第二話: 過去のトラウマ/変わる運命 (脚本)
〇黒
・・・前回のあらすじ
櫛名 真愛(くしな・まいと)「俺は妻である恋華と、水族館に遊びに行った」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「久しぶりのデートだったこともあり、 楽しみにしていた恋華だったが、」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「会社の今後に関わる取引の電話がかかってきて、あろうことか俺は、仕事を優先してしまう」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「悲しむ恋華を放って会社に向かった俺は、 ”仕事”だけは、成功をおさめる」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「しかし、当然ながら ”二人の時間が欲しい”と俺に懇願していた恋華は大激怒・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「しかし、俺も頭に血がのぼり、我を忘れて恋華にひどい言葉を浴びせてしまう」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「傷ついた恋華は家を飛び出すが、 部屋に残された恋華の日記によって、 結婚記念日だったことを思い出す」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ようやく、我に返った俺は恋華を追いかけるが・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「恋華は、何者かにひき逃げされてしまい、 頭部に重傷を負ってしまった」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「医師に、もう意識は戻らないと告げられて俺は途方に暮れる」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「少しの間でも、辛い状況を忘れたくなった俺は酒を飲み眠りについた。 ・・・のだが、」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「どういうわけか、俺は子どもになってしまった・・・」
〇黒
〇白いバスルーム
櫛名 真愛(くしな・まいと)「いやぁ・・・見れば見る程、俺の子ども時代にそっくりなんだよな」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「てか、髪ながっ・・・」
〇ダイニング
???「どうしたの?真愛 早くご飯食べちゃいなさい?」
〇白いバスルーム
櫛名 真愛(くしな・まいと)「なにやら、リビングで声がする。 聞き慣れていて、でも、どこか懐かしいその声の正体は・・・」
〇ダイニング
櫛名 真愛(くしな・まいと)「母さん!? ・・・と、真心!」
母親と、妹だった
櫛名 真心(くしな・まこ)「プププ・・・。お兄ちゃんが、ママのこと、母さんだって。 いつもは、 『クソばばあ!』とか言ってるくせに」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「ほんとね。 昨日なんて、『うっせー!クソばばあ!』って言われたのよ?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あ・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(そう。俺はこれくらいの頃、たしかに母さんのことを、クソばばあと呼んでいた・・・)
櫛名 真愛(くしな・まいと)(今思うと、ある意味恥ずかしい・・・)
櫛名 真心(くしな・まこ)「さてはお兄ちゃん! また、なんか欲しいものあるんでしょー」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「えー、またゲーム?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ち、違うって! 真心、お前変なことゆうなよ」
この生意気な小娘は、真心(まこ)。
俺の妹だ。
櫛名 真心(くしな・まこ)「だって、この前言ってたもん。 11月に出る、新しいゲームが欲しいーって」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「いらねえよ。 俺、もう25だぜ?」
「え・・・?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「え?」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「真愛、あんた大丈夫??」
櫛名 真心(くしな・まこ)「お兄ちゃん! 25歳って大人だよ? 大人の人って、パパみたいに色々な所に毛が生えるんだよ? お兄ちゃんツルツルじゃん!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「いや、本当だって! 俺は、株式会社メディカル・エレクトロニクスの営業第一課の主任なんだよ」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「夢の話をしてるの? お母さん的には、まだ子どものうちはもう少し夢のある夢を持って欲しいんだけど・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(ダメだ・・・。全然信じてもらえない)
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「さあ。 変なこと言ってないで朝ごはん食べちゃいなさい?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「はーい。 いただきます・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「母さんの味噌汁の味がする」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「あんた・・・泣いてるの?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「なんか、母さんの味噌汁の味がしてさ」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「当たり前でしょ?お母さんが作ったんだから」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ありがとう。 母さん」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「なんか、今日は変な子ね。 ほら。ごはん食べたら、学校いってらっしゃい」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そっか。今日は、平日なんだ」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「当たり前でしょ? 今日は、11月7日の月曜日よ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あとさ、もう一個きいていい?」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「なあに?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「俺ってさ・・・何年何組?」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「あんた、自分のクラスも忘れたの? 四年三組! ほら、わかったら学校行ってきな」
〇玄関の外
「いってきまーす」
〇通学路
本当にすごい夢だな。
走馬灯かと思うくらいに鮮明に、
俺が昔住んでた街の風景だ。
櫛名 真心(くしな・まこ)「どうしたの?お兄ちゃん」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「いや、なんでもないよ」
櫛名 真心(くしな・まこ)「変なお兄ちゃん」
〇田舎の学校
やっと学校までたどり着いた
そういや、こんな感じだったっけな
〇学校の廊下
小学四年生ってことは、10歳だろ・・・?
