裸族探偵ネイキッドの誕生秘話

根本桃安(ねもとぴぁ)

第一話  三年ぶりの便り(脚本)

裸族探偵ネイキッドの誕生秘話

根本桃安(ねもとぴぁ)

今すぐ読む

裸族探偵ネイキッドの誕生秘話
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇マンションの共用廊下
  風が肌にまとわりつく
  ボクを引き止めるみたいに
  足がすくんで地を掴めない
  でも進むのをやめられない
  やめたくない
  いきたい
  でもどこへ⋯?

〇白
  誕生日おめでとう
  裸ん坊のベィビー
  君の人生は
  今 始まった──

〇山並み

〇ボロい山小屋
ネイキッド・N・ヌーディック「やぁ、静永さん その後彼とはどうですか?」
静永 春花「ダメダメ」
静永 春花「RINEはそっけないし もう1ヶ月会えてないし⋯」
静永 春花「浮気されてるよね、これ」
ネイキッド・N・ヌーディック「そうとも限りませんよ」
ネイキッド・N・ヌーディック「ところで本日水着はお持ちで?」
静永 春花「うん」
静永 春花「着てきちゃった」
静永 春花「これで何か分かるの?」
静永 春花(うぅ、ネイ君の全裸は 昔から慣れっこだけど)
静永 春花(私も水着だと なんだかちょっとイケない気分⋯)

〇花模様3
  嗚呼⋯彫刻のように整った顔に
  馬のように艶めくまつ毛──
  引き締まった肉体が描く流線美──
  首筋
   鎖骨
  胸筋
   腹筋
  そして⋯
  ダメ!
  これ以上は神々しすぎて
  直視できないッ!!
ネイキッド・N・ヌーディック「静永さん」

〇ボロい山小屋
ネイキッド・N・ヌーディック「その水着⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「ナイス・ナチュラル!」
静永 春花「へ?」
静永 春花「あ!」
静永 春花「ネィ君たら自然に目がないんだから!」
ネイキッド・N・ヌーディック「やっと笑った」
ネイキッド・N・ヌーディック「その調子で心を解いていきましょう」
ネイキッド・N・ヌーディック「ついてきて」

〇露天風呂
静永 春花「すご~い!敷地内に温泉!?」
ネイキッド・N・ヌーディック「終の住処として外せない条件でした」
静永 春花「夢のマイホーム、いいなぁ」
静永 春花「彼ね、ご両親に紹介してくれるって言ってたんだよ?」
静永 春花「なのにそれっきり⋯」
静永 春花「浮気相手の妊娠が発覚して それどころじゃないとか?」
静永 春花「それとも元々遊びだったのかな?私⋯」
静永 春花「ね、一回調査してもらえない? 彼、遠方なんだけど──」
静永 春花「わ、上手!」
ネイキッド・N・ヌーディック「水面に映る景色や波紋を見ても、」
ネイキッド・N・ヌーディック「水中の様子は分かりませんよ」
静永 春花「え?」

〇草原
樋上 雄司「お前ら⋯」

〇露天風呂
静永 春花「ゆ、雄司さん?! どうしてここに!?」
ネイキッド・N・ヌーディック「やぁ、樋上君。退所以来ですね」
樋上 雄司「黙れこのフルチン野郎ッ!! 春花にナニをしているッ!?」
ネイキッド・N・ヌーディック「相談に乗っていただけですよ」
樋上 雄司「混浴でか!? 何の相談だよ!」
ネイキッド・N・ヌーディック「守秘義務ですので」
樋上 雄司(えぇい!綿毛みてぇにフワフワと!)
ネイキッド・N・ヌーディック「クンクン」
樋上 雄司「何してんだよッ!?」
ネイキッド・N・ヌーディック「逞しい小麦色の肉体に」
ネイキッド・N・ヌーディック「仄かな潮の香り──」
ネイキッド・N・ヌーディック「歩く時の僅かな重心の揺れ⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「樋上君、今船乗りしてます?」
樋上 雄司「漁師だよ!白々しい!」
ネイキッド・N・ヌーディック「まぁまぁ、樋上君も脱いで浸かりませんか?」
ネイキッド・N・ヌーディック「海から山は遠かったでしょう?」
静永 春花「和歌山からだもんね」
静永 春花「いつから東京(こっち)来てるの?」
静永 春花「聞いてないよ、私⋯」
樋上 雄司「いや、それはその──」
?????「その答えはここにあるッス!」

