第三話:思い知る存在/立ちはだかる現実(脚本)
〇黒
・・・前回までのあらすじ
櫛名 真愛(くしな・まいと)「妻である恋華が、ひき逃げ事故により、 昏睡状態になってしまった」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「途方にくれ、 現実逃避のために酒を飲んでそのまま眠ってしまった俺は、」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「気がついたら、少年時代に戻っていた」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「戸惑いつつも、夢だと思い込んだ俺は」
若き日の母親や
妹
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そして、」
恋華との再会に思いを馳せていた
櫛名 真愛(くしな・まいと)「しかしながら、 俺自身が、記憶から消し去っていた、 とんでもない出来事が学校で起こる」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「それは・・・」
給食費紛失事件
櫛名 真愛(くしな・まいと)「俺は本来の歴史では、 この事件がきっかけで、 クラスからいじめを受けて、不登校になった」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「原因を作った担任教師がクラスメイトから非難されてるのを、見ていられず結局は庇ってしまい、同じ経験をするかと思ったのだが」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「なぜか、いじめの主犯だったはずの氷室竜一に助けられたことで、俺の運命が変わった」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「さらには、」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「『友達になりたい』」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「という、氷室を疑いつつも受け入れ、 どういうわけか、友達になってしまった」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「夢だとは思いながらも、 不思議と気分がいい俺は、 炭酸のジュースで祝杯をあげる」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そのまま疲れて眠り、目が覚めると」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「今度は、現代に戻っていた」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「まあ、そりゃあ夢だよなー。 そんな、漫画みたいなこと起こるわけがないよな」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そう思っていた矢先に、 連絡してきたのは・・・・・・」
〇白
???「誰って? 氷室竜一だよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「なんだと・・・!?」
〇綺麗な部屋
本当に歴史が変わったのか!?
???「とにかく、今すぐ病院に来れるかい?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「病院? って、どこのだよ」
???「はあ・・・。 君は相変わらずだね。 恋華が運ばれた病院にだよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「お前、なんでそれを?」
???「いいから! 今すぐ来るんだ!」
〇大学病院
俺はタクシーで、病院へと向かった
櫛名 真愛(くしな・まいと)(ってゆうか、俺まだ酒抜けてないけど、大丈夫かな・・・)
櫛名 真愛(くしな・まいと)「氷室か? 病院についたぞ」
???「わかった。 入り口まで迎えに行くよ」
〇病院の待合室
氷室 竜一「やあ、久しぶりだね。 真愛」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「お前、その格好って・・・」
氷室 竜一「僕、ここの医者なんだよ。 ちょっと前まで研修医で、最近外科に配属されたんだ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「まじかよ・・・。 てか、なんで俺の番号知ってるんだ?」
氷室 竜一「そりゃあ、友達だし、 それに、ここで色々書類書いたでしょ?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「まあ、たしかに」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あ! お前、医者なら恋華なんとか助けてくれよ!」
氷室 竜一「無理だよ。 執刀医の中村先生に聞いただろ? 恋華は、脳へのダメージが大きい。 脳外科じゃないと無理なんだ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「お前でも治せないってことか・・・」
氷室 竜一「そんなことより、 どうして、恋華はあんなことになったんだ? 話によると、自殺しようとしたとか聞いたけど・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「違う! 恋華は自殺なんて・・・。 でも、俺のせいなんだ。 俺が恋華を怒らせてしまったから」
氷室 竜一「気にするな。とは言えないけど、 自分を責めすぎるのもよくない。 今は、回復することを信じよう」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「けど正直、恋華が今どんな状態なのかすら、よくわからないんだ」
氷室 竜一「そうか。 君をここに呼んだのには、理由があってね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ん?」
氷室 竜一「ついて来てくれるかい?」
〇集中治療室
案内された先に見えたのは
櫛名 真愛(くしな・まいと)「恋華・・・」
氷室 竜一「本当ならこんな時間に面会させる訳にはいかないんだけどここは父さんの経営する病院のグループでね。 少しだけ融通が利くんだよ」
恋華の頭の包帯と、身体中に張り巡らされた管の数を見て、俺は言葉が出なかった
櫛名 真愛(くしな・まいと)「・・・・・・」
氷室 竜一「外にいる。 あまり長い時間は会わせられないけど、 気が済んだらまた声をかけてくれるかな?」
俺は何も言わずに頷いた。
櫛名 真愛(くしな・まいと)「恋華、どうして・・・。 どうしてお前が・・・」
俺はただ泣き続けることしかできなかった。
