クララクルル 〜 加減を知らない妖精 ~

土井和人

第5話 『隣人トラブル』(脚本)

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土井和人

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〇ハイツ
  とあるマンションの二階のベランダで、おばさんが布団を干していた。
  そのすぐ真下の階では、若い男がベランダでタバコに火をつけて吸い始める。
おばさん「・・・・・・」

〇ビルの裏通り
クルル「ねえお姉ちゃん、あのおばさん何であんなに嫌な顔しているの?」
クララ「タバコが原因だね」
クルル「タバコって何〜?」
クララ「あの男の人が吸っているモノよ」
クララ「タバコから出る煙が臭くて、おばさんは困ってるってわけ」
クルル「え〜!? 何で臭いのに男の人は吸ってるの!?」
クララ「それは知らないし。とにかく出番だね。 魔法でおばさんを助けてあげないと」
クルル「はいは〜い! 私に良い考えがありま〜す!」
クララ「一応聞いといてあげる。 嫌な予感しかしないけど」
クルル「男の人がタバコってやつを吸えないようにすればいいんだよね?」
クルル「だから男の人に息を吐くことしかできない魔法をかけるのはどう?」
クララ「死んじゃうから! 呼吸できなくて」
クルル「じゃあこれはどう? タバコって火がつかなきゃ吸えないんでしょ?」
クルル「だから男の人が息を吐くと、水が出てくるように魔法をかけるの!」
クララ「うん、たしかにタバコの火は消えるけど! 常にビショビショになっちゃうじゃない、男の人!」
クルル「分かった!」
クルル「じゃあ、おばさんが臭いを気にしなくていいようにすればいいんだよ!」
クララ「お、どういうこと?」
クルル「魔法でおばさんの鼻を上下、逆さにするの!」
クララ「・・・・・・」
クルル「そしたら鼻の穴が上になるから、タバコの臭いも――」
クララ「逆にしたところで臭うから!」
クララ「それに急に雨が降ってきたら鼻に入って、おばさん大慌てよ!」
クルル「うぅ〜」
クルル「そんな事言って、お姉ちゃんは何か良いアイデアあるの〜?」
クララ「今考えてるところ!」
クルル「お姉ちゃんは考えすぎなんだよ〜。 何でも思いついたらやっちゃうのが一番!」
クルル「よし! ここは私が――」
クララ「ダメ! そうやって今まで失敗してきたんだから!」
クルル「じゃあどうするの? あのおばさんすっごく困ってるよ?」
  あいかわらず若い男はタバコを吸い続け、おばさんはゲンナリしている。
クララ「分かったわ!」
クララ「おばさんに、男の人を注意できる勇気を授ければいいのよ!」
クルル「え〜、そんなので大丈夫かなあ?」
クララ「あんたのアイデアよりマシよ。 見てなさい!」
クララ「クララクララクラクララクラ〜! おばさんに勇気を!!」

〇ハイツ
おばさん「ちょっとすみません!」
  若い男は階上を見上げる。
若い男「?」
おばさん「タバコの煙、臭いんですけど!」
若い男「は?」
若い男「自分ん家のベランダでタバコ吸って何が悪いの?」
おばさん「臭いが布団につくんです!」
若い男「じゃあ引っ越せば?」
おばさん「はあ!?」

〇ビルの裏通り
クルル「ほら〜、全然大丈夫じゃないし〜」
クララ「もっと頑張っておばさん!」

〇ハイツ
おばさん「て、ていうか」
おばさん「平日のこんな時間に家にいるなんて、ちゃんと仕事してるんですか!?」
若い男「いやいや」
若い男「午前中、家にいるだけで仕事してないって決めつけるとか、どんだけ古いんだよババア」
おばさん「バ、ババア!?」
若い男「俺、一応自分で会社立ち上げてる社長なんすけど」
おばさん「いや、社長だからって、ベランダでタバコ吸っていいって事にはならないでしょ!?」
若い男「言ってねえし、そんなこと一言も。 何言ってんのババア」
おばさん「ババアって言わないで!」
若い男「だってババアじゃん」

〇ビルの裏通り
クルル「なんか、子供の喧嘩みたいだね」
クララ「・・・・・・」

〇ハイツ
若い男「そもそも、ここのマンションって大通りに近いから、ベランダに干したら逆に排気ガスとかで汚くなるんじゃないすかね?」
おばさん「は・・・?」
若い男「あと杉も近くに植えてあるから、花粉も飛んでくるし」
若い男「タバコより、そっちを気にした方がいいんじゃないすか?」
おばさん「何言ってるのよ、布団は外に干した方がいいに決まってるじゃないの!」
おばさん「ダニが退治できるんだから!」
若い男「いやいや。 だから考えが古いんすよ」
若い男「天日干ししてもダニって死にませんよ?」
おばさん「え・・・?」
若い男「だったら布団乾燥機の方が断然、有効だし」
若い男「今、布団乾燥機って良いのあるし、買ったらどうすか?」
おばさん「何であんたにそんな事言われなきゃいけないのよ!」
若い男「ダニって50℃以上の環境に2、30分以上置かないと死滅しないんすよね」
若い男「そんなの天日干しじゃ無理でしょ」
おばさん「屁理屈ばっかり言ってるんじゃないわよ!」
おばさん「とにかく布団は外に干すのが一番って決まってるのっ!」
  おばさんはそう言って布団を叩く。
若い男「あーダメっすよ」
若い男「布団って叩くとダニの死骸が粉になって、表面についちゃいますから」
おばさん「・・・!」
若い男「ちなみに布団乾燥機にかける場合も、その後に布団の表面を掃除機がけしなきゃ意味ないすよ」

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