私って(脚本)
〇アパートの台所
由加「おはようー」
母「あらおはよう。・・・とりあえず、目を開けなさい?」
由加「わかった。ねえお母さん」
母「目が開くのが早過ぎるのよ・・・で、何かしら?」
由加「私ってさ、魅力あると思う?」
母「魅力?」
由加「うん」
母「そうねぇ・・・」
母「改めて言われると難しいわねえ・・・でもあるわよ?ここまで反抗期もなく、無事にすくすく育ってくれた。これ以上はないわよ」
母「まあ、ちょっと位反抗してきても良いんじゃない?とは思うけど!」
由加「・・・そっか、ありがと」
母「ふふふっ。早く食べないと、遅刻するわよ?」
〇ファンタジーの教室
由加「ねえ、私って魅力あると思う?」
あすみ「・・・へ!?み、魅力・・・?」
由加「うん」
由加「なんて言うか、ちょっと急用で魅力が欲しくなっちゃったんだよね」
あすみ「どんな急用・・・まあ、魅力的なんじゃない?」
あすみ「ちょっとわかんない所はあるけど、なんだかんだで優しいし!」
由加「・・・?そう」
あすみ「よーするに、今のままでいたら良いと思うよ!気にする事ないって!グー!👍」
由加「グー💤」
由加「ま、ありがと」
あすみ「そういうノリが良い所も長所だね・・・」
〇学校の廊下
由加「(・・・いた)」
由加「ねえ幸一」
幸一「どうした」
由加「私って、魅力あると思う?」
幸一「・・・・・・?」
由加「・・・・・・」
幸一「・・・・・・・・・・・・」
由加「・・・・・・・・・・・・」
幸一「さり気なく俺で楽しもうとするな。意味を説明しろ」
由加「・・・意味?」
幸一「意味がないなら余計におかしい」
幸一「質問するなら答えやすい質問にしてくれ。俺を困らせたいだけなら別だが」
由加「まあ、ちょっと抽象的過ぎたよね」
由加「ありがと。んじゃ」
幸一「・・・・・・・・・・・・」
〇学校の昇降口
由加「(ま、いつも通りで良いって事でしょ)」
由加「(何を変える訳でもない)」
〇古いアパート
由加「(今のままでも・・・)」
〇仮想空間
〇荒野
モンスターA「グルルルル・・・」
由加「(充分・・・)」
モンスターA「ガアアアアアアアアッッッッ!!!」
由加「(強い・・・!)」
由加「・・・・・・」
由加「今回の戦闘アンドロイドも別に大した相手じゃなかった」
由加「『あの人』の言ってた事もやっぱり嘘臭いね」
由加「今までの敵もこんな感じだったし」
由加「これからもそうなんだと思う」
由加「・・・」
由加「帰らなきゃ」
〇アパートのダイニング
由加「ただいまー」
由加「・・・あれ?」
由加「ただいまー!」
由加「・・・・・・」
由加「(我が家の母は、大抵の挨拶に元気が良い)」
由加「(「行ってきます」と言えば、必ず「行ってらっしゃい」と聞き覚えのある声が返ってくる)」
由加「(「ただいま」も例外ではなく、聞き飽きる過程を通り越し、最早これが日常なのだと感じていた)」
由加「(だからか・・・胸騒ぎを感じる)」
〇古いアパートの一室
由加「(弟に聞けば何かわかるかも、と思って弟の部屋の前まで来たけど何故か物怖じしてる)」
由加「(きっと、『最悪の事態』を無意識に想定しちゃってるんだろう)」
由加「・・・・・・」
由加「よし」
由加「ねえ光──!?」
由加「・・・・・・いない」
由加「? LINEだ」
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由加「・・・ここ、勝手に電話番号から登録してきた所だっけ」
由加「明らかに詐欺関連だと思ってたから今までの内容は無視してたけど、今回のは流石に私と無関係な筈はないよね」
由加「誘拐・・・ダメだ、意味わかんない。目的も読めないし」
由加「・・・そうだ、『パパ』に連絡しよう」
由加「パパなら、今回の件ももしかしたらわかってるかもしれない」
由加「・・・って、パパも誘拐されてるかもか」
由加「・・・どうしよっかな」
由加「あ、電話だ」
由加「・・・パパからだ」
由加「もしもし」
もしもし、由加。元気にしていたか
由加「たった今、元気がなくなったとこ」
そうか
お前の元気がなくなった要因には大体の推測が付く
恐らくお前は「誘拐事件」の件を目の当たりにし、酷くショックを受けている。違うか?
