第7話 『正義の拳』(脚本)
〇広い公園
ヤンキーA「金出せよ、おい」
ひ弱な男「・・・やめてよ」
ヤンキーB「やめてよじゃねえよ!」
ひ弱な男「ひ、ひー・・・!」
〇空
クララ「あれはどっからどう見てもイジメだよね、クルル」
クルル「だね、クララお姉ちゃん」
クララ「よし、出番よ! どんな魔法で助けてあげよっかな〜?」
クルル「私にいいアイデアがあるよ!」
クルル「イジメられてる男の人に、目からビームが出せる力を授けるってのはどう?」
クララ「却下」
クルル「じゃあじゃあ! 指の先がピストルになる魔法は?」
クララ「言わずもがな」
クルル「わかった、じゃあイジメてる側の人達を爆発させちゃおう!」
クララ「うん、ちょっと黙っててくれる?」
クルル「じゃあどうするのよ〜?」
クルル「早くしないと男の人、ずっと困ったままだよ」
クララ「あのね、私ずっと考えてたの」
クララ「今まで、どうして人助けに失敗したのかなって」
クルル「え〜、どうして?」
クララ「きっと私達が、魔法で余計な力を授けるからダメだったのよ」
クララ「つまり、人間が自力で問題を解決できるように、魔法を使えばいいのよ!」
クルル「でも、それってどうやってやるの?」
クララ「まあ、見てなさいって!」
クララ「クララクララクラクララクラ〜!」
クララ「正義感があって強い人よ、現れろ!」
〇広い公園
ヤンキーA「ほら早く金出せよ!」
ヤンキーB「お前ん家の家族がどうなってもいいのか、ああ!?」
ヤンキーがひ弱な男の胸ぐらを掴む。
ひ弱な男「い、痛いよ・・・!」
ボクサー「ヤメな」
「!?」
ヤンキーA「誰だお前!?」
ボクサー「よってたかって暴力とは感心しねえな」
ヤンキーB「はあ? 関係ねえ奴は引っ込んでろ!」
ヤンキーが男に殴りかかるが、男は素早くそれをかわした。
ヤンキーB「!?」
男は素早いパンチを繰り出すと、ヤンキーの顔の直前で拳をとめる。
ヤンキーB「!」
ボクサー「プロのボクサー相手にしようってのか?」
ヤンキーB「え、プ、プロの、ボクサー・・・!?」
ボクサー「もっとも、素人相手にプロのボクサーが殴る訳にはいかねえけどな」
ボクサー「ただ、そっちがその気なら、いつだって相手してやるぜ」
「クッ・・・!」
〇空
クルル「なるほど! これなら人間だけで解決できる!」
クララ「私って天才じゃな〜い!?」
クララ「あ〜、やっと一人前の妖精に近づけた気がする!」
〇広い公園
ボクサー「もう大丈夫だ」
ひ弱な男「・・・・・・」
ボクサー「俺はお前等みたいなクズが大嫌いなんだ。 よってたかって、金たかりやがって」
ヤンキーA「はあ? たかってねえよ!」
ボクサー「嘘つくんじゃねえ。どこまでクズなんだ。 聞いてたんだよこっちは」
ボクサー「お前等が『金出せ』って脅してるのをよ」
ヤンキーA「元々、俺達が貸した金なんだよ!」
ボクサー「・・・は?」
〇空
「え?」
〇広い公園
ヤンキーA「こいつ、いい歳して働きもしねえで、家でずっとゴロゴロしやがって」
ヤンキーB「アニメだかなんだか知らねえけど、二次元の世界にどっぷり嵌りやがって」
ヤンキーB「金なくなっては、俺達んとこに泣きついてきて」
ボクサー「・・・・・・」
ひ弱な男「・・・・・・」
〇空
クルル「あれ、何か思ってたのと違うね」
クララ「う、うん・・・」
〇広い公園
ヤンキーA「いつか改心するだろうって思ってたけど。 もう限界だよ!」
ボクサー「・・・いや、そんな嘘、通用するとでも思ってるのか──」
ヤンキーA「2人合わせて100万だせ!?」
ボクサー「!」
ヤンキーB「俺たちがマジメにコツコツ働いて稼いだ金をよ!」
ボクサー「・・・だが、こっちは『家族がどうなってもいいのか』って脅してたのも聞いてるんだよ!」
ヤンキーA「俺たちもう見てらんねえんだよ、こいつん家のかあちゃんが悲しむ姿をよ!」
ボクサー「!?」
ヤンキーB「こいつが働かねえせいで、こいつん家のかあちゃん一日中働きっ放しで」
ボクサー「・・・・・・」
ボクサーはひ弱な男を見る。
ひ弱な男「・・・・・・」
ボクサー「・・・うん、それでも──」
ヤンキーA「俺たちこいつん家のかあちゃんには、小さい頃からずっと世話になってっからよ」
ヤンキーA「あんな良い人が苦労するなんて、もう耐えられないんだよ!」
〇空
クルル「えーっと・・・。どうする? お姉ちゃん?」
クララ「・・・・・・」
〇広い公園
ヤンキーB「それでもこいつはかあちゃんが稼いだ金を、メイド喫茶だかなんだかにバンバン使ってよ!」
ボクサー「お前・・・本当か今の話?」
ひ弱な男「・・・・・・」
ボクサー「おいお前! 聞いてるのか──」
ひ弱な男「いや、あんたには関係ないじゃん」
ボクサー「は・・・!?」
ひ弱な男「ていうか、あなた誰ですか?」
ボクサー「!」
ヤンキーA「お前、よくそんな態度とれるな!? この人はお前の事を助けようとして――」
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