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第一涙 失くした記憶に涙する(脚本)

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〇後宮の廊下
紫苑(しおん)「・・・兄者・・・」
萱草(かんぞう)「・・・何だ?紫苑・・・」
紫苑(しおん)「ククッ・・・ また『あの子』が泣いてるよ?」
萱草(かんぞう)「・・・そりゃあ、いい!」
紫苑(しおん)「今回も・・・『視る』だろ?」
萱草(かんぞう)「もちろん・・・! 『視て』やろうじゃないか・・・! クククッ・・・!!」

〇豪華な王宮
菖(しょう)「遅くなりましたッッッ!!!!!!」
閻魔(えんま)「・・・15秒・・・」
菖(しょう)「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・モウシワケございません・・・!!」
佐須良(さすら)「はっはっは! 相変わらず狭量だな・・・ 15秒くらい多めに見てやれ・・・!!」
閻魔(えんま)「・・・・・・・・・30秒・・・・・・」
菖(しょう)「もっ申し訳ございませんッッッ!!!!」
閻魔(えんま)「・・・」
閻魔(えんま)「報告ッッッ!!!!!!」
菖(しょう)「はっ!」
菖(しょう)「善行!!30件!! 帰り途中に見つけたおばあちゃんが畑で大根を抜くのに困っていた所を助けてあげた・・・など些細な──」
菖(しょう)「──ものから・・・怪我した小鳥の命を助ける──など・・・この一カ月で約30件の善行を確認しました!!!!」
閻魔(えんま)「・・・相変わらずだな・・・ 佐須良・・・悪行は?」
佐須良(さすら)「お菓子をこっそりつまみ食いした・・・ 夜更かしした・・・ 我の嫁は無欲だな!! 悪行と言っても10件にも満たない・・・」
閻魔(えんま)「・・・フン 良い子ちゃんすぎだな・・・」
佐須良(さすら)「そんな所も・・・愛いであろう?愛いであろう?」
閻魔(えんま)「・・・菖・・・ 何か変わりはないか?」
菖(しょう)「・・・そうですね・・・ 最近・・・『夢を見て泣いてる事』が・・・ 度々あるようです・・・」
閻魔(えんま)「・・・そうか・・・」
閻魔(えんま)「・・・『失った記憶の欠片』を・・・ 無意識のうちに夢で見ているのかもしれんな・・・」
菖(しょう)「そんなっ!? ・・・あれはオレが・・・!!」
閻魔(えんま)「頭では消えても・・・心が憶えているのだろう・・・」
閻魔(えんま)「・・・心が無意識のうちに・・・ 囚われたままなのだ・・・」
閻魔(えんま)「善行が多いのも・・・ 『良い事をすれば心のモヤモヤが晴れる』 とでも思っての行いかもしれん・・・」
「・・・」

〇後宮の庭
  ぽっかりと・・・
  
  穴が開いているみたい・・・
  思い出したくても・・・
  
  その”名前”が出てこないの・・・
  そこに確かに
  
  ”存在”していたのに・・・
  失くなってしまった記憶に涙する・・・
  そこにいたのは・・・
  そこにあった記憶は・・・
  かけがえのない
  
  ”大切な想い”だったのに・・・
  ねぇ?
  私は一体”何を”
  
  忘れてしまったの?

〇太子妃の御殿
瑚蓮(これん)「・・・遅くなっちゃった・・・!」
瑚蓮(これん)「・・・裏口から入れば・・・大丈夫だよね?」
???「こーれーんーさぁーま?」
夕顔(ゆうがお)「お帰りなさいませ?」
瑚蓮(これん)「・・・た、ただいま・・・」
夕顔(ゆうがお)「どこで油を売ってたのか──って!! 泥だらけじゃないですか!?」
瑚蓮(これん)「・・・へへへ・・・」
夕顔(ゆうがお)「し・か・も! ・・・ドブ臭いですよ・・・?」
瑚蓮(これん)「本当!?」
夕顔(ゆうがお)「五節の舞姫の一人であろうお方が何という事!! まずはお風呂! お風呂に入ってから、事情をお聞きします!!」

