魔法少女 あおはる×あいろにぃ!

筒ヶ奈久

#5 朝のサカナ、昼のカメラ(脚本)

魔法少女 あおはる×あいろにぃ!

筒ヶ奈久

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〇部屋のベッド
  ──朝、ひつみの自宅
アクア☆みかえる「な、なじょすっけなぁ・・・このカッコやぁ・・・!?」
  ひつみは深夜に、蛇の妖精ウワバーミによって、魔法少女にさせられてしまった。
  その変身は眠りから覚めても未だ解けずにいる。
アクア☆みかえる「蛇さーん・・・? どごさ行ったのすか〜? なんか戻んねんだげども〜?」
  すると、部屋のドアがガチャリと空いた。
月輪みのり「あ、あんだ、誰っしゃ・・・!?」
  ドアを開けて入ってきたのは、ひつみの母、みのりである。
  今、月輪家は母と子の2人暮らし。
  父は単身赴任中だ。
アクア☆みかえる「おっかあ!おらだよ、ひつみ! なんだか、えらくめんこくなった!!」
アクア☆みかえる「なーんか髪っこもキンキラになってさあ、薄着でもさびくなったり、いぼっこくなんねぇんだあ〜」
月輪みのり(嘘だあ・・・こんなパツキン水着ティアラが・・・ひつみ・・・!?)
アクア☆みかえる「う──ん・・・・・・学校行げっかなあ〜このカッコでなあ・・・う〜ん・・・」
月輪みのり(あー、この口調と顔・・・・・・ うちのひつみで間違いねえな・・・)
月輪みのり「あ──、 お弁当、下さ置いといたからね?」
アクア☆みかえる「分かった!」
アクア☆みかえる(ま、なるようにしかならねえべな・・・)
アクア☆みかえる「よしっ、このまま制服着て、学校さ行ってやるっ!!」

〇学校の校舎
  市立樫織中学。
  生徒たちが、いつものように登校してきた。
  その話題はというと────
  「ほら、昨日の魔法少女、ヤバかったよね」
  「いやホントにいるとは思ってなかった」
  「それなー」
  「しかも正体って杜さんでしょ、あの」
  「うん、マジでヤバい」
  「うちらどうなっちゃうんだろ」
  「ってか、あんだけの事あって休みになんないとかヤバいっしょ、うちのガッコー」
  「今日臨時休校でよくない?たりーなー」
  「ハガキになってた先生たち、検査で異常なしだって」
  「そういうのすぐ分かっちゃうんだもんな〜」
  「そうそ」
  校門をくぐり抜けていく人、人、人。
  
  そして、その中に──
パワード☆らいおん「おはよう諸君! 今朝はザ☆優良ノーマル健全登校ッ! 昼のリンボーダンス大会はよろしく──!!」
  みさお・・・いや、パワード☆らいおんだ。
  彼女は、なんと初めから変身した状態で登校してきたのだ!
  渦中の人間が現れた事で、校門前は騒然となる。パワード☆らいおんの周りを生徒たちが取り囲む。
  まるでアイドルを囲う状態だ。
有命まさえ「みさお師匠!! 昨日のあの大技、是非参考にしたいのでご教授願います!! なんか拳から出すヤツです!」
パワード☆らいおん「空手部のまさちゃん、そりゃイカンよ! そのような技は教えられんっ! 大会だったら一発退場だからな!!」
鍵本はばき「あ、あの・・・俺の、研究会には、会員が足りなくて、そのー・・・」
パワード☆らいおん「──下心が見えてるヤツからの頼みは受けられんなあ・・・悪いけど」
パワード☆らいおん「だが昨日言ってたイメージビデオ、ありゃあいいアイデアだ!さっそく放課後に撮るか! 衣装はあるだけ用意してくれ!」
鍵本はばき「お!? ──あ、分かった・・・分かった・・・!」
  みさおは同級生たちに囲まれながら、そのまま校舎へと入っていく。
ハンティン「──なーにやってんだ、あいつぁ」
ハンティン「いくらなんでもおっぴろげが過ぎないか? もう少し隠せよ・・・魔法少女だって事!」
ハンティン「それにこの学校の生徒、みんな浮かれすぎだろ! いや、俺がおかしいのか・・・!? んなわけないよな・・・・・・!?」
  上空から様子を見つめていたハンティンは、困惑していた。
  この世界の住人のテンションには、どうもついていけない。
ハンティン(魔法少女の契約、どうすっかなぁ・・・ 仮にみさおを推しても、あんなブレーキなしガールが広告塔とか無理がありすぎる・・・)
ハンティン「イタイタッ・・・! 胃が、考えただけで、胃があ・・・!」
  ハンティンが胃痛を訴え始めた、その時である。
  何かが、ハンティンの頭に落ちてきた。
ハンティン「イテッ!──今度は頭・・・ ん?・・・なんだこれ!」
ハンティン「う、うろこぉ・・・? なんで上から?」
  ハンティンは恐る恐る、頭上を見上げた。
  
