第二豆 セコイ、してますかい?(脚本)
〇水の中
〇会見場
フニク ダイズ「奇跡の豆──"ミラクルビーン"」
フニク ダイズ「この豆を人体に共生させる事で ヒトは植物と同じ仕組みを得られます」
フニク ダイズ「つまり──光合成を行い 酸素を供給する事が可能になるという訳です」
記者「人体に共生? 身体に悪影響があるのでは?」
フニク ダイズ「大丈夫です! ミラクルビーンは危害を加えません」
フニク ダイズ「むしろ凡(あら)ゆる病気に対して免疫力を高める効果も期待されているのです!」
フニク ダイズ「我々人間の寿命が尽きた時‥」
フニク ダイズ「身体を苗床に植物を育てるよう インプットされています」
フニク ダイズ「これにより将来的に温暖化を解決し 地上の緑を再生させるのも夢じゃないのです」
記者「つまり‥ご遺体は火葬せずに土葬によって 緑を生やすという事でしょうか?」
フニク ダイズ「そうです 生命の循環として土葬を推奨します」
記者「土葬は腐敗による病原菌の要因なのでは?」
フニク ダイズ「それも心配ご無用です!」
フニク ダイズ「ミラクルビーンの働きで 様々な感染病を中和し、予防します」
フニク ダイズ「更に過酷な環境下でも育つ生命力を 持ち合わせているのです」
記者「まるで"ゾンビ"みたいな豆ですねぇ!」
フニク ダイズ「なるほど! それは良いですね!」
フニク ダイズ「別名"ゾンビビーン" ──とでも名付けてみましょうか!」
フニク ダイズ「ミラクルビーンが実用化した暁には‥」
フニク ダイズ「地上の緑を再生するプロジェクト "グリーンオブピース"を実行致します」
フニク ダイズ「どうか皆さま! お力添えのほど、宜しくお願い致します!」
〇黒背景
〇個人の仕事部屋
セコイ コウカツ「──その結果が、現在の地上だ」
セコイ コウカツ「せっかく‥」
セコイ コウカツ「娘達まで利用して 御膳立てしてやったのにも関わらず‥」
セコイ コウカツ「このザマかよ!」
セコイ コウカツ「ハッ!」
〇白
セコイ コウカツ「そもそも!」
セコイ コウカツ「ヒトに植物を寄生させる事自体が 受け入れられねえ!」
セコイ コウカツ「あんなバケモノに成れ果てるんだもんなあ?」
セコイ コウカツ「あー気持ち悪り!」
セコイ コウカツ「──ったく」
セコイ コウカツ「なにが"グリーンオブピース"だ!」
セコイ コウカツ「ギャグかよ笑わせてくれるなあ!?」
セコイ コウカツ「ハァ」
〇空
〇個人の仕事部屋
セコイ コウカツ「──人工天気"ソラマメ"」
セコイ コウカツ「開発して貰ったのには感謝してるさ」
セコイ コウカツ「おかげで人類は生き延びる事が出来たし 民衆の生活も大分マシになった」
セコイ コウカツ「まさか、あんな豆っころが 凶悪ウィルスになるなんてなあ?」
セコイ コウカツ「"感染病を中和し、予防します"だあ?」
セコイ コウカツ「出来てねえじゃねえかよ!」
セコイ コウカツ「あー、腹痛てぇ」
セコイ コウカツ「お前のヨメさんが知ったら どんなに泣き叫ぶだろうな?」
セコイ コウカツ「やはり俺が蘇良ちゃんを貰うべきだったなァ」
セコイ コウカツ「──ダイズ」
秘書「世恋様、演説のお時間です」
セコイ コウカツ「ああ、今行く」
セコイ コウカツ「さぁ〜て!」
セコイ コウカツ「今日もカワイコちゅん達の歓声を浴びまくるとするか!」
セコイ コウカツ「ちゅんちゅん!」
〇近未来の開発室
???「ここ、は‥」
???「あ、目覚めたうさ!」
オーレンジ「どこもクサッてないうさ?」
オーレンジ「ふむふむ」
???「あの‥」
オーレンジ「しゃべった!?」
???(えぇ‥)
オーレンジ「もう、ぞびぞび言わない‥」
オーレンジ「治って良かったうさ♪」
???(ウサミミ‥?)
???(僕は異世界転移されたのだろうか?)
