妄想(脚本)
〇大きな木のある校舎
健「彩さん、突然だけど、居酒屋行かない?」
彩「はい」
健「焼き鳥が、いいかな?」
彩「はい」
健「ミックスジュースが美味しいらしいよ」
彩「そうなんですね」
健「これは妄想です!」
〇大衆居酒屋
彩「え!妄想なんですか?」
健「そう。残念ながら妄想なんだ」
健「彩さんのことがいつのまにか好きになって、 一緒に居酒屋に行って、二人でいろんな話をしたいと思っていた」
健「けど、現実世界では、打ち明けることが出来ず、妄想で居酒屋に行きました」
健「たくさんいろんな話をしたよ」
彩「そうだったんですか。 なんか寂しいな」
彩「妄想で2人で居酒屋行ってたのしいですか?」
健「とれが、とっても楽しいんだ。 彩さんも妄想の中では、とっても楽しそうにいろんなことを話してくれたよ」
太志「お前、馬鹿なの?」
空「寂しいやつだな」
健「なんでだよ。 妄想は楽しいし、有意義だし、 妄想したら、 幸せな気分になれるんだ」
〇公園のベンチ
健「今日はとっても楽しかった」
彩「私も楽しかったです」
健「また、誘ってもいい?」
彩「はい」
健「妄想で、だけど」
彩「やっぱり妄想なんですね。 寂しいな」
〇大衆居酒屋
太志「やっぱり妄想かよ」
空「現実世界で告白したらいいに」
健「現実世界では、2人で居酒屋行こうなんて 誘えないし、誘っても断られるだけだから」
太志「誘ってみないとわからないだろ」
空「そうそう!」
健「わかるよ! 悲しい現実が待ってるだけだよ。 その点、妄想なら」
健「楽しい2人っきりの時間をすごせる。 会話も弾むし、お酒も、焼き鳥も いくら飲んで食べても、お金かからないし」
太志「やっぱり寂しいな奴だな。お前は!」
空「ほんとに!」
健「ほっておいてくれ! 僕は、妄想が好きなんだ!」
〇ラブホテルの部屋
彩「ここはどこ?」
健「彩さん、酔ってしんどそうだったから ちょっと休憩」
健「まあ、妄想だけど」
彩「妄想でもだめですよ」
健「ああ ごめんごめん」
〇女の子の部屋(グッズ無し)
彩「何で私の部屋にいるんですか?」
健「居酒屋の帰りで家まで送ってきたら、 コーヒー淹れてくれるって 彩さんが言ったから」
彩「そんなこと、言ってません」
健「そうだね。 でも、妄想だから」
彩「やっぱり、妄想なんですね」
健「残念だけど、妄想なんだ。 でも、妄想は楽しいよ」
彩「たのしいんですね。 それならよかったです。 私も嬉しいです」
〇女の子の部屋(グッズ無し)
健「彩さん。 君のことがずっと好きだったんだ」
彩「そうなんですか。 嬉しいです」
健「これからも 話し相手に なってくれる?」
彩「はい。 喜んで」
健「ほんとに!?️」
彩「本当に」
健「妄想でも とっても嬉しい❣️」
彩「やっぱり妄想なんですね。 寂しいです」
健「寂しい?」
彩「はい」
健「現実世界で、告白しても OKしてくれるのかな?」
彩「それは 現実世界で実際に言ってもらわないと わかりません」
健「わかった。 それじゃ、おやすみ」
彩「おやすみなさい」
〇大きな木のある校舎
健「やあ、彩さん。 おはよう」
彩「おはようございます」
健「あの。 話したいことがあるんだけど」
彩「改まって、 なんでしょう」
健「今晩、公園で」
彩「18時に、 公園ですね」
〇公園のベンチ
健「待った?」
彩「いいえ。 今きたところです」
健「よかった。 来てくれてありがとう」
彩「どういたしまして」
彩「話ってなんですか?」
健「そ、それは・・・」
健「これは現実世界。 妄想じゃない」
彩「何か言いました?」
健「ううん。 なんでもない」
彩「妄想が好きな健さん。 私も妄想嫌いじゃないです」
健「え!そうなの?」
彩「恥ずかしいですけれど、 私も妄想よくします」
健「え! そうなの?」
彩「彩さんの妄想って、どんなの?」
彩「恥ずかしいから 言えないです」
健「まあ、そうだね。 妄想はあんまり人に言えないよね」
