03 弁当 パート3(脚本)
〇高い屋上
午前の課題が全て終わって、俺は何だか疲れて居たので、うーんと背伸びをして気分を落ち着かせた。そして俺は約束通り
学校の屋上へと足を運ばせた。太陽が真上に見えてとても眩しかったが、余り暑くは感じられなかった。
沢渡隼也「良い天気だな。食った後の昼寝が楽しみだ。咲は、まだ来て無い見たいだな」
俺は屋上に有るベンチに腰を掛けて、咲を待つ事にした。それから少し経った頃に、咲が三谷と共に屋上の入口に来て居た。
三谷かな恵「咲、大丈夫だよ!あたしは裏で応援してるから!」
星宮咲「う、うん!私頑張るから!」
三谷に背中を押されて、咲は意気揚々で弁当箱を手に持ち、俺の元へと歩み出した。
星宮咲「隼也!」
少しぼーっとしてたが、咲の声には直ぐに反応出来た。
沢渡隼也「咲!待ってたよ!」
星宮咲「お待たせ、はいこれ!」
今朝にも見せて貰ったが、彩りが良くとても美味しそうだ。咲の苦労が伝わって来る。俺は咲から弁当と箸を受け取る。
沢渡隼也「有難う。頂きます」
俺は手に箸を取り、早速卵焼きを口の中に運び込む。最初は甘い味を感じたが、噛んでる内に口の中に何だか違和感を感じ始め、
沢渡隼也「ん?むがっ!ぶへぇ!!」
星宮咲「しゅ、隼也!?どうしたの!?」
卵焼きを食べた途端、物凄く刺激が強く、食べれる様な味では無かった為に思わず吐き出してしまった。物凄く苦いと言うか、
自分でも何て説明すれば良いか分からない程に不味かった。
沢渡隼也「こ、これ一体何入れたらこんな味に成るんだよ!?ちゃんと味見したのか!?」
星宮咲「ち、違う!こんな筈じゃあ」
弁当の味の酷さに物凄く怒りたい気持ちが湧いたが、何だか腹痛の様な痛みが走って来てそれ所じゃ無かった。
沢渡隼也「も、もう駄目!後で説明して貰うからな!」
俺は腹痛に耐えられず、急いでトイレへと走り去る。咲はこの状況に唖然とする事しか出来ず、物陰に隠れてた三谷が
咲の元へ慌てて駆け寄る。
三谷かな恵「咲!一体どう成ってるの!?どんな味付けした訳!?」
星宮咲「違うの、朝料理して味見した時は美味しかったのに、何で・・・こんな・・・」
自分でも何が起きたのか全く分からない咲は混乱する事しか出来ずに泣き崩れた。何故こんな事に成ってしまったのか、
俺に対して何て説明すれば良いのか、今の咲にはどうにも出来なかった。
黒崎友香「・・・・・・」
〇個室のトイレ
沢渡隼也「うおぉぉえ!うおぉぉえ!」
余りの不味さに口の中の物を吐き出して居た俺。今まで感じた事の無い程の痛みで、暫くトイレから離れられそうに無かった。
沢渡隼也「(咲の奴、俺が余りにも鈍臭いから、こんな嫌がらせを?そんなまさか、あいつに限ってこんな!うおぉぉえ!!)」
黒崎友香「あの、大丈夫ですか!?トイレから凄い声が聞こえたんですが、一体何が!?」
俺の後ろに駆け寄って来たのは一年の黒崎友香だった。男子トイレに自ら入って来る辺り、俺は余程デカい声を出して居たのだろう。
沢渡隼也「いや、その、友達の女の子から弁当貰って、それを食べたら凄く不味くて、それで気分が最高に優れなくて俺、お、おぉぉえ!!」
黒崎友香「大変!今直ぐ救急車呼びます!その後、保健室の先生に知らせますね!」
その後、彼女は救急車を呼んだ後に俺を保健室に連れて介抱してくれた。暫くして俺は病院へと搬送され、医者に診て貰って
事なきを得た。一応救急車に乗せられた時も彼女が着いて来てくれて、医者に診て貰った後も最後まで付き添ってくれた。
〇病院の入口
沢渡隼也「君が居てくれたお陰で助かったよ。どうも有難う。えっと、君の名前は・・・」
黒崎友香「お役に立てて光栄です、沢渡先輩。私、貴方と同じ夏目高校で一年の、黒崎友香って言います。友香で良いですよ」
沢渡隼也「同じ学校で友香ちゃんか。もう本当に有難う!感謝してもし切れないよ!でも、俺の所為で午後の授業受けられなかったね」
黒崎友香「そ、そんな事無いですよ!何か変だと思って来て見たら、先輩が凄く辛そうにしてて授業所じゃ有りませんでしたから!」
沢渡隼也「でも、本当に有難う。この借りは何時か必ず返すよ。同じ学校だし、困った事が有れば何時でも相談してね」
あの時は吐き気と腹痛が酷くてどうにも出来無かったが、近くに彼女が居てくれて本当に良かった。
初対面だけど、この子はとても優しい子なんだと俺は思った。
沢渡隼也「もう暗いし、学校の荷物は・・・」
黒崎友香「大丈夫ですよ。先輩の荷物は私が持って来ました」
沢渡隼也「あぁ、何から何まで有難う。今日は送って行くよ」
黒崎友香「はい。有難う御座います。あの、どうせなら連絡先、交換しませんか?学校で困った時、直ぐ相談とかしたいですし」
沢渡隼也「う~ん・・・それもそうだね。行き成りそんな事するのは相手に悪いから遠慮してたけど、君が大丈夫ならやろうか」
こうして俺は友香ちゃんと連絡先を交換し、彼女の自宅へと送り届けた。今日の午後は散々だったけど、明日はもっと良い日に
成って欲しいと心の中で願った。だけど、この時俺は気付いて無かった。俺は友香ちゃんに、自分の名前を教えた事が有ったのかと。