ!
  怒りが込みあがり、
  そのケチャップ女を起こそうと思った。
  しかし、体が動かない。
  冷や汗がでた。
  また恐怖が体中で渦巻く。
  なぜ体が動かない?
  目だけを動かした。
  何かいるのだろうか?
  ここは私と
  ケチャップ女と
  前にいる腕組み男と・・・
  端っこに座っている涎おやじ。
  その他には誰もいない。
なつき(・・・まさか、私の真上?)
  余計に怖くなった。
  他に誰かいるのだろうか?
  上は向けない、逃げることもできない。
  どうする?
  じわじわと冷や汗が出てきた。
  恐怖のあまり叫びたくなる。
  しかし声はでない。
  誰にも助けを呼ぶことができない状況で、
  このまま続いてしまうかも。
  それは嫌だ、怖すぎる。
ケチャップ女「うっう〜ん・・・むにゃむにゃ」
  寝言のような、
  動物が鳴いたような声を
  ケチャップ女がだした。
  金縛りがとけた。
  怖いもの見たさに、上を向いた。
  ──誰もいない。
  消えたのだろうか?
  とりあえず、ケチャップ女のおかげだ。
  さっきの怒りは忘れよう。
  気がつけば、
  降りなければならない駅に近づいていた。
  あと二駅停まればこの電車から降りれる!!
「ふふふ」
  漏らすような笑い声が、
  聞こえたような気がした。
  辺りを見回す。
  涎おやじが笑っている。
  どんな夢を見ているのだろうか。
  見ていて気持ち悪い。

〇電車の中
  ──何かが、
  私の顔の近くまでやって来たのがわかった。
  一瞬の出来事だった。
  嫌な予感がする。
  ただならぬ雰囲気が
  漂っているのがわかる。
  顔がこわばった。
  涎おやじに向けていた顔を、
  恐る恐る前に戻した。
  腕組男の顔がすぐ傍にあった。
  白目をむいている。
  両腕を掴まれ、
  骨が折れそうなほど力を入れてくる。
  悲鳴を上げるが、声はでなかった。
  冷や汗がだらりと流れた。
腕組み男「・・・帰さない」
  男は運転席に向かって歩き、
  どんどん薄くなって消えたかと思うと
  電車の強いブレーキ音が響き渡った──

〇駅のホーム
ニュースキャスター「昨夜、○○市の駅近くで 脱線事故が起きました」
ニュースキャスター「その電車には 男性1名 女性1名がその電車に乗っており」
ニュースキャスター「死亡が確認されました」
ニュースキャスター「なぜ、脱線事故が起こったのか──」
ニュースキャスター「未だに解明されていません」
ニュースキャスター「引き続き、事故解明を行うとのことです」
ニュースキャスター「現場からは以上です」

コメント

  • 笑いにも恐怖にもどちらにも行ける感じで、最後どっちに行くのだろうとハラハラしました!! コメディのようなホラー、ホラーのようなコメディって面白いですね😃 なつきさんは見事二代目襲名したのですね🎉 このスタイルありだと思いますので、また何か思いついたら書いて欲しいです!! 

  • 緊張感から脱力の展開、と思ったら恐怖展開、の繰り返しがジェットコースターのようで刺激的ですね!
    ……そして、ラストに極上の恐怖が!素晴らしいホラーですね!

  • うわわー! ケチャップ女もでしたかー!
    予想外でした!

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