彩「健さんの妄想は、どんなのですか?」
健「本人を前にして、言えないよ」
彩「え! 私のこと?」
健「夢も妄想に似てるね。 夢に出てきたら、急に気になったり するし」
彩「夢。 そうですね」
健「彩さん。 僕の妄想は 彩さんのことなんだ」
彩「え!そうなんですか。 私も・・・」
健「私も!?️」
彩「いや! 恥ずかしい!」
健「恥ずかしい? 私も? ひょっとして・・・」
健「ぼ、僕のことを妄想?」
彩「私も、妄想で 健さんといっぱいお話ししました。 いつも気にかけてくれるから。健さんが・・・」
健「妄想好きな二人は・・・」
健「似たもの同士かも・・・!?️」
彩「はい」
健「妄想から抜け出して、現実世界で生きることはとても大切だけど、やっぱり現実世界は自分の思う通りにはならない」
健「妄想なら全てが自分の思う通りの世界で生きることができる。 やっぱり妄想は人生を幸せにしてくれる」
彩「私もそう思います。 妄想は楽しいです。 でも、妄想だけではもの足りなくなるんです」
彩「やっぱり、現実世界でも、自分が思い描く人生を生きてみたいって」
健「片思いだけで満足できる人もいる。 片思いは素晴らしいと僕は思う。 だけど、やっぱりほんとの恋がしたい」
彩「妄想好きな二人が恋したら、なんか怖いですね。 現実世界は、妄想通りには、なかなかならないから、喧嘩ばっかりになりそう」
健「そうかも。 思い描く恋はできない」
彩「それでも、現実世界で付き合ってみます?」
健「現実世界と向き合わないと、 人生が開けない気もする」
彩「そうですね」
健「彩さんの素朴で素直なところが大好きです。 僕と付き合ってください」
彩「はい、 ありがとう。 私も健さんがすごく気になってました」
〇大学病院
太志「ここに、健と彩さんが入院してるんだろ」
空「そうみたい。病室に行ってみよう」
太志「何で2人とも入院してるんだ?」
空「妄想しすぎて、おかしくなったのかな?」
〇病院の待合室
健「妄想はやっぱり楽しい!」
彩「そうですね」
健「病室にはいないよ」
彩「病院にはいますが、妄想してるだけですよね」
健(妄想がキッカケで二人は仲良くなれた)
彩「やっぱり妄想好きです❣️」
健「妄想することで、現実世界は自分の思い通りには行かないってことが、当たり前だという事がわかる」
彩「自分の思い通りには、行かなくて当たり前だということが、よくわかりました」
健「物事は自分が思い描くようにはいかない。それでもいいんだということがわかることは大切だなぁ」
彩「うまくいかなくても、また、妄想で自由な人生が生きれる」
健「彩さんに逢えて、幸せだった。 いつか本当に、二人で居酒屋いこうね」
彩「はい!楽しみにしています」
健「この物語もすべて妄想だった。 妄想が、現実になったら、もっと幸せだな」
彩「私も健さんに出会えて、幸せです。 いつか二人で居酒屋いきたいです。 好きだから」
健「いい思い出ができて、よかった。 彩ちゃん、ありがとう」
彩「こちらこそ、ありがとうございました」
健「おしまい!?️」
健「最後まで、「妄想」を読んでいただきありがとうございました。 二人の今後を妄想して、お楽しみください!️」
どこが妄想シーンでどこが現実のシーンなのか、読んでいて不思議な感覚にとらわれますね。妄想で世界を構築できれば幸せで完結した世界となるかも、と考えさせられます。
この二人にとっては、これが幸せの形だったのかなぁと思いました。
妄想の中で生きたいと思ってる人はけっこういるような気がするんです。
それを上手く言葉にされた、素敵なお話だなと思いました。
病院で終わるとは思っていませんでした。でも、きっと妄想の力を持っているなら、場所なんてどうでもいいことなんですね。二人は幸せなんでしょうね。見守る友人たちの胸にはどんな想いが去来するのか、妄想が彼らをも救ってくれるならそれもいいのかもしれません。雲の上を歩くようで、不思議な心地良さのある作品でした。