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ってことは、15年前になるのか!?」
どおりで、懐かしいはずだ。
2005年の11月7日か。
11月7日・・・何かあったような気がするんだよな
〇教室
教室のドアを開けて中に入ると、
懐かしい顔がたくさんあった
その中に紛れて・・・
櫛名 真愛(くしな・まいと)「恋華・・・」
そうだ。
当然だけど、この時代の恋華は事故に遭ってない
豊原 恋華(とよはら・れんか)「おはよう!まいちゃん」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あ・・・お、おはよう」
クラスメイト「櫛名が、豊原のこと 『恋華』って呼んだぞー!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ちょっ・・・言ってねえよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(そうだ。 俺と結婚してない 恋華の苗字は、櫛名ではなく、旧姓の豊原なのだ)
豊原 恋華(とよはら・れんか)「やっと、恋華って呼んでくれたね ちっちゃい時は、ずっと呼んでくれてたのに、最近は、ずーっと名字でばっかり呼ぶんだもん」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ち、違うって・・・。 間違えただけだよ! いちいち気にすんなよ・・・豊原」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「えー!恋華って呼んでくれていいんだけど」
〇黒
(ごめんな、恋華。俺が、お前の事を名前で呼ぶのは、もう少し先なんだ・・・)
〇教室
朝のチャイムが鳴り、
さっきまで賑やかだった教室が、一気に静まり返る
教室のドアが開き担任の先生が入ってきた
横山 伊織(よこやま・いおり)「みなさん。 おはようございます」
担任の横山先生だ。
クラスに一人は、いたであろうガリ勉女子がそのまま大人になったような人で、
とにかく、口うるさい
「おはようございまーす!」
横山 伊織(よこやま・いおり)「おはようござい”まーす”じゃないでしょう? おはようござい”ます”。 伸ばさないのよ?わかった?」
クラスメイト「はーい」
横山 伊織(よこやま・いおり)「返事も伸ばさないの! もういいわ。 授業を始めましょう」
「先生、宜しくお願いいたします」
何故か、
こうゆう挨拶で授業が始まる。
これが、このクラスのルールだった。
横山 伊織(よこやま・いおり)「では、国語の教科書の18ページを・・・」
〇学校の廊下
ジリリリリ・・・
耳に障る非常ベルの音が鳴る
〇教室
『非常ベルが押されました。
教職員の皆さんは至急、全階の廊下、及び教室の安全の確認をしてください』
放送が流れて、再び教室が慌ただしくなる
クラスメイト「火事かな!? 不審者かな?」
クラスメイト「こわーい」
クラスメイト「どうせ、イタズラだろ? 大げさなんだよ」
横山 伊織(よこやま・いおり)「静かに! 先生は、確認に行きます。 先生が帰ってくるまで自習です。 いいですね? 自習ですよ!自由時間ではありません!」
「はーい」
みんな、返事だけは一丁前だ
豊原 恋華(とよはら・れんか)「まいちゃん!なんか、ワクワクするね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そうか? だって、もし不審者なら、 先生がいないこのタイミングで、もし入ってこられたら、俺たちおしまいなんだぜ?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「それは、そうなんだけどー」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(まあ、たしかこの時は、 結局は何もなかったんだけどな)
〇教室
・・・しばらくして、先生は戻ってきた
横山 伊織(よこやま・いおり)「今回は誰かのイタズラということで、何もありませんでした。 みなさんは、そうゆう悪質なイタズラをしないようにしてくださいね」
「はーい」
横山 伊織(よこやま・いおり)「それでは、授業を始めます。 教科書の18ページを開いて下さい」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「なにもなくてよかったー」
恋華が、小さな声で呟く
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ああ。そうだな」
こんなことまで鮮明に思い出すなんて、
本当に走馬灯みたいだな
〇黒
でも俺は
もっと大事な事を忘れていた。
そう・・・。
俺の人生を大きく変えた、
”あの出来事”を
〇教室
午前の授業が終わり、
給食を食べて、
櫛名 真愛(くしな・まいと)(なんて、平和な夢なんだ!)
なんて、呑気に考えていた。
しかし、午後の授業のために教室に入ってきた先生の顔がなんだか、険しい
横山 伊織(よこやま・いおり)「皆さんに、 お話があります」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「先生? なんか、あったんですか?」
横山 伊織(よこやま・いおり)「それを今から説明するのです!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「うぐっ・・・」
心なしか、口調も強かった。
横山 伊織(よこやま・いおり)「・・・はあ。 クラスで集めた給食費の入った封筒が失くなりました」
「えっ!?」
「えーー!!」
それ、かなりやばくないか?
