トライマゴス

雨くらげ

第二話 幻覚(脚本)

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〇男の子の一人部屋
時任真夏「うぅ〜ん・・・」
時任真夏「クロクロ・・・ おはよう」
時任真夏「起こしてくれたの?」
時任真夏「そっか、よしよし」
時任真夏(涼菜はもう起きたかな?)
時任真夏(早く朝の準備を終わらせて、迎えに行こう)
時任真夏「はいはい、ごはんな。 今用意するから──」
時任真夏「・・・!」
時任真夏(まただ・・・)
時任真夏(あの夢を見てから、時々幻覚が見えるんだよな・・・)
時任真夏(俺、疲れてるのかな・・・)
時任真夏「あれ・・・」
時任真夏(そういえば、前にも同じようなことがあったような・・・)

〇山中の川
雪野涼菜「真夏・・・!真夏助けて!!」
時任真夏「涼菜・・・っ!!!」

〇男の子の一人部屋
時任真夏「・・・・・・」

〇平屋の一戸建て

〇実家の居間
時任真夏「じいちゃん、おはよう!」
じいちゃん「おはよう。 そんな慌ててどうした?」
時任真夏「涼菜いる?」
雪野涼菜「おじぃー! 私のメイクポーチしらなーい?」
じいちゃん「ポーチなら洗面台に置いてあったぞ」
雪野涼菜「ありがとうー! 私ってば最近忘れっぽいんだよねぇ」
時任真夏(よかった・・・ なにも起きてないようだな)
雪野涼菜「あ、真夏おはよー 今日は早いね?」
時任真夏「うん。なんか目が覚めちゃって」
雪野涼菜「迎えにきてくれたんだよね?」
雪野涼菜「ごめん!あと5分待ってくれる? 髪の毛セットするから!」
時任真夏「ゆっくりで大丈夫だよ」
じいちゃん「朝から騒がしいやつだ」
時任真夏「じいちゃん、涼菜に変わったところはない?」
じいちゃん「ないね。元気すぎて困ってるくらいだよ」
時任真夏「そっか」
じいちゃん「お前、うちに来てはいつも涼菜のことを聞いてくるな」
じいちゃん「そんなに涼菜が心配か?」
時任真夏「まぁね・・・ 小さい頃から病弱だし、なにかとトラブルが多いから」
じいちゃん「そうだなァ」
じいちゃん「涼菜がうちに来て10年経つが 昔のように殻に閉じこもることはなくなったな」
じいちゃん「涼菜が安心して過ごせているのも、 きっと春人くんやお前がそばにいてくれてるおかげなんだろう」
時任真夏「・・・・・・」
じいちゃん「真夏。 これからも、涼菜を守ってやるんだぞ」
時任真夏「うん、任せて」

〇安アパートの台所
雪野涼菜「ふんふんふ〜ん」
  ジーーーーッ
雪野涼菜「な、なに・・・?」
時任真夏「いや、えらいなーと思って」
時任真夏「毎日髪の毛セットしてるんでしょ?」
雪野涼菜「まぁね。 メイクだってしてるよ?」
時任真夏「うそ・・・全然知らなかった」
時任真夏「毎日メイクするの大変じゃない?」
雪野涼菜「もーっ、これだから男の子は!」
雪野涼菜「すっぴんで歩くのは、裸で歩くのと同じようなものなの」
時任真夏「そ、そうなの?」
時任真夏「でも・・・ 涼菜はすっぴんでもかわいいと思うな」
雪野涼菜「っ!」
雪野涼菜「・・・ほんと、真夏って人たらし」
時任真夏「え?」
雪野涼菜「ほら、学校いこ!」
時任真夏「うわっ!」

