お久しぶりです。谷川くん(脚本)
〇幻想
澤山りつ【少女時代】(私には夢があるの)
澤山りつ【少女時代】(それは──)
澤山りつ【少女時代】(素敵な男性と素敵な恋をして──)
澤山りつ【少女時代】(素敵な結婚をすること)
澤山りつ【少女時代】(えへへへへ・・・)
〇おしゃれなレストラン
澤山りつ(ふふ・・・)
澤山りつ(ああ、ついに──)
澤山りつ(澤山りつ29歳)
澤山りつ(人生最大のイベントを迎えます)
佐藤俊平「ま、待った?」
澤山りつ「ううん」
佐藤俊平「・・・」
澤山りつ「どうしたの?」
佐藤俊平「いや、誕生日おめでとう」
澤山りつ「ふふ、ありがとう」
佐藤俊平「・・・・・・・・・」
澤山りつ「どうしたのよ?」
佐藤俊平「いや」
澤山りつ(緊張してる緊張してる)
澤山りつ(そうよね、今日は大事なプロポーズの日だもん)
澤山りつ(どこでしてくれるんだろう)
澤山りつ(やっぱり夜景の素敵な──)
佐藤俊平「あのさ、りつ」
澤山りつ「なに?」
佐藤俊平「僕と別れてくれないか?」
澤山りつ「えっ?」
澤山りつ「えっ、えっ!?」
「・・・・・・・・・」
澤山りつ「冗談・・・だよね?」
澤山りつ「どういうこと?」
佐藤俊平「じ、実は──」
佐藤俊平「か、彼女が妊娠しちゃって」
澤山りつ「はっ!?」
澤山りつ「彼女って・・・私でしょ?」
佐藤俊平「う、うん・・・まぁ、そうなんだけど」
澤山りつ「浮気してたって事?」
佐藤俊平「浮気って訳じゃ・・・」
澤山りつ「浮気でしょうが!」
佐藤俊平「結婚相手を決めるんだよ」
佐藤俊平「君が相手で良いのか、他と比べてみるのが普通だろ」
佐藤俊平「自分の中で候補がもう一人いて──」
佐藤俊平「二人と同時に付き合うのは悪い事じゃないと思う」
澤山りつ「・・・・・・・・・・・・」
澤山りつ「だったら──」
澤山りつ「体の関係なんか持たないでよ!!」
佐藤俊平「体の相性って大事じゃん」
澤山りつ「・・・・・・・・・・・・」
佐藤俊平「そういう訳だから」
佐藤俊平「ごめん!!」
〇白いアパート
〇女の子の一人部屋
澤山りつ「・・・」
澤山りつ「本当にショックな時って」
澤山りつ「涙すら出ないんだな」
澤山りつ「あっ、お母さん」
母親「──それで、いつ帰ってくるの?」
澤山りつ「えっ?」
母親「言ってたでしょ」
母親「結婚するから彼氏紹介するって」
澤山りつ「あっ!」
母親「お父さん緊張して落ち着かないのよ」
母親「だから早めにお願いしたいんだけど・・・」
澤山りつ「う、うん・・・」
澤山りつ「どうしよう」
澤山りつ「お父さん心臓弱いんだよね」
澤山りつ「結婚するって連絡した時も負担かけちゃったし」
澤山りつ「これで別れたなんて知ったら・・・」
〇屋根の上
数日後──
〇白いアパート
澤山りつ「ダメだー!!」
〇女の子の一人部屋
澤山りつ「どいつもこいつも売約済みになってる」
澤山りつ「元彼も全滅だー」
澤山りつ「誰か、誰かいないの?」
澤山りつ「あっ!」
澤山りつ(これは・・・)
〇テーブル席
澤山りつ「あっ」
澤山りつ「ここよ、ここ」
澤山りつ「やだー、ずいぶん大人っぽくなったのね」
谷川りく「・・・」
谷川りく「あんた誰?」
澤山りつ「好きな女の子の顔忘れたの?」
谷川りく「・・・?」
谷川りく「俺には好きな女なんかいないが」
澤山りつ「本当に忘れたの?」
谷川りく「あっ・・・」
澤山りつ「思い出した?」
澤山りつ「返答が遅れてごめんなさい」
澤山りつ「このたび澤山りつは──」