〇草原
角下 イノ「正解は~?」
  追跡アプリ〜!!
静永 春花「私の携帯!」

〇露天風呂
静永 春花「勝手に監視アプリ入れてたってコト!?」
静永 春花「やっぱり浮気してたんだ?」
樋上 雄司「違ッえよ!これはお前が⋯」
樋上 雄司「その⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「大事だから」
「え?」
ネイキッド・N・ヌーディック「彼女が『大切』だから『見守っていた』」
ネイキッド・N・ヌーディック「そうでしょう?樋上君」
静永 春花「そう、だったの?」
樋上 雄司「ま、まぁな」
樋上 雄司「今日はその⋯ こっそり行って驚かそうと思ったんだ」
樋上 雄司「でも家にいねぇからよォ⋯」
静永 春花「ごめんなさい!」
静永 春花「私、雄司さんのこと疑って⋯」
樋上 雄司「いや、俺が悪い」
樋上 雄司「仕事にかまけて寂しい思いをさせた」
樋上 雄司「実は今、オヤジに沖合漁業を教わってんだ」
樋上 雄司「結婚したらお前に不自由させねぇから」
静永 春花「雄司さん⋯」
樋上 雄司「春花⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「のぼせちゃったので、先に上がりますね」
ネイキッド・N・ヌーディック「ごゆるりと」

〇山並み
  三時間後

〇ボロい山小屋
樋上 雄司「疑って悪かったがよぉ、 まだ裸族だとは思わねぇよ」
樋上 雄司「そろそろ服着て社会に出たらどうだ?」
ネイキッド・N・ヌーディック「服⋯」
樋上 雄司「お前なら仕事も女もすぐ見つかんだろ!」
樋上 雄司「俺達はこれから俺達の人生を歩いてくんだ」
樋上 雄司「このままじゃお前 マジで独りになっちまうぞ?」
ネイキッド・N・ヌーディック「私は一人でも⋯」
樋上 雄司「ま、だから式にはスーツで来いよ!」
ネイキッド・N・ヌーディック「あ、ハハ⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「お幸せに」
角下 イノ「式まで持たないに一票」
ネイキッド・N・ヌーディック「うん?」
角下 イノ「ネイキッさんも気づいてたっしょ?」
角下 イノ「浮気性はあの女だって」
角下 イノ「3回も相談来てて彼氏の情報出さないとか、」
角下 イノ「『鞍替え』目的ッスよね?」
ネイキッド・N・ヌーディック「慎重なだけでしょう」
角下 イノ「彼氏の方も束縛系だし、相性悪いっしょ」
ネイキッド・N・ヌーディック「一途なんですよ」
ネイキッド・N・ヌーディック「短所は長所」
ネイキッド・N・ヌーディック「多少の歪(いびつ)さも自然な証拠ですよ」
ネイキッド・N・ヌーディック「うんうん、曲がってても美味しいよね」
ネイキッド・N・ヌーディック「デバ君は分かってるね~」
角下 イノ「ま、破れ鍋綴じ蓋か」
角下 イノ「しっかしうちの先生は」
角下 イノ「マッパのクセに歯に衣着せるわ」
角下 イノ「探偵のクセに真実をオブラートに包むわ⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「探偵はただのあだ名ですよ」
ネイキッド・N・ヌーディック「推理小説持ってたからってだけで」
角下 イノ 「でも満更でもないっしょ?」
角下 イノ 「どれもべストセラーの名作だ!」
角下 イノ 「ドキハラ殺害現場に、ドロドロ疑心暗鬼」
角下 イノ 「そして明かされる真実!AHA体験!」
角下 イノ 「味わってみたいッスよね!」
ネイキッド・N・ヌーディック「私はそういうのは⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「そこのも貰い物で 一度目を通したきりですし」
ネイキッド・N・ヌーディック「は〜い、おかわりね」
角下 イノ 「ん?」
角下 イノ 「これは?」
角下 イノ (新聞の切り抜き?)
角下 イノ (13年も昔の事件⋯)
角下 イノ「これも貰い物ッスか?」
ネイキッド・N・ヌーディック「あ」
ネイキッド・N・ヌーディック「えぇ⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「ありましたね、そんなのも」
ネイキッド・N・ヌーディック「施設を出た時の餞別で⋯」
角下 イノ「あぁ、児童養護施設? さっきの人達と同じ⋯」
角下 イノ「でも何でこんなもの⋯」
角下 イノ「まさかこれ──」
ネイキッド・N・ヌーディック「昔の話ですよ」
角下 イノ「なに過去形にしてんスか?」
角下 イノ「バリバリ未解決じゃないッスか!」
角下 イノ「ここはネイキッさんが犯人突き止めて、」
角下 イノ「お母さんの無念を晴らす流れでしょーが!!」
ネイキッド・N・ヌーディック「そんなことして何になりますか」
ネイキッド・N・ヌーディック「今はデバ君と平穏に暮らしている」
ネイキッド・N・ヌーディック「それだけで十分です」
角下 イノ「あー、もう!」
角下 イノ「助手になって3ヶ月」
角下 イノ「や──っと刺激的な非日常を味わえると思ったのに!!」
角下 イノ「普段スッポンポンのクセに尻込みしてんじゃないっスよ!このエセ探偵!」
角下 イノ「くそ!SNSに騙されたー!」
ネイキッド・N・ヌーディック「前も言ったけど いつやめてもいいからね?」

