お悔み申し上げます。こちら煉獄部転生課です。

無宿者

ようこそ、霊魂冥界へ。(脚本)

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〇黒
「ん・・・う~ん・・・・・・」

〇基地の廊下
青年「ぅ・・・・・・」
青年「ん・・・・・・?」
青年「ここ、・・・・・・どこだ?」
老婆「お兄さん、起きたかい?」
青年「え?あ、すみません!おはようございます!!」
老婆「おやまぁ、元気だこと」
老婆「若いのに可哀そうにね」
青年「・・・?」
青年(ここ、見覚えがないな・・・)
青年(学校・・・ではなさそうだな)
青年(俺、こんなとこ来た覚えないぞ?)
老婆「お兄さん、もう手続きは済んだかい?」
青年「手続き、ですか?」
老婆「そうそう」
老婆「お兄さん、手の甲を見るにまだ初七日だろう?」
青年「手の、甲・・・・・・?」
  お婆さんに言われて、自分の手の甲を見ていると、右手の甲に文字が書かれていた。
青年(「K-1115」って書かれてる)
青年(なんだこの落書き、いつの間に・・・・・・)
老婆「早いとこ手続した方がいいよ」
青年「え、これなんの数字ですか?」
青年「というか、手続きって・・・・・・?」
老婆「まぁまぁ、そんな焦らず」
老婆「ほら、この廊下をずっと歩いて行くと受付があるからね」
青年「受付?」
青年「あぁ、ちょっと・・・!」
青年「えぇ・・・ど、どうしたら・・・」
青年「とりあえず、行ってみるか!」

〇オフィスのフロア
青年(なんか、役所みたいだな・・・)
青年(じいさん、ばあさんが多い・・・)
青年(受付ってなんだ?どうすればいいんだ? あんまり役所とか行った事ないぞ?)
「発券番号、「K-1115」をお持ち方は、4番窓口までお越しください」
青年(ここどこなんだろ・・・なんで俺ここに居るんだ?スマホも無いし・・・)
「発券番号、「K-1115」をお持ち方は、4番窓口までお越しください」
青年(俺は確か、昼休みで、山田と一緒に昼飯食ってて・・・)
「「K-1115」の方ー、4番窓口までお越しください!」
青年(そしたら、橋本の奴らが絡んできやがって・・・そんで)
女性「「K-1115」の方!四番窓口までお越しくださいっつってんだろうがっ!!」
青年「ひゃぁわぃ!!??」
女性「さっきからてめぇの真ん前でアナウンスしてんだろうが!!」
女性「どこに耳つけてんだタコがっ!!」
青年「え、え、え!!?」
青年「お、俺っすか?」
女性「そうだよっ!! ったく・・・」
女性「さっさとついてこい。 ぱぱっと手続き済ませんぞ」
青年「ぇえ・・・?」