病院に運ばれて、先生に話を聞いたときは正直実感が湧かなかった。
これは全部夢なんじゃないか?って
でも、違った。
ただ夢であってほしいと願っていただけだったんだ
櫛名 真愛(くしな・まいと)「今、目の前にいるのが、 俺の妻。恋華なんだ」
そう、口に出した時、また涙が止まらなくなった。
氷室 竜一「そろそろ時間だよ。 気持ちはわかるが、終わりだ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ああ。 悪いな」
〇病院の待合室
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ありがとうな。 恋華に会わせてくれて」
氷室 竜一「僕が、してあげられるのはこれくらいだからね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「また、恋華に会いに来てもいいか?」
氷室 竜一「構わない」
氷室 竜一「しかし、 いつ亡くなってもおかしくない状態なのは理解しておいてほしい」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「わかっ・・・てるよ」
氷室 竜一「僕だって辛いよ。 君たちの友人として、何が最善なのかわからない」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「こうやって、恋華に会わせてくれただけでもありがたいよ」
氷室 竜一「仕事は? 休みをもらったのかい?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ああ。 さすがに、仕事には行く気にならないから、 しばらく休暇をもらうつもりだよ」
氷室 竜一「そうか。 その方がいいね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「じゃあ。 また、何かあったら連絡くれよ」
〇明るいリビング
家に着くと、
俺はソファーに寝転がる
櫛名 真愛(くしな・まいと)「子どもに戻っていた時間、あれは夢じゃなかった。 氷室は本当に俺の友だちになったのか? 本当に、信用していいのだろうか?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「今は考えても仕方ないか。 少しだけ眠ろう」
〇明るいリビング
目が覚めると
櫛名 真愛(くしな・まいと)「うわ!やべえ・・・。 寝すぎちまった」
もう、昼間だった。
櫛名 真愛(くしな・まいと)「もしもし・・・母さん? 俺だけど」
???「なに?オレオレ詐欺なら、間に合ってるわよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「冗談言ってる場合かよ。 俺だよ。 真愛だよ」
???「あら。 久しぶりじゃない。 元気にしてるの?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「まあ・・・な」
???「なんかあった? 恋華ちゃんと喧嘩でもしたの?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「いや、違うんだ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「恋華が、ひき逃げ事故に遭った」
???「え? 嘘でしょう?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「こんな嘘、つくわけないだろ」
???「・・・・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「とりあえず、今からそっちに行ってもいいかな? 色々、事情も説明したいし」
???「わかった。 気を付けてくるのよ」
〇駅のホーム
〇駅のホーム
『ドアが開きます。ご注意下さい』
〇電車の座席
時間帯もあってか、
電車はあまり混んでいなかった
俺の家から、実家までは電車を乗り継ぎ二時間程で到着する
〇中規模マンション
実家に到着したのは夕方だった
町並みは変わったが、
俺の実家は、今でも変わらずこのマンションだ。
〇ダイニング(食事なし)
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ただいま・・・。 母さん」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「おかえりなさい。 疲れたでしょう」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「それよりも恋華が・・・」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「一体、恋華ちゃんに何があったの?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「喧嘩してさ、俺、言っちゃいけないことを恋華に言ってしまってさ。 それで、家出てってひき逃げに遭ったんだ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「母さん、俺どうしたらいいんだろう」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「落ち着いて。真愛」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「俺、本当はわかってたんだ。 恋華の気持ち。 でも、あいつに金のことなんて、考えさせたくなかったんだよ・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あいつは子どもの頃にもう十分苦しんだんだ。だから俺が恋華を幸せにしたかった。 なのに俺、あいつの母親と同じ事を・・・」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「もうわかったから。 あなたの気持ちは、ちゃんと恋華ちゃんにも届いてるわよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「届いてるかな。 もし、このまま恋華がいなくなったら、 ケンカしたままになっちまうんだ」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「大丈夫。 今は、恋華ちゃんの生命力を信じるのよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「うん・・・。 あ、そういえば、真心は? 学校?」
きくと、母さんは首を横にふる