〇後宮の一室
夕顔(ゆうがお)「──で? 今日はドブの中で何をして来たんですか!?」
瑚蓮(これん)「小銭探し・・・かな?」
夕顔(ゆうがお)「は?」
瑚蓮(これん)「いや、そのね・・・ 帰り道に子どもが水路で何か必死に探しているな〜って思って近付いたら・・・」
夕顔(ゆうがお)「近付いたら?」
瑚蓮(これん)「夕飯用の小銭を転んで水路にぶち撒けた・・・ らしくてね?」
瑚蓮(これん)「・・・それを・・・全部拾うのを・・・ 手伝って・・・ました!!」
夕顔(ゆうがお)「・・・そんなこったろうと・・・思ってました・・・」
夕顔(ゆうがお)「思ってましたが・・・!!」
夕顔(ゆうがお)「心配させんなッッッ!!!!・・・です♡」
瑚蓮(これん)「わっ!? 肉まん、投げないでよ!?」
夕顔(ゆうがお)「・・・」
夕顔(ゆうがお)「とりあえず・・・コレ食って反省しろ!! ・・・です♡」
瑚蓮(これん)「あ!! カツ丼だ♡」
夕顔(ゆうがお)「・・・おやすみなさい!!!!」
瑚蓮(これん)(なんだかんだで、夕顔は優しいんだよなぁ・・・)
瑚蓮(これん)「あ、虫が入り込んでる! 逃がそっ!」
瑚蓮(これん)「ほら! お逃げ・・・!!」
瑚蓮(これん)「──って・・・あっ!!」
瑚蓮(これん)「今日もあった!」
瑚蓮(これん)「ふふふ! 良い事した日には、必ず窓辺に羽根が落ちてるんだよねー!」
瑚蓮(これん)「鳥さんが遊びに来てるのかな?」

〇御殿の廊下
佐須良(さすら)「くぁ〜! 愛い!愛い!! 我の嫁は今日も愛らしいのぅ!!!!」
佐須良(さすら)「我の羽根を持って・・・ あんなに喜んでおるぞ!」
菖(しょう)「・・・ウザいわよ?この変態・・・!!」
佐須良(さすら)「・・・そなたの二面性に・・・ 我、ハゲそう・・・」
佐須良(さすら)「閻魔の前でもそのオネェっぷりを曝け出せば良かろうに・・・」
菖(しょう)「イヤよ! 閻魔様の前では スマートなアタシで通したいの!」
佐須良(さすら)(スマート・・・とは・・・ かけ離れてるような・・・?)
佐須良(さすら)「閻魔にはバレバレであるぞ?」
菖(しょう)「わかっているわよ! そ・れ・で・も!! 閻魔様の前では こっちのアタシは見せたくないの!!」
菖(しょう)「何を言われるか・・・ 想像しただけで・・・恐ろしいわ!!」
佐須良(さすら)「・・・ま、瑚蓮が幸せなら・・・ 我は とやかく言うつもりはない」
菖(しょう)「瑚蓮至上主義も・・・ ここまで来ると いっそ 清々しいわね・・・」
佐須良(さすら)「ふふん♪」
菖(しょう)「・・・で? 瑚蓮に羽根を渡して どうする気?」
佐須良(さすら)「我の羽根には安眠効果がある♪ ・・・最近、瑚蓮は 夢見が悪かろう?」
菖(しょう)「・・・アタシがあの時・・・ 瑚蓮の記憶を食べたのにもかかわらず・・・ また記憶が蘇りそう・・・って事は・・・?」
佐須良(さすら)「『誰か』が瑚蓮の夢に介入して・・・ 瑚蓮の記憶を呼び戻そうとしている・・・」
佐須良(さすら)「・・・我は・・・ 瑚蓮に記憶を呼び戻して欲しくない・・・!!」
菖(しょう)「・・・それは・・・ アタシだって同じよ!!」
菖(しょう)「『俱(とも)に生(なりい)づる神』として 瑚蓮には・・・ 幸せでいて欲しいわ!!」
佐須良(さすら)「・・・何だかんだ言って・・・ 菖も瑚蓮の事が心配なのだな! やはり『同志』だな!!」
佐須良(さすら)「瑚蓮は渡す気はないが・・・ 恋敵として・・・ 認めてやろう!」
菖(しょう)「・・・そんな認定・・・ いらないわよ・・・」
佐須良(さすら)「むむ! 早速、瑚蓮の夢に敵が接触して来たようだぞ!!」