オーレンジ「うさの名前はオーレンジ!」
オーレンジ「にんじん好きだけど〜・・・」
オーレンジ「オ ゥ レ ン ジ ! !」
オーレンジ「うさぎのアンドロイドうさ!」
オーレンジ「よろしくねっ♪」
コウコウ ウズラ「僕はウズラ "孝行 鶉(コウコウ ウズラ)"だ」
コウコウ ウズラ(ロボットなのか‥)
コウコウ ウズラ(凄い元気だな‥)
コウコウ ウズラ「オーレンジ‥さん? ここはドコなんだい?」
オーレンジ「ココはね、マメ博士のラボ!」
オーレンジ「ズラくんは地上で ぞんび化してたところだったうさだから‥」
オーレンジ「ワクチンを打たせてもらったうさ!」
コウコウ ウズラ「"ズラ"違う、"ウズラ"だ」
コウコウ ウズラ「とにかく、ありがとう! もう助からないと思ってたよ」
コウコウ ウズラ「あの時、ゾンビに‥」
コウコウ ウズラ「──そうだ」
〇荒廃した市街地
ぞびちゃん「ご ん な わ だ じ で も」
ぞびちゃん「ず ぎ だ ど い っ で ぐ れ ま ず が ぁ」
〇近未来の開発室
コウコウ ウズラ「あの! 僕以外に感染者は居なかったかい?」
コウコウ ウズラ「女の子が居た筈なんだけど‥」
オーレンジ「女の子‥?」
オーレンジ「さては、恋仲の関係だったりするうさね?」
コウコウ ウズラ「え!?」
コウコウ ウズラ「うん‥」
オーレンジ「やっぱり!?」
コウコウ ウズラ「永遠の愛を誓い合ったんだ」
オーレンジ「本格的ぃ!?」
彼女なら、もう目覚めている
安心したまえ
コウコウ ウズラ「兎が喋った!?」
オーレンジ「‥博士うさよ〜」
だが──
彼女は会いたくないそうだメ
〇近未来の開発室
???「私、どうして‥」
オーレンジ「あ! 目覚めて良かったうさ!」
???「ウサミミ!?」
気分はどうかメ?
体調が優れないなら遠慮なく言ってくれ──
???「兎が喋った!?」
オーレンジ「博士がナビラビを通して喋ってるうさ」
アカサカ ササ「私は"ササ" 赤坂 紗々(アカサカ ササ)といいます」
アカサカ ササ「あの、私以外に誰か居なかったでしょうか?」
ああ、居たよ
今は治療中だがメ
〇荒廃したショッピングモール
ぞびちゃん「ぞび」
ぞびお「ぞ、び」
〇近未来の開発室
まるで付き添っているかのように
君の後をついてきていたメ
アカサカ ササ「あの人だ‥!」
オーレンジ「知り合いなの?」
アカサカ ササ「はい‥」
アカサカ ササ「私の、婚約者です」
〇諜報機関
フニク エマメ「そうだったのか‥」
フニク エマメ「ならば一刻も早く治療して 君に会わせてあげないとメ!」
アカサカ ササ「いえ‥」
アカサカ ササ「私は、あの人に会う事が出来ません」
〇近未来の開発室
オーレンジ「どうしてうさ!?」
オーレンジ「結婚するんでしょ? 仲良しこよしじゃないうさ!?」
フニク エマメ「すまないメ、オーレンジ 少し静かにしてくれると助かる」
オーレンジ「ガルバンゾ!」
アカサカ ササ「もちろん、彼の事は愛しています」
アカサカ ササ「今でも、これからもずっと」
アカサカ ササ「でも、私は汚れているから」
アカサカ ササ「穢(けが)されてしまったから‥」
〇近未来の開発室
コウコウ ウズラ「そん、な‥」
コウコウ ウズラ「穢されたって何だよ! 他の男から襲われたって事か!?」
オーレンジ「多分、そうだと思ううさ」
コウコウ ウズラ「だからって‥」
コウコウ ウズラ「どうして僕に 相談してくれなかったんだよ‥」
恐らく『言えなかった』んだメ
君を心配させまいと、一人で抱え込んで
コウコウ ウズラ「さーしゃ‥! くぅ‥ うぅ‥」
〇諜報機関
フニク エマメ「ここまで深刻とはメ‥」
フニク エマメ「あの男が掲げた制度は、な」
