後輩君は何かがおかしい。

гипноз

思い出さずとも(脚本)

後輩君は何かがおかしい。

гипноз

今すぐ読む

後輩君は何かがおかしい。
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

  なんで・・・?
  警告はしたよ、私・・・
  ・・・貴方はお兄ちゃんに狙われた。
  ・・・でも、
  過去の出来事を思い出さなければ・・・きっと平気なはず。
  思い出さないで、過去を。
  あの忌々しい記憶を・・・
  ・・・そうしたら──

〇オフィスのフロア
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「──さん、藍沢さ~ん?」
  「──あれ・・・」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「やっと起きた・・・」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「藍沢さんが作業中に寝るなんて珍しいことあるんやな。」
  「ごめんなさい、ちょっと睡眠不足で・・・」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「何でそれはよ言わんかったん!?」
  「いや、大丈夫だったから・・・」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「あー・・・ダメやそれ。 早退して家でゆっくり寝ればええやん。」
  「でも仕事が・・・」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「ちょっとは自分に甘まくなれや!」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「もうええ!俺が一肌脱いだる! 仕事ならやっとくからとっとと帰りや!」
  「でも、それだと九条さんが・・・」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「社長~!どこにおるーん!」
神喰 葵 (かみじき あおい)「そんなに大声出さなくても分かるよ・・・」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「社長、藍沢さんが早退したいんやて。」
  「えっ!?」
神喰 葵 (かみじき あおい)「ん、そうなの?」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「仕事なら俺がやっとくさかい、今日だけ早めに帰してあげてや。」
神喰 葵 (かみじき あおい)「九条君があの量を終わらせられるのなら承諾するよ~」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「ん~・・・難しいやろうけど、やれるとこまでやるで。」
神喰 葵 (かみじき あおい)「ならいいよ、藍沢君早退で。」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「あんがとございます、社長~」
神喰 葵 (かみじき あおい)「まぁその分明日はもっと量増やしとくね。」
神喰 葵 (かみじき あおい)「じゃ、また明日~」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「何か面倒なことになってもうたわ・・・」
  「でも、明日頑張ればいい話ですから。」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「せやな!」
九条 真尋 (きゅうじょう まひろ)「んじゃ、帰ってよう寝るんやで~」
  「あっ、はい・・・」
  早退は嬉しいけど・・・
  明日地獄だろこれ。
  もう確定したことにどうのこうの言うつもりはないが・・・
  (とりあえず帰って寝よう。)

〇開けた交差点
  会社から家まではざっと10分。
  そのまま帰るのもあれなので、
  いつもは通らない道を通って帰ることにした。
  「わ、こんなところに出るんだ・・・」
  住んでいる街と言えど、まだ知らないところが多いな。
  こういう事をしていると、子供に戻ったみたいで少し楽しい。
  (・・・あ、こんなことしてる場合じゃなかったんだ・・・)
  そうだ、何のために早退したんだ。
  (早く帰らないと・・・)
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「あっ・・・あのっ!」
  「ん?どうしたんだい?」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「私のこと、分かりますか・・・?」
  「あれ、どこかで会った──
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「この姿でもわからない・・・?」
  その時、ハッとした。
  私は、この子を知っている・・・!
  「キ、キミは・・・!」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「あ、よかった・・・分かったんですね。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「初めまして、私は滝野瀬莉都。 貴方は藍沢さんで・・・あってますよね?」
  「・・・えぇ、間違いないですが。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「詳しい話は家でしましょう。 お兄ちゃんに聞かれると厄介です。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「ついてきてください、こっちです。」
  「え、ちょっ、待って・・・!」

〇マンションのエントランス
  あの子のことを追って細い路地を通り抜けた先にあったのは、
  最近リノベされたマンションだった。
  「あれ、ここって・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「ここです。 お兄ちゃんは一人暮らしですけど、よくここに来るんで注意してください。」
  「あ、うん・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「じゃあ、お部屋まで案内しますね。」

〇玄関の外
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「よし、お兄ちゃんはいない・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「大丈夫そうなので入ってどうぞ。」
  「本当に入って大丈夫なのかい・・・?」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「大丈夫ですよ、両親居ないので。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「・・・どうにしろ、貴方には話しておかないといけないことがあるので・・・否が応でも来てもらいますよ。」
  「・・・分かったよ。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「じゃあ、どうぞ。」

