渋谷の交差点でAIを叫ぶ

篠也マシン

渋谷の愛と平和を守るAI、その名は渋谷アイ!(脚本)

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〇電車の中
  僕は渋谷の学校に通う高校生。
  最近、悩み事がある。
キュウジ(あの子、今日もいるな)
トウコ「・・・」
キュウジ「仲良くなりたいけど」
キュウジ「僕は人見知りだし・・・」
キュウジ「ん?」
  ふと、車内ビジョンに目が留まる。
渋谷アイ「私は渋谷アイ」
渋谷アイ「渋谷の愛と平和を守る者」
渋谷アイ「悩みがある人は「渋谷アイ」で検索」
キュウジ「変なCM」
キュウジ「それに」
渋谷アイ「・・・」
キュウジ(ずっと無表情だったな)
キュウジ(悩みを解決してくれると思えない)
キュウジ「ま、ダメ元で──」
渋谷アイ「ついに初めての相談者が来た!」
  スマホにCMの少女が現れる。
キュウジ「うわ!」
乗客「・・・電車では静かに」
キュウジ「すいません」

〇渋谷駅前
キュウジ「君は何者?」
渋谷アイ「私は渋谷を見守るAI」
渋谷アイ「街中の機械を制御する偉いプログラムなのだ」
キュウジ(無表情だけど、人間にしか見えない)
渋谷アイ「信じてないな」
渋谷アイ「そこの大型ビジョンに注目」
  僕の姿が交差点にデカデカと映し出される。
キュウジ「ええ!」
渋谷アイ「カメラと大型ビジョンを使えば」
渋谷アイ「こんなことも──」
キュウジ「恥ずかしいから消してくれ!」

〇渋谷駅前
キュウジ「悩みを聞いてくれるのは本当?」
渋谷アイ「うん」
渋谷アイ「機械を見守るのも飽きたから」
渋谷アイ「人間も見守ることにしたの」
キュウジ「実は──」
  気になる子がいると明かす。
キュウジ「僕は人見知りだし、彼女がいたこともない」
キュウジ「どう仲良くなればいいか分からなくて」
渋谷アイ「なるほど」
渋谷アイ「協力したいが問題がある」
キュウジ「へ?」
渋谷アイ「実は、恋というものを学習できてないんだ」
渋谷アイ「私に教えてくれないか?」
キュウジ(なんで逆に相談されてるんだ・・・)
キュウジ「分かった」
キュウジ「学習して僕の悩みを解決してくれ」

〇男の子の一人部屋
渋谷アイ「この本の主人公は」
渋谷アイ「なんでヒロインを好きになったの?」
キュウジ「きっかけは一目ぼれってやつかな」
キュウジ「その後、一緒に過ごすうち」
キュウジ「本気で好きになったんだよ」
渋谷アイ「なるほど」
渋谷アイ「じゃあヒロインの方は──」
  僕は好きな小説を参考に
  人間の恋愛を教え続けた。
  そんなある日、

〇渋谷駅前
渋谷アイ「ついに、君の悩みを解決する時が来た!」
キュウジ「どういうこと?」
渋谷アイ「実は君の好きな子から、相談が来たんだ」
渋谷アイ「友達ができなくて寂しいと」
キュウジ「それで?」
渋谷アイ「これはチャンスだ」
渋谷アイ「いい人がいると教えたら」
渋谷アイ「会ってみたいだって」
渋谷アイ「呼び出しておいたぞ」
キュウジ「・・・僕が男だと伝えたのか?」
渋谷アイ「いや」
渋谷アイ「友達に性別は関係ないだろ?」
渋谷アイ「君が教えてくれたじゃない」
キュウジ(本と現実は微妙に違うことを教えてなかった)
キュウジ「それは人によるんだよ・・・」
渋谷アイ「――あ、来たよ」
トウコ「あの・・・」
トウコ「あなたがアイさんの言ってた人ですか?」
キュウジ「は、はい!」
トウコ「男の子だったんだ・・・」
キュウジ(ほら、困ってるじゃないか!)
渋谷アイ「・・・」
渋谷アイ「じゃ、私はこれで」
渋谷アイ「街の管理が忙しいから」
  スマホの画面からアイが消える。
キュウジ「ちょっと待て!」
トウコ「・・・」
キュウジ「・・・」
トウコ「とりあえず、そこのカフェに入りませんか?」

〇テーブル席
  逃げ道がなくなった僕は
  話をつなごうと趣味の話をした。
  すると──
キュウジ「トウコさんもあの本好きなの?」
トウコ「うん」
トウコ「周りに好きな子がいなかったから嬉しい」
  緊張がほぐれ、話に花が咲いた。

〇テーブル席
トウコ「もうこんな時間」
トウコ「そろそろ帰らないと」
  その時
  突然アイがスマホに現れる。
キュウジ「うわ!」
トウコ「どうしたの?」
キュウジ「ちょっと待ってて」
渋谷アイ「うまくいってるようね」
キュウジ「さっきは逃げただろ」
渋谷アイ「ごめんごめん」
渋谷アイ「それよりまた会う約束をしないと」
渋谷アイ「いい案が──」
  アイからアドバイスを受け取る。
キュウジ「お待たせ」
キュウジ「そういえば」
キュウジ「もうすぐあの本が映画化されるよね」
キュウジ「よければ一緒に見に行かない?」
トウコ「・・・」
トウコ「うん」