  すると、そこには──
ハンティン「な・・・な・・・ なんじゃこりゃあああああ!!!!」
  ──ジェット機と同じくらいの体躯を持つ巨大な魚が、空を悠々と泳いでいたのである。
  当然、生徒や教師たちは大騒ぎ。
  ただでさえ慌ただしかった校内のムードはさらに苛烈なものになっていく。
  『何あれ!?怪獣!?』
  『これやばいって!逃げないと!』
  『落ちついて落ちついて落ちついて!!!』
  すると、巨大魚は突然──
  煙とともに消えてしまったのだ。
  
  すると──巨大な魚が消えた空から、1人の少女がまっさかさまに落ち、地面に墜落した。
アクア☆みかえる「あぁ〜、いってえ〜・・・」
アクア☆みかえる「ん?・・・あれま、いだぐねっちゃや! "魔法少女"さなっど、身体も丈夫になんだなあ〜!」
  ひつみが変身したアクア☆みかえるは、
  自らの水を操る魔法を用いて、巨大な魚型の乗り物を作り、登校してきた。
  だが、魔法少女となって間もない為に、魔法のコントロールが上手くいかなかったのだ。
  乗ってきた巨大魚は消えてしまった。
パワード☆らいおん「なーんかまた校内が騒がしいと思ったら・・・ また魔法少女か!」
アクア☆みかえる「あんだは・・・杜さん!? 学校さ、でできてたの!?」
アクア☆みかえる「おら、ひつみだよっ! 月輪ひつみ!! いつもの制服は着られなかったけど、おらだよ!おら!」
アクア☆みかえる(魔法少女って確か、変身も解けるはずだな・・・? やるしかね!)
アクア☆みかえる「ウーン!!む〜〜〜んッッ!! 解けろ解けろ解けろ〜!!」
パワード☆らいおん(ん?魔法少女に変身したのに、悪さを働く様子がない・・・? それに、なーんか変身前と口調が変わらないような・・・)
パワード☆らいおん(ここは一緒に行動して様子を見るか・・・)
アクア☆みかえる「──っ、だめだあ・・・ なんで、なんで戻れないんだよぉ・・・」
パワード☆らいおん「言っとくけど魔法に慣れないうちは、人間の姿には戻れないぞー」
アクア☆みかえる「そ、そんなぁ〜・・・」
  野次馬たちが取り囲む中、邂逅を果たした2人の魔法少女。
  すると、始業チャイムの音が響き渡った。
パワード☆らいおん「──しょーがねえ、今日はこのまま放課後まで魔法少女スクールライフをエンジョイしようぜ!」
アクア☆みかえる「え、えぇ・・・?おら、どうしたらいいんだべか・・・ぐずらもずらすてしまう〜」
パワード☆らいおん「大丈夫だ! 魔法少女の先輩であるオレがついてる! 豪華客船に乗ったつもりでさ、気楽に楽しもうぜ〜!」
パワード☆らいおん「まずは服を着るところだ、何か着ないとド健全男子諸君の色々なものを刺激してしまう! オッケー!?」
アクア☆みかえる「お、オッケー・・・」
パワード☆らいおん「うっし、取り敢えず衣装置き場へゴー!」
アクア☆みかえる「おーっととと・・・・・・いぎなし引っ張んないでけねすか〜ッ!?」
  パワード☆らいおんはアクア☆みかえるを引っ張ると、猛スピードで白煙をあげつつ、校内へと一直線に入って行った。
ハンティン「どんだけ増えんだよ魔法少女・・・ ──まさか・・・」
ハンティン(俺の他にも人間界にやってきた妖精たちがいて、そいつらが人間をスカウトして廻ってる・・・って可能性もあるな──)
ハンティン「なんか・・・大変な事になっちまってんじゃねえか・・・!?」

〇更衣室
  ──更衣室。
  そこではパワード☆らいおんによる、超爆速お着替えコーディネートが始まっていた。
  『あーこれは入らん、これもギリ・・・』
  『これは派手すぎ、これは地味すぎ・・・』
アクア☆みかえる「ちょ・・・っ、ひゃんっ! くつぐったぐて・・・ひぅっ!」
  着脱のスピードがあまりに高速なので、布地が擦れて、あられもない声をあげてしまうアクア☆みかえる。
  たまらず、目を瞑る。
  『よーっし、これで完成っ!!』
  パワード☆らいおんの大きな声がした。
  擦れる感覚もない。
  