オーレンジ「制度、うさ?」
フニク エマメ「お前も知っている筈だろう?」
〇近未来の開発室
丁度、あの男が演説する時間だ
そこのモニターで観てみたまえ
フニク エマメ「オーレンジ」
オーレンジ「りょーかいうさ!」
オーレンジ「ラビッとな♪」
"トップ多妻制度"──
この言葉を知らない者は居ないだろう
コウコウ ウズラ「ああ、知っている」
コウコウ ウズラ「その制度の所為で 若い男女は別々に生活しているんだ」
コウコウ ウズラ「僕達は自由に結婚はおろか 交際すら許されない立場なんだよ」
コウコウ ウズラ「だから僕とさーしゃは 駆け落ちする筈だったんだ」
オーレンジ「か、駆け落ち‥!」
フニク エマメ「そこの兎、興奮すな」
そろそろ始まるようだメ
〇黒
コレが
その馬鹿げた制度の実態の一つだ
「世の中の皆んな〜!!」
セコイ コウカツ「恋をしてますか〜い!?」
「い え え ぇ ぇ い ! !」
〇白
セコイ コウカツ「世恋-セコイ- し て ま す か ぁ い ! ?」
「い え え ぇ ぇ ぁ あ ! !」
〇コンサート会場
セコイ コウカツ「皆んなありがと〜う!」
セコイ コウカツ「こうして僕が、トップで居られるのも 皆んなの声援があってこそ!」
セコイ コウカツ「だ・か・ら!」
セコイ コウカツ「今日も張り切って 皆んなに愛のメッセージ!」
セコイ コウカツ「届けちゃうよ〜お?」
「聞かせてえ〜! 聴かせてえ〜♪」
〇白
セコイ コウカツ「ミュージックゥゥ──」
曲名:世恋 高勝政権愛歌
(せこい こうかつ せいけん あいか)
歌:世恋 高勝
原曲:「今日も快晴」(TapNovelのBGM)
セコイ コウカツ「スタァト♪」
セコイ コウカツ「せぇ〜・こ・い こ・う・か・つぅ〜♪」
セコイ コウカツ「せ・い・け・んぅ〜♪」
セコイ コウカツ「ぼ・く・ら・は こ・い〜♪ してるぅ〜♪」
セコイ コウカツ「みぃ〜・ん・な ま・と・め・てぇ〜♪」
セコイ コウカツ「セ・コ・イ・がぁ〜♪」
セコイ コウカツ「か・な・え・て あ・げぇ〜・るからぁ〜♪」
セコイ コウカツ「こ・え・を・もっ・と♪」
「き ぃ 〜 か せ ぇ て ぇ 〜 ♪」
セコイ コウカツ「あ・い・を・もっ・て♪」
「か 〜 な え る か 〜 ら 〜 ♪」
セコイ コウカツ「あ ん ☆ し ん ♪」
〇白
セコイ コウカツ「今日も集まってくれてありがと〜う!」
セコイ コウカツ「み〜んな僕の大事な奥さんだからね!」
セコイ コウカツ「愛してるよぉ〜!」
〇黒
〇近未来の開発室
・・・
「○ ね ば い い の に」
アカサカ ササ「えっ!?」
「えっ!? えっ!?」
アカサカ ササ「そ、そうよね‥」
アカサカ ササ「私なんか‥」
アカサカ ササ「居ないほうがいい、よね‥」
コウコウ ウズラ「ち、違う! さーしゃに言ったんじゃないんだ!」
オーレンジ「うさ、やっちまったようだうさ‥」
フニク エマメ「なにを放心しているんだメ! 彼女を追いたまえ!」
オーレンジ「うっさうっさー!」
〇諜報機関
フニク エマメ「前途多難だメ‥」
フニク エマメ「早まらなければいいが‥」
セコイのに恋の唄を歌うとは!!
世の恋とは素敵な名前なのに、響きは最悪。
相反するところが面白い。宮沢賢治みたいに音感があって、
視覚と聴覚で優れてますね!!
設定もイカしてるし、カッコイイです😀
最初は人類の希望だった豆がこんな事に……。
と、思っていたら見るからに胡散臭いおっさんが歌を歌ってる!?
ゾンビ化を免れた人達の状況も色々やばそうですね🤔
二人のカップルの行方も気になりますがオーレンジちゃんも彼氏欲しいとはお年頃なんですかねー☺️
セコイの歌を聞いた僕も思いました。
◯ねば良いのに。