ひだまりの詩

まさと

第四話:それぞれの夢/閉ざされた帰り道(脚本)

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〇女の子の部屋
櫛名 真愛(くしな・まいと)「父さーん! 母さーん!」
  前回までのあらすじ
  現代に戻った俺は、
  氷室竜一に呼ばれて、
  恋華が運ばれた病院へ向かった
  ICUで眠る恋華を見て、改めて現実を受け止めることとなった
  久しぶりに、実家で家族の時間を過ごしていた俺たちは、何者かによって放火され、脱出できず、絶命の危機に立たされたのだった
櫛名 真愛(くしな・まいと)「意識が朦朧としてくる・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「もう・・・ダメだ」

〇黒
  ごめん
  父さん
  母さん
  真心・・・。

〇黒

〇病室のベッド
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ん・・・ん?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「痛て、、」
  体のあちらこちらが痛い
医者「ようやく目が覚めましたか」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「俺は一体?」
医者「あなたね、おうちが大変なことになっちゃってね、それで、意識失ってるところを消防の人が助けてくれたんですよ!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あ!俺の家族は?」
医者「あー。大丈夫。 あなた以外はほとんど怪我してないから。  まあ、一応煙吸ってるだろうから入院はしてもらってるけどね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そう、、ですか」
医者「周りの住民の人が気付いてすぐ119番通報してくれてすぐ消防隊も到着したからなんとか無事だったみたいですよ」
医者「ただ、住む家は用意しないといけないだろうね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そうなりますよね・・・」
医者「まあ、あまり無理はせずにね」
医者「あと、彼女さんに心配かけちゃいかんよー!」
  医者は、イタズラな顔でそう言って、病室をあとにした。
櫛名 真愛(くしな・まいと)「か、彼女?」
  恋華は俺の妻だし、
  まず恋華がここにいるはずない。
  真心が近くにいたのか??
  そんな疑問を察したかのようなタイミングで、入り口のドアが開き、一人の女性が入ってきた。
花村 四葉「やあやあ。 やっと目覚めたんだね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「え・・・? 失礼ですが、どなたですか?」
花村 四葉「ひどいねえ。 この花村四葉さまを忘れるだなんて」
  花村、、四葉??
櫛名 真愛(くしな・まいと)「いや、どこかでお会いしましたか? もしかして、取引先の人だったりします!?」
花村 四葉「違うから。 まあ、無理もないけどさ あんた、豊原恋華にばかり夢中だったし」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「豊原・・・それは、妻の旧姓ですが、 なぜ、妻の事まで??」
花村 四葉「はあ・・・。 あんたどんだけ記憶力ないのよ。 ってゆうか、どんだけアタシ、 あんたに記憶されてないのよ」
  本当に、検討もつかなかった
花村 四葉「アタシは、 あんたと小4の時に同じクラスだった、 花村四葉」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「小4? 横山先生が担任だった時か?」
花村 四葉「そうそう! 思い出した??」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あー・・・。 いや、全然?」
花村 四葉「はあ・・・ もういいわよー」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「それで、 その花村さんが、俺になんか用か? 冷やかしなら今度にしてくれ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「この数日で、嫁の恋華はひき逃げに遭うし、 実家は火事になるしで、メンタルがボロボロなんだよ」
花村 四葉「だから、来たのよ」
花村 四葉「アタシ、これでも記者やってんのよ。 だから、色々な情報も集められる」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「え、じゃあ、 恋華をひき逃げした犯人を捕まえれるかも知れないってことか?」
花村 四葉「そうね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「じゃあ、早く教えてくれ! 恋華をあんな目に遭わせたのは誰なんだ!?」
花村 四葉「それは、わからない。 でも、アタシのお願いを聞いてくれたら、 きっと恋華を助けられる」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「どういうことだよ?」
花村 四葉「とにかく! 恋華を助けたいなら、 アタシのお願いを・・・」
花村 四葉「きいて?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「なんだよ、そのお願いってゆうのは」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あ!すごい金額の金とかは無理だからな?」
花村 四葉「お金なんて、いらないわよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「じゃあ、なんだよ。 あんたの願いって」
花村 四葉「アタシとさ、友だちになって欲しいんだよね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「え? それだけ?」
花村 四葉「もちろん、”今のアタシ”とじゃないよ?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ん? どうゆうことだ?」
花村 四葉「15年前。 あんたと、アタシが同じクラスだった小学四年生の、10歳のアタシと友だちになってほしい」
  何を言っているんだろうか、
  この女は。
花村 四葉「あんた、タイムリープできるわよね?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「は? いや、言ってる意味がわかんねえよ」
花村 四葉「意味はわかるでしょうが。 最近、なんかそうゆう心当たりない?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「・・・・・・あ、」
花村 四葉「そう! あんたは、15年前にタイムリープし、 小さい事だけど、未来を変えた」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「いや、あれはなんかの間違いでそうなっちまっただけで・・・。 しかもなんなら今でもあれは夢だったんじゃないかと思ってる」
花村 四葉「間違いなんかじゃない。 あれは、紛れもない事実!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「だったとして、もう一度そうなるとは限らないだろ」
花村 四葉「そうなるのよ!」
花村 四葉「ほら!つべこべ言わずにこれ飲みなさい!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「はあ?ビール? いや、病院で酒はだめだろ。 ってゆうか、俺、一応怪我人だし・・・」
花村 四葉「大丈夫よー? ちゃんと、外出許可もらってきたから。 外でなら、飲んでも問題ないでしょう?」
花村 四葉「それに、一缶飲まなくてもいいの。 ほんの少しだけ飲んで、 『過去に戻りたい』と強く願って、眠るの」
花村 四葉「そうすれば、タイムリープするはずよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「本当かよ・・・。 てか、なんでそんな事知ってるんだよ」
花村 四葉「なーんでもいいでしょ? さあ、行くわよ!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あ、ちょっと! 俺まだ体痛いんですけど・・・」