澤山りつ「谷川りく様と交際させていただきます」
澤山りつ「あれっ?」
〇街中の道路
澤山りつ「ちょっと待ってよ」
谷川りく「俺は忙しいんだ」
谷川りく「冗談なんかに付き合ってられない」
澤山りつ「冗談じゃないわ」
澤山りつ「真面目も真面目、大真面目よ」
谷川りく「何が狙いだ?」
谷川りく「マルチ商法の勧誘か?」
澤山りつ「ひねた解釈しないでよ」
澤山りつ「私は純粋にあなたの告白に応えようとしてるだけ」
谷川りく「これ、いつ出したと思ってるんだ」
谷川りく「高校生の時だ」
谷川りく「十年以上も前だ!」
谷川りく「今更・・・」
谷川りく「それに──」
谷川りく「俺はもうとっくにあんたに振られている」
澤山りつ「振ってないかいないわよ」
澤山りつ「保留にしてただけ」
澤山りつ「だから今もこうして持っているんじゃない」
谷川りく「これは十年前の気持ちであって、今の気持ちじゃない」
澤山りつ「今は好きじゃないの?」
澤山りつ「なぜ!?」
谷川りく「なぜって・・・」
谷川りく「じゃあ、あんたは高校生の時の彼氏、今でも好きなのか?」
澤山りつ「好きじゃないわよ」
谷川りく「だったら俺の気持ちが分かるだろ」
澤山りつ「彼とは付き合って上手くいかなかったからでしょ」
澤山りつ「あなたとは付き合ってすらいないじゃない」
谷川りく「あんたもわかんないやつだな」
谷川りく「だったら何故高校生の時付き合ってくれなかったんだ?」
澤山りつ「彼氏がいたからよ」
谷川りく「縁がなかったって事だ」
澤山りつ「でも今はフリーよ」
澤山りつ「お互いフリー同士」
澤山りつ「今、縁が出来たのよ」
谷川りく「誰がフリーなんて言った?」
澤山りつ「えっ?」
澤山りつ「だって好きな人いないって・・・」
谷川りく「好きな人はいないけど付き合っている人はいる」
澤山りつ「・・・・・・・・」
谷川りく「そう言う訳だから」
〇女の子の一人部屋
澤山りつ「相手がいたのか・・・」
澤山りつ「あたしたちの年齢になればフリーでいる方が珍しいよね」
澤山りつ「でも、谷川くん格好良かったなぁ」
澤山りつ「ふふふ・・・」
澤山りつ「そうよ、あんなイケメンを私が振る訳ないじゃない!?」
澤山りつ「・・・そう言えば」
澤山りつ「交際相手は好きな人じゃないって言ってたわね」
澤山りつ「──って事は、フリーと同じじゃない?」
澤山りつ「うん」
〇二階建てアパート
谷川りく「やっぱりお前か」
〇一人部屋
友人「いやー、すごい勢いで連絡先聞いてくるからさ」
友人「つい・・・」
友人「せっかくだから付き合っちゃえば良いんじゃないの?」
谷川りく「冗談じゃねえよ」
谷川りく「女なんか懲り懲りだよ」
友人「確かにトラウマを植え付けた女とは付き合えんよな」
谷川りく「誰だ、この時分」
澤山りつ「相手がいても良いわよ」
谷川りく「はっ?」
澤山りつ「だって、結婚相手を決めるのよ」
澤山りつ「二人と同時に付き合うのは悪い事じゃないと思うの!!」
谷川りく「お前ってやつは・・・」
次回に続く
こんばんは!
情景が浮かびやすく会話が流れるようで読みやすかったです!
彼氏にされたことをまさかの自分もするなんて、とても強者の主人公ですね!
谷川君の気持ちはどんなふうに揺らいでいくのでしょうか
ワガママ、奔放、自分勝手、でも何故か憎めないりつさんww 彼女のお見事なまでの暴れっぷりが、もう見ていて楽しすぎます!!
シンプルでテンポがよくて、それでいて登場人物の気持ちがよく伝わってきて、とて面白いです。告白の保留ってのもすごいですが…笑