〇明るいリビング
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「えっと、 そこのソファーに座ってください。」
  「あ、はい。」
  言われた通り、ソファーに座る。
  ・・・絶対高いやつだこれ。
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「・・・あの、敬語やめてもいいですか?」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「話にくくって・・・」
  「全然大丈夫ですよ。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「ありがとう。 じゃあ・・・どこから話そう・・・?」
  「私は・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「?」
  「私は、彼と会ったことがないんです。なのに彼は私を知っていて・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「・・・記憶が無いからだよ、藍沢さんの。」
  「記憶が・・・無い・・・?」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「・・・私のお父さんが消したの。」
  「・・・!?」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「私のお父さんが死の間際に消した。 藍沢さんがこれ以上お兄ちゃんに近づくことが無いように。」
  「何か私と彼の間には関係が・・・?」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「・・・そう。 だけど、詳しくは言えないわ。」
  (これは裏がありそうだな・・・)
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「とりあえず・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「藍沢さんはお兄ちゃんに関わらずに過ごすべきだと思う。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「これ以上お兄ちゃんに近づこうものなら 待ち受けるのは辛いことばかりだもの。」
  「それでも・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「”私が思い出したいと言ったらどうなるのか?”って聞きたいのね。」
  「・・・はい。これでは逃げている感じがしてどうにも・・・。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「どうしてもって言うなら止めない。 でも、一時の興味でそれを言っているのなら止めるよ。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「藍沢さんを信用していないわけじゃないんだけど、どうもね・・・」
  「そう・・・ですか。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「・・・結局のところ、記憶なんてきっかけがあればすぐ戻ってしまうわ。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「そのきっかけを無くすのが私の役目。 ・・・それだけは覚えておいて。」
  「分かり・・・ました。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「後は──」
「莉都~?いないの~?」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「ど、どうしよう・・・!? お兄ちゃんが来ちゃった・・・!」
  「ここは慌てずに・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「・・・そう、そうだね。 藍沢さんは隣の部屋に隠れてて。 お兄ちゃんは隣の部屋に絶対入らないの。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「私が来るまで決して扉を開けちゃだめ。」
  「分かりました、そうします。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「うん、じゃあ後でね。」
  「莉都さんも気を付けて・・・!」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「大丈夫だよ、私は。」

〇汚い一人部屋
  隣の部屋に入った瞬間、
  あの時と同じ寒気が体を襲った。
  まさか、この感じは・・・
  「うっ・・・っ・・・」
  頭に鈍い痛みが走った。
  ズキズキと、中心部から来る痛み。
  「どうにか・・・っ、しないと・・・」
  意味もなく伸ばした手が、何かを掴んだ。
  そのまま顔の近くまで持ってきてみる。
  (男子二人の・・・写真?)
  かなり年の離れた男二名が、仲良さげにピースしている写真。
  これは・・・誰?

〇海岸の岩場
???「──さん、僕が友達でいいんですか?」
???「・・・僕、キチガイですよ? 何をしでかすか分からないし、僕なんかと絡んでたらいじめられるかも・・・」
  「・・・誰かが言ってただけでしょ?」
  「それに、私は雫の良い所・・・いっぱい知ってる。大丈夫、言い返せるよ。」
???「──さん・・・」
  「何言われても気にしないで、雫には私がいるから・・・」
???「・・・ありがとうございます。」
  「そうだ!じゃあ、仲良しのしるしになる写真撮ろうよ!」
???「・・・しゃ、写真?」
  「ほら、せっかく海来たんだし。形に残した方が記憶に残るでしょ?」
???「そう・・・そうですね! じゃあさっそく取りましょう♪」
  「あ、じゃあピースして撮ろう?」
???「はい! じゃあ──」

〇汚い一人部屋
  ──あの少年は誰だ・・・!?
  (何か、大切なことを忘れている・・・)
  あれが、消された記憶の欠片・・・?
  忘れた記憶だと仮定するなら、アレは思い出してはいけないのか・・・?
  (・・・わからない・・・)
  ──私は一体どうしたらいいのだろう?