〇郊外の道路
  俺は、どうゆうわけか
  記憶に全くない、
  花村と名乗る女と、病院の外に出る羽目になった
花村 四葉「よし、服はぴったりそうだね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「もうちょい、ましな服無かったのかよ。 なんか寒くないか?」
花村 四葉「弟に服借りてきたのよ。 文句言わないの!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「で、こっからどこ行くんだよ。 俺、嫌だぜ? 歩きながら酒飲んだりするの」
花村 四葉「なら、アタシの家に行く?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そんな軽いノリで、男を家に入れるなよ・・・」
花村 四葉「アタシ・・・あんたになら、抱かれてもいいって思ってるから!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「・・・はあ? なに、普通にわけわかんないこと言ってんだよ」
花村 四葉「冗談よ! じょーだん!」
花村 四葉「さあ、行きましょう?」

〇女の子の一人部屋
  俺は、連れられるままに花村の家に。
櫛名 真愛(くしな・まいと)「へえ。 結構綺麗にしてるんだな」
花村 四葉「そりゃ一応、女子ですからね!」
花村 四葉「いいから、さっさと飲みなさい」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「やっぱ、そうなるか」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(俺、こんなことしてる場合じゃないんだけどな)
花村 四葉「大丈夫よ! 戻ってくるときは、三ツ葉ソーダーを飲んで眠れば帰ってこられるから!」
  俺は、半信半疑でビールを口に含み、
  ごくりと飲み込んだ
花村 四葉「早っ!もう顔赤くなってるじゃん!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「うるせぇー。 なんか、眠くなって・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「きた」
花村 四葉「おやすみ。 櫛名 真愛」

〇黒
「・・・ちゃん」
「・・・いちゃん!」

〇教室
豊原 恋華(とよはら・れんか)「まいちゃん! 起きて」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ん!? 恋華!?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「やっと起きた! まいちゃん、授業中に寝ちゃダメだよー」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あ、あー・・・悪い」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(そうか。 俺、本当にまた過去に戻ったんだな)
豊原 恋華(とよはら・れんか)「全然いいよー 先生に怒られたら大変だからね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「で、今は何してるんだっけ?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「まいちゃん、寝ぼけすぎだよー 今は、明日の遠足の班決めしてるんだよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「遠足・・・?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「明日、遠足で水族館に行くんだよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あ、あー!そーうだったな!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(俺は、この時期にはすでに・・・)