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「自分の部屋よ あんたから連絡があった時からずっと」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「恋華の・・・ことか」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「あの子にとって、恋華ちゃんは本当のお姉さんみたいなものだから」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「小さい頃からずっと一緒だったしな」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「そうね」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「懐かしいわね。 恋華ちゃんが、よくうちに来てた頃のこと」
〇黒
母さんは、こうして笑っているが、
俺は笑えない。
”あの女”の、あの表情は俺は一生忘れられない
〇黒
・・・20年前
〇玄関の外
・・・ピンポーン
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「はーい」
豊原 恵子(とよはら・けいこ)「ごっめーん!真弓ちゃん また、この子預かってくれない?」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「それは、構わないけど、 恋華ちゃん、今が一番 ケイちゃんの愛情が欲しい時期じゃないの?」
豊原 恵子(とよはら・けいこ)「大丈夫よー こーんな可愛くない子・・・」
豊原 恵子(とよはら・けいこ)「アタシの子どもじゃないから」
豊原 恵子(とよはら・けいこ)「ほんとさあ、真弓ちゃんさえ良ければもらってほしいくらい」
豊原 恵子(とよはら・けいこ)「ねえ?真愛くん」
豊原 恵子(とよはら・けいこ)「この子・・・真愛くんの妹にしてあげてよ」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「ケイちゃん! さすがに言って良いことと悪いことがあるんじゃない?」
豊原 恵子(とよはら・けいこ)「別に冗談なんだからいいじゃない」
豊原 恵子(とよはら・けいこ)「とにかく。 こいつの面倒頼んだから」
〇黒
恋華の母親はシングルマザーで、
夜の仕事をしていた。
俺の母親と恋華の母親が元々は、
仲のいい友だち同士だった縁もあり夜になると、うちに恋華を預けにきていた
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そして、俺と母さんに言ったあの言葉」
豊原 恵子(とよはら・けいこ)「真弓ちゃんさえ良ければもらってほしいくらい」
豊原 恵子(とよはら・けいこ)「この子、真愛くんの妹にしてあげてよ」
あの女のあの、感情のない眼差し・・・
櫛名 真愛(くしな・まいと)「俺は、子どもながらに尋常じゃない恐怖を感じた」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「少なくともあの目は・・・俺の知ってる中で、最も愛が深い ”親”という存在が、子どもに向ける視線ではなかった」
〇ダイニング(食事なし)
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「あの日くらいからだったわよね。 うちに、恋華ちゃんが来るようになったのは」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ああ。 俺と真心と恋華はそれこそ本当の兄妹のように育った」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「でも、俺はあれでよかったなんて思ってないよ。 結局、恋華に寂しい思いだけさせて、 働いた金は全部新しくできた男に貢いでた」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そんなのあり得ない。俺はあの人を許してないし、結婚した今でも義母だなんて思いたくない」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「それはそうだけど、 一応は、恋華ちゃんのお母さんなんだし、 連絡くらいはした方がいいんじゃないかしら?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「俺は、気が進まないな」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「それより、今は真心と話してくるよ」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「わかったわ。 かなり落ち込んでいるはずだから、 フォローしてあげて?」
〇女の子の部屋
櫛名 真愛(くしな・まいと)「真心・・・。 俺だけど。 兄ちゃんだけど」
櫛名 真心「お兄ちゃん? 帰ってきてたんだ。 おかえりなさい」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「うん・・・。 ただいま」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あのさ、真心・・・」
櫛名 真心「お腹!空いたでしょ? ご飯食べに行こうよ!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「恋華の事、やっぱりショックだよな」
櫛名 真心「ショック・・・?」
櫛名 真心「そんなんじゃ足りないよ!」
櫛名 真心「なんで? なんで、恋華ちゃんなの?」
櫛名 真心「なんで恋華ちゃんが、そんな目に遭わないといけないの?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「真心・・・」
櫛名 真心「どうしてなのよ・・・」
〇白
俺と
恋華と
真心は
いつも一緒だった。
恋華も、真心を妹のように可愛がり、
真心も、恋華を姉のように慕っていた
だからこそ、真心にとっては胸を引き裂かれる思いなのだろう。
当然、俺だってまだ全然気持ちの整理なんてできていない
でも、俺は真心の兄として、
今は真心の悲しみや怒りを、受け止めてやりたかった
〇女の子の部屋
櫛名 真愛(くしな・まいと)「少しは、落ち着いたか?」
櫛名 真心「うん。 ごめんね。 辛いのは、恋華ちゃんやお兄ちゃんの方なのに」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「構わないさ。 お前だって、恋華と他人じゃないんだ。 義理とはいえ、姉妹なんだから。 悲しいのは当然だよ」
櫛名 真心「本当に許せないよ。 恋華ちゃんを、ひどい目に遭わせた奴。 この手で裁いてやりたい!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「それはダメだ! お前はまだ学生だろ? そんな危ないこと、させるわけにいかない」
櫛名 真心「学生でも、もう二十歳過ぎてるの! 子ども扱いしないでよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「真心。 恋華はお前にそんなこと望んだりしないと思う。 もちろん俺もだ」