〇黒
  そんなやりとりをした半年後、イノは──

〇荒れた倉庫
角下 イノ「皆殺しだ」

〇ボロい山小屋
  なおもここにいた
ネイキッド・N・ヌーディック「ただいまー」
ネイキッド・N・ヌーディック「今切るからね」
角下 イノ「そういや、さっき電話があったんスけど、」
角下 イノ「ホコリまみれッした」
ネイキッド・N・ヌーディック「すまない ずっと使ってなかったから」
ネイキッド・N・ヌーディック「それで、誰から?」
角下 イノ「樋上さんッス」
角下 イノ「明日の結婚パーティー 本当に来れないのかって」
角下 イノ「ネイキッさん 予定なんてありましたっけ?」
ネイキッド・N・ヌーディック「イクスキューズですよ」
ネイキッド・N・ヌーディック「私みたいなのは 祝いの席にそぐわないですから⋯」
角下 イノ「あ、格好なら気にすんなってさ」
角下 イノ「仲間内のカジュアルパーティーらしいッス!」
角下 イノ「ドタ参大歓迎って言ってたし 今からでもどうッスか?」
ネイキッド・N・ヌーディック「でも、二泊三日なので」
ネイキッド・N・ヌーディック「デバ君を置いて行けません」
角下 イノ「見ときますよ」
ネイキッド・N・ヌーディック「それに私、乗り物苦手だし⋯」
角下 イノ「寝てりゃ着くっしょ」
ネイキッド・N・ヌーディック「⋯」
角下 イノ「ま、同郷ってだけで 無理に行かなくてもいいッスね」
角下 イノ「祝電くらいは送っときましょか。 貴重なクライアントですし」
角下 イノ「手配しますよ。招待状は?」
ネイキッド・N・ヌーディック「⋯郵便受け、かな?」
角下 イノ「流石に薄情すぎません?」
ネイキッド・N・ヌーディック「パーティーの件は直接聞きましたし、 普段郵便見ないんですよ」
ネイキッド・N・ヌーディック「手紙なんてまず来ないし、 私、活字苦手だし⋯」
角下 イノ「オープンなナリして クローズなんだからなぁ」

〇森の中の小屋

〇ボロい山小屋
角下 イノ「溜まりに溜まってたッスよ」
角下 イノ「何年放置したんだか」
角下 イノ「これかな?」
角下 イノ「シャレオツ〜ゥ」
角下 イノ 「ほら!ネイキッさんの大好きな自然ッスよ!海に森!」
ネイキッド・N・ヌーディック「行きませんよ」
角下 イノ 「へ~い」
角下 イノ 「さ、残りを仕分けますか」
角下 イノ 「なんこれ赤紙?」

