マザーグース

秋疾 桜石(あきはや おうせき)

マザーグース(脚本)

マザーグース

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マザーグース
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〇霧の中
  ──"鵞鳥"が空を飛んでいる。
  優しく、大人しい存在。
  向かうは人の犇く都市、渋谷。
  人と言っても、殆どがアヒルみたいなものだ。
  流行に踊らされ、みにくいアヒルはつまはじき。
  つまはじきにされた鳥は孤立する。
  ──だからこそ、"母"となる存在が必要なのだ。
  "マザーグース"が──

〇センター街
間仁田 流偉「おいおい、さっきから全然列進んでねーなぁ」
間仁田 流偉「もしや、このまま売切れたり・・・?」
間仁田 流偉「おーい!俺の分残してくれよー!」
  俺の名は間仁田 流偉(まじだ るい)
  20歳だ。
  今流行りの懐中時計を買いに来ている。
店員「ありがとうございましたー!」
  流行りだから買った。服だって流行りのブランド。髪型だって、
  ドンッ!
少女「・・・」
間仁田 流偉「っておい!謝罪もなしかよ!」
  少女は無視して歩いて行った。
間仁田 流偉「ったく、最近のガキは言葉も発せられねーのかよ」
女性「すみませーん!さっき、並んでましたよね?」
間仁田 流偉「ん?あ、あぁ、確かに並んでいたが・・・」
女性「やっぱり!いいなぁ、見たいなぁ」
女性「そうだ!いいカフェがこの近くにあるんですよ!行きましょう!」
間仁田 流偉「え?あ、ちょっ!」
  女性に引っ張られてしまった・・・

〇ビルの裏
間仁田 流偉「あのー・・・こんな怪しいとこなんすか?」
女性「・・・」
間仁田 流偉「・・・こんなとこにカフェなんかあるのか?」
???「あーあ、連れてかれてるよ」
???「どうしたもんかね・・・」

〇地下の部屋
間仁田 流偉「おい!なんだよここ!離してくれ!」
  何もしゃべらない。酷く無機質である。
間仁田 流偉「いてっ!・・・何なんだよ一体・・・」
???「ここは「流行研究施設」だよ」
間仁田 流偉「なんだ!?お前誰だよ!?」
???「助かりたきゃ黙って来い」
間仁田 流偉「・・・何だよあいつ」

〇渋谷のスクランブル交差点
???「こっちは通れない」
間仁田 流偉「普通に通ればいいだろ。ほら、行くぞ!」
???「おい!バカ!!」
間仁田 流偉「今日は本当についてねーな・・・」
間仁田 流偉「ん?」
  沢山の人混みの中、大半の人間がこちらに無機質な目線を向けていた。
???「早く来いバカ!」

〇地下街
???「お前は死にてぇのか!」
間仁田 流偉「そんな事言われてもよぉ・・・分かんねぇよ・・・」
???「もういい。こっちだ」

〇高級マンションの一室
少女「あら、誰かしら」
少女「思いあたるのは、」
少女「ハヤトくらいね」
ハヤト「あぁ、その通りだ」
間仁田 流偉「お、お前あの時の・・・」
ペロー・グース「先程ぶり。ペロー・グースよ。よろしく」
間仁田 流偉「あぁ・・・って、理解できねぇよ! どういう状況だよこれ!」
ハヤト「うるさいな・・・ちょっと着替えてくる」
ペロー・グース「えぇ。いってらっしゃい」
ペロー・グース「ところで・・・貴方は人間よね?」
間仁田 流偉「どっからどう見たって人間だろーが!」
ペロー・グース「確認作業よ。で、どこから話せばいいかしら?」
間仁田 流偉「全部だ全部!俺をこんなトコに連れて来た経緯を説明しろ!」
ペロー・グース「そうね・・・いいわよ」
ペロー・グース「これ、お洒落だと思った?」
間仁田 流偉「いや・・・でも流行りなんだよ」
ペロー・グース「はぁ、馬鹿ね。作られた偶像に踊らされるなんて」
間仁田 流偉「あん?どういうことだ」
ペロー・グース「貴方、見たでしょう?無機質ニンゲンを」

