Episode6.音撃作戦(脚本)
〇研究装置
S「Caster様、準備が整いました」
Caster「サンキュー、S。これで・・・」
サージェント本拠点、研究所。
その研究所の中に、SとCasterの姿があった。
二人は、研究所の一室の中に存在する大型のポッドを共に見つめていた。
ポッドは、人が普通に入る大きさであり上部には入り口の様な穴が開いている。
S「アハハハ!ぺしゃんこに握り潰して、宇宙の彼方に飛ばしたいなぁ!!」
S「流石にぺしゃんこにして投げ飛ばしちゃったら、永遠にGOOD☆NIGHT!だな!」
Caster「はいはい、分かったよ」
三重人格故の事だ。
正直な所、いつもの事なのでCasterは冷静に対応した。
S「それでは、起動を開始します」
Caster「ああ、頼む」
機械音が鳴ると同時に、斜めを向いていた縦長のポッドはゆっくりと直立する。
そして完全に直立したポッドに設置されていた扉は開き、内部が顕となった。
S「これが我々の新しい仲間・・・」
Caster「名前は・・・Sounder!」
Sounder「Hello, I have confirmed activation. (こんにちは、起動を確認しました)」
ポッドの中から現れたのは、一人の美しい女性だった。
透き通るかの様な綺麗な水色の髪。
やけにサイバーパンクな衣装に身を包んだ肉体。
さながら、その姿はサイボーグの様な見た目をしていた。
Sounder「初めまして、サージェントの皆さん。 Sounderと申します」
Caster「よろしく、私はCaster」
S「Sとお呼び下さい」
Sounder「了解しました、ではご指示を」
〇塔のある都市外観
シャドウ「おお、結構広いな!」
リアン・ジュール「流石、発展してる街ね」
グレンディ・ロメルデュアル「めっちゃ、綺麗な街じゃん!!」
珍しく今日は休みの日。
束の間の休暇を、チーム・シャドウの面々は楽しんでいた。
折角と言う事もあって、シャドウはリア、グレンと共に自分達が救った街である、ロックウェールの観光を行っていた。
シャドウ達は、いつもの戦闘用の服を着るのではなく、珍しく私服を着用して外出を行っていた。
しかし、見てみれば実に良い街だと改めて三人は実感する。
綺麗な町並み、それなりの人の数、そして美しい外観の数々。
荒んだあの世界とは、まるで別。
完全に別世界に存在している気分に三人はなっていた。
グレンディ・ロメルデュアル「ねぇねぇ、美味しいスイーツの店もあるみたいだよ、行こう!」
リアン・ジュール「あ、それいいね!! ほら、シャドウも行こう!!」
シャドウ「おう、分かったから、引っ張らないでくれぇ〜」
と言う訳で、いつもの殺伐とし気の抜けないガーディアンズの日々とは裏腹に。
三人は街へと駆けていった・・・。
〇華やかな裏庭
ザック「あ、お姉ちゃん!また会えた!!!」
アリス「おぉ、あの時の少年!!元気そうでなによりだ!」
三人で綺麗な街へと繰り出していたシャドウ達とは違い、アリスと蒼一郎は違う場所に来ていた。
ザック「お姉ちゃん達のお陰で、街も皆も助かったよ!!」
この日、アリスと蒼一郎はアウレアに呼ばれて、二人の暮らす家に招かれていた。
ザックは恩人の様な存在であるアリスに完全に懐いてしまっていた。
あの日、炎に囲まれて危うく死ぬ所を助けられたザック。
最早、懐いてしまうのは必然であったかもしれない。
ザック「お姉ちゃん大好き!!」
アリス「はは、そりゃありがとよ!!」
アウレア・サムダック「あらあら、ザック、もうお嫁さん見つけたの? これでもう将来安泰ね〜」
アリス「ちょ、ちょっとお義母さん!早すぎです!!」
一時的ではあったが、掴み取った平和。
まるで、酔いしれる様にして彼女らはその一時的に得た平和に浸っていた。
武川蒼一郎「チーム・シャドウ、応答してくれ!」
アリス「蒼一、どうした!?」
突如として、通信機を介して行われた会話。
