グラタン(脚本)
〇明るいリビング
明「・・・このグラタン冷めてるんですけど」
美夕「君が帰ってくるのが遅いから悪いんだ」
明「できれば温めてほしいのですが」
美夕「今の私の心は冷めてるから温め直すのは至難の業だね」
明「つまり美夕さんの心を温めればグラタンも温め直してくれるんですね」
美夕「そういうことだけど、自分で温め直すという選択肢は無いんだね」
明「オレが電子レンジを使えると思っているんですか?」
美夕「もう一度このアパートを燃やされそうになったら困るから台所には二度と入らないでね」
明「オレは美夕さんがいないと生活できませんね」
美夕「私を照れさせようとしているのはわかるけど、私にとっても君にとっても死活問題だから照れも何もないよ」
明「成仏しちゃうのにそんなことしませんよ」
明「オレはただ本心を言っただけです」
美夕「そういうところが・・・」
美夕「・・・まあ、いいか」
何かを言いかけてやめた美夕はおもむろにグラタン皿を手に取り台所まで歩いていく
明「心が温まったんですか?」
美夕「温まってねーよ!」
美夕「・・・ただ悪い気はしなかっただけだ」
美夕「あと冷めたグラタンはあまりおいしくなかったから自分の分を温め直そうと思って」
美夕「君のはそのついでだよ」
そういう美夕の手は冷めたグラタン皿を持っているのに少し赤くなっていた