ジビエの姫

山本律磨

クレイジー・フォー・ユー!(脚本)

ジビエの姫

山本律磨

今すぐ読む

ジビエの姫
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇荒れた競技場
辻村(のどかだ・・・)
辻村(バッチリキメてきたのに・・・)
辻村(射撃場とは・・・)
辻村(しかも・・・)
辻村(姫のオトモダチ付きとは・・・)
辻村(さらに・・・)
辻村(コーチングとは・・・)
綾「はっ!」
綾「はっ!」
綾「・・・」
辻村「うーん。そうだな」
辻村「力抜けって言われても難しいよな」
辻村「じゃあさ、銃口がクレーを追い越すような感じで」
綾「追い越す?」
辻村「身体をこう、スイングさせながら」
綾「スイング・・・はい!」
辻村「あと、もうちょっと笑おうぜ」
綾「は、はい」

〇モヤモヤ

〇荒れた競技場
辻村「ゴメン・・・普通でいいや」
綾「クレーを追い越す・・・」
綾「身体をスイング」
綾「はっ!」
綾「当たった!」
辻村「オッケー!その調子!どんどんいこう!」
綾「はいっ!」
辻村「いいじゃんいいじゃん!」
辻村「なに君?天才?」
綾「ありがとうございます!アドバイス、凄く分かりやすいです!」
綾「見かけによらずほめ上手だし。とても外道さんとは思えません!」
辻村「げどう?」
綾「ああいえ!何でもありません!」
辻村「力抜くってのは整体だから。結局、根性論や理屈じゃねえんだよな」
辻村「まあ俺を外道呼ばわりするようなどこかの老害達には死ぬまで理解出来ないだろうが」
綾「はは・・・ご指導ありがとうございました」
綾「ところで・・・」
綾「何やってんですか?姫子さん」

〇球場のベンチ
姫子「・・・」
綾「っていうか、練習しないんですか?」
姫子「だって」
姫子「紫外線強いんですもの」
綾「・・・まさか。狩猟解禁日になってもまだ山に入らないのって」
姫子「綾さんは当然、日焼け止め塗ってらっしゃるんでしょうね?」
姫子「安物はあまり効果ありませんことよ」
綾「日焼け止め?」
姫子「塗ってらっしゃらないの!?」
綾「うるさいなあ・・・なんですか」
姫子「なんですか?ですって!」
姫子「それはこちらの台詞ですわ!」
姫子「あなた、それでも女なの?」
姫子「レディなの?」
姫子「いい?レディにとってUVは猪なんかよりずっと危険なのよ!」
姫子「UVカットこそが山に入る上で最も大切な準備なのよ!」
姫子「というよりそもそも夏の日差しの残る山中に入ることが自殺行為なのよ!」
姫子「あと虫!」
姫子「虫刺されとか甘くみちゃダメ!」
姫子「残るわよ、痕!」
姫子「今は若いからって、虫刺されくらいって、甘く見てるんでしょうけどね!」
姫子「すぐよ!」
姫子「30なんてすぐやって来るのよ!」
姫子「いい?もう一度言うわよ・・・」
姫子「猪よりもUV!」
姫子「はい!」
辻村「い、猪よりもUV・・・」
綾「いいですよ復唱しないで。早く練習に戻りましょう」
姫子「ねえ。私よりも彼と組んで活動すれば」
綾「え~?外道さんとですか~?」
綾「あ、すみません何度も何度も外道外道って」
辻村(か、確信犯か?)
辻村「ははっ!町興しに金儲けのハンターなんかお呼びじゃないっしょ」
辻村「じゃあ、交代だ」

〇荒れた競技場
辻村「ハッ!」
辻村「ハッ!」

〇球場のベンチ
綾「凄い。全弾命中」
綾「あの人が猟友会に入ってくれれば、無駄な血が流れなくて済むのに」
姫子「無駄な血?」
綾「私が言うのもなんですが猟友会の命中部位は酷すぎます。あれじゃ傷が多くて売り物になりません」
綾「一刻も早く、若い男のハンターを加入させないと・・・」
姫子「男・・・か」
綾「タツマは男じゃないと駄目なんでしょう」
姫子「みたいね」
「まああれだな。だとしてもだ」
辻村「即戦力ってのは、往々にして目障りなもんだよ」
辻村「男にこだわる職人様とやらならなおのことじゃね?」
辻村「俺、イジメられたくないんだよね~。神経細いからさ」
姫子「あなたに食ってかかる年寄りの方が心配よ」
姫子「青二才だろうと要介護だろうと容赦しないくせに」
辻村「正当防衛と呼んでくれよ」
綾「ハンター同士がいがみ合ってる時じゃないです」
辻村「要は、沢山駆除すりゃいいんだろ。それで猟圧が上がって民家に降ろさせなきゃ」
綾「それは虐殺です」
辻村「優しい優しい自然保護団体的にはってか?」
姫子「『料理』は正しくて『処理』は悪でしょ」
綾「・・・」
綾「そうです」
綾「偽善です」
綾「ただのエゴです」
綾「私達も結局、あの動物愛護団体と一緒です」
綾「それでも・・・」
綾「うまく言えないけど・・・」
姫子「つまり私達も『動物』ってことね」
綾「え?」
姫子「お互いが縄張りを守って食べる分だけ殺して静かに大人しく生きればいい。かな?」
綾「・・・はい。多分、そういう事かと」
姫子「でも私達には欲望がある」
姫子「もっと食べたい」
姫子「もっと飲みたい」
姫子「綺麗になりたい」
姫子「お金持ちになりたい」
姫子「・・・」
姫子「楽しいことがしたい」
綾「・・・」
辻村「お、やっとその気になってきたか?」
姫子「私のグッドルッキングガイはフェミニストが条件なの」
姫子「オラオラ系はお呼びじゃなくてよ」
姫子「日差しが強くなってきたから、車で待ってますわ」
綾「山にも入らない人が偉そうに・・・」
辻村「UVカットか。面倒臭いな女は」
綾「一緒にしないで下さい!」
綾「そりゃ腕はいいのかも知れないけど、あの人が森や動物の事を考えてるなんてとても」
辻村「義理でも立ててんじゃね?」
綾「義理・・・って?」
辻村「毎年そうだ。わざと出遅れて、いい獲物を全部猟友会に回してる」
辻村「姫様なりのスジの通し方か」
辻村「それとも、撃ち殺せるなら何でもいいだけか?」
綾「・・・」

〇渡り廊下

〇山並み
  『撃ち殺せるなら何でもいいだけ・・・か?』
  Tobe・・・

次のエピソード:ヘイ!グッドルッキングガイズ!

成分キーワード

ページTOPへ