リベンジ?(脚本)
〇飲み屋街
『そうか。もう一年か~』
〇立ち飲み屋
綿貫「でも最初はびっくりしたな。こんな若い、都会の子が狩猟をやりたいなんてよ」
綾「正直、始めは業務の一環だったんです」
綾「スタッフの一人一人が、プライベートでもこの町と交わる」
綾「私は広報だから一番派手な事をやろうと。それで狩猟免許を取って」
宍倉「ははっ。派手かね?俺達は」
綾「はい。恰好いいです」
綿貫「わはは!嬉しいねえ~!」
綾「・・・」
綾「あ、あの・・・」
宍倉「何だ?」
綾「大神姫子さんも・・・ここの会員だったんですか?」
「・・・」
綾「この町の、あんなに有名な猟師さんなのにみんな誰もあの人に触れないから・・・」
綿貫「・・・あいつは。オカシイ」
綾「え?」
綿貫「狂ってんだよ」
隈川「お、おい綿貫。ちょっと聞いてくれよ」
隈川「またうちのカミさんが、新しいジムに入会しやがってよ」
綿貫「おいおい。次もイケメンインストラクター目当てか?」
宍倉「・・・」
宍倉「姫子がかつて町一番の農家だった大神家の孫娘だった事は知ってるかね」
綾「はい。いまはお父様もご兄弟も議員さんになってて農家は廃業してるとか」
宍倉「まえまでは細々とやってたんだよ。姫子のお爺さんが。まあ、道楽でね」
〇田園風景
『この、のどかな田舎町で孫と一緒に野菜を育てる。それが姫子の祖父、国夫さんの生きがいだった』
〇田園風景
『だがやがて村からは人が減り、逆に獣が増えていった』
『幼かった姫子も学生になって村を出た』
『国夫さんは一人、農家を続けた』
『害獣に抗いながら』
『育てても育てても最後は荒らされ、食い散らかされ』
『それでも一人で』
『たった一人で・・・』
〇中庭
『次に姫子が国夫さんに会ったのは高校生の時だった』
『国夫さんはその時も笑っていたらしい』
『昔と全く違う笑顔で、子供の様に微笑み続けていたそうだ」
『何も答えず。何も喋らず』
『子供に戻ったまま、逝ってしまった』
〇山並み
『姫子が大人になって銃を手にしたとき、俺達はみんな思った』
『復讐するつもりだと』
『お爺さんの生き甲斐をむさぼり食った、山の獣どもに』
姫子「もう、五年になるよ。私が猟友会に入って」
宍倉「だから何だ?」
姫子「時代は流れるって事よ」
宍倉「何度も言わせるな。タツマは男の仕事だ。それがここの仕来りだ」
姫子「じゃあずっと私に仕留めさせないんだ」
姫子「犬と一緒に追い立てるばっかり」
姫子「私を一生犬扱いする気?」
宍倉「確かに山への、動物への敬意がないのなら犬と同じかもな」
姫子「・・・」
宍倉「お前はただ、お爺さんの仇が討ちたいために銃を持っている。違うか?」
姫子「そう・・・分かった」
姫子「だったら犬でいい」
姫子「いや・・・」
〇山並み
姫子「オオカミがいいわ」
〇立ち飲み屋
綾「オオカミ・・・か」
宍倉「今は妙な奴とつるんでるらしい」
綾「妙なヤツって、シェフとか農家のイケメンですか」
綿貫「そいつらじゃねえ」
綿貫「金が目的の、害獣駆除専門の外道だ!今度山で見かけたら叩き出してやる!」
綾「外道・・・?」
〇ナイトクラブ
辻村「さあ、吹雪を・・・」
辻村「この俺にもっと紙吹雪をーーーーーッ!」
辻村「よう、姫」
辻村「狩猟解禁から一週間。まだ遊んでんだ」
姫子「思っくそこちらの台詞ですわ」
辻村「俺は慈善事業なの。善意好意奉仕の精神でハンターやってんの」
辻村「ヨボヨボの年寄どもに任せてたらたちまち日本中に害獣が溢れちゃうだろ?だから、持ちたくもない鉄砲を持って手を汚してるんだよ」
姫子「よく言うわ。お金の亡者のくせに」
姫子「それよりお暇ならもっと楽しい場所に行きませんこと?」
姫子「ダーツみたいな玩具よりもずっ~と楽しい所に」
辻村「ん~」
辻村「いいねえ~」
Tobe・・・