〇明るいリビング
  一方そのころ・・・
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「お兄ちゃん、今日はやけに嬉しそうね。」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「いや~分かっちゃう?」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「そこまでルンルンの姿を見るのも久しぶりだからね・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「一体、何があったの?」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「実は・・・」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「──いや、なんでもない。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「何でもないわけないでしょ?」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「・・・オマエに言ったら何か悪いことが起こりそうだからね。」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「保険だよ、保険。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「何よその言い方、一応私達兄妹よ?」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「信用してないわけじゃないが、一時の善意で”あの時”みたく邪魔されちゃ困る。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「それは・・・お父さんのこと? ”あの日”のことがそんなに不満?」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「・・・あぁ、相当に不満だよ。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「・・・そう。 今日はもう用がないなら帰って。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「私だって暇じゃない。 お茶番に付き合ってる時間なんてないわ。」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「じゃ、こんくらいでご暇しますかね~」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「──邪魔だけはするなよ。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「・・・するわけないでしょ。」

〇汚い一人部屋
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「やっとお兄ちゃん帰ってくれたわ。 もう出てきて大丈夫よ、藍沢さん。」
  「え、あ、はい・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「・・・顔色悪いわよ?」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「もしかして、あの間に何かあった・・・!?」
  「実は・・・」
  あの間に起ったことを全て話した。
  隠していたら、もっと恐ろしいことが起こる気がして。
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「・・・そうだったの。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「その写真のこと、ハッキリ思い出した? その二人が誰かまで。」
  「いや、誰かまでは・・・まだです。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「それならまだ大丈夫。 分からないのならそのままにして。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)(・・・これ以上きっかけを作ったら、それこそお兄ちゃんの思うつぼだわ・・・)
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)(私がここで止めなきゃ・・・)
  「あ、あの・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「──何、藍沢さん。」
  「私、これからどうしたら・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「まずは言った通りお兄ちゃんを避けて。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「関係するものにも近づかない方がいいわ。 ・・・今回だって、写真がきっかけになりかけたもの。」
  「分かりました・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「後、何かあったらいつでもここにきて。 午後なら大体家にいるから。」
  「何か、色々とすいません・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「いや・・・今回は私のせいでもあるわ。 お手伝いくらいさせて。」
  (私の・・・せい・・・?)

〇明るいリビング
  リビングに戻ってふと窓を見ると、
  もう外は真っ暗だった。
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「あっ、いつの間にかこんな時間に・・・!」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「藍沢さん、帰り大丈夫そう・・・?」
  「大丈夫ですよ。」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「・・・後ろには気を付けてね。 お兄ちゃんが後をつけるかもしれない。」
  「流石に法に触れることはしないと思いますが・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「だと・・・良いのだけど。」

〇玄関の外
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「それじゃあ、気を付けて。」
  「はい、ではまた・・・」
滝野瀬 莉都(たきのせ りつ)「うん、またね。」

〇マンションのエントランス

〇開けた交差点
  もと来た道をたどること数分、
  ようやくあの道まで戻ってこれた。
  ここから家まではあと15分ぐらいだ。
  (気味も悪いし・・・走って帰ろう。)

〇一戸建て
  全力で走り続けること約数十分。
  ようやく家まで帰ってくることができた。
  (やっと帰ってこれた・・・)
  (人は・・・)
  辺りを見回してみるが、人の気配どころか生物の気配すらない。
  (よかった、後をつけられていたらどうしようかと・・・)
  何故か今更怖くなってきたので、そそくさと家の中へ入る。
  人が入った痕跡はなかったので、ひとまず一安心という所だろうか。
  ・・・流石に疲れた。
  今日はこのまま寝てしまおう。

〇一戸建て
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「ふーん・・・ 藍沢さん、ここに住んでたんだ。」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「莉都がやけに大人しいから何かと思えば・・・」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「まさかここで家を知れるとはね~。 つけてきて正解だった♪」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)(ホントは中入りたいけど・・・ やっぱりこんな夜分は迷惑だよね。)
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「明日会社でいっぱい話せばいいか・・・」
滝野瀬 雫(たきのせ しずく)「じゃ、また来ますね、藍沢さん♡」

成分キーワード

ページTOPへ