〇黒

〇ボロい山小屋
角下 イノ 「何だこりゃ」
角下 イノ 「差出人がない」
角下 イノ 「消印は先週」
角下 イノ 「取り扱い郵便局は⋯」
  薄暮(はくぼ)
  和歌山県の漁港町
角下 イノ 「お、ここ、例の無人島行きのも出てる」
角下 イノ 「ってことは──」
ネイキッド・N・ヌーディック「樋上君にかけ直して!」
角下 イノ 「ぐわッ!耳元でッ」
角下 イノ 「なんて?」
ネイキッド・N・ヌーディック「明日参加すると言ってるんです!!」
角下 イノ 「ですよね~!」
角下 イノ 「余興頼まれてたの忘れてたンしょ?これ」
ネイキッド・N・ヌーディック「違う!それは⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「殺 人 予 告 だ──ッ!!」
角下 イノ 「わぉ、名演技!」
ネイキッド・N・ヌーディック「だから芝居じゃなくて──」
ネイキッド・N・ヌーディック「つまりね⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「そこの小説で『不自然』な箇所は?」
角下 イノ 「んー」
角下 イノ 「う~ん?」
角下 イノ 「これだけ、シールが貼ってある?」
ネイキッド・N・ヌーディック「内容は知ってますか?」
角下 イノ 「えーと⋯」
角下 イノ 「名前の頭文字にド・レ・ミがつく人達が殺されていくッス!」
角下 イノ 「んん?」
角下 イノ 「頭文字⋯」
角下 イノ 「『きぶくれたどうけし』!?」
角下 イノ 「ま、まさかこれ──」
角下 イノ 「ネイキッさんが仕込んだドッキリ?」
ネイキッド・N・ヌーディック「この本は貰い物だと言ったでしょう?」
ネイキッド・N・ヌーディック「施設にいた頃、匿名で送られてきたんです」
ネイキッド・N・ヌーディック「毎年私の誕生日──」
ネイキッド・N・ヌーディック「すなわち、母の命日に」
ネイキッド・N・ヌーディック「更に、母の命を奪った小動物 『スローロリス』」
ネイキッド・N・ヌーディック「その名の意味は──」
ネイキッド・N・ヌーディック「『遅い道化師』」
角下 イノ 「ま、待ってください!」
角下 イノ 「その話がマジなら、 この手紙の送り主は──」
ネイキッド・N・ヌーディック「母を殺した犯人⋯かも」
角下 イノ 「本以外は? これまで他に送られてきた物は!?」
ネイキッド・N・ヌーディック「何も」
ネイキッド・N・ヌーディック「出所して三年経つ今日まで、何もなかった」
ネイキッド・N・ヌーディック「だから私も過去を忘れようとしていたのに」
ネイキッド・N・ヌーディック「なぜ今になって⋯」
角下 イノ 「蛇のような執着心⋯」
角下 イノ 「噛まれないといいッスね」
ネイキッド・N・ヌーディック「⋯うッ」

〇高級マンションの一室

〇ボロい山小屋
ネイキッド・N・ヌーディック「──ッ」
ネイキッド・N・ヌーディック「⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「着膨れた道化師──」
ネイキッド・N・ヌーディック「お前が何者だろうと⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「皆を傷つけると言うなら⋯」
ネイキッド・N・ヌーディック「その仮装をひっぺがすことを 私は厭わないぞ!!」

次のエピソード:第二話 不吉な船出

コメント

  • 謎と日常感のバランスが心地よくて、面白かったです❗️
    読む前は破天荒な裸族を想像していたので、意外と思慮深くて服装以外は紳士的なネイキッドのキャラが、ギャップも相まって刺さりました😄
    ミステリーとしてのスケール感も演出されていて、ワクワクする1話でした‼️

  • 裸族で掴みどころがなくて重い過去がある主人公!!魅力的すぎます✨イノ君とのコンビもすごく良いですねっ😊 予告状や島での結婚式とミステリー要素盛りだくさんでわくわくする1話でした!面白かったです🙌

  • めちゃめちゃ面白いです⭐︎ネイキッド探偵魅力ばくはつです⭐︎

コメントをもっと見る(35件)

成分キーワード

ページTOPへ