〇男の子の一人部屋
渋谷アイ「この前トウコが言ってたよ」
渋谷アイ「一緒に映画を見れて楽しかったって」
キュウジ「よかった」
キュウジ「でもなあ・・・」
渋谷アイ「どうしたの?」
キュウジ「トウコさんを見てると」
キュウジ「胸がチクリと痛むんだ」
渋谷アイ「病気か?」
渋谷アイ「おすすめの病院を教えるぞ」
キュウジ「彼女を本気で好きになったの!」
キュウジ「ただ、向こうは友達としか思ってないかも」
渋谷アイ「その悩みなら簡単に解決できるぞ」
キュウジ「え?」
渋谷アイ「トウコに告白し」
渋谷アイ「気持ちを確かめればいいだけよ」
キュウジ「・・・」
渋谷アイ「く、まだ学習不足か・・・」
キュウジ「いや、アイの言う通りだ」
キュウジ「けど、断られたらどうしよう」
キュウジ「他に好きな人がいるかもしれないし・・・」
渋谷アイ「それなら、トウコを応援すればいいじゃない」
渋谷アイ「本当に好きなら」
渋谷アイ「その人の幸せを願うものだろう?」
  単純なアドバイス。
キュウジ(でも、不思議と力が沸く)
キュウジ「まったく、アイに教えられるとはね」
渋谷アイ「私は超高性能のAIだからな」
キュウジ「告白したことない僕でも」
キュウジ「うまく伝えられるかな?」
渋谷アイ「不安なら練習しよう」
キュウジ「よーし!」
キュウジ「トウコさん、僕と・・・付き合って・・・」
渋谷アイ「もっと男らしく!」
キュウジ「トウコさん、僕と付き合ってください!」
渋谷アイ「今のはいいぞ」
  こうして、ついに告白当日を迎えた。

〇電車の中
キュウジ「ダメだ!」
キュウジ「緊張でおかしくなりそう」
渋谷アイ「何弱気になってる!」
キュウジ「急に体調が悪くなったってことで・・・」
渋谷アイ「仕方ない」
渋谷アイ「そこの車内ビジョンに注目!」
キュウジ「え?」

〇渋谷駅前
  映し出されたのは、渋谷の交差点。
キュウジ(トウコさんとの待ち合わせ場所だ)
  すると、大型ビジョンに──
キュウジ「トウコさん、僕と──」

〇電車の中
キュウジ「うわあ! ストップ!」
渋谷アイ「こんな事態に備え」
渋谷アイ「練習風景を録画しておいたのだ」
渋谷アイ「このまま、世界で最も混雑する交差点で」
渋谷アイ「君の告白シーンを流すことにしよう」
キュウジ「分かった!」
キュウジ「自分で言うから!」

〇渋谷駅前
トウコ「大型ビジョンに変な映像が流れてたんだけど・・・」
  通行人が僕をチラチラ見ている。
キュウジ(逃げ道なし、か)
キュウジ(けど、こうでもしない限り)
キュウジ(僕に告白なんてできなかったかもしれない)
キュウジ(アイ、見ててくれ)
  僕は力強く一歩踏み出す。
キュウジ「トウコさん、僕と付き合ってください!」
トウコ「・・・」
トウコ「はい」

〇渋谷駅前
渋谷アイ「ふう」
渋谷アイ「随分世話が焼けたな」
渋谷アイ「幸せそうな顔しちゃって」
  彼を見てると
  プログラムの真ん中がチクリと痛む。

〇男の子の一人部屋
渋谷アイ「本当に好きなら」
渋谷アイ「その人の幸せを願うものだろう?」

〇渋谷駅前
渋谷アイ「ちょっと学習しすぎたかも」
  私は私だけに聞こえるように
  彼への気持ちを叫ぶ
渋谷アイ「──!!」

〇電車の中
渋谷アイ「私は渋谷アイ」
渋谷アイ「渋谷の愛と平和を守る者」
渋谷アイ「悩みがある人は「渋谷アイ」で検索!」

コメント

  • だんだんと人間っぽくなっていくアイちゃんが魅力的ですね!
    超高性能AIに恋愛を学習させたらこうなる…という展開は予想できても、ああいった切ない形で描かれるとは思っていませんでした。アイちゃんの想いを描き出す手腕がお見事でした
    渋谷アイで検索!と言われると、かなり検索したくなりますね 笑

  • 恋を学習したからこそ感じてしまった痛み…というジレンマが切ないです🥲

  • 恋愛の学習をしたばかりだからこそ出てくる、単純で純粋な後押しの言葉。でもそれだけではなく、AIの主人公への想いが込められたメッセージだった…というのが切ないです。プログラミングによって作られた心だとしても、気持ちがこもっていたから、彼の背中を押してくれたんでしょうね。

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