お別れ(脚本)
〇教室
オレたちが1学年上がって5年生になった頃、
優(少年期)「なあなあ裕二(ゆうじ)一緒に部活入ろうぜ」」
裕二(少年期)「部活? いいよ、入りたいとこないし」
優(少年期)「一緒に入れば楽しいじゃん、心細くないじゃん?」
裕二(少年期)「えー、う〜ん」
優(少年期)「そうしてる奴らだって多いしさ」
面倒くさい部活、
とくに趣味もないのに入る意味は無いと思ったけど優と一緒なら会話しながらあっという間に時間が過ぎるだろうと考え、
裕二(少年期)「わかった、良いよ。でっ、なんの部活だ?」
優(少年期)「漫画部だ、漫画部!」
裕二(少年期)「ヘ? マンガ」
困ったことにキャラクターなんてまるで描いたことのないオレに漫画部、
でも下手でもただ描いてれば良いと言うし進められるまま漫画部へと入ることにした······。
〇教室の教壇
それからというものオレは学校に関わらない生活から部活に入ったことで少し変わった。
裕二(少年期)「これでどうだ?」
優(少年期)「う〜ん、裕二は鉛筆に力入れ過ぎなんだよ〜」
裕二(少年期)「そんなこと言われても手が震えるんだぜ?」
ぶつぶつと言うオレをやさしく分かりやすく教えてくれる優は学校の先生よりも頭に入りやすかった。
優自身も模写が上手く、そこにたどり着くには遠く感じることもあるほど。
悪い気分はしなかった。このときはこのまま友だちとしてずっと遊べるなんて楽観視していたんだ······。
〇アパートのダイニング
優(少年期)「──よう裕二ゲームやろうぜ」
裕二(少年期)「ああ」
今回は優のモンスターを育てるゲーム、対戦したり通信したりと遊んでいたときのことだった。
優(少年期)「あのさ裕二」
裕二(少年期)「ん、どうしたんだ?」
いつもと雰囲気が違う、なんていうか寂しそう。
優(少年期)「おれ、引っ越すことになったんだ」
裕二(少年期)「ふ、ふーん」
予想外なことにオレの頭の中は小さなパニックを起こす。まさか優が親の事情により引っ越すなんて。
まだ誰にも言ってなくてオレにだけ伝えときたかったという。
優(少年期)「悪いな、なんか」
裕二(少年期)「親の事情なら······しょうがないだろ」
せっかくの友だち、いや親友が遠くへと行ってしまう。
優の性格ならどこの学校に行っても困ることはないだろう、でもオレはまた1人······。
時間とはそんなときに早いものであっという間の引っ越す日に。
〇開けた交差点
優(少年期)「──じゃあ、いくよ」
裕二(少年期)「ああ······」
優(少年期)「オレたち離れてもずっと友だちでいられるかな」
裕二(少年期)「心配することないんじゃないか」
引っ越しの手伝いをして、もう行ってしまう優にこのときのオレはこれが精一杯の言葉だった。
裕二(少年期)「優なら、すぐあっちでも友だちはできるよ」
優(少年期)「······友だちは出来ても······裕二みたいには無理だと思う」
裕二(少年期)「······まあ、な」
オレたちは沈黙、離れたくないし沢山遊びたい。そう思っていたら、
優(少年期)「んじゃ行くわ」
裕二(少年期)「ああ」
優(少年期)「じゃあ、元気でな」
裕二(少年期)「優もな」
小学生でこの経験をする奴は少なくはない、実際オレたち以外でも別れた奴らはいる。
だからといってハイそうですかと気持ちを切り替えられるわけでもなく、ただ呆然と見送るだけしか出来なかった。
これからオレはどうすれば良いのかまたわからなくなる······。
〇アパートのダイニング
結局また学校はそんなに行かず家にいる毎日、でも少しだけ変わったことが、それは、
裕二(少年期)「ふぅ〜、やさしく、や〜さ〜し〜く〜、ぬ〜っ」
絵は描いていた。今はスマホで写真も送れるし、アドバイスなら優にもらえる。
裕二(少年期)「ふむふむ何? 『オレも描いてみた』相変わらず上手いな〜」
こんな生活を小学6年生はずっと続けていて、それは中学になってもと思ったが中学生になって半年後、
優からのメッセージや連絡が一切なくなった。
〇土手
裕二(少年期)「──どうしたんだろう、優」
〇黒
心配するが臆病なオレはメッセージを送ることが出来ず。でもあっちにだって友だちが出来て遊びで忙しいんだろう。
きっと楽しくやっていると言い聞かせてるといつの間にか中学生から高校生へと成長していく。
〇アパートのダイニング
それでも絵は続けていて気がつけばそれがオレの日課になっていたんだ。
もうお互いは会うことがないと思っていただろう。少なくともオレは会えないと思っていた。
〇魔界
──そして現在(いま)。