~小さな島に来た人魚と少年の恋物語~

ヒムネ

3話 プリン(脚本)

~小さな島に来た人魚と少年の恋物語~

ヒムネ

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〇海辺
海田 風浜「もうそろそろ時間か」
海田 風浜「太陽が沈んできていた。だが突然、」
マリッサ「ぷはぁっ、フウマ君、岩影まで行こうっ!」
海田 風浜「どうしたんだよ急に」
マリッサ「いいから潜って!」
海田 風浜「ああ」

〇海岸の岩場
海田 風浜「言われた通りに再び潜りマリッサに昨日の岩影にたどり着く」
海田 風浜「人に見つかったのか?」
マリッサ「ううん大丈夫······人がいたから焦って」
海田 風浜「······そうなのか」
海田 風浜「彼女は嘘を言っている。先に海から顔を出した時に人はいなかった」
海田 風浜「――まあいいや、今日はありがとうマリッサ、楽しかったよ」
マリッサ「え、よかった、マリッサお姉さんも嬉しい」
海田 風浜「言っとくがっ、精神年齢は僕の方が上だよっ」
マリッサ「フフフッ、ムキになっちゃって」
海田 風浜「ムキになんてっ、あっ」
マリッサ「まだまだ子どもね、フ·ウ·マ·君」
海田 風浜(してやられた)
海田 風浜「明日から学校だけど来るよ」
マリッサ「またゴミ拾うの?」
海田 風浜「そうだよ」
マリッサ「そうなんだ~、フ~ン」
海田 風浜「ん?」
海田 風浜「彼女が何か企んでいた。しかしそれは明日わかることに······」

〇海辺
海田 風浜「――午後5時過ぎ、夕方で今日も綺麗な夕焼けが観れそうとコンビニの袋を持った」
海田 風浜「次いでにマリッサにもと思い砂浜に行くと、」
海田 風浜「え、これは!」
マリッサ「あ、フウマ、ゴミ集めといたよ」
海田 風浜「それは海の中のゴミ」
海田 風浜「あ、ありがとう」
マリッサ「これなら時間出来るでしょっ?」
海田 風浜「フフッ、ああ、そうだね」
海田 風浜「つい鼻で笑ってしまう。彼女にありがたく思いながら集めたゴミを袋に入れ帰りまで話をする······」
海田 風浜「やはりマリッサはいい人魚だ。それに一緒にいて、なんか、楽しい······」

〇海辺
海田 風浜「――ところが火曜日に、」
海田 風浜「マリッサ」
マリッサ「今日も、はいゴミ」
海田 風浜「ありがとう······あっ」
マリッサ「なになに?」
海田 風浜「小さい傷だが血が出ていた」
マリッサ「あ、これゴミを海で拾ってたら知らずに切っちゃったみたい」
海田 風浜「ホラッ、ばんそうこ」
マリッサ「え、ありがとうー!」
海田 風浜「彼女の右腕に貼ってると」
海田 風浜「僕もゴミを拾って切り傷を負った事があってね。だから2、3枚持ってるんだよ、よし、これで大丈夫だ」
マリッサ「アハッ、フウマは優しいね」
海田 風浜「か、勘違いするなよ。ケガしてたんだから」
海田 風浜「笑顔のマリッサにちょっと照れてしまう」
マリッサ「ねー、なに持ってきたの?」
海田 風浜「あ、そうそう、はい、プリンだよ」
マリッサ「プリン?」
海田 風浜「マリッサは知らなかった。それはそう、これは地上の食べ物なんだから。昨日のお礼にと彼女にあげた」
マリッサ「うわ、美味しい~!」
海田 風浜「プリンの美味しさに満足してくれたようだ」
海田 風浜「しかし、いつまでもこんな楽しいことは続けられないだろう」
海田 風浜「僕は明日、訊いてみることにした。何故ここ石浦に来たのか、本当の理由を······」

〇海辺
海田 風浜「――次の日、」
マリッサ「フウマッ、はいゴミ」
海田 風浜「ありがとう。僕の役目取られちゃったな」
マリッサ「うん、取っちゃったね」
海田 風浜「はい、プリン」
マリッサ「持ってきてくれると思った」
海田 風浜「······マリッサ」
マリッサ「あむっ、ん?」
海田 風浜「美味しいかい?」
マリッサ「うん、美味しいよっ」
海田 風浜「そうか」
海田 風浜「つい声が出てしまった。せめて彼女が食べ終わったらにしよう······」
マリッサ「ああ、満足っ!」
海田 風浜「じゃあ片付けるよ」
マリッサ「はい、ありがとね、2日も連続で」
海田 風浜「いいさっ······」
マリッサ「で、何話そう」
海田 風浜「マリッサ話してくれないか、本当のことを」
マリッサ「え······」
海田 風浜「もう話してくれてもいいだろ?」

