蔓延る詐欺、溢れる熱意(脚本)
〇明るいリビング
暦「はあ、なんかいい求人ないかな・・・」
暦「こうスマホ一つで、数時間触るだけで10万円儲かる的な」
彼は典型的な駄目人間だった。
高校卒業後、上京するもバイトが馬鹿らしくなり、生活保護の受給をもくろんでいる。
暦(いや、なんちゃってうつ病患者になって障害年金もらったほうがいいかな・・・?)
暦「Twitterで呟くか。 誰か、楽で儲かる仕事紹介してください!笑」
しかしフォロワーも同じ階層で同じ趣味の人間が数百人いるだけで効果は無かった。
そんな時だった。
DMが届く。
こんにちは、仕事が必要ですか? 自宅のスマホでできるアルバイト!💴
シンプルで簡単に1日5万円稼ぐことができます。詳しくはLINEを追加してくださいい
暦「なになに・・・? スマホで自動放置で月150万!? 初期費用無料!? スキル不要!?」
暦「なんだこれ、やるしかないじゃないか! あー、あくせく働いてる人間が馬鹿らしいぜ!」
初回特典として数人限定で20000円貰えるらしい。
暦はすっかり将来を安心し、惰眠を貪った。
〇明るいリビング
翌日
暦「今日は昨日の会社から特典が貰える日だ。 俺の人生、バラ色に輝いてるぞ!」
暦は稼いだお金で何をするかに想像を膨らませる。
そうだ、たとえば国内一周、いや世界旅行なんてどうだ?
スマホで稼げるから世界中どこにいてもお金が稼げる。
だから世界を渡り歩く・・・
そんな道も面白い。
あるいは株式でプロに委託してもっと増やし、会社を興すのも面白い。
そして億り人・・・いや、ビジネスのカリスマになるんだ!
そんな時にLINEが届く。
初回特典の案内だろう。
暦「くぅー、俺は特典なんかに釣られる馬鹿と違って貴社についていくぜ!」
貴社は文面で相手の会社を敬う際に使う表現で、御社というのが適切性だが暦にはこの区別すらなかった。
そして暦は早速LINEを開く。
暦「なになに・・・?」
暦「は? 初期投資費用20万円?!!」
暦「おい、初期費用無料じゃなかったのか!!」
暦は慌てて抗議のLINEを送るもスルーだった。
暦「そうか、だったらご丁寧に載せてる電話番号にかけてやるよ」
〇散らかった職員室
暦「もしもーし」
渡辺「はい、オペレーターの渡辺と申します」
暦「貴詐欺社にまんまと引っかかりかけたアホですが、初期費用無料なのに200000円要求された理由を聞こうと思って」
渡辺「詐欺社・・・? 弊社は、ただ副業をされたい方やお金に困ってる方のサポートをしたく・・・」
暦「お金に困ってるのはあんたらでしょ。 で、200000円振り込んだら増えると署名付きで証明できるんですか〜?」
渡辺「・・・我々も、その、弁護士と契約を結んでおり、これ以上の侮辱は・・・」
暦「え? 署名付きで証明できるか聞いただけで侮辱?」
渡辺「!」
暦「あんた、日本語もたどたどしいしどうせ渡辺って設定の外国人でしょ? はぁ、もういいですよ」
渡辺「わ、私どもは・・・」
ガチャッ
暦「ちょっとオペレーターの人かわいそうだったかな? でももしかしたらこの世にはああいう詐欺に引っかかる人がいるかもしれない」
暦「俺はそういう人の助けになりたいなあ・・・」
そして暦は決意した。
〇シックなリビング
それから暦は親に懇願し、絶対に弁護士になってみせると誓った。
親は否定的だった。
弁護士は偏差値70越えの難関大学に通っている人間が専門校にまで通い、なれるかどうかという世界だった。
しかし暦は常軌を逸した執念と学習の末、晴れて弁護士となった。
暦「君、例の書類は?」
渡辺「は、はい。 こちらです」
暦「ありがとう」
暦の秘書がかつての詐欺グループの一員だと暦は知っていた。
しかしそんな彼女だからあえて雇った。
暦「ネット・・・特にSNSを利用した詐欺は増発傾向にあるな。 主に未成年者の被害が予想される」
渡辺「・・・申し訳ありません」
暦「謝ることはない。 仮に詐欺に手を染めても・・・ そう、道を誤ってもやり直せるんだ。 そのために俺は存在している」
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ラムさんこんにちは
暦がまたでてる!嬉しいですね〜奥さんも!
これは短編の度にでてくるX氏みたいな感じでしょうか?好きです
やっぱりストーリーが完結してるし教訓めいててわかりやすいですね
貴社のところの文好きでした!