櫛名 真心「なら、どうしたらいいの? 私は何もできないの?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「俺も、真心も警察でもなければなんでもない。 犯人が捕まること、恋華が目を覚ますことを祈るしかないんだよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「悔しいけどな」
〇ダイニング
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「真愛!真心!ごはんよ。 とりあえず、出ていらっしゃい。 お父さんも帰ってきてるわよ!」
〇女の子の部屋
櫛名 真愛(くしな・まいと)「とりあえず、飯食うか」
櫛名 真心「そうだね!」
〇ダイニング
リビングに行くと
櫛名 真愛(くしな・まいと)「父さん。 久しぶりだね」
櫛名 久雄「母さんから全部聞いたぞ。 ろくに連絡もしないで・・・。 この親不孝者が!」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「お父さん! 今はダメ。 真愛の気持ちも考えてあげて」
櫛名 久雄「違う!」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「え?」
櫛名 久雄「父さんも、母さんも、真心だって、 お前の家族じゃないか!」
櫛名 久雄「こんな大変なときに、 家族を、親を頼ってくれないなんて、 そんな親不孝な事があるか?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「父さん・・・」
櫛名 久雄「父さんと母さんの子どもはな? 真愛と真心だけじゃないんだよ。 恋華ちゃんだって、大事な娘なんだ」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「そうね。 恋華ちゃんは、私たちにとって娘」
櫛名 久雄「うん。 そんな、大事な娘がひき逃げされて、 命の危険にさらされて・・・。 じっとしていられたら親じゃないよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「父さん、母さん、ありがとう」
櫛名 真心「わーたーしーも!」
櫛名 真心「忘れないでね!」
櫛名 真心「何かあるなら私だって協力するから!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ありがとう。真心」
「いつだって」
「真愛の」
櫛名 真心「お兄ちゃんの」
「味方だから!」
櫛名 久雄「とは言っても無茶苦茶はするなよ。 お前は警察じゃない。 でも、その気になればできることもあるだろう」
櫛名 久雄「これを持っていきなさい」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「これは?」
櫛名 久雄「お父さんの知り合いの警察官でね。 確か、今はお前の住む街の警察署にいるはずだ。 もしかしたら力になってくれるかも知れない」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「けど、そんな簡単に会えるのか?」
櫛名 久雄「任せなさい」
櫛名 久雄「あーもしもし? 夜分遅くにすまんね。 実は、私の息子に協力してやってほしいことがあってな? 個人的に力を貸してくれんか?」
櫛名 久雄「うん‥うん‥わかった。 なら、明日の14時に待ち合わせだな。 すまないが、頼んだよ」
櫛名 久雄「忙しいが、会ってくれるそうだ。 14時に、署の近くの公園で待ち合わせだ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ありがとう。父さん」
櫛名 久雄「うん。 今日はもう遅い。 風呂に入って、泊って帰りなさい」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ああ。 そうするよ」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「じゃあ、みんなでご飯食べましょうか」
櫛名 久雄「よし、真愛」
櫛名 久雄「一杯飲まないか?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「俺はいいよ。 酒弱いし、それに明日のこともあるから、 早めに寝たいんだ」
櫛名 久雄「なら、仕方がないな 一人で晩酌するか」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「あまり飲みすぎちゃダメよ」
櫛名 真心「パパ、酔っぱらうとすぐ歌とか歌い出すからうるさいんだよね」
櫛名 久雄「いいじゃないか! お父さん、歌上手いだろう? 昔は、歌手になりたかったんだよ」
「いや、無理だから!」
櫛名 久雄「はっははー」
俺たちは、久しぶりに全員揃って食事をした
こんな時間がずっと続いてくれたら・・・と思っていた
〇黒
なのに
〇ダイニング(食事なし)
なんでこんなことに?
〇男の子の一人部屋
櫛名 真愛(くしな・まいと)「なんで・・・ なんで、火が!?」
俺は意識が遠退きそうな中で奇妙な人影を見た
櫛名 真愛(くしな・まいと)「お前は・・・誰だ?」
??「・・・・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「お前がこんなことを?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あっ!待て!」
とりあえず、父さんたちを助けなきゃ
〇ダイニング(食事なし)
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ゴホ・・・ゴホ・・・父さん!母さん!」
櫛名 久雄「真愛!お前は早く逃げるんだ!」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「お母さん達は大丈夫だから!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そんなわけにいくかよ! でも、こんなに火が回ってたら・・・」
〇女の子の部屋
櫛名 真心「お兄ちゃーん!」
〇ダイニング(食事なし)
櫛名 真愛(くしな・まいと)「まこ・・・真心!」
〇女の子の部屋
櫛名 真愛(くしな・まいと)「真心!!」
櫛名 真心「おに・・・ちゃ・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「待ってろ、 今すぐここから・・・」
〇女の子の部屋
櫛名 真愛(くしな・まいと)「火がどんどん強くなっていく・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「父さーん! 母さーん!」
〇黒
To be continued‥‥