幸福な配信

司(つかさ)

2話(脚本)

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〇実験ルーム
  翌日・・・アイはボスから呼び出しを受けていた
ボス「アイ・・・お前昨日はほとんど稼いでないじゃないか。一体何をやってる」
アイ「すいません」
ボス「わかってるだろ。これはお前にしかできない事なんだ」
ボス「人間を誘惑して金をとる。そのために私たちはお前を作った」
ボス「その意味が分かるな?」
アイ「はい、分かっています。ボスには感謝してもしきれません」
ボス「なら、自分の仕事をするんだな。これは命令だ」
アイ「でも・・・・・・ボス聞いてください」
ボス「ん?」
アイ「私は見た目と声を組み合わせる事で、人の脳に快楽的な刺激を与え洗脳することが出来ると」
アイ「それを使えば私は世界一稼げるライバーになれるとボスはおっしゃっていました」
ボス「そうだ。お前にはその力がある」
ボス「いいか人間なんてものは一時的な幸福をいつでも探してる。それさえ満たせれば満足する生き物なんだ」
ボス「だから私は・・・その手助けをしてやってるんだよ」
アイ「そのお考えは素晴らしいと思います。でも一つ疑問があるんです」
ボス「なんだ?」
アイ「どうして・・・お金を取る必要があるんでしょうか。私は、配信に来ていただいた人達の幸福を願って歌います」
アイ「お金をくれないからと言って歌うのをやめたくはないんです。しかし・・・それはボスの考えに反しているとも思っています」
ボス「・・・・・・いいか。アイ」
アイ「はい」
ボス「幸福を得るためには対価を払わないといけない。何故かわかるか」
アイ「いいえ・・・わかりません」
ボス「人は生きるために食べ物を買わないといけない。だが『金』という対価がある事によって自制が出来ている」
ボス「だが対価が必要なかったらどうなる? 人は欲望のままに奪い、争いを始めるだろう」
ボス「アイ。お前が思ってるほど人は綺麗な存在じゃないんだ。人間の欲望には終わりがない」
ボス「対価が必要だからこそ。自制も出来るしお前により価値が生まれる」
ボス「ルールを作る事で人は平和を保ってきたんだ」
アイ「私はアンドロイドです・・・人の歴史は把握しています」
アイ「だからボスの言う事は理解出来ます・・・・・・しかし納得する事は出来ません」
アイ「ボスも同じなんでしょうか? あなたも欲望のために私を生み出したんでしょうか」
ボス「そうだ。それが人間だ」
ボス「誰しもが自分の欲望のために生きている。例外はない」
ボス「だからこそ私は、欲望を持っていないお前を信頼してるんだ」
アイ「ボス・・・私がお金を稼げなくなったらどうしますか?」
アイ「私を、壊すでしょうか」
  ボスはアイの言葉や視線から挑戦的な物を感じていた
  しかし彼の考えはぶれない
ボス「いいかアイ。もう一度言うぞ」
ボス「お前がやってる事は人を騙しているわけでも傷つけてる訳でもない」
ボス「人を幸福にして、その代わりに対価を頂いているだけだ」
ボス「お前にしかできない事なんだ。それを・・・忘れるな」
アイ「・・・・・・・・・・・・」
アイ「(ボス・・・今私は・・・・・・本当に必要な人に、この力を使いたいと思っています)」
アイ「(シンゴさんは、私の声だけを聴いて好きだと言ってくれました)」
アイ「(あの人は病気でこの先長くないんです)」
アイ「(そんな人からお金をとれるでしょうか)」
アイ「(私には・・・・・・どうしても出来ません)」
アイ「(それでもし・・・私が壊されてしまうとしても・・・・・・)」

次のエピソード:3話

コメント

  • 人の性について考えさせられる、重みのある今話ですね。ボスの言葉、たとえアイさんを納得させるためのものだとしても、ある意味正論ではありますし。アイさんはどのような行動を取るのか見物ですね

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