  目を恐る恐る開けると──
アクア☆みかえる「────へ、ぇえっ・・・!?」
  あくあは、街娘風の衣装に身を包まれていた。
アクア☆みかえる「なんだいこれぇ! なして制服じゃないのすかゃ!」
パワード☆らいおん「あー、わりいわりい・・・ そのー、サイズ合うの、これしかなくってさ〜・・・ でもさ、こんな服今まで着た事ないだろ?」
アクア☆みかえる「まあ、そう言われっとなあ・・・ こないなフリフリの服っこ、あんまり見ないものなあ・・・」
パワード☆らいおん「──よーし、オレも着替えちゃうぞぉ!」
アクア☆みかえる「ええっ、ちょ、授業始まってしまうべや!」
  パワード☆らいおんは、身につけていた服を脱ぎ始めた。
  
  その様子を──
  一台のカメラが捉えていた。

〇学校の部室
  ──休憩時間
  生徒たちは昼食を食べ終え、束の間の自由時間を楽しむ時間。
  そんな光景の片隅、ある部室では異様な光景があった。
  人気のない空き教室。
  倉庫同然となっているそこには、2人の男女がいた。
真木野しずみ「お〜、羽振りいいねえ。 そこまでして欲しいの、『アレ』が?」
  真木野しずみ。
  非公式部活『魔法少女研究会』に出入りしている少女である。
  彼女は、同じ同好会に入っている男子生徒・鍵本から1万円札を受け取った。
鍵本はばき「うぅ・・・あ、当たり前、だろっ・・・」
真木野しずみ「しっかし、ラッキーだったねえ・・・ まさか文化祭をダシにして個撮の約束も取り付けちゃうとは・・・」
鍵本はばき「なんだかんだで杜さん、かわいいから・・・その、タイプだし──」
鍵本はばき「それに杜さんがホンモノの魔法少女だったら、僕のこの『魔法少女同好会』に来てくれた方が、むしろ──」
真木野しずみ「ふーん、そんなカマトトぶった事言っといてさ・・・ ──これ」
鍵本はばき「あぁ・・・っ!」
  しずみが鍵本に見せたカメラのディスプレイには、
  更衣室で下着姿になっているパワード☆らいおんの姿が映っていた。
真木野しずみ「──撮ってくるように頼んだのは誰なんだよ?え?」
鍵本はばき「あぁっ、ああっ・・・」
真木野しずみ「正直さあ、1万じゃ足りないぐらいだよね。 そうだな〜、ぜぇんぶのデータ欲しかったら〜、明後日までに、もう2万用意してよ」
真木野しずみ「ほらほら、貴重なリアル魔法少女の下着姿だよ〜? 喉から手が出るほど欲しいんだろ〜? 正直になりなよ・・・」
真木野しずみ「──このド変態が」
鍵本はばき「──は、いッ・・・」
  鍵本はすっかり気が動転したようで、急いで教室を出ていく。
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「愉しそうで何よりです、魔法少女カラフル☆メイジー」
真木野しずみ「まったくだよ! この力があれば・・・私は目に映るもの全部を撮影できる・・・」
真木野しずみ「知ってた? 人間界では、例え写真1枚でも全てを手に入れられるのよ? そう、こーんなお金だって手に入る──」
真木野しずみ「男子の性欲利用しちゃえばさ、写真でゆすれば、いっくらでもこっちに金が回ってくるってワケ!」
真木野しずみ「もうコスパ最強って感じ? アハハハハハ・・・ッ!」
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ(なんと汚く、おぞましい感情・・・ ──ですが。 これぐらいのほの昏さを心に持った魔法少女も一興でしょう──)
真木野しずみ「──ふふ、 『マジカル☆マガー・チェンジ』」
カラフル☆メイジー「──っ、あぁ・・・っ! ・・・ふふ、変身する時の感覚・・・やっぱクセになりそう♪」
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「次は何をするおつもりで?」
カラフル☆メイジー「──決まってるじゃない。 私の魔法と撮った写真で、もーっと、もぉーっと金を集めんの。 その為に──」
カラフル☆メイジー「──あんたには"利用価値のある"人気者でいてもらわなくちゃね〜・・・・・・ みさおちゃん♪」

次のエピソード:【番外編①】かぽーん。

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