第6話 心を揺さぶれ!活動報告会(脚本)
〇駅前広場
マッドネス斎藤「少し、話しすぎたかもしれませんね」
マッドネス斎藤「これが、私が知る限りの瀬尾くんの情報です」
相沢新人「そんな過去があったなんてな・・・」
衛士村斗真「瀬尾が規則に厳しくなった理由も、分かる気がするよ」
相沢新人「どうする、お嬢?」
相沢新人「瀬尾の強引なやり方にも一理あるみたいだぜ」
九龍真理「ふははは! 情報提供に感謝するぞ、マッドネス斎藤!」
九龍真理「つまりは、瀬尾が理不尽に規則と規律の順守を、生徒たちに強いているわけではないということだろう?」
九龍真理「話の分かる人間なら、必ずや『超次元科学』の素晴らしさも理解できるはずだ」
相沢新人「相変わらず『超次元科学』への信頼がすげぇな」
衛士村斗真「超次元科学研究部《チカケン》の活動も、世の中をより良くするための活動だって、瀬尾に分かってもらえないかな?」
九龍真理「そのための絶好の機会が、もうすぐあるではないか!」
相沢新人「学年連邦生徒会への『活動報告』か?」
九龍真理「その通り!」
九龍真理「部活動承認選挙の前には、我々の『これまでの活動』と『今後の活動計画』を学年連邦生徒会に報告せねばならない」
九龍真理「瀬尾が出席する活動報告会でも、今日聞いた『中学時代の話』は使えるぞ」
相沢新人「お嬢、また悪いこと考えてるだろ」
九龍真理「ふははは! 活動報告会で瀬尾を説得して、我々の活動を承認させるぞ!」
〇生徒会室
部活動承認選挙の1週間前
活動報告会
九龍真理「・・・というのが、我々のこれまでの活動と今後の活動計画だ!」
学年連邦生徒会員A「うわぁぁ、なんて素晴らしい部活動なんだ!」
学年連邦生徒会員B「僕の全財産を投げ打ってでもキミたちの活動を支持しよう!」
衛士村斗真「学年連邦生徒会のみなさん! 僕たちの活動に清き一票をよろしくお願いします」
学年連邦生徒会員A「もちろんだとも!」
学年連邦生徒会員B「必ず投票するよ」
相沢新人「お嬢、効いてるみたいだな」
九龍真理「ふははは!当たり前だ」
九龍真理「これが背景感情変移装置『BGEM - BackGroundEmotionMover』の力!」
九龍真理「BGEMは視覚・聴覚など人間の五感に影響を及ぼす刺激を無意識下で与えることによって、対象を任意の感情に誘導できる」
九龍真理「今回は『感動』を誘う刺激を学年連邦生徒会に与えたので、我々の活動報告に感動しやすくなったというわけだ!」
衛士村斗真「うおぉ、ありがとうございます!」
衛士村斗真「必ず超次元科学の力で、みなさんのお役に立ってみせます!」
相沢新人「味方にも一名、めちゃくちゃ効いてるヤツがいるけどな」
瀬尾道安「活動報告はこれで以上か? 超次元科学研究部」
相沢新人「それで、なんで一番効いて欲しいヤツには効いてないんだよ?」
九龍真理「BGEMは、あくまでも感情を誘導して増幅するだけの装置だ」
九龍真理「そもそも、我々の報告に一切心が動かされていなければ、瀬尾の感情を誘導することはできない」
相沢新人「いいプレゼンだったんだけどな、これ以上どうすれば感動させられるんだ?」
九龍真理「ひとまず、マッドネス斎藤に聞いた『中学時代の話』で揺さぶりをかけよう」
九龍真理「少しでも心が動けば、BGEMの力で我々の活動報告にも感動するはずだ」
瀬尾道安「活動報告は以上かと聞いている!」
九龍真理「まぁ待て、瀬尾」
九龍真理「次は、これを見てくれ」
真理は、モニターにマッドネス斎藤の写真を映し出した。
〇パールグレー
〇生徒会室
瀬尾道安「これは・・・」
九龍真理「ふははは! さすがの貴様も驚いているようだな」
瀬尾道安「誰だ? この不審者は?」
九龍真理「ズコーッ」
九龍真理「中学時代の恩師を忘れるとは何事だ! マッドネス斎藤に謝れ!」
瀬尾道安「恩師? マッドネス斎藤・・・」
瀬尾道安「もしかして、中学の斎藤先生か?」
九龍真理「やっと思い出したか、この薄情者!」
瀬尾道安「以前とは随分雰囲気が変わっていたから、気づかなかった」
瀬尾道安「中学校では、スーツを着て髪型も整えた姿しか目にしたことがなかったからな」
相沢新人「マッドネス斎藤のヤツ、教師時代は普通にスーツで働いてたのか」
相沢新人「どこまで常識人なんだよ」
瀬尾道安「それで、斎藤先生は素晴らしい教育者だが、それが報告と関係あるのか?」
九龍真理「実はな、マッドネス斎藤から貴様の出身中学校『西帝中学校』について話を聞いてきたのだ」
学年連邦生徒会員A「瀬尾さんの出身中学?」
学年連邦生徒会員A「公立中学校にも関わらず、驚異的な進学実績を誇る伝説のエリート校『西帝中学校』の話が聞けるのか!」
学年連邦生徒会員A「感動だ! うおぉぉ!」
九龍真理「ちょっと、うるさいから斗真と一緒に外に出てろ!」
衛士村斗真「仕事がもらえるなんて感動だぁ!」
衛士村斗真「真理ちゃん! この役目、命に代えても果たしてみせるよ!」
九龍真理「話を戻すぞ!」
九龍真理「今では、有数の進学校として知られている『西帝中学校』だが」
九龍真理「貴様の入学した時代はそうではなかったようだな」
瀬尾道安「その通りだ。私が入学した頃は、ひどく荒れた学校だった」
〇ボロい校舎
九龍真理「聞けば、全校生徒の95%が不良で、最も低俗と書いて『最低中学校』と揶揄されるほど最悪の状態だったそうだな」
九龍真理「その状況を一変させたのが、瀬尾!」
九龍真理「お前だったんだろ?」
瀬尾道安「そうだ」
〇体育館の舞台
瀬尾道安「私はその状況を改善するために、誰もやりたがらなかった生徒会長に就任した」
瀬尾道安「そして、生徒はもちろん先生方からも忘れ去られ、形骸化していた校則を全校生徒に順守するように強制した」
九龍真理「友人を守るためか?」
瀬尾道安「・・・なに?」
九龍真理「マッドネス斎藤が言っていたよ」
九龍真理「貴様が生徒会長になってまで生徒たちに規則と規律の順守を強いるようになったのは友人のためだと」
九龍真理「貴様の友人の一人が、不良たちから目をつけられたのだろう?」
瀬尾道安「そんな話まで聞いていたのか・・・」
〇教室
瀬尾道安「斎藤先生から聞いた通り、私が西帝中学校の改革に踏み切ったのは」
瀬尾道安「友人を」
瀬尾道安「そして生徒たちを守るためだ」
瀬尾道安「規則のない学校では、一部の生徒の横暴がまかり通り」
瀬尾道安「多くの生徒たちはそれにおびえながら過ごすことになる」
九龍真理「その規則を強いることで、苦しむ生徒もいるのではないか?」
〇生徒会室
九龍真理「私は、規則に縛られるのではなく、更に多くの生徒が楽しめる学校にしたい」
瀬尾道安「その結果が、お前たちの過激な研究活動だと言うのか?」
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