横山 伊織(よこやま・いおり)「先生は、その犯人がこのクラスにいると思っています」
クラスがざわつく
クラスメイト「自分のクラスの人間疑うとか最低じゃね?」
クラスメイト「俺たちがやった証拠でもあるのかよ」
横山 伊織(よこやま・いおり)「ありません。 でも、先生は先生なので、 落としたり、失くしたりなどあり得ません」
クラスメイト「証拠ないのに疑うとか、 先生本当に最低だよ?」
横山 伊織(よこやま・いおり)「最低で構いません。 先生が犯人ではない以上、 犯人は、このクラスにしかいないと思っています」
クラスメイト「このクラスでそんなことするの、 家が貧乏な豊原ぐらいじゃね?」
クラスメイト「たしかに!ありえるかも」
クラスメイト「白状しろよー!とーよーはーら!」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「私、そんなのしてない!」
横山 伊織(よこやま・いおり)「豊原さん?正直に話して? 今なら、先生と、このクラスの中だけで話が終わるのよ?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「そんな・・・」
恋華は泣き出した。
横山 伊織(よこやま・いおり)「泣いてるということは、認めるのね? 犯人は、あなたなのね? 豊原さん」
横山 伊織(よこやま・いおり)「ほらね?みなさん。 先生が犯人のはずはありません」
???「本当にそうでしょうか?」
声のする方向に、みんな一斉に振り向いた
横山 伊織(よこやま・いおり)「それはどうゆうことかしら? 氷室くん」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「確かに、先生は尊敬できる素晴らしい先生です」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「しかし・・・」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「その前に、一人の”人間”です。 どんな人間でも100%じゃない」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「それとも、先生は学校の隅々まで探されましたか?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「”100%”探した。と言い切れますか?」
横山 伊織(よこやま・いおり)「いえ、それは・・・。 でも先生は、先生なのであり得ないのです」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「わかりました! では。 今からみんなで職員室に行きましょう」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「先生の身の潔白を証明しにね」
横山 伊織(よこやま・いおり)「い、いいでしょう。 そこまで言うのなら」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「それから、 みんなもよってたかって豊原さんをいじめてたら、さっきの先生と一緒だからね」
クラスメイト「ご、ごめん」
クラスメイト「悪かったよ・・・」
クラスメイト「ごめんね、豊原さん」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「うん、大丈夫だよ」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「じゃあ、みんなで職員室に行こうか」
〇黒
俺はようやく思い出した。
なんで忘れてたんだろう。
こんな大事なこと。
俺たちはこのあと、職員室にある先生の机の周りに封筒が落ちていないか探しに行くんだ。
そして、決着は簡単につく。
結果としては、横山先生の机の下に落ちていた。
ここで終わってくれたらハッピーエンドだったんだけど・・・。
ろくに探さず、自分のクラスの児童を疑った先生を、俺のクラスメートたちは許さなかった。
当然のように罵倒される先生を庇おうと、俺は立ち上がり、意見した。
でも、それが俺の人生の分岐点だった。
クラスメイト「ヒーロー気取りかよ」
クラスメイト「いや、悪人を庇ってるんだし、こいつも悪人だろ?」
クラスメイト「まじであり得ないんだけど。 豊原さん傷つけられたのに、 あの教師庇うなんて」
「お前は最低だ」
そして、とどめをさしたのは
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「じゃあさ・・・」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「追い出しちゃおうよ。 そいつも、あの教師も・・・ね?」
そう。
横山先生を庇った俺はクラスから非難され、
そして、クラス全員からいじめられることになったのだ。
そして、クラスを束ねていたのは紛れもなく
氷室竜一だった。
いじめを受けた俺は、やがて学校に行けなくなり不登校になった。
〇学校の廊下
櫛名 真愛(くしな・まいと)(俺は、どうしてこんな大事な事をずっと忘れてたんだろう)
櫛名 真愛(くしな・まいと)(違うな。俺は、記憶に蓋をしていたんだ。 二度と思い出さない為に)
櫛名 真愛(くしな・まいと)(それを・・・。 なんで、こんな辛いことまで夢で鮮明に描かれるんだよ)
櫛名 真愛(くしな・まいと)「せっかく・・・” いい夢見れた ”って。 思ってたのにな」
〇まっすぐの廊下
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「さあ。 職員室に着きましたよ。 行きましょう。先生」
〇事務所
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「探すのは、先生ご自身で探してくださいね」
横山 伊織(よこやま・いおり)「ええ。 でも、こんな所にあるはずが・・・」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「ん? 先生、どうかされました?」
横山 伊織(よこやま・いおり)「ありました・・・。 机の下に落ちていました」
クラスメイト「え、まじで?」
クラスメイト「最低じゃん」
クラスメイト「先生の嘘つき!」
クラスの、ほぼ全員から非難を浴びせられている
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「では、先生。 教室に戻りましょうか」
〇教室
横山 伊織(よこやま・いおり)「・・・・・・」
クラスメイト「先生、なんとか言って下さいよ」
横山 伊織(よこやま・いおり)「皆さん。 本当にごめんなさい まさか、あんなところに落としていたとは思わなくて」
クラスメイト「謝って済むかよ」
クラスメイト「私たちは知らないって、ちゃんと言ったのに。 先生は、きいてくれなかったじゃない」
横山 伊織(よこやま・いおり)「それは全部先生が悪かったと認めます。 だから、許してもらえませんか?」
クラスメイト「無理に決まってるじゃん」
クラスメイト「教師失格」
クラスメイト「ダメ教師」
「ダメ教師!ダメ教師!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(俺は一体どうすればいい・・・?)
