クララクルル 〜 加減を知らない妖精 ~

土井和人

第6話 『最後の唐揚げ』(脚本)

クララクルル 〜 加減を知らない妖精 ~

土井和人

今すぐ読む

クララクルル 〜 加減を知らない妖精 ~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇ネオン街

〇雑居ビル

〇大衆居酒屋
小田「やっぱ仕事がひと段落した後のビールは最高だな」
鈴木「ですよね! 今回の案件、苦労しましたもんね」
小田「でも俺、今回思ったわ。 ホント鈴木って成長したなってさ」
鈴木「ホントですか? うれしいなあ!」
鈴木「でも今の僕があるのは、小田さんのおかげですから!」
小田「まあ、そうなんだけどな」
鈴木「あ、否定しない!」
  二人は笑い合いながら、ふとテーブルの上の唐揚げを横目で見た。
小田「・・・・・・」
鈴木「・・・・・・」

〇雑居ビル
クルル「やっぱりだね。お姉ちゃん」
クララ「うん」
クララ「地球で修行し始めて、もう何度目だろう? この光景を見たの」
クルル「どうして・・・?」
クルル「どうして人間は最後の一つをなかなか食べないの!?」
クルル「さっきからチラチラ唐揚げ見てるくせに〜!」
クララ「まあ、わからなくもないけどね。 遠慮してるんだよ」
クルル「エンリョ、って何?」
クララ「たぶん、あの二人は心の中でこう思ってる」
クララ「小田って人は『最後の一つを後輩に譲らないなんて、心が狭い奴って思われるんじゃないか』って」
クララ「鈴木って人は『先輩を差し置いて、最後の一つを食べていいのかな』ってね」
クルル「はあ? そんなの気にせず食べればいいのに〜」
クララ「人間の心は複雑なのよ。 あんたと違ってね」
クルル「ぶぅ〜。どういう意味それ〜」
クララ「よし! 困ってるなら助けてあげるか! 私の魔法で!」
クルル「どんな魔法をかけるの?」
クララ「まあ見てなさいって!」
クララ「クララクララクラクララクラ〜! 唐揚げよ、二つになれ〜!」
  クララが呪文を唱えると、男たちの前に置かれていた唐揚げが二つに増えた。
クルル「なるほどね、二つあれば一つずつ分け合えばいいんだもんね!」
クララ「そういうこと! 今回は楽勝で解決ね!」

〇大衆居酒屋
小田「!?」
  小田は唐揚げが二つになっていることに気付くと、唐揚げに箸を伸ばした。
小田「美味え〜。 やっぱりビールには唐揚げだよなぁ」
鈴木「ですよね」
  鈴木はチラリと唐揚げを見るが手をつけない。

〇雑居ビル
クララ「あれ? 鈴木って人、どうして食べないの?」
クララ「今のタイミングで食べないで、いつ食べるの!」
クルル「結局、一つ残っちゃったね」
クララ「何やってるのよ〜! あの鈴木って人、めっちゃ引っ込み思案〜!」
クルル「ホントは食べたくないのかな?」
クララ「そんなことない! だって唐揚げのこと、チラチラ見てるし!」
クルル「小田って人も、唐揚げのこと見てるね」
クララ「いやいや! 小田! あんたは今、食べたでしょ!?」
クララ「あんたが残りの一つも食べたら、ただ私は魔法であんたに唐揚げ多く食べさせただけじゃん!」
クルル「も〜、何これ〜? さっさと食べればいいのに〜」
クルル「人間って何で自分が思った通りに行動できないの〜?」
クララ「・・・ん? なるほど! それだ!」
クルル「え?」
クララ「クララクララクラクララクラ〜!」
クララ「鈴木って人に、思った通りに行動できる力を〜!」

〇大衆居酒屋
  すると不思議な光に包まれた鈴木は、突然唐揚げを鷲掴みで食べ始めた。
小田「!?」

〇雑居ビル
クララ「よしっ!」
クルル「やっと食べた! これでオッケーだね!」

〇大衆居酒屋
小田「・・・あ、まだお腹空いてる?」
小田「だったら、今日は俺のおごりだから何でも頼んで──」
鈴木「いや、もういいっす」
小田「・・・あ、そ? じゃあ、俺なんか頼もうかな」
鈴木「ていうか僕、本当は小田さんと飲みたくなかったんですよね」
小田「・・・え?」
鈴木「だって、小田さんと飲んでも楽しくないんですもん」
小田「・・・えっと、お前何言ってる──」
鈴木「あと毎回、安い居酒屋ばっか連れてくるし」
小田「は・・・!?」
鈴木「マジせこいっすよね」

〇雑居ビル
クララ「あれ・・・? なんか変な方向に話進んでない?」
クルル「わかった!」
クルル「鈴木って人は小田って人が嫌いで、ホントは一緒にご飯食べに来るのを断りたかったんじゃない?」
クララ「あ・・・そういうこと?」
クルル「よかったね、お姉ちゃんの魔法のおかげで、思った通りに行動できてるよ!」
クララ「や、まさかそんなこと思ってるだなんて・・・」

〇大衆居酒屋
小田「・・・え、お前、酔っ払ってんの?」
鈴木「それは小田さんでしょ。 先輩ぶって、自分に酔っちゃって」
小田「はあ・・・!?」
鈴木「『成長したな』じゃないですよ」
鈴木「仕事できない小田さんに言われても全然うれしくないんですけど」
小田「!!」
鈴木「ていうか『おごりだから、何でも頼め』って、ここ全品250円ですから」
鈴木「どれ頼んでも同じですよ」
小田「・・・お前、さっきから黙って聞いてたら」
小田「ふざけんなよ!」
鈴木「こっちのセリフなんですけど!」
小田「なんだと!?」

〇雑居ビル
クルル「喧嘩になっちゃったね」
クララ「も〜、なんでこうなるの!?」
クルル「私はいいと思う、思った通りに行動しないで、ウジウジしてるよりも!」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第7話 『正義の拳』

成分キーワード

ページTOPへ