由加「パパも誘拐されたんじゃないの?私、相当参ってるよ。パパの作ってくれた戦闘アンドロイドとの模擬戦闘も終わって」
由加「さあ帰るかってなって帰ったらこれだもん。皆どこにいるの?」
質問が2つに分散されている
一つずつ答えよう。まず私は誘拐されてはいない。誘拐されているのは二人だ。
由加「何でパパは誘拐されなかったの?いや、誘拐されてなくて嬉しくはあるんだけど」
今回誘拐した犯人は、私のよく知る顔だ
ただ、よく知る顔と同時に、因縁のある相手でもある
まさか自分を追っている第一人者と直接接触しよう等とは思わないだろう。私が彼等に一歩近付いてしまうからな
由加「・・・」
次に『皆どこにいるか』についてだが
これに関しては誘拐犯本人に聞くのが手っ取り早いだろう
誘拐は本来人質と身代金のトレードがあってこそ成り立つ物だ。ただ拉致して終わりでは『誘拐』とは言えない
つまり誘き寄せる為にも、誘拐犯が場所を偽る可能性は極めて低いと見て良い
由加「・・・なるほどね」
由加「色々ありがとう。あと、最後に質問良い?」
何だ?
由加「『パパは』、今どこにいるの?」
・・・
それは言うべきではない
とりあえずパパは無事だ。それで納得してくれないか。
由加「・・・」
あああと
私からもお前に質問がある
由加「・・・何?」
何故お前は、お母さんの事は『お母さん』と呼ぶのに、パパの事は『パパ』なんだ?
由加「・・・・・・・・・」
由加「・・・わかんない。お母さんはお母さん、パパはパパだよ」
・・・そうか
まあ、今回に関しては素直に相手に場所を聞いて、手ぶらでも何でもとにかく行くと良い。きっと悪いようにはしないだろう
由加「そう、かな?」
ああ。・・・だが、私の予想だと一筋縄ではいかない
今回の相手は、『興味』によって動く相手だ
私はともかく、ヤツはお母さんや弟ではなくお前を残した・・・この意味がわかるか?
由加「・・・私に興味があるって事?」
その可能性が高い
そして二人にはなくてお前にしかない固有の能力・・・それは一言で言えば『戦闘技術』に他ならない
由加「確かに、あれが出来るのは私だけだと思う」
つまり、だ。ヤツはお前に強大な敵を仕掛けてくるとみて間違いないだろう
由加「それは大丈夫だよ。今までパパが作ってきた戦闘アンドロイドも全部大した事なかったし」
・・・レベルは幾つだ?
由加「さあ・・・ある程度慣れてからは常に一番大きい設定にしてるから、これ以上は強くならないと思うけど」
・・・そうか
今、お前の家にある仮想空間に私のとっておきを転送する
これに難なく勝つ事が出来るのなら、最早ヤツなど敵ではない
・・・長くなったな。では、切らせてもらう。あと、良ければ今回の戦闘アンドロイドを使ったら感想も送ってくれると助かる
由加「・・・」
由加「切れた」
由加「・・・とりあえず、パパが作ってくれたやつ試してみようかな」
物語の前半で油断してたら後半であらぬ方向へ吹き飛ばされたような衝撃でした。家族の誘拐とその目的も気になるところですが、「自分が魅力的か否か」の答えが必要とされる理由が一番気になりますね。