〇後宮の廊下
紫苑(しおん)「ゲッ・・・!? 見つかった!?」
萱草(かんぞう)「儂等が視ているのがバレたのか!?」
紫苑(しおん)「いや・・・姿まではバレてないハズ・・・!!」

〇後宮の庭
瑚蓮(これん)「・・・行かないで・・・!」
???「瑚蓮・・・」
瑚蓮(これん)「・・・私を・・・」
???「瑚蓮・・・」
瑚蓮(これん)「一人にしないで・・・」
???「瑚蓮・・・」
瑚蓮(これん)「・・・お願い・・・」
???「瑚蓮・・・」
瑚蓮(これん)「・・・置いて行かないで・・・!!」

〇後宮の一室
瑚蓮(これん)「・・・ん・・・? ・・・朝・・・?」
瑚蓮(これん)(何か・・・大切な夢を見てたような・・・?)
瑚蓮(これん)(いつもこう・・・ 思い出したいのに・・・ 思い出せない・・・)
瑚蓮(これん)(くよくよしたってどうしようもないわ! 今日も一日、頑張んなきゃ!!)
夕顔(ゆうがお)「おはようございます! 瑚蓮さま!」
瑚蓮(これん)「おはよう!夕顔!!」
瑚蓮(これん)「──っとっと!? って、朝から肉まん投げないでよっ!!」
夕顔(ゆうがお)「それ食べたら、すぐに用意して下さいね!」
瑚蓮(これん)「ん? 今日、・・・何かあったっけ?」
夕顔(ゆうがお)「何もないですが・・・ 瑚蓮さまに新しい護衛の方を付ける事にしました♡ ──で、その方々に会って頂きます!」
瑚蓮(これん)「・・・護衛?」

〇御殿の廊下
瑚蓮(これん)「・・・護衛って・・・ 今もいっぱいいるじゃない!?」
夕顔(ゆうがお)「私、個人の伝手で専属で付いてもらう事にしました! ・・・日頃の行いの賜物です♡ ・・・心して受け取りやがれ!・・・です♡」
瑚蓮(これん)(・・・し、信用ないなぁ・・・)
瑚蓮(これん)「ふ、二人もっ!? ──って、え!? 佐須良!?」
佐須良(さすら)「おぉぅ!!瑚蓮!!我が嫁!! 会いたかったぞー!!」
菖(しょう)「佐須良!ストップ!! まずは、挨拶よ!!」
佐須良(さすら)「おお!そうであった!そうであった!! コホン!!」
佐須良(さすら)「今日からそなたを朝から晩までみっちり護る事になった佐須良だ! よろしくな! ・・・で、こっちが・・・」
菖(しょう)「佐須良と共にアンタの護衛をする事になった・・・菖よ・・・ よろしくね」

〇後宮の廊下
紫苑(しおん)「ゲッ!? 兄者・・・!! アイツら護衛って!?」
萱草(かんぞう)「・・・ムムム・・・!! 儂等の楽しみを邪魔しやがって・・・!!」
萱草(かんぞう)「・・・紫苑! 策を練るぞ!!!!!!」

次のエピソード:第ニ涙 護衛と教育係

コメント

  • 趣のある作風ですね😌😌
    ご自身でキャラクターも作れるので、より世界観を強く表現できることが凄いです。なんの為に記憶を失わせたのか、そして夢を監視する二人組と謎が盛りだくさん。これから明かされていくことを楽しみにしています🌟

  • 詩的なセンスと情緒のある世界観が魅力的ですね😊
    ヒロインの夢に介入している何者かがいる…?🤔
    登場人物がみんな良い人っぽい1話だっただけに、2話以降でどんな展開が待ち受けるのか予想がつかないです😖
    彼女の夢のシルエットが誰なのか…続きを楽しみにしています😆

  • すっごい魅力的な作品ですね😁
    世界観を強く押し出す部分と、キャラを軽妙な会話でコミカルに描く部分、押し引きが楽しいです!キャラクターデザインからスチルまで統一感があるので、一層作品世界が強く伝わってきますね😊

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