〇黒

〇教室
櫛名 真愛(くしな・まいと)(すでに学校には来てなかった。 つまり、行った記憶がない。 過去が変わったからこその時間ってことか)
横山 伊織(よこやま・いおり)「それでは、班を決めていきたいのですけれど、このクラスは28人いるので、三人班が9組と四人班が1組になります」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「なあ、恋華? ずっと気になってんだけどさ、 あの端っこに座ってる奴、誰だ?」
  俺は恋華に耳打ちで聞いてみた
豊原 恋華(とよはら・れんか)「え、まいちゃん知らなかったの?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「てか、あんな奴いた?」
  俺はどうにも思い出せなかった
豊原 恋華(とよはら・れんか)「あの子は、”花村四葉ちゃん”だよ!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ハナムラ・・・ヨツバ!?」

〇白

〇教室
櫛名 真愛(くしな・まいと)「え──────!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あれが、花村四葉!? てか、本当にいたのか!」
横山 伊織(よこやま・いおり)「櫛名くん?どうかしました?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あ、いえ。大丈夫です!」
  いや、どうみても別人だろ・・・
横山 伊織(よこやま・いおり)「最後のグループは、 氷室くん、豊原さん、櫛名くんです。 これで、遠足のグループ決めは終わりですね」
クラスメイト「先生!花村さんが、余ってます!」
横山 伊織(よこやま・いおり)「あらやだ!ごめんなさい、花村さん」
クラスメイト「あいつ、影薄いし気づかないんじゃねえ?」
横山 伊織(よこやま・いおり)「コラコラ。そう言うことを言ってはいけませんよ?これは、先生が悪いのだから」
横山 伊織(よこやま・いおり)「誰か、四人班でもいいという人は手を挙げてください」
クラスメイト「先生!花村さんだけ、一人班でいいと思いまーす!」
クラスメイト「賛成でーす」
  クラスメイトたちは、笑いながらそういうのだ。
横山 伊織(よこやま・いおり)「冗談でもそうゆうことは言わないのよ?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「なあ、恋華? 花村、うちのグループに入れてやってもいいか?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「別にいいよ! 氷室くんは、どうだろ?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「氷室くん? 四葉ちゃんを、私たちのグループに入れちゃダメかな?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「別に、構わないよ! むしろ、僕もそう思っていたところさ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(ほんとかよ・・・)
櫛名 真愛(くしな・まいと)「先生、花村さんは僕たちのグループに入れてください」
横山 伊織(よこやま・いおり)「あら、そう? なら櫛名くんたちのグループに入ってもらうわね」
花村 四葉「・・・・・・」
横山 伊織(よこやま・いおり)「では、今度こそ班決めは終わりですね」

〇学校の下駄箱
  放課後・・・
豊原 恋華(とよはら・れんか)「まいちゃん、一緒に帰ろ?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「お、おう!」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「明日の遠足、楽しみだなぁ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そうだな」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「でも、よかった! 四葉ちゃん、一人にならなくて。 私たちの班なら安心だね!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「まあ・・・な。 なあ、恋華? 花村って、どんな奴なんだ?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「私もよく知らないんだけど おとなしい子だよ? ってゆうか、まいちゃん本当に四葉ちゃんが、クラスにいるの気づかなかったの?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あ、ああ・・・」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「あまり目立たないから、仕方ないかも知れないけど、ちゃんと優しくしてあげないとダメだよ?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「うちのクラスって、たまに仲間外れとかしたりするしさ、そうゆう時は、まいちゃんが守ってあげてほしい」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そうだな」

〇通学路
櫛名 真愛(くしな・まいと)「じゃあ、またな恋華!」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「うん!明日は、遠足だから遅刻しちゃダメだよー」

〇中規模マンション
  どこか複雑な気分だ。
  15年後の現代では、火事に・・・。
  今は、考えてる場合じゃないか。

〇ダイニング(食事なし)
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ただいま! 母さん」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「おかえりなさい! 先にお風呂入ってくる?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ああ。そうするよ」

〇白いバスルーム
櫛名 真愛(くしな・まいと)「花村は、俺と友だちになりたいと言ってた。 きっと、明日の遠足で仲良くなれば、 ミッションコンプリートだ!」
櫛名 真心(くしな・まこ)「お兄ちゃん、 なに、ブツブツ言ってるの?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「うわ! 真心、いきなり入ってくるなよ!」
櫛名 真心(くしな・まこ)「いいじゃん、服着てるんだから」