〇オフィスのフロア
女性「さて、お前、ここがどこだか分かるか?」
青年「あ、いえ、全く」
女性「だろうな。 とりあえず、お前の置かれている状況を説明する前に本人確認だけさせろ」
青年「ほ、本人確認・・・?」
女性「形式上必要なんだ。さっさと自己紹介しろ」
青年「え、えっと」
立本 楓馬「立本 楓馬(たてもと ふうま) 17歳の男子高校生っす・・・」
立本 楓馬「趣味は、剣道。 好きな女のタイプは、黒髪ロングの清楚系」
女性「誰がお前の好みなんざ興味あるか!」
立本 楓馬「さ、さーせんっ!!」
女性「顔と年齢と性別があってんだ。もういいだろ。だが、女の好みは悪くない。清楚系いいよな」
立本 楓馬「は、はぁ・・・?」
女性「さて、本題だ」
女性「立本楓馬くん。 残念ながら君は死んだ」
立本 楓馬「・・・・・・」
立本 楓馬「・・・・・・はい?」
女性「君は高校での昼休みの最中に、同級生との揉み合いの末、突き飛ばされ、後頭部を強く打ち付けた」
女性「脳挫傷だか、ザコシショウだかを起こして即死だ」
立本 楓馬「・・・・・・」
女性「何か質問は?」
立本 楓馬「・・・・・・」
女性「無いなら次に行こう。 次の君の転生先なんだが、希望はあるか? ラッコとかでいいか?」
立本 楓馬「いやいやいやいや!」
女性「なんだ、ラッコは嫌か? じゃあビーバーはどうだ?」
立本 楓馬「いやっ!そういう事じゃなくって!!」
女性「わがままだなぁ。 じゃあカワウソでどうだ?」
立本 楓馬「なんで水に浮かぶ毛皮しか選択肢がないんだよ!」
立本 楓馬「いや、そうじゃなくって!!」
立本 楓馬「俺、死んだんすか!!?」
女性「そうだ」
立本 楓馬「え、えぇ・・・・・・」
立本 楓馬「そ、そんな簡単に・・・」
女性「はぁ・・・ 全く面倒な。いつもこれだ。 死を受け入れられずに話が進まない」
女性「私の仕事が滞る訳だ。分かるか坊主」
立本 楓馬「いやいや、そりゃ、すぐに呑み込めないっすよ!!」
女性「じゃあ分かった。君は死んだ事が受け入れられないと」
立本 楓馬「まぁ、そうっすね・・・実感ないっすし」
女性「なんだ、どうすれば実感するんだ? お前を血塗れにでもすればいいのか?」
立本 楓馬「血塗れって・・・確かにそれなら死んだ感はあるか・・・じゃなくって!」
立本 楓馬「ちょ!ちょちょ!なに持ってんすか!!」
女性「刀は武士の魂だからな。肌身離さず持ち歩いていて当然だろ」
立本 楓馬「武士って!現代日本で女性が何言ってんすか!!」
女性「まぁ、戯れはここら辺にしておいて、だ」
女性「悪いが坊主。私にも私の都合がある」
女性「君が自分の死を受け入れられるまで悠長に待っているつもりも無ければ、君に寄り添う気も無い」
立本 楓馬「そ、そんな正直に言わなくとも・・・」
女性「黙って私の話を最後まで聞け」
女性「時が経てば嫌でも己の死を理解するはずだ」
立本 楓馬「・・・・・・」
女性「よし、では話を進めるぞ」
女性「君は死んだ。 そしてここは死後の世界だ」
立本 楓馬「死後の、世界・・・」
女性「天国とか地獄的なあれだ」
女性「現世で死に、七日かけて此処に辿り着く」
女性「そして此処で、転生の手続きを行ってもらう」
立本 楓馬「転生・・・」
女性「転生の意味は分かるだろ? ほら最近現世で流行ってるじゃないかそういう小説が」
立本 楓馬「えぇ、まぁ」
女性「そんなノリで君には、転生先の希望を言ってもらいたいのだ」
立本 楓馬「え、それってつまり、異世界にも転生出来るって事っすか?」
女性「いや、できない」
立本 楓馬「な、なんだよ・・・」
女性「異世界転生となるとまた厄介でな。色々面倒な規約だの手続きがあるんだが、とにかく君には関係ない事だ」
女性「君には、現世で何かに生まれ変わってもらう」
立本 楓馬「その、何かっていうのは自由なんですか?」
女性「君の場合は選択肢がある」
立本 楓馬「それなら、俺は人間が良いっすけど」
女性「・・・人間か」
立本 楓馬「はい」
女性「まあ、そう言うだろうな」
女性「言ってなかったが、これはあくまで希望であり、間違いなく人間に生まれ変われるかは分からない」
立本 楓馬「え、そうなんすか!?」
女性「あぁ、そうだ」
女性「だがどうせ、記憶はなくなる」
女性「人間に生まれ変わったかどうかなんて、お前が知る由はないんだ。 何か問題が?」
立本 楓馬「えぇ・・・?そうかもしれないっすけど」
立本 楓馬「なんかこう、気持ち的に・・・」
女性「とまぁ、希望は聞いた事だし。 もういいか? 自分が死んだ事に納得したか? 転生に同意するか?」
立本 楓馬「ど、同意するかって・・・ したらどうなるんすか? これから俺はどうなるんすか?」
女性「転生の間で魂魄に戻ってもらう」
立本 楓馬「こんぱく、って何ですか?」
女性「簡単に言うなら、魂という奴だ」
女性「その瞬間、立本楓馬としての意思も記憶も全てなくなる」
立本 楓馬「・・・・・・」
女性「・・・・・・まぁ、同意したからって直ぐに転生の間送りになるわけじゃない」
女性「四十九日って聞いた事あるだろ?」
女性「初七日はもう迎えているから、実質42日間。君には時間が残されている」
立本 楓馬「42日間・・・」
女性「それまでにどうにか気持ちに区切りをつけるんだな」
立本 楓馬「もし、42日を過ぎても、納得できなかったらどうなるんすか?」
女性「そん時は、引き摺ってでも転生の間に放り込むだけだ」
立本 楓馬「・・・・・・」
女性「何か心残りがあるなら今のうちに吐き出した方がいい。後悔する前にな」
女性「面倒な事に、私はお前の担当だ。四十九日でお前が転生できるよう、サポートするのが仕事だ」
女性「聞いて欲しい事があれば私に言ってみろ。 何かやりたい事があれば私に言ってみろ」
女性「出来ない事以外はしてやる」
立本 楓馬「は、はい・・・」
女性「そういえば、自己紹介がまだだったな」
女性「霊魂冥界第三支社、煉獄部転生課」
女性「四番窓口係獄卒」
久志方 利子「久志方 利子(くじかた りこ)」
久志方 利子「この度は、立本楓馬さんのお悔み申し上げます」

次のエピソード:お節介

コメント

  • こんにちは!
    女性の好みに賛同するりこさん可愛かったです😂
    こんなに呆気なく死んでしまうと未練が残りそうです😭
    続きが気になります

  • マンガの「死役所」を彷彿とさせる内容ですが、利子ちゃんのおかげでお笑い要素というかコメディ色が強くてあっけらかんとした感じで読みやすいです。ザコシショウって…。死人を笑わせてどうすんだっての。楓馬に残された四十二日間の展開が楽しみです。

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