櫛名 真愛(くしな・まいと)(夢とは言え、また同じ歴史を繰り返すか、 それとも・・・)
クラスメイト「このクラスから出ていけよ!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「・・・・・・」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「待ってくれ!」
みんなが、俺がいる方向を向く。
もう後戻りはできない
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そりゃ、確かにさ 先生も態度とか、悪いところはいっぱいあったと思う。 でも、それでもちょっとやりすぎじゃないかな」
クラスメイト「なんだよ、櫛名 お前は、先生の味方するのか?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「違う! そうじゃないよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「みんな、まだ小学生だからわからないかも知れない。 けど、大人になったら嫌でも頭下げないといけないことがいっぱいあるんだ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「サラリーマンやってたらさ、 仕事ではプライド捨てて頭下げないといけない時がたくさんある」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「そのくせにさ、周りの大切な人には謝らないといけない時に謝れなくて」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「たった一言”ごめんなさい”が、言えなくて 大事なもの失くすかも知れないときだってあるんだよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「でも、先生は言ってくれた。 俺達に勇気出してちゃんと頭下げてくれた。 ならさ、俺達が先生許すのも勇気なんじゃないかな」
クラスメイト「ヒーロー気取りかよ」
クラスメイト「先生の味方するなんてあり得ない!」
クラスメイト「こいつも、追い出そうぜ」
やっぱり無理か・・・。
結局、俺はまた同じ歴史を繰り返すのか
豊原 恋華(とよはら・れんか)「みんな待って! 私も、まいちゃん・・・櫛名くんの意見に賛成だよ? 先生、ちゃんと謝ったんだし許してあげようよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「恋華・・・・・」
クラスメイト「お前まで先生の味方かよ」
クラスメイト「氷室も、なんとか言ってくれよ」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「みんなはさ? もし立場が逆なら、 櫛名くんみたいに誰かを庇える?」
クラスメイト「えっ、それは・・・」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「櫛名くんは、他に味方がいなくても一歩も引かなかった。 それって、勇気だよね?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「それに、先生だってちゃんと謝ったんだし。 櫛名くんの言う通り許してあげてもいいんじゃないかな?」
氷室が、俺をかばった!?
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「それとも、みんなは悪いことや間違ったことは一度もしたことないの?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「横山先生が、前に言ってたよね? 『間違えることは失敗じゃない。 失敗しても終わりじゃない』って」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「だから、先生は終わってなんていませんよ」
横山 伊織(よこやま・いおり)「氷室くん・・・」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「さあ、みんなお互いに謝って全部終わりにしよう。 先生も、みんなもそれでいいよね?」
横山 伊織(よこやま・いおり)「ええ。 もちろん。 みなさんが、もう一度私を信じてくれるなら」
クラスメイト「まあ、氷室が言うなら」
クラスメイト「仕方ないよな」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「じゃあ、決まりだね。 先生は、僕たちに、 僕たちは先生と、櫛名くんに謝ろう」
横山 伊織(よこやま・いおり)「今回のことは本当に反省します。 ごめんなさい」
横山 伊織(よこやま・いおり)「だから、もう一度先生にチャンスをちょうだい?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「じゃあ、僕たちも」
「横山先生、櫛名くん。 ひどいことを言ってごめんなさい」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「では、これでおあいこですね」
〇通学路
まさか、歴史が変わることがあるなんて。
これが夢じゃなかったら、
明日からも普通に学校に行けるのに・・・
豊原 恋華(とよはら・れんか)「まいちゃん! 一緒に帰ろ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「豊原、 いいぜ!一緒に帰ろう」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「今日のまいちゃん、かっこよかったよ!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「えっ?そうか?」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「なんかね、」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「まいちゃんじゃないみたいだった」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「どういうことだよ」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「なんてゆうかさ、 大人のまいちゃんが乗り移ったみたいだったよ! だから、私まで似合わないことしちゃった」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あはは・・・」
俺はそんなことより、
昼間のあの騒動の後の出来事のほうが驚きだよ
〇教室
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「ねえ、櫛名くん」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「お?なんだ?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「よかったら、僕と友達になってくれないかな?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「えーー! 本気で言ってるのか?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「うん。 何か、問題があるのかい?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「いや、問題はないんだけど・・・」
問題はないけど、
本当にこいつ信用していいのか?