〇男の子の一人部屋
櫛名 真愛(くしな・まいと)「なんか、やっぱ複雑だな」

〇黒

〇男の子の一人部屋
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あいつは、一体・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「まあ、とりあえず寝るか。 これで寝て、目覚めたらまた現代に・・・っての勘弁してくれよ」

〇男の子の一人部屋

〇男の子の一人部屋
  翌朝・・・
櫛名 真愛(くしな・まいと)「よし、準備できたし。 行くとするか」

〇田舎の学校
豊原 恋華(とよはら・れんか)「おはよう!まいちゃん」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「おはよう」
花村 四葉「あの・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「お、花村」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「おはよう」
花村 四葉「おはよう・・・」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「四葉ちゃん、おはよう 今日の遠足、楽しみだね!」
花村 四葉「う、うん! 楽しみ」
横山 伊織(よこやま・いおり)「はい、ではみなさん揃いましたね。 出発しましょう」

〇観光バスの中
  バスの中では、
  みんなそれぞれで、過ごしていた。
  
  景色を眺める奴や、
  急に乗り物酔いする奴、
  急に歌い出す奴もいた
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「みんな子どもだな」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(おめえもな!)
豊原 恋華(とよはら・れんか)「私、早くイルカさんに会いたい!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そんなにイルカ好きだっけ?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「うん! 私、家に大きなイルカのぬいぐるみ置いてるの」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(そういえば・・・)

〇水族館前
櫛名 恋華(くしな・れんか)「ここの水族館の、 イルカショーすっごいらしいよ!」

〇観光バスの中
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そんなに・・・イルカ好きだったんだな」
クラスメイト「先生!」
  一人のクラスメイトが手を挙げた
横山 伊織(よこやま・いおり)「どうかしましたか?」
クラスメイト「トイレ!」
クラスメイト「あ!俺も俺も!」
クラスメイト「私も、トイレ行きたいです」
  一人を皮切りにどんどん言い始めた
横山 伊織(よこやま・いおり)「では、とりあえず次のサービスエリアで停まってもらいましょう」

〇田舎駅の駐車場
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あともうちょいだな」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「早くイルカさんに会いたーい」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「僕はクラゲが好きかな」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「な、なんか意外だな」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「なんだか、素朴な感じがするだろう?」
横山 伊織(よこやま・いおり)「みなさん、 トイレ休憩のみなので、そろそろ出発しますよ」

〇観光バスの中
  また俺たちはバスに揺られて、ようやく現地にたどり着いた

〇水族館前
櫛名 真愛(くしな・まいと)(こ、ここって、 あの水族館だよな・・・)
豊原 恋華(とよはら・れんか)「大きい水族館だね。 四葉ちゃん」
花村 四葉「うん。 楽しみ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ここの、イルカショーすごいらしいぜ」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「ね!楽しみだよー」

〇水中トンネル
  中に入ると、軽い説明のあとはグループ別に別れて行動だった
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「まず、何から見ようか? 豊原さん、決めていいよ」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「えー、なにがいいかな? まいちゃんたちは、何みたい?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(恋華と最後に来た水族館・・・ いや、あれを最後になんてさせない!)
豊原 恋華(とよはら・れんか)「まいちゃん?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「へっ?あ、あー! き、キリンさんかなー!」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「櫛名くん? 水族館にキリンはいないよ?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「もう!まいちゃーん!」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「四葉ちゃんは、何みたい?」
花村 四葉「・・・・・・サメ」
「・・・えっ!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(まさかのサメって・・・)

〇大水槽の前
  ぐるぐると館内を観て周り、
  花村の観たかったサメも観ることができたのだった

〇ショーの水槽
  さて、いよいよイルカショーの時間だ。
櫛名 真愛(くしな・まいと)「恋華と観れなかったイルカショーか」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「まいちゃん、いよいよだね!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(なんか、複雑だな。 15年前の、子どもの恋華と観ることになるなんて)
豊原 恋華(とよはら・れんか)「どうしたの? まいちゃん」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「いや。 なんでもない」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「楽しみだな」
花村 四葉「私も、イルカ・・・」
花村 四葉「好き」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そっか。 よかったな、今日観に来れて」
花村 四葉「うん」
花村 四葉「よかった」
  始まったイルカショーは、たしかに素晴らしいものだった。