声の主は蒼一郎であり、口調はやや焦った様な口調だ。
武川蒼一郎「恐らくやが、サージェントの手先が来たみたいや」
アリス「位置は!?」
武川蒼一郎「ロックウェールから少し離れた廃墟街や。レーダーに反応があったんや」
アリス「マジかよ、すぐに行くぜ!」
蒼一郎から告げられたサージェントの手先の出現。
正規ではないとは言っても、ガーディアンズの一人。
アリスは居ても立っても居られなくなり、すぐにその場を立ち去ろうとする。
ザック「お姉ちゃん・・・」
去り際、ザックが物悲しい表情でアリスを見つめる。
アリス「心配すんな、すぐに戻ってくるからな」
〇荒廃したセンター街
その後、蒼一郎に指示されたアリスは、すぐに指定された廃墟街へと向かっていた。
無論、街に散策に出掛けていたシャドウ達も同様に、廃墟街へと集められる事となった。
シャドウ「全く、タイミングが悪いぜ・・・」
リアン・ジュール「もう、本当最悪!!」
グレンディ・ロメルデュアル「ま、まぁ早く終わらせよう?」
折角、何も起こっていなかったので街に散策しに行っていたら、このザマだ。
女性二人が少しながら不機嫌になってしまっているのも仕方がない。
シャドウ「しかし、怒っても変わらんしな。調査するぞ」
リアン・ジュール「そ、そうね・・・」
しかし、ここでごねてしまった所で何かが変わる訳もない。
若干、気乗りしないながらも皆は調査を開始する事にした。
〇荒廃したセンター街
武川蒼一郎「しっかし、薄気味悪い場所や・・・」
アリス「同感、あんま雰囲気好きじゃねぇし」
蒼一郎の言う通り、今シャドウ達がいる場所はお世辞にも良い雰囲気と言える様な場所ではなかった。
かつて誰かが暮らしていたであろう街に、人の気配は一切感じられない。
窓ガラスは割れ、店の中や外には無数のゴミが散乱している。
道端には、車が錆びた状態で捨てられており、街そのものが廃れている様に思えてくる。
一部の建物は、骨組みが剥き出しとなり、所々炎で焼かれ、焦げてしまった様な跡も見える。
リアン・ジュール「一体、ここで何が...」
武川蒼一郎「まぁ、少なくとも過疎地となって見放された、と言う訳でもなさそうやな」
こんな荒れ様、過疎地となって誰も住まなくなったからこうなってしまったとは考えにくい。
武川蒼一郎「戦争、それとも高度な技術開発における産物なんやろか・・・」
様々な憶測が飛び交う中、ゴーストタウンと化した街には無情にも冷たい風が吹き荒れている。
アリス「しかし、本当にサージェントの刺客がいるのか?人っ子一人いないぞ?」
サージェントの反応があったと、レーダーには記載されてるが、アリスの言葉通り、人の気配は感じられない。
リアン・ジュール「まさか、誤作動だった?」
リアがそう呟いた時だった。
刹那、静寂と虚無を斬り裂いて鳴り響いた轟音。
その音は、正に楽器の音と言うに相応しい音であった。
リアン・ジュール「な、何!?」
シャドウ「この音は...!?」
グレンディ・ロメルデュアル「この音、ギター!?」
グレンの言う通り、突如として響いた音はエレキギターと同じ様な音を放っていた。
シャドウ「ヤバいな、周囲を索敵しろ!」
グレンディ・ロメルデュアル「出てきなさい!」
突如として響くギターの音。
突然過ぎた出来事に、シャドウ達は思わず狼狽する。
リアン・ジュール「もう、こうなったら!」
痺れを切らしたのか、リアは愛用するレールガンを取り出すと、そのまま発射する為に構える。
リアン・ジュール「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるのよ!」
そして、まだ敵が何処にいるかも知らず、手当り次第にレールガンをチャージしては乱射する。
グレンディ・ロメルデュアル「ちょ、下手に乱射しないでよ!」
リアン・ジュール「出てきなさーい!」
しかし、グレンの言葉を聞く事なく、リアはレールガンを発射する。