〇学校脇の道
雪野涼菜「あ、陽月ちゃんだ! 陽月ちゃーん!」
秋山陽月「涼菜、時任くん おはよう」
時任真夏「おはよう。 秋山さん早いね」
秋山陽月「まだ道に慣れてないから、早く出ようと思って」
雪野涼菜「あれ、制服まだ新しいの届いてないの?」
秋山陽月「うん。 でも、来週までには届くみたい」
雪野涼菜「早く陽月ちゃんの新しい制服姿見たいなー!」
雪野涼菜「てか聞いてよー! 真夏ってば、私がメイクしてるのに全然気づいてなかったんだよ?」
雪野涼菜「毎日ずっと一緒にいるのに、酷いよね?」
秋山陽月「私は涼菜がメイクしてるの気づいてたよ」
雪野涼菜「でしょ? ほんと私のなにを見てるのか・・・」
雪野涼菜「あれ、陽月ちゃんはメイクしてる?」
秋山陽月「してないけど・・・」
雪野涼菜「うっそー!? なんでそんなに可愛いの!?」
秋山陽月「休日はメイクして出かけることもあるよ。 学校がある日は大変だから、メイクしないだけ」
雪野涼菜「えーメイクしてる陽月ちゃん見てみたい!今度遊ぼうよー」
時任真夏(涼菜、秋山さんに心開いてるみたいだ)
時任真夏(うまくやれそうでよかった)
時任真夏(中学でいじめに遭ってから、俺と春人にしか心開かなかったもんな・・・)
三浦春人「おはっすー」
時任真夏「あ、春人おはよう」
三浦春人「涼菜もおは──」
  きゃっきゃっ
三浦春人「・・・って、あれれ? もしかして涼菜に振られた?」
時任真夏「振られたもなにも、付き合ってないから」
三浦春人「またまた〜、陽月ちゃんに涼菜奪われて寂しいんじゃないの〜?」
時任真夏「寂しくないよ。 むしろ、涼菜と仲良くしてくれて嬉しい」
時任真夏「涼菜は俺にとって大切な幼馴染だから」
三浦春人「ふぅ〜ん・・・」
時任真夏「もちろん、お前もな」
三浦春人「・・・・・・・・・」
三浦春人「・・・きゅん」

