第1話 『クララとクルル』(脚本)
〇空
私の名前はクララ
魔法の修行をする為に、妖精の国からこの地球へやってきた
クルル「ちょっと待ってよ〜、クララお姉ちゃ〜ん!」
クララ「待ってよ〜、じゃない!」
クララ「ついてきていいなんて、一言も言ってないんだけど!」
クルル「え〜、ヒドイ〜!」
この娘は、妹のクルル。
ドサクサに紛れて、私の修行についてきたのだ
クルル「クララお姉ちゃん一人だと心配だから、来てあげたの!」
クララ「何その上から目線!? むかつくんだけどぉ!」
クルル「まーまー!」
クララ「とにかく邪魔だけはしないでよね」
クルル「はいはい!」
一人前の妖精になる為には、魔法で人助けをして魔法に磨きをかけるのが妖精界のおきて
クララ(絶対、一人前の妖精になってみせる!)
クルル「あ、クララお姉ちゃん! あそこに困ってる人がいる!」
クララ「え、どこどこ?」
二人の目線の先には、とある高校の校舎があった。
クララ「あれは高校ってところだね」
クルル「コウコウ?」
クララ「大人になる前の人間が勉強をするところよ」
クルル「ふ〜ん」
クララ「で、困ってる人はどこ?」
クルル「あのオジさんだよ!」
〇教室
谷崎「・・・・・・」
吉永「ねえ、岡本くん。 どうして先生の言う事を聞いてくれないの!?」
吉永「ちゃんと授業に出て勉強しないと、将来後悔するよ!?」
岡本「知らねえよ」
吉永「知らねえよって・・・!」
吉永「担任の谷崎先生からも何とか言ってください!」
谷崎「え!?」
谷崎「あ、そ、そうですねえ・・・」
谷崎「えーっと、岡本くんさ・・・」
岡本「あぁ!?」
谷崎「・・・!」
吉永「生徒に威圧されてどうするんですか!」
谷崎「す、すいません・・・」
〇教室の外
クララ「なるほど」
クララ「あのオジさん、何か助言したいけど勇気がでないってわけね」
クルル「ジョゲンって何?」
クララ「ここは私に任せて」
クララ「魔法であの人に勇気をさずけてみるわ」
クルル「え〜ズルい〜!」
クララ「あんたの魔法じゃ無理よ! 見てなさい!」
クララ「クララクララクラクララクラ〜! オジさんに勇気を!!」
〇教室
クララが魔法の呪文を唱えると、谷崎の姿が不思議な光に包まれた。
谷崎「・・・?」
岡本「あ〜かったりい。じゃ俺、帰るから」
吉永「帰るって、ちょっと・・・」
谷崎「待ちなさい!」
岡本「あぁ!?」
谷崎「吉永先生、こういう子は頭ごなしに言っても駄目なんです」
吉永「え?」
谷崎「私くらい長く教師をやっていると、色んな生徒を見てきてますからね」
谷崎「その生徒を見ただけで、どんな生徒かすぐ分かる」
谷崎「その上で、きちんと指導してあげないと」
吉永「なるほど!」
〇教室の外
クララ「ほら!」
クララ「私の魔法のおかげで、オジさんがイキイキしだした!」
クルル「私が見つけた困ってる人なのにぃ〜」
〇教室
谷崎「岡本くん、君はただ寂しいだけなんだよな?」
谷崎「だから、そういう態度をとるんだよな?」
岡本「は、何言ってんの? 別に寂しくなんかねえし」
谷崎「私には分かるよ」
谷崎「それを証拠に、君の様な生徒はな、卒業式で一番泣くんだ」
岡本「はあ?」
谷崎「先生、俺今まで悪さばっかしてきたけど・・・とか言ってな」
谷崎「そして卒業文集に詩を書くんだ」
谷崎「散りゆく花がどうだらこうたらとかいう、くっさいヘッタクソな詩をな」
岡本「書かねえよ!」
谷崎「いや絶対に書く!」
吉永「あの、谷崎先生、何をおっしゃってる──」
谷崎「そして大人になったら、俺も昔は結構ヤンチャしてたし・・・みたいな事を必ず言うんだ」
岡本「何の話だよ!」
谷崎「何だヤンチャって? 具体的に何をしたって言うんだ、ええ?」
〇教室の外
クララ「ガンガン言いたいこと言ってる、あのオジさん!」
クルル「くぅ〜、私が見つけた困ってる人なのにぃ〜」
〇教室
谷崎「あとすーぐ結婚しちゃうんだ」
谷崎「それで休日になると、どこに売ってるんだ? っていう柄のジャージを着て、黒いワゴンの車に乗るだろう」
谷崎「ルームミラーにはハワイのレイみたいなのをかけて、ダッシュボードの上には、白いふかふかの毛皮みたいなのを敷く」
谷崎「そして車内を青いLEDで装飾するんだ!」
岡本「知らねえよ!」
谷崎「いや絶対に青い!」
谷崎「それで家族で大型ショッピングモールに行って、似た様な店ばっかダラダラ見て──」
谷崎「ああ、楽しかった・・・とか自分に言い聞かせる、絶望的な休日の過ごし方をするんだ!」
岡本「勝手に決めつけてんじゃねえよ!」
吉永「そうですよ、いくらなんでも言い過ぎ──」
谷崎「いいや! 君は絶対にそういう奴だ!」
岡本「・・・!」
谷崎「つまり吉永先生!」
谷崎「こういう生徒は勉強しなくても生きていける! だから、ほっとけばいい!!」
吉永「そんな・・・」
〇教室の外
クララ「よしっ! 一件落着ね!」
クルル「あれ? でも何だか様子が変だよ?」
クララ「え?」
〇教室
岡本「さっきから黙って聞いてりゃ・・・!」
吉永「ちょっと岡本君、何をする気──」
岡本「ざけんなよ!」
吉永「キャー! 誰かー!」
〇教室の外
クララ「どういうこと!?」
クララ「私の魔法は完璧だったはずなのに!?」
クルル「はぁ〜。やっぱり私がついてきてよかったね!」
クララ「はぁ!?」
クルル「今度は私に任せて! 喧嘩をとめればいいんでしょ?」
クララ「ちょっと、なに出しゃばってる──」
クルル「クルルクルルクルクルルクル〜! 女の人に喧嘩をとめる力を!!」
〇教室
クルルが魔法を唱えると、吉永の姿が不思議な光に包まれた。
吉永「・・・!?」
岡本「ぶっ殺してやる!」
谷崎「け、結局困ったら暴力か!? ヤンチャか!?」
岡本「んだと!?」
吉永「やめるのだ二人共!」
谷崎「よ、吉永先生・・・?」
岡本「えぇ・・・!? 何か、風貌変わってない・・・?」
〇教室の外
クルル「ほら! 喧嘩が止まった!」
クララ「いや、止まったけど。やりすぎでしょ!」
〇教室
吉永「全くさっきから聞いてりゃ・・・こざかしいわ!」
そう言い放った吉永の右手には、赤い炎の塊が燃えていた。
谷崎「え、え・・・!?」
岡本「て、手から炎、出てるんだけど・・・!!」
吉永「お前たちのような愚かな者は、消えてなくなるがいいわ!!」
〇空
クララ「加減ってもんがあるでしょ! だからあんたはダメなのよ!」
クルル「もとはといえば、クララお姉ちゃんの魔法のせいで喧嘩になっちゃったんでしょ~!?」
クララ「はあ!?」
こうして修行の日々は、始まった。
まさに前途多難・・・!