~小さな島に来た人魚と少年の恋物語~

ヒムネ

2話 海の中(脚本)

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ヒムネ

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〇綺麗なリビング
海田 風浜「――昨日の事はあったけど彼女はたまたま通っただけならもう居ないだろうしと、」
海田 風浜「気分を新たに今日も午後1からゴミ拾いに向かった」
海田 風浜「母さん行ってくる」

〇海辺
海田 風浜「初寝浦でゴミを拾い休憩しながら勉強もしたりと充実していたはずなのに、」
海田 風浜「夕方に帰ろうとしたけど石浦の方面を見るとあの人魚のマリッサがなんとなく気になって寄ってみる事にした······」
海田 風浜「······行ってみるか」

〇海辺
海田 風浜「自転車を降りて砂浜を歩いたけど変わらないいつもの波の音、」
海田 風浜「······ちゃんと帰ったみたいだな」
海田 風浜「すこし寂しい、のかな······」
マリッサ「フウマ!」
海田 風浜「マ、マリッサ!」
海田 風浜「彼女は岩影に隠れていた。僕だと分かると近づいて来たので自分も濡れないのうに歩く」
マリッサ「よかった、やっぱりフウマだったのね」
海田 風浜「はぁ~っ」
マリッサ「どうしたの?」
海田 風浜「どうしてまだ石浦にいるんだ、昨日帰れって言っただろ」
マリッサ「え~、だってフウマともっとお喋りしたくて~」
海田 風浜「からかってるだろ」
マリッサ「ねぇっ、今日もゴミ拾うの?」
海田 風浜「いいや、今日はもう拾ったから、一応、来てみただけだ」
マリッサ「そうなんだ~······だったらさっ、フウマの話し聞かせてよ、ゴミも拾わないなら時間あるでしょ?」
海田 風浜「そんなことしてる場合じゃ・・・」
マリッサ「いいでしょ~」
海田 風浜「とても断れる雰囲気じゃなく彼女の好奇心旺盛な勢いと目に負けて、」
海田 風浜「······わかったよ」
マリッサ「やったー!」
海田 風浜「あまり大きな声を出しちゃダメだ、誰かに見つかるぞ」
マリッサ「ごめん」
海田 風浜「顔半分を沈めて謝るマリッサ。やはりからかわれているのだろうか······」
海田 風浜「ここで話してバレるのはまずいから」
海田 風浜「近くの隠れやすい岩で話すことにした」

〇海岸の岩場
海田 風浜「それで、何を」
マリッサ「どうしてフウマ君は、ゴミ拾いしてるの?」
海田 風浜「え~、それは簡単な答えだよ」
海田 風浜「僕はここが好きなんだ、自分が生まれたこの島が」
海田 風浜「質問されつつ海を眺めながら、彼女も海の方を向く」
マリッサ「へ~この島でか~、綺麗だもんね~、ここ~」
海田 風浜「そうだろ?」
マリッサ「うん」
海田 風浜「島を自分が褒められたようで嬉しくて質問をした」
海田 風浜「君は、マリッサ達は違うのか?」
マリッサ「うん、あたしたち人魚は1つの場所にずっと暮らすとかじゃなくて常に移動してるから、だからその島を愛するって何か素敵だなって」
海田 風浜「そうなのか」
海田 風浜「いわゆる回遊魚は様々な海を泳いでいて種類としては鮪(マグロ)とか秋刀魚(サンマ)などがいるけど、人魚もその仲間のようだ」
マリッサ「じゃあ、次は~」
海田 風浜「ちょっと待って、一方的じゃないか?」
海田 風浜「疑問を投げ掛けたのにこのあともマリッサの一問一答は続いた······」

〇海岸の岩場
海田 風浜「話に夢中なってあっと言う間に日が暮れてしまい、」
海田 風浜「あ、そろそろ時間だし帰るよ」
マリッサ「うん、寂しいけど我慢する」
海田 風浜「······君は」
マリッサ「ん?」
海田 風浜「いや、じゃあ行くよ」
マリッサ「そうだっ、明日泳がない? 一緒にっ」
海田 風浜「えっ······まぁ、明日は日曜日だし、いいよ」
マリッサ「やったー!」
海田 風浜「ただし、見つかるなよ」
マリッサ「うん、わかってる」
海田 風浜「マリッサの提案で日曜日は僕も泳ぐ事に。何ていうか話してみると面白い子だ······」

〇海辺
海田 風浜「――お待たせ」
マリッサ「なにその服?」
海田 風浜「ウェットスーツさ、いくら小笠原でも12月は気温が下がるから。日曜日ということで母さんは何とか誤魔化せたけど······」
マリッサ「じゃあ泳ごっ!」
海田 風浜「ああっ」
海田 風浜「さ、さすがに最初は寒いな」
海田 風浜「風にあたるとブルッとくるので少しずつ慣れさしていく」

〇アクアリウム
海田 風浜「そうしてる間でも彼女が上がって来ないので潜ると、人間にはとても無理なほど優雅に泳いでいたマリッサ」
海田 風浜「忘れてた、彼女は人魚なんだ」
海田 風浜「そう思いつつマリッサの方に脚をバタ付かせると、僕の手を掴んで海の中をまるで案内するかのように進んでいく」
海田 風浜「海中には珊瑚や、魚の石鯛(イシダイ)や|梅色疑(ウメイロモドキ)、棘蝶々魚(トゲチョウチョウウオ)も泳いでいた」
海田 風浜「1分位経つと彼女の手を両手で軽く叩き、それに気がついて彼女は手を離し僕は海から顔を出す」

〇海辺
海田 風浜「ぷはぁっ、ハァ、ハァ······」
海田 風浜「人が居ないか周りを見渡す」
海田 風浜「マリッサ、大丈夫だ」
マリッサ「ぷはぁっ、そうだった、人間は水中だと大変なんだったね」
海田 風浜「ああ、人魚のようにはいかないよ。しかし凄いな海は」
マリッサ「喜んでくれた?」
海田 風浜「うん、あんな風に海中を観るなんて生まれて17年間で初めてだよ!」
マリッサ「え、17才?」
海田 風浜「ん? そうだけど」
マリッサ「な~んだ」
海田 風浜「なんだよ」
マリッサ「あたしは20才だからお姉さんね」
海田 風浜「え~っ!」
マリッサ「へっへ~」
海田 風浜「まさか僕より年上で大人なんて、こんな子······とにかく衝撃だった」
マリッサ「ほら、次行こっ、フウマ君」
海田 風浜「あ、ああ」
海田 風浜「なんか対応が変わったような。でも、今日はずっと海の中を楽しんだ······」

次のエピソード:1話 ゴミ拾い

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