〇学校の校舎

〇体育館の中
体育の先生「今日は男女混合でドッジボールをしてもらうぞ」
体育の先生「出席番号の偶数がAチーム、 奇数がBチームだ。わかったかー」
時任真夏「ドッジボールなんて小学生ぶりだなー」
雪野涼菜「私、運動音痴だからなぁ。 絶対すぐにボール当たっちゃうよ〜」
三浦春人「お前のそのバカ力なら確実に勝てるって」
三浦春人「いてぇっ!」
三浦春人「なにすんだよ!」
雪野涼菜「ごめーん。 ボールかと思っちゃった」
三浦春人「くそぅ・・・ 今ので脳細胞が半分破壊された・・・」
時任真夏「はいはい、ふたりともそこまでにしようね」
秋山陽月「ふふっ・・・」
時任真夏「・・・・・・」
雪野涼菜「あー! 陽月ちゃん笑った顔めっちゃかわいいー!!」
三浦春人「どれどれ!?」
秋山陽月「・・・・・・」
三浦春人「見たかったァ・・・」
時任真夏「突き飛ばすなよ・・・」
雪野涼菜「ねぇねぇ陽月ちゃん」
秋山陽月「どうしたの?」
雪野涼菜「陽月ちゃんAチームだよね?」
雪野涼菜「もしよければなんだけど・・・ 私とチーム交換しない?」
秋山陽月「別にいいけど・・・」
秋山陽月「ああ、時任くんがいるからか」
雪野涼菜「へへ・・・」
雪野涼菜「ありがとね! このお礼は今度するから」
生徒「Bチームを叩き潰せーッ!」
学生「こっちにはサッカー部と野球部がついてるのよ!負けるわけがないわ!」
三浦春人「そう、そのサッカー部員とは俺のことよ」
秋山陽月「・・・」
三浦春人「あ、あっきーもBチームだったんだ」
三浦春人「俺と同じチームでラッキーだね!」
三浦春人「このサッカー部期待のルーキーがいるかぎり勝利は約束されている!」
体育の先生「三浦、アウトー!」
武田サトル「おい春人!よそ見してんじゃねーよ!」
三浦春人「さっき涼菜に殴られたばっかなのに〜・・・」
雪野涼菜「まったく、春人のやつなにやってんだか・・・」
加藤七緒「よそ見してていいのかな〜?」
武田サトル「雪野さん!加藤のボールは避けろ! 当たったら怪我するぞ!」
雪野涼菜「えっ・・・?」
加藤七緒「もう遅い! うりゃああッ!」
時任真夏「涼菜、危ない!」
雪野涼菜「・・・っ!」
時任真夏「いたッ・・・!」
学生「なに今の・・・」
生徒「風吹いたよな・・・? 屋内なのに・・・」
加藤七緒(間違いなく、雪野さんを狙ったはずなのに・・・!)
加藤七緒(なんで時任くんに当たってるのよ〜ッ!)
秋山陽月(やっぱり・・・)
雪野涼菜「真夏、大丈夫!? すごい音したけど・・・」
時任真夏「うん、大丈夫だよ」
雪野涼菜「ごめんね・・・ 私のこと、助けてくれたんだよね・・・?」
時任真夏「気にするなって。 それより、このボール意外と硬いから気をつけてな」
雪野涼菜「・・・うん」
時任真夏「じゃ、俺は外野に行ってくる」
学生「でたよ、雪野のか弱いアピール・・・」
学生「時任もバカだよね。 あんな性悪女のお守りなんかして」
学生「結局は、顔なんじゃない?」
学生「あちゃ〜、時任も男だったか〜」
雪野涼菜「・・・」
学生「ギャッ!!」
学生「ヒィッ・・・!」
学生「ちょ、ちょっと!そんな強く投げなくても──」
学生「わ、ワザと・・・ やってるわ・・・ね・・・」
雪野涼菜「なんだ、大口叩く割に強くないじゃん」
雪野涼菜「真夏のこと悪く言うのがいけないんだからね?」
川嶋良太「うわ〜雪野さん、強ぇ・・・」
武田サトル「俺も雪野さんのボールに当たりたい・・・」
黒霧俊太「お前、その発言はどうかと思うよ」
時任真夏(涼菜、俺がいなくても大丈夫そうだ)
川嶋良太「真夏、ボールボール!」
時任真夏「わっ!」
川嶋良太「ナイスキャッチ!」
三浦春人「真夏ー!がんばれー!」
黒霧俊太「あいつら、なに敵チーム応援してんだ」
時任真夏「よしっ!」
三浦春人「ちょ、おいっ!? 俺を狙う気か!?親友だろ!」
時任真夏「勝負に親友は関係ないよ、春人!」
三浦春人「せっかく内野に戻れたのに〜ッ!」
秋山陽月「・・・・・・」
時任真夏「うわっ!!地震!?」
武田サトル「・・・!」
川嶋良太「・・・!!」
時任真夏「えっ!!?」
黒霧俊太「秋山さんが時任のボールを顔面で受け取ったー!!」
時任真夏「秋山さん・・・!ごめんね、大丈夫!?」
秋山陽月「うん、大丈・・・」
  タラッ・・・
時任真夏「鼻血が・・・! と、とりあえず保健室いこ!」
時任真夏「先生すみません、ちょっと保健室に行ってきます」
武田サトル「ヒュー!そのまま帰ってこなくてもいーぞー!」
黒霧俊太「俺の秋山さんが・・・」
武田サトル「お前・・・! 秋山さん推しだったのか・・・」
川嶋良太「ちなみに僕の推しは3組の佐々木さん」
武田サトル「いや聞いてねぇよッ!」
雪野涼菜「・・・・・・」