〇海岸の岩場
マリッサ「ん~っ、しょっと」
海田 風浜「そうお願いすると岩の上に座って僕の隣に」
マリッサ「やっぱりバレちゃったんだ」
海田 風浜「黄昏を観る彼女は、どことなく悲しい目をしていた」
マリッサ「あたしさ······ケンカしたの」
海田 風浜「もしかして仲間」
マリッサ「「うん、1度も見たことない人間が見たいって言ったら『人間は悪魔だから止めろ』って言われたの」
マリッサ「その子も人間を知らないのに、腹立って集団を離れたら深海で迷っちゃって」」
海田 風浜「それでここに?」
マリッサ「うん、でもあたしだって人間は危険とか言われて育ったから、ちゃんと警戒してたら、」
マリッサ「1人ゴミ拾いしてるフウマを観てて、いい人かもって、それで思い切って貝を投げたの」」
海田 風浜「そうだったのか」
マリッサ「ごめん、嘘ついて」
海田 風浜「仲間の人魚の言う通りだな」
マリッサ「え、なにが」
海田 風浜「人間は悪魔さっ」
マリッサ「そんな······」
海田 風浜「君も手伝ってくれただろ。あれは全部人間がした事だ。いくらゴミを拾ったって次の日になれば流れ着いてくる······」
海田 風浜「それが自分がゴミを拾い続けて思っていたこと」
マリッサ「フウマ、少し落ち着いたら?」
海田 風浜「僕は少し興奮して立ち上がっていたので座る」
海田 風浜「ごめん」
マリッサ「ううん、やっぱり人間って不思議」
海田 風浜「どうして?」
マリッサ「だって自分達で汚して自分達で後悔してるし」
海田 風浜「今是昨非、か」
マリッサ「何それ?」
海田 風浜「今になって過去の行いが過ちと気づき悔いる事」
海田 風浜「ごめんよ、話が暗くなったね。ところで」
マリッサ「ん?」
海田 風浜「日曜日に一緒に泳いだ時、人がいるとか言って焦って逃げたのは、もしかして」
マリッサ「······実は仲間が」
海田 風浜「やっぱり、どうして戻らなかったんだ」
マリッサ「だって、楽しいから······人間と、フウマとおしゃべりして······」
海田 風浜「キレイな、瞳」
海田 風浜「······僕も」
マリッサ「あれ、怒らないの?」
海田 風浜「え、怒らないのって······怒るのだって疲れるんだよ」
マリッサ「あ~、よかった」
海田 風浜「これ以上その話に触れるのをやめた」
マリッサ「······やっぱり人間が悪魔って思えないな~」
海田 風浜「え~?」
マリッサ「だってフウマ、優しいもん」
海田 風浜「ま、またからかって」
マリッサ「フフッ、からかってなんかないよ」
海田 風浜「僕はできれば、マリッサに居てほしい······」
  ――重い話をした次の日は互いが楽しんだ。マリッサがゴミを、僕はプリンを、まるで交換するように。

〇海辺
マリッサ「いつもありがとう、プリン最高ね」
海田 風浜「そろそろプリンが怪しまれそうだ」
マリッサ「じゃあ他の美味しいやつで」
海田 風浜「······太るよ」
マリッサ「言ったな~、えいっ」
海田 風浜「尾で海水をかけてきた」
海田 風浜「ぬ、濡れちゃったじゃないか」
マリッサ「女性に失礼なこと言うからよフウマちゃん」
海田 風浜「僕を年下扱いするなー!」
マリッサ「だって年下じゃん」
海田 風浜「せ、精神年齢は上だっ!」
マリッサ「このまま赤ちゃんになったりしてフウマちゃんは」
海田 風浜「ちゃんはやめろーっ!」
海田 風浜「僕にとって今まで経験したことのない幸福感」
海田 風浜「こんな事がずっと続いてほしいと、 マリッサをずっと見ていたいと心の底から想ったのにとうとう別れの日が訪れる······」

次のエピソード:2話 海の中

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