〇白
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「俺の本来の歴史では、 こいつは、笑顔の裏で」
〇黒
俺をいじめていたグループの主犯格だった・・・
〇教室
櫛名 真愛(くしな・まいと)(そんな奴と、 友達になれるのか?)
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「櫛名くん?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ああ、悪い。 ちょっと考え事してて」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「それで、どうだろうか? 僕と友達になってくれるかな?」
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「君のさっきの行動。 グッジョブだったよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(とりあえず、信じてみるか)
〇通学路
櫛名 真愛(くしな・まいと)「俺さ、氷室と友達になったんだ」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「そうなの? よかったね まさか、あのハプニングがこんなことになるなんてね」
本当にそうだ。
こうやって、また恋華と並んで歩けるなんて・・・。
もし、夢ならもう少し見させてくれ。
〇白いアパート
櫛名 真愛(くしな・まいと)「じゃあ。また、明日学校でな」
豊原 恋華(とよはら・れんか)「うん、 また明日」
恋華を家に送り届けた俺は、
自分の家に向かった
〇ダイニング
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ただいま!母さん」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「あら、おかえりなさい。 なんだか、楽しそうね」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「うん。 今、ものすごく気分がいいんだ」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「あら、そう! それはよかったわ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「あ、そうだ母さん。 ちょっと頼みがあるんだけど」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「なにかしら?」
〇美容院
美容師「いらっしゃいませ!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「カットお願いしまーす」
美容師「はい!ありがとうございます」
〇通学路
櫛名 真愛(くしな・まいと)「すっかり夜になったけど、 やっとスッキリしたぜ」
〇ダイニング
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ただいま!母さん 髪、切ってきたよ」
櫛名 真弓(くしな・まゆみ)「本当によかったの? この前まで、アイドルになりたいから、 髪を伸ばすんだ!って言ってたのに」
櫛名 真愛(くしな・まいと)(俺、そんな事まで言ってたのか)
櫛名 真愛(くしな・まいと)「もう、いいんだよ」
〇男の子の一人部屋
櫛名 真愛(くしな・まいと)「さて、祝杯をあげるとするか」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「さすがに、酒は飲めないからな ”三ツ葉ソーダー”だ」
ごくりごくりと飲み干す。
櫛名 真愛(くしな・まいと)「ふわぁーあ なんか、今日は色々ありすぎて疲れた」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「夢の中でも眠くなるんだな・・・」
〇黒
〇綺麗な部屋
櫛名 真愛(くしな・まいと)「・・・・・・ん?」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「はっ・・・!」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「俺は一体・・・」
気付いたら俺は、
本来の、25歳の俺に戻っていた
〇綺麗な部屋
櫛名 真愛(くしな・まいと)「結局、夢か。 そうだよな。 そんな簡単に現実から逃げられるわけが・・・」
プルルル・・・プルルル
誰だ?こんな時間に
櫛名 真愛(くしな・まいと)「もしもし・・・?」
???「久しぶりだね。真愛」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「誰だ?お前・・・?」
???「誰って? 小学校からの友達を忘れるなんて、 ずいぶん寂しいじゃないか」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「だから、お前は誰なんだよ! 冷やかしならやめてくれよ」
???「氷室!」
???「氷室竜一だよ」
櫛名 真愛(くしな・まいと)「なんだと・・・!?」
俺は氷室にいじめを受けてた、
当たり前だが、氷室と俺が友人なわけはない
〇教室
氷室 竜一(ひむろ・りゅういち)「”よかったら、僕と友達になってくれないかな?”」
〇綺麗な部屋
あれは、夢じゃなかったのか?
まさか、俺は本当に過去を・・・
〇黒
To be continued・・・