〇保健室
時任真夏「鼻血止まった・・・?」
秋山陽月「うん、止まったみたい。 ありがとう」
時任真夏「本当にごめん・・・ 秋山さんに当てるつもりなかったんだけど・・・」
秋山陽月「気にしないで。 こんなの大したことないし」
時任真夏「でも・・・」
時任真夏「秋山さんの顔に傷をつけるところだった」
秋山陽月「本当に気にしないで」
秋山陽月「それに・・・」
秋山陽月「ボールを操作したのは私だから」
秋山陽月「時任くんが雪野さんにやったように、ね」
時任真夏「えっ・・・?」
秋山陽月「あら?無意識だった?」
時任真夏「秋山さん・・・なにを言ってるの?」
秋山陽月「なにって、さっき試合中に魔法使った でしょ?」
時任真夏(魔法を使うところを見られた・・・?)
時任真夏(秘唱で発動させたから気づかれないと思ったのに・・・!)
秋山陽月「・・・ふふ。 なんで私が気づいたのか知りたい?」
時任真夏「・・・」
秋山陽月「教えてあげてもいいけど、 その前に時任くんの魔法をもう一度見せて」
時任真夏「・・・!」
時任真夏「それは・・・無理だ」
秋山陽月「あら、なんで?」
時任真夏「ある人と約束をしたから」
時任真夏「『魔法をむやみに見せてはならない』 って・・・」
秋山陽月「そう・・・」
秋山陽月「でも、隠しても無駄よ。 あなたが何かしらの魔法を使ったのは わかったんだから」
時任真夏「秋山さん・・・なにが目的なの?」
秋山陽月「・・・」
秋山陽月「もし、あなたがタル──」
雪野涼菜「陽月ちゃん!」
秋山陽月「涼菜・・・」
雪野涼菜「はぁっはぁっ・・・」
雪野涼菜「はぁっ・・・ふぃーーーっ」
雪野涼菜「怪我は大丈夫!?」
秋山陽月「もう大丈夫だよ。 時任くんに手当してもらったから」
雪野涼菜「よかったァ〜・・・」
雪野涼菜「あ、真夏になにもされてない!?大丈夫!?」
時任真夏「なにもしてないよ・・・」
雪野涼菜「冗談だって!」
雪野涼菜「もー、心配したんだよ? 付き添ってあげたかったんだけど、ハエが群がってなかなか抜け出せなくて・・・」
秋山陽月「ハエ?」
雪野涼菜「あ、そうだ! 真夏、磯山っちがさっき呼んでたよ」
時任真夏「磯山先生が?なんの用だろう」
雪野涼菜「ほらほら、早く行かないと先生待たせちゃうよ」
時任真夏「わかったよ」
時任真夏「秋山さん・・・」
時任真夏「ボールぶつけちゃって、本当にごめんね」
時任真夏「今度お詫びさせて」
秋山陽月「・・・うん」
雪野涼菜「・・・・・・」
雪野涼菜「ね、真夏となんの話してたの?」
秋山陽月「え?たいした話はしてないよ」
雪野涼菜「そっかぁ〜・・・」
雪野涼菜「陽月ちゃんにとっては大したことじゃないんだろうけど、私にとっては大したことなんだよね〜」
秋山陽月「・・・・・・」
雪野涼菜「てか、陽月ちゃん私が真夏のこと好きなの知ってるよね?」
雪野涼菜「2人きりで保健室は・・・ ちょっと妬いちゃうなぁ」
秋山陽月「・・・ごめんなさい」
雪野涼菜「・・・・・・」
雪野涼菜「なーんて、冗談冗談!」
雪野涼菜「真夏は優しいから、陽月ちゃんのこと放ってあげられなかったんだよね」
雪野涼菜「でも、これからは私がいないところで内緒話するのはやめてね?」
秋山陽月「・・・わかった」
雪野涼菜「約束・・・だよ?」

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