リアン・ジュール「もう、姿を見せ・・・」
そう呟き、先の方向をリアが見た時だった。
誰かがリアの前に立っていた。
水色の長い髪に、やけにサイバーチックな装備で身を固めている。
勿論、リアはそんな彼女の存在を知る訳がなかった。
リアン・ジュール「だ、誰!?」
レールガンを一度下ろし、リアは謎の人物に質問を投げる。
Sounder「撃破の対象を発見」
リアン・ジュール「え・・・?」
リアン・ジュール「いっつ!」
水色の髪の女性はリアと向き合うなり、手に携えたエレキギターの弦を弾いた。
弾くと同時に、エレキギターからは衝撃波の様な攻撃が飛び掛かり、衝撃波はリアに直撃する。
リアン・ジュール「な、一体これは!?」
案の定、対応出来ずに吹き飛ばされると同時に後ろに存在していた壁に激突する。
壁に背中が激突した事で、体は強く揺らされてしまい、体中に強い痛みが走る。
リアン・ジュール「うぅ、この・・・」
再び、水色の髪の女性はギターを構えると同時に弦を弾こうとする。
Sounder「排除・・・」
シャドウ「させるかぁ!!」
シャドウは剣を構えると同時に水色の髪の女性に急接近し、斬りかかる。
Sounder「回避・・・」
しかし、ひらりと身を捻らせ、簡単にシャドウからの攻撃を容易く回避する。
シャドウ「お前か、サージェントの!!」
Sounder「ワタシの名前はSounder・・・サージェントの音響攻撃兵・・・」
シャドウ「やっぱりか!!」
シャドウの言う通り、彼女はサージェントから送られてきた刺客だと言った。
音響攻撃兵である、と言いながら。
アリス「この野郎、よくもリアを!!」
怒りの表情を見せて、アリスは槍を片手にSounderへと突っ込んでいく。
しかし、まるで見越していた様にSounderは再びエレキギターを構える。
シャドウ「アリスさん、危ない!」
アリス「ぐぁ!?」
しかし、猪突猛進に突っ込んだ事が仇となったのか、エレキギターから発生する衝撃波を正面からアリスは受ける。
アリス「ぐっ!!」
壁や周辺の建物まで飛ばされる事はなかったものの、僅かに体は宙に浮き、鈍い痛みに襲われる。
シャドウ「接近戦じゃ不利だ、グレン頼む!」
シャドウは、すぐにグレンに指示を送る。
グレンディ・ロメルデュアル「狙撃は任せて・・・」
シャドウ達が戦闘を行っていた場所からやや離れた場所で、グレンはボウガンを構えながら敵を射抜くタイミングを伺っていた。
グレンディ・ロメルデュアル(向こうはまだ、こっちに気が付いていない。大丈夫、大丈夫・・・)
ボウガンに矢を番え、グレンはSounderに狙いを定める。
グレンディ・ロメルデュアル「Shoot!!」
的確かつ外れる事のない矢の軌道。
しかし、Sounderは彼女の行動をすら読んでいた。
Sounder「無駄です」
グレンディ・ロメルデュアル「う、嘘・・・この距離なのに・・・」
Sounderは離れた位置で狙撃するグレンを一直線に見つめる。
睨む様な鋭い双眸に見つめられ、グレンの足は竦んでしまう。
グレンディ・ロメルデュアル「うぁぁ!!」
それなりに離れた場所にいたにも関わらず、Sounderのエレキギターから放たれた衝撃波は、的確にグレンを仕留める。
衝撃波をモロに喰らい、グレンはその場に倒れ込む。
Sounder「ワンダウン」
シャドウ「グレン・・・」
武川蒼一郎「ボクが救助行くさかい、少しお前さんだけで耐えるんや!!」
シャドウ「わ、分かった!!」
グレンの救助に行くと叫び、蒼一郎はこの場を去る。
Sounder「ワンヴイワン、と言った所ですね。貴方がワタシに勝てる可能性は著しく低いです」
シャドウ「あぁ、、そうかもな。だが、ただでは死なない!!」
再び、剣を構えるシャドウ。
シャドウ「はぁぁぁ!!」
Sounder「無駄です」
今度は一度ではなく、何度もギターの弦を弾く。
シャドウ「なっ、危な!!」