〇観光バスの中
  帰りのバスの中は、
  行きとは違い静かだった
  みんな疲れ果てて眠っていた。
  隣の恋華や、
  氷室ですら、寝ていた。
櫛名 真愛(くしな・まいと)(思えば、 俺はずっと仕事ばかりで恋華の隣で眠ったことなどほとんどなかった)
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ごめん。恋華・・・」

〇田舎の学校
  学校に到着した時にはすでに夕方だった
横山 伊織(よこやま・いおり)「みなさん。 家に着くまでが遠足ですからね。 気をつけて帰ってくださいね」
「はーい」
横山 伊織(よこやま・いおり)「では、みなさんさようなら」

〇通学路
豊原 恋華(とよはら・れんか)「まいちゃん、今日は楽しかったね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ああ。そうだな」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「櫛名くん、豊原さん! 待ってくれるかい」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あれ?氷室?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「1日、一緒に行動した仲じゃないか。 たまには一緒に帰ろう」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「うん! 氷室くんも、一緒に帰ろ!」
花村 四葉「あの・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あれ?花村? お前も家、こっちなのか?」
花村 四葉「うん」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「じゃあ、四葉ちゃんも一緒だね!」
花村 四葉「あの・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「どうした花村?」
花村 四葉「と・・・とも・・・」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「四葉ちゃん?」
花村 四葉「友だちになってほしい!」
花村 四葉「ダメ・・・かなあ?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「花村さん。 一体何を言ってるんだい?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「もう僕たちは友だちだよ。。 ね?櫛名くん、豊原さん」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「もちろんだよ! まいちゃんも、いいよね?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「え?あっ、おう!」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「ほらね!」
花村 四葉「うれしい・・・」

〇住宅街の道
櫛名 真愛(くしな・まいと)「花村んちは、この近くなのか?」
花村 四葉「う、うん」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「ねえ、櫛名くん?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ん?なんだ、氷室」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「あの、高齢の女性・・・なんか様子がおかしくないか?」
  俺たちの視線の先には、
  横たわり、顔をしかめているおばあさんがいた。
櫛名 真愛(くしな・まいと)「たしかに、変だな」
  俺たちは、おばあさんに駆け寄り、声をかけた
豊原 恋華(とよはら・れんか)「私たちも行こ!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「おい!ばあちゃん! 大丈夫か?」
おばあちゃん「うぅ・・・うぅ・・・」
  反応が鈍い。
  俺はおばあさんを揺する
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「揺すっちゃダメだ!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「な、なんでだよ!」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「僕の家族は全員医者で、教わったんだ。 倒れてる人は頭の異常が原因の可能性もあるから絶対揺らしたり、動かしたらダメだって」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そ、そうなのか? ならどうしたらいい?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「とりあえず救急車を呼ばないと」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「よしスマホ! ・・・って、あれ?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(しまった! 俺、今子どもだった・・・)
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「すまほ??とは何だ? 誰か携帯持ってないか?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「私は携帯なんて持たせてもらってないよー」
花村 四葉「私も・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(そりゃそうだろ・・・ この頃はまだ小学生が携帯持つような時代じゃねえんだよ。 俺もさすがに10歳の時なんて持ってなかった)
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「僕も、家に置いてきているな・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(いや、持っとるんかい!)
櫛名 真愛(くしな・まいと)「とりあえず、通行人の大人を探そう」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「みんなで、呼び掛けるんだ。 豊原さんは、おばあさんにがんばれって声をかけてあげてほしい」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「花村は俺たちと一緒に呼び掛けてくれ!」
花村 四葉「わかった!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「すいません、携帯を貸してもらえませんか?」
通行人C「なんだ?こいつ」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「おばあさんが、大変なんです! 今すぐ救急車を呼ばないと」
花村 四葉「お願いです! 止まってください!」
通行人A「俺、今忙しいんだよ。 悪いけど、他のやつに言ってくれよ」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「お願いします!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「止まってください!」
花村 四葉「お願い、お兄さんたち! 止まってください!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「お願いします!」
通行人C「しつこいんだよ!ガキどもが!」
花村 四葉「・・・・・・・・・」
花村 四葉「止まれって言ってるのが聞こえねえのか!」
「・・・・・・え」
「・・・・・・はい?」
花村 四葉「はあ・・・。 もう、いい子ちゃんなんて やめたやめた」
花村 四葉「ねえ、お兄さんたちさ? おばあさん苦しんでるのになんとも思わないの?」
通行人C「いや、それは・・・」
花村 四葉「アタシたちは子ども。 できる事には限界がある。 それでも、自分達なりになにができるか、考えて行動してるんだよ」
花村 四葉「でも、お兄さんたち大人は、なんだってできるじゃん!」
通行人C「・・・まあ、そうだよな」
花村 四葉「お姉さんはさ、 もし、あのおばあさんが自分のママやおばあちゃんでも、放っておけるの?」
花村 四葉「もし、誰も力貸してくれなくても、悲しくないの?」
花村 四葉「アタシは、今すごく悲しい」
通行人B「お嬢ちゃん・・・」
花村 四葉「もう一度だけ言わせて下さい。 このおばあちゃんを助けるには大人の人の力が必要なんです! 誰か、携帯電話を貸してください!」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「もし、僕たちが触っていけないなら、 お兄さんや、お姉さんたちが直接電話をして頂いて構いません!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「お願いします!」
女子高生「あの・・・」
女子高生「私のでよかったら、携帯使って?」
花村 四葉「本当ですか? ありがとうございます!」
青年「俺も、なんか協力させてくんね?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「お兄さんは、僕たちと一緒におばあさんに呼び掛けてください!」
  この後も、花村の言葉に胸を打たれた通行人たちが、協力してくれて、
  なんとか、無事に救急車を呼び、待つことができた。

