根暗なアルファと根明なオメガ ~オフィスで見つける運命の恋~

あいざわあつこ

第六話 『キス、しちゃった』(脚本)

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〇オフィスのフロア
  ――あれから数日
羽島哉人(キス、しちゃった。 キスしちゃった。キスしちゃった。 キスしちゃった)
  まだ、僕の心は浮ついたままだ。
  地に足がうまくつかなくて、ふわふわ、
  そわそわ、落ち着かない。
羽島哉人(菅野君と、あんまり話せてないっていうか ちょっと避けられ気味?)
羽島哉人(なのは気がかりだけど・・・)
羽島哉人(で、でも嫌がらなかったし、っていうか、その、なんだろう)
羽島哉人(ダメじゃない、ってことだよね? たぶん、僕のこと)
  それが本当だとしたら、
  どんなにか嬉しいことだろう。
羽島哉人「えへ、えへへ・・・」
須崎部長「あの〜、羽島君」
羽島哉人「あ、部長、この資料ですよね。 終わってます」
羽島哉人「あと、次回プレゼン用のパワポですが 円形グラフを足して」
羽島哉人「一応FIX版としてPDFにしてドライブに 格納してありますので、お使いください」
須崎部長「おお、さすが羽島君!」
  部長が去っていった瞬間、
  また表情が緩む。
  こんなんじゃ、仕事にならない。
  公私混同はダメだってわかっているのに、
  心は上手くコントロールできない。
同僚1「ここ最近、特に羽島君すごいよね」
同僚2「わかる、とんでもない仕事量なのにね」
同僚1「・・・にしても、ニコニコしてると さらにかっこい〜」
同僚2「あ、ダメよ? そんなこと言ってると」
菅野薫「なんや言いましたか。 先輩は顔だけの男ちゃうんですけど?」
同僚1「うわっ、出た」
同僚2「怖いから行こ行こっ!」

〇オフィスの廊下
  資料を抱えて、会議室までの道を行く。
  その間も、頭の中は菅野君のことで
  いっぱいだった。
羽島哉人(やっぱり、告白、したいな。 い、今じゃなくっても)
羽島哉人(もっともっと努力して、ふさわしい男に なれたなら・・・告白、したい)
羽島哉人(したい、じゃなくて、する! うん、告白する・・・!)
  断られてしまったら、と思うと
  とても怖いけれど。
  でも、大事なたった一度の“初恋”なんだ。
  告げずに終わらせてしまうには、
  あまりに惜しい。
羽島哉人(よしっ、ふさわしい男になるためにも まずは目の前の仕事を頑張らないと!)
羽島哉人(全力投球で、いくぞっ)
  心のなかでそんなふうに
  気合いを入れていると・・・。
社長「おっ、哉人か」
羽島哉人「ヒッ」
社長「なんだ、その顔は。まったくお前は」
羽島哉人「おじ・・・社長! なんで営業部に・・・」
社長「お前に言う必要はあるのか?」
  ピシャリと言われて、思わずうつむく。
社長「お前は羽島堂を継ぐ人間なんだ。 いつでも堂々いなさい」
羽島哉人「・・・・・・」
社長「だが、最近は頑張っているらしいな」
羽島哉人「え」
社長「須崎から聞いた。よく仕事に集中出来て いると。この調子で精進しなさい」
羽島哉人「は、はい!」
  そう言って去っていくおじいちゃん。
  おじいちゃんの笑顔なんて、
  もう何年も見ていなかった。
羽島哉人(うれ、しい・・・っ!)
  公私ともに、順調って、きっと
  こういうことを言うんだろうな。
羽島哉人(ご、午後の外回りも頑張るぞ!)
  しかも、パートナーは菅野君なのだから
  気合い充分、だ。

〇公園のベンチ
羽島哉人「は〜、お疲れ様」
菅野薫「お、おつかれさん、です」
  ぎこちなく、頭を下げる菅野君。
  どこかその頬が、ほんのり赤い気が
  するのは自惚れだろうか。
羽島哉人(うう・・・今、僕調子に乗ってるって、 自覚ある)
羽島哉人(でも、何か・・・言いたいな。 今日の商談だって上手く行ったし、それに)
菅野薫「コーヒー、飲まへん?」
羽島哉人「えっ、あっ、あわ、はい! う、うん! 飲む!」
  僕がわたわたしている間に、
  自販機で菅野君がコーヒーを2つ買う。
  そのうち一缶は・・・。
羽島哉人「あ」
菅野薫「ん? ああ、先輩、 ブラックの方が好きなんやろ?」
菅野薫「俺は甘いのしか飲めへんけど」
羽島哉人「う、うん。あ、ありがと」
菅野薫「なにあわあわしとんねん。ほい」
羽島哉人「っと、ありがと」
  コーヒーを受け取りつつ、つい、
  モジモジと身じろぎをしてしまう。
羽島哉人(僕の好み・・・知っていてくれたんだ。 うれしいな)
菅野薫「その顔、なんやねん」
羽島哉人「え、あ・・・その、えっと」
菅野薫「?」
羽島哉人「ブラック、好きって・・・知ってて、 うれしいなって、だから」
菅野薫「そんなん見とればわかることやろ。 いつもブラックばっか飲ん――んんん!?」
  一気に顔が赤くなる菅野君。
  そして、彼はそのまま
  すごい勢いでまくしたてた。
菅野薫「べ、別にいつも見とるわけちゃうで!? そうじゃなくて普通に! 普通にや!」
菅野薫「普通に、出先でもガムシロもミルクも いれとらんし!」
菅野薫「こないだ、差し入れも ブラック選んどったし! だからっ!」
羽島哉人「・・・僕のこと、そんなに・・・」
菅野薫「だあああっ! だから、ちゃうねん!」
  ぎゃあっと叫ぶ菅野君だが、
  騒ぐうちにクールダウンしたのか、
  無造作にベンチに腰を下ろす。
菅野薫「はあ・・・ったくもう。 勘違いせんどってな」

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