さながら、相手がギターで攻撃してくると言う事を忘れそうになる。
仮にも、ギターを引いているだけにも関わらず、襲い来る衝撃波や光の波。
身を屈め、回避するも衝撃波や光の波の動きは変則的で、軌道は全く予測出来ない。
リアン・ジュール「ま、まだぁ!!」
衝撃波で吹き飛ばされたにも関わらず、リアが自分の体に鞭打って、立ち上がろうとする。
そして、再びレールガンを構えた。
Sounder「まだ、生存していましたか・・・」
リアン・ジュール「い、いった・・・」
今度は当たりどころが悪かったのか、リアの体からは血が流れる。
リアン・ジュール「こんな事で、なんの意味が・・・」
思わず、心の中で思っていた事が口から飛び出してしまう。
Sounder「ワタシは、あの方の命令に従うのみです。それが、世界を守る為の最善なる選択です」
リアン・ジュール「世界の独裁を狙うサージェントが、世界の平和なんて・・・」
Sounder「今の世界に必要な事・・・」
リアン・ジュール「独裁は、何も解決しない!!」
舌戦を繰り広げるが如く、リアは口を開く。
リアン・ジュール「皆で共存し互いに認め合うから・・・皆は生きているのよ!!」
リアン・ジュール「ただ一人の王様が、好き勝手な独裁をしてしまえば、平和も笑顔も全て消える!!」
リアン・ジュール「サージェントは、平和じゃなくて己の目的の為に独裁をしようとしているだけなの!!」
Sounder「い、いきなり何を・・・!?」
Sounderの表情が一瞬揺らいだ。
リアン・ジュール「だから、サージェントがやってる事は世界の平和のためじゃない!!」
リアン・ジュール「守る為のじゃないの!!本当に守りたいと言うのなら、独裁じゃなく皆で共に世界を守っていくべきよ!!」
Sounder「いえ、違う・・・サージェントである我々がやっている事に間違いはない・・・」
Sounder「この行いは正義なんだ!!人の為、未来の為に・・・」
リアン・ジュール「もぅ、本当に世界を守るのなら、サージェントじゃなくてガーディアンズとして、生きなさい!!」
そう叫び、リアはSounderと躊躇なく距離を詰める。
まるで、目を覚まさせるかの様にしてリアはSounderの頬を思いっ切り平手で叩く。
Sounder「うぁぁ!!」
リアン・ジュール「貴方が本当に世界を守るって言うんだったら、その力を皆の為に使ってよ!!」
Sounder「でも、ワタシは・・・サージェントの兵であり・・・それで」
リアン・ジュール「あぁ、もううるさい!!世界守りたいんでしょ!?なら、私達と一緒にサージェントと戦いなさい!!」
Sounder「いいんですか・・・ワタシはサージェントの兵であった者です」
戸惑いの表情を見せながら言うSounder。しかし、そんな彼女とは対照的にリアは明るく答える。
リアン・ジュール「別に、それに私達のチーム。万年人手不足なのよ!!それに、、新しい仲間ともあれば、皆喜ぶよ!!」
Sounder「でも、ワタシ・・・皆を傷付けて・・・」
彼女の言う通りだ。彼女はシャドウ達を傷付けた。
そんな自分が彼らの仲間になる事など、許されるのだろうか。
シャドウ「もし、本当にこのチーム・シャドウに入るなら、歓迎しよう」
アリス「大丈夫だ、茶でも入れてくれれば」
グレンディ・ロメルデュアル「まぁ、サージェントかガーディアンズなんて気にしないけど」
武川蒼一郎「好きに決めんさい。入るも入らんも君次第や」
Sounder「じゃあ、ワタシは・・・」
リアン・ジュール「一緒に、チーム・シャドウの一員になって『本当』の意味で世界を守ろうよ!!」
Sounder「本当に、いいんですか・・・?」
リアン・ジュール「私達、入っちゃ駄目なんて言った?」
リアの優しい言葉に、Sounderはその場に崩れ落ち、両膝を着く。
リアン・ジュール「ほら、立てる?」
そんな彼女に、リアは姿勢を低くして手を差し伸べる。
Sounder「ありがとう・・・」