〇女の子の一人部屋
あやみ「きたきたきた〜」
　　プシュッ
　　ゴクゴクゴク・・・
あやみ「いや〜風呂上がりのビールは神」
あやみ「神やけど決して崇めることはない」
あやみ「命を諦めて我が体内に滑り込むのだ」
　　ブーッ
あやみ「・・・お、さやちゃんやん」
　　あやみさん！お疲れさまです！
　　今度の土日、東京来ませんか？
　　渋谷の楽しいところ、連れて行きますよ〜
あやみ「今度の土日は空いてるけど・・・」
あやみ「渋谷（しぶたに）・・・？」
あやみ「海でも山でもなく・・・谷・・・？」
あやみ「谷ガール・・・？」
あやみ「最近は谷で遊ぶのが流行ってるんか・・・？」
あやみ「谷で遊ぶって・・・滑り台みたいに？」
あやみ「いや、そんなわけないか」
あやみ「山も登ったあと滑るわけちゃうしな」
あやみ「とりあえずググろ」
　　「谷　楽しみ方」
　　北海道の地獄谷の温泉巡り！楽しみ方
あやみ「北海道の地獄谷・・・」
あやみ「なるほど、温泉か、ええやん」
あやみ「いやでも待てよ 今回行くのは渋い谷と書いて渋谷や」
あやみ「あんま良い温泉は期待しやんとこ」

〇公園通り
あやみ「いやいやいやいや」
あやみ「話がちゃうねん、さやちゃん」
さや「え？　私なんか間違ってますか？」
あやみ「どこが谷やねん、これ」
あやみ「ガッツリ街やん」
あやみ「ほんで渋くもないやん」
あやみ「デカ街やん」
あやみ「鬼デカ街やん」
さや「い、意味が分かりませんけど」
さや「ここが渋谷（しぶや）ですよ」
あやみ「なんや、あれか」
あやみ「高層ビルの谷間、みたいなことか」
あやみ「うるさ！　なにそのおしゃれ気取りの例え」
さや（ひ、一人で漫才してる・・・）
さや（確かにあやみさんは変わってる人だけど）
さや（渋谷すら知らないなんて・・・）
さや「と、とにかく渋谷のこと知らないなら」
さや「早速いろんなもの紹介して行きますね！」

〇渋谷の雑踏
さや「ここはスクランブル交差点です」
さや「スクランブルエッグみたいに」
さや「人がごちゃ混ぜになるから スクランブル交差点っていうんですよ」
あやみ「なんや、また言葉遊びかい」
あやみ「言葉遊びしたいがために 人をごちゃごちゃさせてるやろ」
あやみ「こっちが進むときはあっちは止まれ！ あっちが進む時はこっちは止まれ！」
あやみ「ちゃんと整えて、だし巻き交差点にしろ！」
さや（卵料理に釣られすぎて 意味分からないこと言ってる・・・）
あやみ「おい、甘めの味付けにしろ！」
さや「す、すれ違う人に叫ばないでください！」

〇ハチ公前
さや「忠犬ハチ公は知ってますよね？」
あやみ「チューケンハチコー？」
あやみ「トウカイテイオーしか知らへん」
さや（何の話か分からないけど 絶対ハチ公の方が有名でしょ・・・）
さや（あとそんなに名前似てないし・・・）
さや「このハチ公はいつも飼い主を 渋谷駅に迎えに行っていて」
さや「飼い主が亡くなってからも 十年間、渋谷駅に通い続けたんです」
あやみ「へぇ・・・」
さや「渋谷一の待ち合わせスポットなんですよ」
あやみ「いや、ハチコー可哀想すぎるやろ！」
さや「な、なんでですか」
あやみ「こんなに人集まってるんやで？」
あやみ「どれか飼い主かもしれへんって 探し続けなあかんやん」
あやみ「しかもみんな誰かを待ってるんやろ」
あやみ「みんなは待ってる人がちゃんと来るのに」
あやみ「ハチコーはいつまで待っても来ない」
あやみ「幸せを見せつけてるだけやんけ！」
あやみ「ほら！聞いてみ！ハチコーの声！」
あやみ「くぅんくぅんって寂しそうに鳴いてるわ！」
さや（もう駄目だ・・・ ただのクレーマーになってる）
さや（早く次行こう・・・）
　　その後も、さやはクレーマーあやみを
　　渋谷の人気スポットに連れて回った

〇渋谷のスクランブル交差点
あやみ「いやぁ、今日は初めての谷遊びで」
あやみ「ビックリすることも多かったんやけど」
あやみ「まぁ、ええ経験になったわ！ 楽しかった！」
さや「そ、それなら良かったです！」
さや（結局最後まで文句ばっかりだったけど）
さや（本当に楽しかったのかな・・・）
あやみ「でも、やっぱり谷にしては渋かったなぁ」
あやみ「谷はやっぱりこうやないと！」
　　ゴゴコゴゴゴゴ・・・
さや「きゃーーーー!!!」

〇温泉の湧いた渋谷
あやみ「やっぱ谷といえば温泉やろ〜」
さや「わ、私たちの渋谷が・・・・・・」
あやみ「まぁ、肩まで浸かって落ち着きや〜」
さや「ちょ、ちょっとやめてくださーい！」
　　二人はスクランブル交差点の
　　ど真ん中に湧いた温泉に浸かり、
　　10まで数えた
さや「これはこれで悪くない・・・」
あやみ「やろ？」
さや「パジャマ持ってきてたんだ・・・」
あやみ「ここをあやみ谷と名付けよう」
あやみ「みんなも入ってええでー！」
　　大都会東京の中心、渋谷
　　その夜には大量の疲れた大人たちがいた
　　彼らは一目散に温泉に飛び込み
　　日々の疲れを癒しましたとさ