クララクルル 〜 加減を知らない妖精 ~

土井和人

第2話 『上下関係』(脚本)

クララクルル 〜 加減を知らない妖精 ~

土井和人

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〇空
クルル「え〜〜〜!?」
クルル「じゃあ私がお昼寝してる間に、お姉ちゃん一人で魔法の修行をしてたってこと!?」
クララ「ま、そういうことね!」
クルル「ズル〜〜〜イ!」
クララ「いやいや、元々アンタは私の修行に勝手についてきただけでしょ?」
クルル「ぐぅぅ〜」
クルル「で、誰にどんな力を授けて助けてあげたの?」
クララ「あそこにいる人よ」

〇事務所
先輩「おいおい、森下!」
後輩「あ、は、はい・・・!」
先輩「お前もしかして、まだ掃除機かけ終わってないの?」
後輩「あ、でも、もう少しで終わりますんで──」
先輩「ちょっとちょっとぉ!」
先輩「たったこれだけの仕事量で、どんだけ時間かかってんの!?」
後輩「・・・すいません」
先輩「お前、清掃の仕事、ナメてる?」
後輩「いや、そんなことは・・・」
先輩「言っとくけど、昔はもっとキツかったからな!?」
先輩「俺がこのバイト始めた10年前なんて、今の仕事量の倍はあったから!」

〇オフィスビル
クララ「来たー! 10年前の話!」
クルル「え、なになにそれ〜?」
クルル「ていうか、どっちの人にどんな魔法をかけたの?」
クララ「黙って見てなさいっての!」

〇事務所
先輩「しかも上がめちゃくちゃ厳しくてさあ!」
先輩「坂崎って人に毎日シゴかれてさあ!」
先輩「お前なんか10年前だったら速攻クビだぞ!」
後輩「・・・・・・」
先輩「聞いてんのか!?」
後輩「あの、先輩・・・!」
先輩「ああ!?」
後輩「それ・・・たぶん先輩の記憶違いだと思います」
先輩「はあ!? 記憶違いってなんだよ!?」
後輩「実は僕、10年前に時間移動して調べてきたんです」
後輩「先輩がいつも『昔はもっとキツかった』って仰ってるんでホントかなあと思って」

〇オフィスビル
クルル「わかった! そういうことね!」
クララ「そうよ!」
クララ「あの人、さっきもああやって怒られてたの」
クララ「だから私の魔法で時間移動できる力を授けたのよ!」
クルル「ぐぅぅ、なるほどね」
クルル「悔しいけど、さすがお姉ちゃん・・・!」

〇事務所
先輩「10年前に時間移動?」
先輩「いやいや、お前、何言ってるの?」
後輩「結論から言うと、今も10年前も大して仕事量変わってませんでした」
後輩「むしろ今の方が若干、仕事量多いかもですね」
先輩「・・・お前、俺おちょくってんのか?」
先輩「何が時間移動だよ! いい加減に──」
後輩「この写真、見てください」
先輩「なんだよ、この写真──」
先輩「ええ・・・!?」

〇黒
  写真には、今より若々しい先輩と老人の坂崎、そして後輩が並んで写っていた。

〇事務所
後輩「証拠に10年前の先輩と並んで写真撮ってきました」
後輩「さすが10年前、先輩若かったです」
先輩「・・・・・・」
後輩「しかも、先輩が毎日シゴかれてた坂崎さんって人、その隣で一緒に写ってる老人なんですね」
先輩「!」
後輩「坂崎さん当時72歳だそうで」
後輩「実際に話してみたらすごい優しい方で、とてもシゴキをする様な方には見えませんでしたよ?」
先輩「な、何言ってんだよ・・・!」
先輩「ど、どうせこんな写真、合成だろ」
後輩「そう言うと思ったので、こんな写真も撮ってきました」
  後輩がもう一枚の写真を差し出す。
先輩「!!」

〇黒
  写真には、VRのゴーグルを装着しながらスマホを持って驚いている若い先輩と、老人の坂崎が写っている。

〇事務所
後輩「10年前の先輩に現代の最新スマホを持ってもらった写真です」
後輩「ついでにVRのゴーグルもつけてもらいました」
先輩「・・・・・・」
後輩「10年前はスマホも普及してなかったですし、ましてやVRなんて尚更ですからね」
後輩「10年前の先輩、『未来すげえ』『未来すげえ』って、キャッキャ言ってました」
先輩「え、な、何、お前・・・?」
後輩「あ、誤解しないでください!」
後輩「だからって僕の仕事が遅い事には変わりないっていうか・・・!」
先輩「ち、近寄るな!」
後輩「あ、そうだ」
後輩「写真だけだとアレかなと思って、10年前の先輩を録画してきたんです」
後輩「見ます?」
先輩「く、来るな! 化け物!」
後輩「化け物ってヒドイ」
後輩「僕はただ過去に行って、本当はどうだったか調べてきただけですよ」
先輩「う、うるさい! 化け物だ!」
先輩「誰か! 助けて、誰か・・・!」

〇オフィスビル
クルル「あれれ〜? 今度はあの先輩が困ってるよ?」
クララ「どうして!? 私の魔法は完璧だったはずなのに!?」
クルル「やっぱりお姉ちゃんは私がいないとダメだね!」
クルル「ここは私に任せて!」
クララ「あ! またアンタでしゃばって──」
クルル「クルルクルルクルクルルクル〜! あの先輩って人に恐がらなくてもいい力を!!」

〇事務所
  クルルが呪文を唱えると、先輩の姿が不思議な光に包まれた。
先輩「!?」
後輩「今、録画を再生しますから」
後輩「ちょっと待ってくだ――ええ!?」
先輩「グウァァァ・・・!」
後輩「う、うわぁ、ば、化け物!!」

〇オフィスビル
クルル「これでよしと!」
クララ「いやいや! 何、化け物にしちゃってるのよ!」
クルル「自分が化け物になれば、恐がらなくてもいいでしょ?」
クララ「そういう事じゃないでしょ!」
  グウァァァ!!
  助けて、誰か!!
クララ「ていうか、今度はあの後輩が困ってるじゃない!」
クルル「じゃあこうすればいいのよ! クルルクルルクルクルルクル〜!」

〇事務所
後輩「グウァァァ・・・!」
  いや、もうめちゃくちゃじゃない!

〇事務所
おばさん「あ、やっと見つけた!」
おばさん「こんなところでサボってないで向こうの掃除手伝って──」
先輩「グウァァァ!!」
後輩「グウァァァ!!」
おばさん「キャーーー! 化け物!!」
  クルルクルルクルクルルクル〜!
おばさん「グウァァァ!!」
先輩「グウァァァ!!」
後輩「グウァァァ!!」

〇オフィスビル
クララ「やばい! 口から炎を出そうとしてる!」
クララ「逃げるわよ!」

〇空
クララ「加減ってもんがあるでしょ!」
クララ「だからあんたはダメなのよ!」
クルル「もとはといえば、お姉ちゃんの魔法のせいでしょ!?」
クララ「はあ!?」
  あ〜あ・・・人間の世界って、難しい!

次のエピソード:第3話 『万引き犯とカレーライス』

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