〇住宅街の道
櫛名 真愛(くしな・まいと)「すっかり暗くなっちまったな・・・」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「みんな、グッジョブだったよ」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「四葉ちゃん、かっこよかった!」
花村 四葉「ありがとう!」
花村 四葉「みんながいたからだよ」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「それにしても、花村さんがあんなキャラだったなんてね」
花村 四葉「アタシ、親が厳しくて、 それで、女の子らしくしてなさーいなんて言われててさ?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「いつもと全然違うくてびっくりしたよー」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「私、将来看護師さんになりたい。 看護師さんになって、さっきのおばあちゃんみたいな人を助けてあげたい」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「それはいい! 僕も将来は医者になるから、どこかで会えるかも知れないね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(看護師か・・・。 俺はその夢を奪ってしまうんだよな)
花村 四葉「私は、将来は人の役に立てる仕事がしたい」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「まいちゃんは?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「俺か? 俺は、みんなの夢がかなってほしい。 あとは、俺も誰かを助けれる仕事がしたいかな」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「とりあえず、早く家に帰ろうぜ。 親が家族が心配してるかも知れない」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「そうだね! じゃあ、みんなまたね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「おう、気をつけてなー!」
  俺も早くかえろう。
  早く現代に戻らないと

〇ダイニング(食事なし)
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ただいま! 遅くなってごめん!」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「あんたどこ行ってたのよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「人助けしてたら、遅くなっちゃってさ」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「人助け?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そう!苦しんでるばあちゃん助けようとしたんだ」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「良いことするのは、えらいけど、 暗くなったら危ないから気を付けなさいよ?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「わかった!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「それより、母さん! 三ツ葉ソーダーが欲しいんだけど」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「あら、三ツ葉ソーダーなら、さっき真心が全部飲んじゃったわよ?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「えっ!? もうないの?」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「今日は買い物に行かなかったのよ。 お茶で我慢してなさい?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(いや、三ツ葉ソーダーがないと俺は・・・)
櫛名 真愛(くしな・まいと)「母さん!頼む!今から三ツ葉ソーダー買ってくれない? なんなら、俺が自分で買いに行くから!」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「遅い時間だし、 もう、ごはんできるから、明日にしな?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「明日じゃダメなんだ!」
櫛名 真心(くしな・まこ)「どうしたの?お兄ちゃん。 大きな声だしてさ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「真心!なんで、お前三ツ葉ソーダー飲むんだよ!」
櫛名 真心(くしな・まこ)「え、だって、あと少ししかなかったから・・・」
櫛名 真心(くしな・まこ)「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「真愛!いい加減にしなさい!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「いや、俺は・・・」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「もうごはんも食べなくていい! 勝手にしなさい!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「違うんだ!母さん!」
  このままじゃ15年後に戻れない。
  一体、どうすれば・・・。

〇黒
  To be continued‥‥

次のエピソード:第三話:思い知る存在/立ちはだかる現実

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