〇地下の部屋

〇高級マンションの一室
ペロー・グース「あれは地下で研究・開発されているアンドロイドよ」
ペロー・グース「この流行都市”渋谷”にはあれが沢山いる」
間仁田 流偉「・・・何故俺は連れて行かれたんだ?」
???「それはだな〜少年! アンドロイドは人間を素体にしているからだよ!」
間仁田 流偉「人間を素体に?」
???「あぁそうとも!少年もアンドロイドにされるトコだったぞ〜☆」
間仁田 流偉「っていうか、誰だコイツ」
ペロー・グース「あぁ、アイドルの服着てるのはエミよ」
Emi☆「違う!Emi☆だっ!」
ペロー・グース「・・・まぁ、アンドロイドがいるって事はわかったかしら?」
Emi☆「理解しろ少年!」
間仁田 流偉「はぁ・・・」
ペロー・グース「だから助けたって訳」
間仁田 流偉「・・・で、此処はどこなんだ?」
ハヤト「ここは俺たち"マザーグース"の基地だよ」
ハヤト「"マザーグース"の説明はしたのか?」
ペロー・グース「まだよ」
ハヤト「そうか、」
ハヤト「なら、説明する」
ハヤト「俺の部屋で話そう」
ペロー・グース「また一人、見つけられたわね」
Emi☆「そうねぇ」
ペロー・グース「・・・ちゃらんぽらんなのが玉に瑕だけれど」
Emi☆「でもなー、ああいう奴に限ってやる時はやるもんだぜー?」
ペロー・グース「そうかしら?」
Emi☆「私だってそんなもんじゃない?」
ペロー・グース「・・・」
ペロー・グース「たしかにそうね」
ペロー・グース「そういうところが、人間らしくて」
ペロー・グース「とても好きよ」
Emi☆「いやぁー照れてしまうなぁー!」
Emi☆「じゃっ、今日も活動してきますわ!」
ペロー・グース「えぇ」

〇勉強机のある部屋
ハヤト「アンドロイドが蔓延っている話はしたな?」
ハヤト「そいつらは、流行を操作しているんだ」
ハヤト「多数派であることを利用してな」
間仁田 流偉「それほどにアンドロイドは存在しているのか・・・」
ハヤト「あぁ、主にそれを作っているのがここ、渋谷というわけだ」
ハヤト「その流行に流されない、自らを貫く人間を作るという目的で作られたのがこの組織」
ハヤト「”マザーグース”ということだ」
間仁田 流偉「ふぅーん・・・」
間仁田 流偉「なぁ、ここにある絵は全部お前が描いたのか?」
ハヤト「あぁ」
ハヤト「『自己表現』がこの組織の活動だよ」
ハヤト「俺は絵、エミさんはアイドル活動だったかな」
ハヤト「動画とかあげてたな・・・」
間仁田 流偉「そうか・・・」
ハヤト「お前はどうする?」
間仁田 流偉「え?」

〇高級マンションの一室
間仁田 流偉「なぁ、ちょっといいか?」
ペロー・グース「どうしたのかしら?」
間仁田 流偉「お前らの活動、協力させてくれ」
間仁田 流偉「俺にも、出来る事はあるはずだ」
ペロー・グース「そう」
ペロー・グース「いいわよ」
間仁田 流偉「マジか!?」
ペロー・グース「貴方は、そうね」
ペロー・グース「文字書きとかどうかしら?」
間仁田 流偉「何で分かったんだ?」
ペロー・グース「勘、よ」
間仁田 流偉「そうか・・・」
ペロー・グース「貴方はハヤトの隣を使うといいわ」
ペロー・グース「どうせ帰れはしないのだし」
間仁田 流偉「あぁ、そうだな」
間仁田 流偉「これから、よろしく頼む」
ペロー・グース「こちらこそ」
ペロー・グース「さて・・・」

〇芸術
ペロー・グース「貴方達はどうするのかしら?」
ペロー・グース「このまま誰かの身勝手に同調し続けるのか」
ペロー・グース「自らを表現し続けるのか」

〇SNSの画面
ペロー・グース「もし、何か表現したいなら」
ペロー・グース「待っているわ」
ペロー・グース「ここ"マザーグース"で」
ペロー・グース「最後に・・・」
ペロー・グース「・・・・・・」
ペロー・グース「ジリツせよ、ニンゲン」
ペロー・グース「己を、周りを恐れるな」
  ──
  マザーグース fin.

コメント

  • 今の日本ではなにが流行っているのでしょう。日本だと服装にしても目立つ格好をしていると、ヒソヒソいろいろ言われたりもしますよね。そういう意味で生きづらいなとは感じていました。みんな違うことがすばらしい!自分の好きなもの、ことを貫きたいです。

  • 最初の方は、主人公の名前が【まじだるい】で覚えやすいなぁと思いながら読んでいました笑
    しかし、読むにつれ、個性の大切さなどが訴えられていてとても奥の深い作品だと思いました😌

  • とても奥の深いお話でした。日本人だけでなく、世界的にグローバルな社会が進むにつれ、このような現象が生まれていると思います。人の目を気にしすぎる社会、それは結局個性をだめにしますね。本当にマザーグースの様な存在が必要です。

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